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従来エンジニアの職場といえば男性が多く、IT分野も例外ではなかった。しかし、その状況が次第に変わりつつある。WEBサービスを次々と生み出しているサイバーエージェントも、女性エンジニアの採用を積極化することを宣言。その真意を同社に直撃取材した。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:12.02.24
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エンジニアを積極採用しているサイバーエージェントでは、女性エンジニアが長期に渡って安心して働ける環境を創るべく、女性エンジニアのスキル・環境向上を目的とした活性化プロジェクトを実施している。女性エンジニアの視点から、結婚・出産・育児などのライフイベントにあわせた柔軟な働き方を提供し、技術スキル向上や環境づくりを行うプロジェクトだ。いずれは女性のみで構成されるエンジニア組織の設立も検討されている。
ネットビジネス総合事業本部 技術人事局 技術人事グループ 齋藤 麻衣子さん |
「サイバーエージェントの主力事業である『Ameba』事業、これから100のサービスを展開する予定の新規事業においても、女性向けのサービスは数多くあります。そうしたサービスに、女性ならではのユーザー視点や感性を多く取り入れていきたいと考えています。また、当社はもともと国籍、言語、性別などにこだわらないフラットな組織作りを進めていきたいという希望が強く、それが女性エンジニアの採用を強化する背景になっています」 さまざまな携帯情報端末が普及し、女性もそれらを積極的に活用する時代。特にSNSなど、ネットワーク上のサービスにおいては、女性ユーザーを意識したもの、あるいは女性専用のものも登場するようになっている。ユーザーに女性が多いのであれば、その作り手にも女性の活躍が期待される。ユーザーとしてサービスに触れながら、「もっとこういうものが欲しい、むしろ自分でサービスを作りたい!」という女性エンジニアが出てくるのは当然のことと言える。
「ネットビジネス総合事業本部では2年間で200名のエンジニア・クリエイターの採用を予定していますが、女性の採用も積極的に行っていこうと思っています」(斎藤さん) |
では、実際にサイバーエージェントに入社した女性エンジニアはどのように働いているのだろうか。その様子を探るため、最近転職し、新規事業のソーシャル・アプリケーション開発に携わっている2人の女性エンジニアに話を聞いてみた。 まずは永谷広美さん。現在、ネットビジネス事業本部のインキュベーション室で、女性向けのスマートフォンアプリ開発のプロジェクトに参加。今までの経験を活かし、Android用アプリの作成に携わっている。 「まだ、あまり詳細はお話できないのですが(笑)、ユーザー同士のコミュニケーションを主体としたスマートフォンのサービスを開発しています。ファッションやメイクなど、女性特有のテーマはたくさんあるので、将来的には様々な機能を取り入れ、コミュニケーションプラットフォームになれるようなサービスにしていけたらと考えています」(永谷さん)
永谷さんがサイバーエージェントに転職し、このチームに配属されたのは2011年12月のこと。当時、プロジェクトは始まったばかりで、チームにはプロデューサーが1人のみで、立ち上げから関わることができた。現在は仕様固めも終盤となっており、モックアップの作成に入っている。これから本格的な開発がスタートする予定だ。 |
ネットビジネス総合事業本部 インキュベーション室 エンジニア 永谷 広美さん |
その後、新メンバーの入社により、プロジェクトチームは体制が拡充されてきており、現在はプロデューサー、デザイナー、アプリ側を担当する永谷さんに加え、サーバ側、マークアップ担当と、女性比率が高いチーム構成になっている。そのサーバ側開発を担当しているのが、今年1月1日付で転職してきた山口舞さんだ。山口さんから見たチームの仕事振りを聞いた。
「まずは朝、チームでミーティングを行い、各自の進捗など報告した上で、それぞれの担当ごとに作業を進めて行きます。私はサーバ側の担当で、特にデータベースの設計を中心に行っています。アプリ自体はまだ形になっていないのですが、大まかな機能の仕様は固まっているので、それをもとに将来のデータ量などを推定し、負荷を見込んだサーバ構成やミドルウェアの選定、画像管理の手法の検討などを行っています。開発はこれから本格化していきますので、できるだけ前倒しに作業を進めるようにしています」(山口さん)
