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グローバル構想を先端技術で導き、サービス領域拡大を目指す
楽天の海外進出を拡大させるエンジニアたちの活躍とは
楽天が海外各地での事業展開や、海外有力企業の買収によるサービス領域拡大を進めている。グローバル構想をWeb上に実装し、魅力的なサービスとして価値を最大化し、楽天経済圏を拡大させているエンジニアの活躍を追ってみた。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/宮みゆき)作成日:12.01.20
海外有力企業の買収が大きな意味を持つ、楽天のビジネスモデル
星野 俊介氏
開発理事 リンクシェア事業 兼
アフィリエイトサービス
開発・運用課 課長
リンクシェア・ジャパン株式会社
取締役

星野 俊介氏
2003年楽天入社。最初に手掛けたのは、PHPのエンジニアとして、今となっては楽天のサービスに不可欠である楽天市場でポイントを利用した買い物ができるシステムの構築。三木谷社長から指定されたあまりの納期の短さに驚愕したが、自分の関わったシステムが立ち上がった直後、1秒間に数十ものアクセスが殺到するダイナミックさに感動。以来、様々なコミュニティ系サービスの立ち上げに関わってきた。

 先頃、楽天がカナダの電子書籍事業者であるKobo社を完全子会社とするニュースが飛び込んできた。Kobo社はカナダ、米国、英国、フランス、ドイツ、豪州など100カ国以上にわたるユーザーに電子書籍コンテンツを提供している。すでに日本国内で電子書籍事業をスタートさせていた楽天は、今回の買収で一気にグローバルプレイヤーとなったのである。

 このようなM&Aは、短期間での事業進出・拡大を可能にする反面、買収額に見合った成果が得られないケースも少なくない。だが、楽天は国内外でこのような企業買収による事業拡大を次々と成功させてきた。その背景を、リンクシェア事業の開発部門を統括する星野氏に伺った。

「グローバルでアフィリエイト広告サービスを展開する米リンクシェアは、楽天が2005年に買収した企業です。私がバイスプレジデントとしてこのアフィリエイト事業に関わることになったのは2009年からですが、担当してすぐに感じたのは楽天だけの大きなアドバンテージでした。

 それは、リンクシェアと他の楽天のECサービスが、ユーザーや参画企業を共有することで、大きな相乗効果が見込めることです。例えば、楽天市場の流通総額は2011年12月に1兆円を超えましたが、それを支えているのは数多くの出店企業様です。その店舗様の利益につながるアフィリエイトサービスを提供するだけでも、楽天全体にとっては大きな意味があるのですね。リンクシェア以外の企業買収で始まったサービスも、同様なアドバンテージを得ているはずです。ただ、そうした仕組みを創り上げるのは簡単なことではありません。膨大なデータを扱う楽天の巨大システムとリンクし、ユーザーに快適なアフィリエイト環境を提供するのはエンジニアたちの力です」

グローバルチームによる技術開発で、システムを絶え間なくアップデート

 星野氏が言うように、楽天の巨大な既存サービスの存在が新事業の大きなアドバンテージになる反面、Web上でスムーズにサービスを連携させていくためのシステムの開発は、容易ではないことが想像できる。そして、楽天はこの開発体制の確立に並々ならぬ力を注いでいる。

「元々、楽天は技術開発に関しては自前主義の方針を採っています。理由は、最先端のWebサービスを自在に展開していくには、自ら技術を持ってハンドリングしなければならないという考えがあるからです。リンクシェアの開発体制も、買収時のままではなく、今日まで強化を続けてきました。

 現在では国内の20名のエンジニアによるチームがフロント側の設計を担い、サンフランシスコの15名のエンジニアによるチームが、基盤側を担当。共同で開発テーマを次々にこなしています。今は、海外各国どこでも展開しやすい共通のグローバルプラットフォームの開発を進めています。役割分担はありますが、エンジニア同士のコミュニケーションは電話やメールで頻繁に行われます。最近はみんな、Skypeを使い倒しています。私はサンフランシスコに滞在する日の方が多いですし、チーフクラスのエンジニアは太平洋を挟んで行き来することも多いですね」

 サンフランシスコの開発チームのマネジメントを任された当初は、戸惑いもあったと言う星野氏。他社の事例では、買収したまでは良かったものの、マネジメントが上手くいかず、優秀なエンジニアが離反・退職するケースもあると言われる海外開発拠点の運営。それを乗り越えられたのは、楽天の理念が理解されたからだろうと答える。

Koboの電子書籍リーダー端末・タブレット
Koboの電子書籍リーダー端末・タブレット
星野 俊介氏

「まず直面したのは価値観の違いです。一例として、日本のエンジニアはきちんと事前準備を行い、スケジュールを定めて開発をスタートさせようとしますが、米国のエンジニアはすぐに走り始めようとします。ベストエフォートで開発に臨むのです。結果的に米国式の方が早く成果が出るケースも少なくないのですが、他のサービスとの連携スキームなどがありますから、やはり見通しは立てておきたい。

 そこで、私は彼らに、楽天が世界一のインターネットサービス企業を目指していること、そのために多様なサービスをスピーディーに拡張し続けていること。その原動力は先端技術に挑むエンジニアだということを訴えました。そこに共感してくれたからこそ、今では彼らは自分たちのスタイルに常にこだわらず、こちらの指示を尊重してくれるようになりました」

