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震災から1年、FEJの発足でAndroidアプリ開発が加速!

地元エンジニアが築く
強固なネットワークが東北を救う

東日本大震災から1年。震災を機に設立されたFandroid East Japan(FEJ)は、Androidアプリ開発を通して、東北振興の起爆剤となるべく現在、さらにその活動範囲を大きく広げている。今回、FEJで活動している4人の東北エンジニアによる座談会を開催。彼らはFEJの活動によって何が変わったのか語ってもらった。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:12.03.13

震災から1年。4人のFEJメンバーが語る、活動の軌跡


今回の参加メンバー(左から)種沢氏、瀬上氏、岡本氏、辺見氏

昨年5月に誕生したFEJは、鎌倉を拠点に展開している「面白法人カヤック」のサポートの元に、Android向けアプリ開発を軸に東北に新たな新産業を創出し、震災復興に貢献することを目的に活動を行ってきた(※開設の詳しい経緯についてはこちらを参照)。
震災から1年が経過しようとしている中で現在、FEJの会員数は当初の40名から100名規模に、またこれまでリリースしたアプリ数は20を超える。
今回はFEJの活動に参加する東北エンジニアたちにスポットを当てる。FEJの活動を通して何が変わり、何ができるようになったのかを探るため、4人のFEJメンバーに集まっていただき、それぞれの立場からFEJにおけるこれまでの活動を振り返ってもらった。

今回参加したFEJメンバー

辺見 直哉氏(株式会社ディー・エム・ピー)
Javaや.net、COBOLなどによる業務系アプリ開発を中心に活躍。数年前から仙台のエンジニア仲間と「SRIA PROJECTS」という、スマホ向けアプリ開発を自由に行うグループを立ち上げ活動中。

岡本 信也氏(株式会社サン・コンピュータ)
昨年末に設立されたFEJ青森支部の責任者。長年、東京で主に建設業界向けの業務アプリ開発を手始めに、その後ECサイト構築などオープン系に移行。昨年、地元の八戸に戻りFEJ青森支部立ち上げに奔走する。

種沢 和恵氏(アンデックス株式会社)
大学では趣味レベルでJavaやRubyによる簡単なアプリを作っていた。昨年、震災による宮城県の人材育成支援制度の一環で現職に入社。その後、研修の一つとしてFEJの活動に参加する。

瀬上 祐匡氏(株式会社ユーメディア)
20年近くに渡り、仙台の印刷企業に勤務しながら、学校や企業のWebサイトの構築や、コンテンツの受託開発を担当してきた。FEJでは、最初の立ち上げメンバーの一人として活動している。

FEJでの、それぞれの活動について




辺見:基本的にはイベントで毎回、15〜20名程度集まってブレストをやりますね。例えば「家電にAndroidを搭載して、主婦の労働時間単価を表示することで“主婦”というわかりにくい労働単価や価値を可視化する」みたいなアイデアを紙に書いて壁に貼り付けていきます。面白ければ開発を進めてアプリとしてリリースしていくことになります。私の場合、昨年ブレストしたアイデアをベースに「笛モールス」というアプリをリリースしました。

岡本:長年東京で仕事をしていて去年、地元の八戸に戻ったのですがエンジニア同士の交流が全くないんですね。その中でFEJの存在を知り、ぜひ八戸や青森にもFEJの活動を広げていくことで、エンジニア同士の交流を活発にしたいという思いから、青森支部設立の活動を行い、開設した今は活動を広げるべく、青森県内各地で講演活動などを行っています。

種沢:震災によって仕事が減ったことで、会社としてAndroidアプリを開発しようという話になったのですが、iPhoneと違って端末の種類が多いAndroidの開発はコストが高く、厳しいというところがスタートでした。そこでFEJの会議に参加することで、アイデアベースで考えていたAndroidアプリを形にできないか模索していました。

瀬上:実は私も会社が印刷業ということもあって、主に地元情報誌の制作・発行を行っていたのですがこのご時世で、スマートフォン向けアプリも作りたいという流れに。でも種沢さんのところと同じく、新規で開発するにはコストがかかるためにちゅうちょしていたんです。そこでFEJに参加することで、その課題をクリアできないか模索しようとしました。

FEJによってもたらされたメリットとは?





