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京都から世界に羽ばたくエンジニアやサービスを生み出す!
検索できない京都の
通り名住所を解決する「ジオどす」
京都府から世界に羽ばたくエンジニアやサービスを生み出すべく開催された「京都まゆまろ杯スマホアプリコンテスト」。地図アプリやカーナビでは検索できない京都の通り名住所を検索できる検索アプリ「ジオどす」が最優秀アプリ賞に選ばれた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき)作成日:13.03.29
地域の特性を活かしたアプリ開発。京都から世界に羽ばたくエンジニアが生まれる

 京都府はマスコットキャラクターである「まゆまろ」を活用し、特に若者の文化芸術活動支援に取り組んでいる。その一環として今回開催されたのが「京都まゆまろ杯スマホアプリコンテスト」だ。「日本が誇る歴史的世界都市を擁し、多様な地理、歴史、産業を育む京都府から世界に羽ばたくエンジニアやクリエイターを生み出す」──というのがコンテストの狙いである。

 オプト、コンテンツワン、マルチメディアスクール・ウェーヴの3社が主催し、約30のIT・SNS企業やメディアが協賛企業として並ぶ。さらに、京都府と大学コンソーシアム京都がコンテストを支えていることも注目だ。3月16日の最終選考会・授賞式は、京都守護職上屋敷跡に建つ重要文化財・京都府庁旧本館で開かれ、京都府の山田啓二知事も挨拶に立った。

 地方自治体と地域の企業が連携し、地域活性化を目指す動きは昔からあるが、近年注目されているのが、IT・ソフトウェア開発を起点に据えるアプローチだ。RubyによるIT産業振興を進める松江市の事例もその一つ。オープンソースソフトウェア(OSS)を軸に地域の産業活性化や人材開発、あるいは地域ブランド発信に取り組む動きは、福岡市や三鷹市でも始まっている。

 個人や小規模組織の自由な発想を大切にして、企業のスタートアップを促すこのスタイルはOSSソフト開発の特徴を指摘したエリック・レイモンドの著書『伽藍とバザール』にちなんで、「バザール型」とも呼ばれることもある。カヤック、ランサーズなど鎌倉に本拠をもつIT企業がリーダーシップを発揮している「カマコンバレー」構想、MashUp型のアプリ開発イベントで盛り上がる福井県鯖江市も話題になっている。

山田 啓二知事
京都府 山田 啓二知事
自転車で行き来できるコンパクトシティ。東京一極集中を変えるエンジニアのコラボ
太田 幸典氏
(有)太田商店 取締役 太田 幸典氏
谷口 忠大氏
立命館大学情報理工学部 准教授
谷口 忠大氏

 今回の「京都まゆまろ杯」にもITによる地域振興という狙いがある。伝統的で閉鎖的なイメージが強い京都の産業だが、ものづくり系では実は大学発のベンチャー企業が多く生まれており、京都リサーチパークなどのインキュベーション機能も豊富だ。さらに、着物や伝統的工芸品制作で培われたデザイン力も街のDNAの一つと言えよう。映画、マンガ、アニメなどコンテンツ産業の歴史も蓄積されており、京都府・京都市は以前からコンテンツ産業振興策に取り組んできた。ものづくり系で進む産官学連携の動きを拡大し、「まゆまろ杯」をきっかけに今度はスマートフォンのアプリ開発にも広げようということなのだ。

 西陣織のネクタイメーカーで、今回の表彰式イベントに協力した太田商店の取締役・太田幸典氏は、「京都は良くも悪くも地場産業が多い。私たち繊維業界はITを採り入れることで技術革新を重ねてきたが、これからは伝統的なものづくり以外でも京都の潜在力を発信する必要がある。今回のアプリコンテストは貴重な試みだ」と評価する。

 京都から生まれるスマートフォンアプリ。その独自性や可能性に注目するのは、コンテストの審査委員長を務めた立命館大学情報理工学部准教授・谷口忠大氏だ。
「京都は東京に比べるとコンパクトにまとまっている街。私が接する情報系の学生中には、自転車で友人のアパートや寮の一室に集まり、そこで終電を気にせず開発に取り組んでいる人たちも多い。SNS企業のはてなを生んだのも、こうした街の風土と無縁ではないでしょう。日本のITやコンテンツ産業が東京に一極集中するのは決して良いことではありません。IT産業の地方分散を進めるという狙いもこのコンテストにあったのではないでしょうか」

「上ル・下ル」も検索可能。京都ならではのわかりにくさをアプリで解決

 最優秀アプリ賞に選ばれ、賞金100万円をゲットしたアプリ作品「ジオどす」は、まさに京都ならではプロダクト。「ジオどす」は、位置情報系のシステム開発を行う「ロケージング」と「ANNAI」の2社で共同開発・運営を行っている。

 京都市内では、郵便住所のほかに、一般的に「通り名」と呼ばれる、交差点を基軸にした住所表記がよく使われている。これが地方から来た人にはわかりにくい。例えば京都府庁の住所は「京都府京都市上京区下立売通新町西入ル藪内町」だが、このままではカーナビやGoogleマップでは正確な地点が示せない。コンピュータが郵便住所にしか対応していないためだ。「ジオどす」は、この通り名住所を検索可能にした世界初のサービスである。開発者向けのAPI提供サービスも行っている。

 表彰式でANNAI代表の太田垣恭子氏とCTO紀野惠氏は、こう語っている。 「京都の通り名は表現の自由度が非常に大きいので、データベース化は不可能でした。ジオどすではこれを解決するため、通り名住所に特化した専用の住所検索アルゴリズムを独自開発しました。観光客の移動やタクシーなどにも便利に使ってもらえるはず。今後はデジタル地図製作会社を通してカーナビなどへの展開も進めたい。コンテストでの受賞は今後のビジネス展開でもよい励みになります」

太田垣 恭子氏
ANNAI代表 太田垣 恭子氏
紀野 惠氏
ANNAI CTO 紀野 惠氏
「京都の通り名」が地図サイトで探せないのはなぜ?