ネットビジネス事業総合本部 インキュベーション室 エンジニア 山口 舞さん |
前職ではSEとしてAndroidアプリ開発の経験を積み、さらにその技術を深め、磨いていきたいと、サイバーエージェントに転職した永谷さん。サイバーエージェントを選んだのは、
プロジェクトに最初から関わり、どんどん自分の意見も反映させていきたいと考えたのは、山口さんも同様だ。前職ではスポーツ関連の情報サイト構築を手掛け、当初はプログラミング、後にはチームリーダーとしてプロジェクトの立ち上げやメンバー管理なども任されていた。 |
先に述べたように、今日、女性ユーザーをターゲットとしたサービスが増えている。特にスマートフォンの登場と普及が、それに拍車を掛けているように思える。
「最近は、電車に乗ってふと周りを見回しても、ソーシャルアプリを使っている女性が多い印象はありますね」(永谷さん)
「特にスマートフォンは、フィーチャーフォンに比べ表現力が上がっているため、女性の目から見て“カワイイ”と思える表現も実現しやすい。これも普及の一因になっているような気がします」(山口さん)
永谷さん、山口さんともに、これまでは圧倒的に男性が多い環境で働いてきた。女性の多いサイバーエージェントの環境は2人にとっても新鮮だ。社内には「美容ドリンク」が常設されていたり、「護身術」のワークショップが開催されたりしている。
だからといって、「『女性だから早く帰りなさい』と仕事が制限される心配は無用です(笑)。やるべきときには男女関係なく働いていますし、そういう意味での女性特別視はありません」(永谷さん)
「女性だからどうこうという意識をしたことはありません。あくまでも自然体でやっていきたいと思っています」(山口さん)と、これからのスタンスを語る。
女性向けサービス構築にも積極的なサイバーエージェントで、新たに学ぶこと、やってみたいことも多い。
「サイバーエージェントが展開している女性向けアプリの中で、特に印象が強いのは、ファッションフォト共有アプリ『girls pic』。デザインも凝っていて、本当にかわいらしいアプリです。ボタンの位置なども、今後いろいろ参考にさせてもらおうと思っています。女性はネイルをしていると細かいボタン操作はやりづらい。そうした仕様も考えてインタフェースの設計をしないといけない。一方で、ハード自体は小さいものが『カワイイ』と言われたりするので、その兼ね合いのバランスも考えたりしています」(永谷さん)
もともと女性は友達とのつながりを楽しむ社交性が強いといわれる。それだけSNSとの親和性は高いと言えるが、そこにこんな新しいサービスを展開してはどうかと構想しているのが山口さん。
「私はお酒が好きなのですが、女性は結婚して、また子どももできるとなかなか外に食事や飲みには行けなくなってしまいます。そんな女性たちに向けて、例えば『家飲みSNS』などというものがあれば、とても楽しいと思うのです。家にいながら、お互いに乾杯し合い、おつまみを自慢し合ったりするなど。そんな新サービスも立ち上げてみたいと思っています」
新サービスのアイデアを社内の女性たちとワイワイ話ながら詰めていけたらいい。さらに、社外の女性エンジニアとの交流にも興味があるという。「面白いIT女子会があったらぜひ参加したいです」と2人は口を揃える。女性エンジニアの活躍を積極的にサポートするサイバーエージェント。女性のライフスタイルやユーザー心理をよく理解している女性エンジニアが開発する、女性たちにとって使いやすいソーシャルなサービスが、同社から次々に生まれてくることを期待したい。
大学は情報科学部でインタラクティブメディアなどを専攻。プログラミング言語はC、Javaを習得。卒業後、大手SIerに就職し、SEの経験が長いが、100万ユーザーを獲得したAndroid用ゲームアプリの開発経験もある。Androidの技術をもっと深めたいと転職を決意。2011年12月にサイバーエージェントに転職。
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大学では金融工学を専攻。ゼミの中では女性は一人だけ。プログラミングに興味をもち、卒業後、派遣の形で主にエンジニアとして働く。その後インターネットサービス企業に転職し、7年間スポーツ情報配信サイト構築に従事。LAMP環境での開発、サーバサイドのミドルウェアの設計・導入などを経験。2012年1月サイバーエージェントに転職。
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