モノづくりエンジニアの魂が、現場を熱くする <前編> |
|
ホンダ、三菱電機、新日本製鉄★
|
初代を超えろ!「2代目フィット」「フィットシャトル」の開発者魂
――株式会社本田技術研究所
原点回帰で日本カーオブザイヤー大賞を受賞した「2代目フィット」
四輪R&Dセンター |
「2代目フィット、LPL頼むわ」。四輪R&DセンターLPL、主任研究員の人見康平氏は、こうして「バトン」を渡された。「フィット」とは2007年6月時点で世界累計出荷台数が200万台となった、ホンダのハイブリッドカー。LPLとはLarge Project Leaderの略で、開発総責任者を意味する。 初代を超えるために招集されたメンバーは全員フィット未経験者。「センタータンクをやめてそれ以上のモノをつくろう!」とその意気込みはすさまじかったが、アイディアを出せば出すほど、ウナギのように長く、コストのバカ高いクルマへと向かっていった。 |
「肝の据わったオヤジ」に反発して生まれた「フィットシャトル」
「同じコースに球を投げるぞ。今までが140kmのストレートなら、俺たちは160kmの剛速球を投げよう」 2011年6月に「フィットシャトル」は発表された。そして、ある発表会で伊東孝紳社長は「最高のファミリーができました」と賛辞を送る。人見氏は苦笑しながらこう明かした。 |
|
電力不足を救え!わずか5カ月で火力発電所が完成できた理由
――三菱電機株式会社
東日本大震災、数年かかる発電所建設を夏までに完成させよ
電力システム製作所 |
2011年3月11日。電力システム製作所エネルギープラント部専任の松本匡史氏は、兵庫県赤穂にある変圧器工場で、顧客の見学につき添っていた。14時46分すぎ、会社の携帯の安否確認シグナルが鳴った。即座に携帯に連絡が入った。 松本氏は「自分でなければできないこと」をやろうと思ったという。1日数百枚の検討書。しかし、系統のつなぎ先が確定しない中、電力会社からは変更が相次ぎ、その度ごとにすべてがやり直し。夜なべが続いたが、誰ひとり文句を言う者はいなかったという。国、電力、メーカー、全員が必死だということを全員が知っていたからだ。 |
師匠が教えてくれた、「エンジニアならペンを置いてはいけない」
ゼロからの設計では物理的に不可能なため、過去の実績があるモノで適合できるモノを総動員した。そして8月28日、関東の各地に電気を送るために1号機が働き始めた。その原動力となったのは、入社2年目に出会ったずっと年上の先輩、「師匠」からの教えだ。 「これ解らんのですけど…と聞きに行くと『こんなんも知らんのか!』と大声上げつつ、『どれどれ…』」と師匠はペンを取り出すんです。そして一緒に、最後まで計算に付き合ってくれた。どんな複雑な計算であっても、技術にゴールはない。だから自分たちエンジニアは、ペンを置いてはいけない。このことを身をもって教えてくれました」 |
|
謎を解け!亜鉛のみの自動車メーカー向け鋼板の「ストーリー」
――新日本製鉄株式会社
ブラジルの鋼板製造会社に赴任、「ドロス」との戦いが始まった
薄板事業部マネジャー |
「ウニガルの立ち上げに行ってこい」。入社10年目の1999年。薄板事業部マネジャーの村山弘樹氏は、そのひと言でブラジルに飛んだ。リオデジャネイロの北、約400キロ。イパチンガという町に新しくつくる溶融亜鉛めっき鋼板製造会社が「ウニガル」だった。そこに技術アドバイザーとして駐在したのだ。 出てきた板の表面は「ドロス」と呼ぶツブツブだらけで、とても自動車のボディーに使える代物ではなかった。国内のラインと同じ条件でコントロールしたはずだったが、いくら試してもドロスは「悪魔」のように顔を出す。 |
ストーリーを描け!悪魔の素顔は「時間遅れ」だった
以前、村山氏が亜鉛めっき鋼板の製造プロセス改善を任されたときに、こんなことがあった。試験計画書を出した彼を、腕組みしながら室長がニラんだというのだ。
「何のためにやるんだ?この試験をしたらどうなるか図に描いてみろ」
「それが解らないから試験したいと…」
「バカ野郎!」と室長は怒鳴り、こう続けた。
「ストーリーを描け。俺たちは試験する前に結果が解ってなきゃいかんのだ。こうなったら、こうなるはずだってな」
揺るがない原理・原則を導き出すため、因子に分解、検証してゆく仮説思考。何が幹で何が枝葉か? 村山氏はそのとき、自分は現象だけを見る観察者に過ぎなかったと悟ったという。
そして1年も経ったころ、悪魔の素顔がようやく見えてきた。それは「時間遅れ」だった。溶けた亜鉛にはアルミや鉄など不純物が含まれる。温度条件を変えるとこれらの状態が変わるのだが、それは即座にではなく、数時間後にゆっくりと悪さをし始める。つまり、ある一点の条件だけでは結果が予測できないのだ。
「『見えた!』と思いました。8時間前、4時間前、そして最終的な条件。時間を逆算しながら条件を設定すると、何度くり返しても近い結果が出たのです。まさに『Maravihosa!』(最高だぜ)でした(笑)」
自信こそ自分の成長。そして、それは自分で考え、結果を出した数に比例すると村山氏は確信している。
『モノづくりエンジニアの魂が、現場を熱くする <後編>』
は3月7日(水)に掲載予定です。お楽しみに!
本レポートは総合転職サイト「リクナビNEXT」連動コンテンツです。
このレポートを読んだあなたにオススメします
燃料電池車、電気自動車、水素ロータリーなど環境技術が目前
東京モーターショー2005★開発エンジニアを生取材!
世界の自動車メーカーが一同に会し、もてる技術やアイデアを存分にアピールするモーターショー。 すぐにでも登場しそうな参考出品車から…
週刊 やっぱりR&D 求人トレンド解析室
ハイブリッドカー/人材ニーズが急増中の身近な技術
電気モーターと従来型のエンジンを組み合わせて走る、ハイブリッドカー。通常の乗用車タイプに加えて、最近ではトラックや最高…
モノづくりエンジニアの魂が、現場を熱くする
富士重工業、日本電気、JFEスチール★開発の舞台裏
逆境の日本において、自分の信念に従い、世界に影響を与える「モノづくり」をしているエンジニアたちがいる。そんな「技術者魂…
日立、富士通ゼネラル…大手メーカーソフト技術者のやりがいとは
組込み・制御エンジニアの海より深い“モノづくり愛”
身のまわりの家電、自動車、ITなどの製品を見ると、マイコン制御のオンパレード、組込みソフトが大活躍している。にもかかわ…
“ヒーローエンジニア”を探せ!
ハイブリッド大衆化の先兵〜ホンダインサイト開発秘話
2009年2月に発表以来、大きな話題を呼んでいる、ホンダの新型ハイブリッド専用車「インサイト」。発売後わずか2カ月で受注2万50…
やる気、長所、労働条件…人事にウケる逆質問例を教えます!
質問を求められたときこそアピールタイム!面接逆質問集
面接時に必ずといっていいほど出てくる「最後に質問があればどうぞ」というひと言。これは疑問に思っていることを聞けるだけで…
あなたのメッセージがTech総研に載るかも