京都の住所は3つもある

A下ルもB上ルも同じ住所

郵便番号も通り名で区別
朱 静儀さん
ゲームクリエイター 朱 静儀さん

 最終選考に残った5作品の中では、実装力、プレゼン力、ビジネスコンセプトいずれの点でも、他チームを圧倒。「最先端の位置情報技術」と「フィールド調査というアナログな手法」を組み合わせた、京都ならではの伝統と最新技術をマッシュアップし、京都を訪れる人の「不便」を解決するという実践的な姿勢が高く評価された。

 学生チームなら実装までいかずとも、企画書だけで参加できるのも、このコンテストのユニークなところ。だが、準優秀アプリ賞を獲得した「まゆまろXX〜伝説の絵馬を求めて〜」はアプリの実装まで仕上げてきた。ゲームクリエイター朱静儀さん(早大在学中)は、「私は京都を訪れるのは今回が実は初めて。むしろその新鮮な感覚を大切にしました。“まゆまろ”くんが障害物を避けながら京都の町を案内するゲーム。シンプルだからこそ、みんなに遊んでもらえるはず」と、アプリのコンセプトを語る。

地域間の技術格差は少ない。必要なのはビジネスにチャレンジするきっかけだけ
伴野 智樹氏
リクルートホールディングス・メディアテクノロジーラボ
伴野 智樹氏
審査員
IT・SNS企業の
トップが顔を揃えた審査員
下村 直仁氏
グリー 下村 直仁氏
川井 健史氏
コンテンツワン 取締役 川井 健史氏

 コンテストのゴールドスポンサーの一つ「Mashup Awards 8(MA8)」は、近年は東京に限らず全国各地でハッカソンイベントを開いている。地方のエンジニアを応援するという意味では、「まゆまろ杯」と同じ目的を持つ。会場には、MA8事務局の伴野智樹氏(リクルートホールディングス・メディアテクノロジーラボ)も姿を見せていた。
「自治体を巻き込んだ地域発信型のアプリコンテストはこれからますます活発になるでしょう。その背景には福井県鯖江市のオープンガバメントのように、OSSを採り入れ、市民参加型の情報共有の仕組みづくりに熱心な自治体が増えていることもあります。武雄市、千葉市、奈良市、福岡市の4市が共同で進めるオープンデータ活用推進協議会の動きにも注目しています。OSS活用やソフトウェア開発による地域活性化では、私たちMAの経験や私たちが全国のエンジニアと共に築いてきたプラットフォームも活用してもらえるはず」

 地域でのアプリ開発は、エンジニアの人材採用や育成という点でも注目される。審査員にはIT・SNS関連の企業も顔を揃えた。GMOインターネット代表取締役会長 兼 社長の熊谷正寿氏、クリーク・アンド・リバー代表取締役社長の井川幸広氏、CROOZ代表取締役社長の小渕宏二氏、グリー メディア事業本部 Japan第1スタジオ部長の下村直仁氏、ケイブ代表取締役社長の高野健一氏、ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏、IDCフロンティア 取締役の中山一郎氏、コロプラ代表取締役社長の馬場功淳氏、モブキャスト代表取締役社長の藪考樹氏と、社長自ら多忙なスケジュールを調整して、審査員として参加している。地域産業活性化に貢献したいという意欲と共に、それを担う地域人材の採用や育成支援に積極的な企業だ。

 昨年6月に大阪に開発拠点を立ち上げるなど全国展開を急ぐグリーの下村直仁氏は、
「インターネットサービスをつくりたいエンジニアは全国各地におり、優秀な人たちの技術的な格差もほとんどなくなっています。逆にビジネスのチャレンジ機会の点では、IT企業が集中する東京に分があるのも事実です。持続可能なビジネスとしてインターネットサービスを展開するためには、コストや収益といった面も含めてエンジニアも気を配らないといけない。そういうビジネス面も含めて、サービス作りを意識するきっかけにコンテストがなればいいと思っています」と、これからの展開に期待する。

 コンテスト主催者の一人、コンテンツワン取締役の川井健史氏は、第1回目の総括と今後の展望をこう述べている。
「京都には小粒ながらも独自性を発揮するアプリ開発企業がたくさんあります。今回のコンテストは、そこで働くエンジニアやクリエイターにあらためて刺激を与えることができたのではないでしょうか。今回は京都に本拠を持たない企業が主催者になるという変則形でしたが、来年はぜひ京都の企業にイベント主体になっていただきたい。こうしたコンテストを継続的に続けることで、地域とITのビジネス的な結びつきはより強いものになっていくと信じています」

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