海外サービス展開≒グローバルシステム開発というやりがい
刀根 義彰氏
国際市場課
RMSグループ サブマネージャー

刀根 義彰氏
2007年楽天入社。前職は中堅ソフトウェア開発会社のSEで、大手SIerに常駐。Javaで社内システム開発を担っていた。自社サービスを自前で開発、運用している楽天に発展性を感じて転職したが、これほど技術指向の強い会社だとは知らなかったそうで、ビッグデータを扱う高い技術水準に驚いたと言う。自ら開発したシステムを直接触れられることや、日本での経験をベースに加速するグローバル展開、立ち上げに自ら考えて臨む楽天の開発環境でエンジニアとしての成長を感じている。

 楽天は、リンクシェアやKoboのような買収による手法で海外進出を果たす一方、国内で成功済の既存サービスの海外展開も続々と行っている。既に台湾、中国、インドネシアでは自前でEC事業を立ち上げ、米国、ヨーロッパ、タイでは買収によりEC事業をスタート。刀根氏はこのうち台湾、中国、インドネシアでの楽天市場の立ち上げや開発運用に関わった。それは、次の三つのポイントから新たなチャレンジだったと同氏は語る。

「私は日本の楽天市場での開発運用を経て、2009年6月から国際担当を任されています。最初に携わったのは台湾の楽天市場の開発運用です。楽天がグローバル展開を加速していく上で、最初に国際展開を果たした台湾楽天市場のさらなる成長が急務でした。そのため、着任早々から、スピーディな対応が求められました。

 もう一つのチャレンジは、現地の状況と日本との違いを乗り越えることでした。例えば、インドネシアの場合はエスクローサービス(決済代行会社を介した取引の安全性を保証するためのサービス)と連携した形で決済手段を提供する必要がありました。海外では、不正カード利用や商品が届かないなどのトラブルが日本に比べて圧倒的に多く、セキュリティ、安全性に対しては非常にシビアです。店舗もユーザーも安心できるサービスでなければ買い物しませんし、取引も成立しません。こうした壁を乗り越えていかなければならない国際プロジェクトは、何よりも現地の商習慣の違いや独自のEC文化に対する理解が不可欠なのです。そのために、私はまず現地スタッフとのコミュニケーションを通して現地事情の理解を進めました。その次に出店いただく企業やユーザーのニーズにまで視野を広げていったのです。

 三番目のチャレンジとしては、現地の事業サイドからの様々な要求への対応です。とにかく思いついた機能を何とか実装してくれと迫ってくる(笑)。それを受け止めて、是非を判断して、開発側として迅速に返答しなければなりません。日本のアーキテクチャをベースにしながらも、現地課題の吸収を自分たちで考え、アジャイル開発などのトレンド技術を取入れ、将来を見据えながらカスタマイズしていくのは面白かったですね。

 このような少数精鋭で大規模サービスを構築・運用する国際プロジェクトを経験することにより、自分たちで必要なタスクを決め、プランニングし、常に最善・最適は何かを考えるスキルが磨かれたと思います。また、その中で新たに開発したプログラムやプラットフォームが、IDなどを共通化した世界中のサービスを連携させるグローバル基盤に発展するかもしれません。エンジニアにとってはとても刺激的なミッションですね」

世界に通用するエンジニアに至る環境を持った楽天

 以上のように、楽天のグローバル展開ではエンジニアが重要な役割を果たしている。グローバル事業の成否を決するのはエンジニア次第にも見えるほどだ。では、日本のエンジニアは世界的に見てもトップクラスなのだろうか。そして、どのようなエンジニアが通用するのだろうか。前出の星野氏は次のように語る。

「日本のエンジニアを語る前に、サンフランシスコのエンジニアたちと接して感心したのは、向こうのエンジニアたちは全体的に日々の勉強を惜しんでいないということです。何歳になっても、自分のスキルを向上する手を緩めていないのです。米国ではエンジニアのステイタスが高く、社会的に上級職だからでしょう。プライドも高いですよ。それをキープしていくために、勉強し続けるのですね。それだけに、みんな優秀ですよ。

 だからと言って、日本のエンジニア全員が勉強しないと嘆いているのではありません。少なくとも楽天のエンジニアたちは新しい技術の吸収に貪欲で、米国のエンジニアたちと同様に高いスキルとそれに根差したプライドを持っています。なにより、彼らが新しい技術に挑んでいるのは、それらを使うステージがあるからこそです。

 最近では、膨大なトラフィックに対応し、蓄積された大量のデータを解析し、リアルタイムに結果を表示し、快適なEC環境を提供していくための分散処理技術などが社内ではホットですね。楽天のサービス全体のクラウド化も進めています。オープンソース技術への関わりも積極的ですよ」

 また、星野氏は海外のエンジニアと接することで、日本のエンジニア固有の強みも再発見したと言う。

「それはサービスを維持していく能力が高いと言うことです。楽天のEC事業には、アベイラビリティの高いシステムが不可欠です。そのためには運用を強く意識した開発をしなければなりませんが、日本のエンジニアはこの点でかなり優れているようです。楽天のシステムを構築するにあたり、どの国に出て行っても、活躍できるのではないでしょうか」

Rakuten Taiwan
Rakuten Taiwan
Rakuten China
Rakuten China
Rakuten Indonesia
Rakuten Indonesia

 楽天は今、積極的な海外展開を後押しするため開発部門の強化を進めている。それに伴ってエンジニアの中途採用を拡大している。入社すると楽天が競争相手に想定している企業が、世界有数のWebサービス企業であることに気づかされることだろう。そして、ライバル企業に勝っていくために、自前で様々な領域の技術開発を独自に進めていることを目の当たりにするはずだ。先端技術を磨き、海外に通用するエンジニアとしてステージに立ちたいなら、格好の企業と言えるだろう。

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