辺見:仙台には以前から、エンジニアのコミュニティがいくつか存在していて、私自身も「SRIA PROJECTS」という、スマホ向けアプリ開発を自由に行うグループを立ち上げて活動していました。しかしFEJによって規模が大きくなり、これまで趣味レベルで開発していたものが、ビジネスとして勝負できるアプリをリリースできる環境を得たことが大きなメリット。それによって、開発側のモチベーションも大きく変わりましたね。

岡本:私の場合、実は自分の会社で昨年、青森の緊急雇用対策人材育成の一環で10名の若者を採用したのですが、エンジニアとしての経験は浅い。そこでFEJの場を活用することでアプリ開発の勉強をしたり、仙台のエンジニアと交流を図ることで刺激を受けたことで、メンバーの開発意欲が俄然増しましたね。またFEJを通して新しい開発案件を受注できたり、八戸にいながらエンジニアとして幅広い活動ができるようになったことは、画期的なことです。

種沢:先ほど話したように、Androidアプリ開発の糸口を見つける目的でFEJに参加したのですが、私たちが作ろうとしていた仙台の地元の店舗情報とGPS機能を活用したアプリに、瀬上さんの企業が協力してくれることになったんです。

瀬上:もともとうちは地元情報誌を発行していたことで、店舗情報に関するノウハウを提供できたんですね。また逆に私からすれば、種沢さんの企業が持っていた、GPS機能やMAP技術を利用させてもらうことで、自分のたちの強みを生かしたアプリができると思い、FEJでの出会いをきっかけにしてすぐに話をすすめ、去年末に「S-style」というアプリをリリースできたのです。

種沢:これもFEJによってこれまでなかった「横のつながり」ができたことで、双方の思いがこんなに早く実現できた大きなメリットだと思います。

※左画像:FEJメンバーが開発&リリースしたAndroidアプリ。上から「笛モールス」「S-style」「もっちりくん」「飲みにケーション」注:「もっちりくん」は、iOSアプリです。(現在Android版を開発中)
 

FEJの活動を通して実現したいこと


瀬上:今回の震災で私も含め、東北のIT企業の仕事は大きく減少しました。その中で今回のFEJでの活動を通して、東北復興のためには魅力的なコンテンツを生み出すことが、今後の生き残る道だと感じています。ぜひ今後、さらにFEJの活動を広げつつ、そこにつながりを持った多くの企業・エンジニアの仕事が増えることを目指していきたいですね。

種沢:自分たちだけで新たな産業を生み出していくのは、現時点ではまだまだ難しい部分があります。そういう意味でもっといろいろな企業との連携を広げていくことこそ、FEJの存在価値があると思うんです。FEJには自分の作ったアプリや考えを自由に発表できる機会があるのが大きな魅力。そのチャンスを大いに生かしながら、さまざまなアプリを今後も作っていきたいと思います。

岡本:実は自分の周りにも、上京した青森出身のエンジニアの中には、本当は地元に戻って働きたいと考えている人も結構な割合でいます。そうしたエンジニアの思いを受け止めるためには、まず設立したばかりの青森支部を早く軌道に乗せて、安定的に開発案件が舞い込んでくる体制にしたいですね。そして今こそ、企業や地域の垣根を超えて青森が一つになることで、「青森でも面白い開発ができるんだ」と思われるように活性化させていきたいと思います。

辺見:FEJによって、ただ面白いアプリを作ればいいというのではあまり意味がないと思うんです。「東京ではできない面白いアプリを生み出せる」体制に持っていくことこそ、FEJの真の目標だと思います。一方、私の故郷である福島は今、どんどん人が流出して厳しい状況に置かれています。そこでFEJの活動を通して、再び人が福島に集まって活躍できる体制に持っていくことが、個人的な思いとして強くあります。

今年一般社団法人化。秋田・福島など他支部の設立も視野に活動範囲をさらに広げていく




今後のFEJの展望について、FEJ運営メンバーである佐藤氏は、「まず一般社団法人化することで、より多くの方面からの受け皿となる体制作りを進めていきます。また昨年末の青森支部を皮切りに、秋田や福島でも支部設立の動きがあります」と、活動範囲の広げていくことを目指すと語る。

また今後はAndroidアプリを軸に、例えば伝統工芸や農業など、東北ならではの産業とコラボレーションを積極的に仕掛けていくことで、さらに新しい産業や雇用を東北地方に生み出そうとしている。
「ここ最近、FEJで研究開発を進めている脳波関連技術において測定機器を購入したり、SDKを開発したことで、開発環境がさらに改善しました。最終的な目標としては、東北のエンジニア・クリエイターの仕事を増やし、活躍してもらうことで東北地域全体に利益を還元する仕組みを、FEJによって構築できたらと考えています」(佐藤氏)

FEJが誕生してまだ1年足らずの短い期間で、今回4名のエンジニアが語るようにネットワークが広がることで新たなAndropidアプリが作られるなど、これまでできなかったことができるようになることで東北に新たな可能性を生み出している。今後も続々と、東北発のAndroidアプリが登場し、目にする機会も多くなるはずだ。
FEJの活動に関しては、今後も定期的にレポートしていきたい。

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