リアル勉強会潜入!最新技術に遭遇せよ Vol.2 |
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無料でみっちり24時間! |
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今秋からある企業がスタートさせた勉強会。それはこれからITエンジニアになろうとする若手を対象に、全8回24時間のJava講座を無料で開催するというものだ。なぜそこまでして勉強会を開催するのか。その目的と開催の背景について探ってみた。 (総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:11.11.15
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【今回のリアル勉強会】 1回約3時間×全8回のJava勉強会を無料でスタート
今回紹介企業 |
中小企業向けの自社開発クラウドサービスの提供、およびITエンジニアの人材派遣を展開している株式会社ラクス。同社が今年10月から新たにスタートさせた勉強会が、今回紹介するテーマだ。その勉強会のメインテーマは「ITエンジニア育成プロジェクト」。 |
【勉強会開催の目的】逼迫するITエンジニア不足解消の最後の切り札
株式会社ラクス
HR事業部
コーディネート課 マネジャー
後 信也氏
「10月からスタートしたITエンジニア育成プロジェクトは、これからITエンジニアを目指す異業種の方や学生を対象に、特にWeb開発の主要言語であるJavaの基礎知識から、実際にJavaを使用して簡単なアプリを開発する実習まで週1回3時間×全8回のプログラムで開催しています」と語るのは、今回の勉強会を主催する株式会社ラクスの責任者である後(うしろ)氏。
先ほど触れたようにこの勉強会、普通の有料スクールと異なり無料で受講できる点にまず、大きな特徴がある。その理由について、後氏はIT業界が抱える大きな問題を理由に挙げる。
「IT業界、特にWebアプリ開発者の人材不足がここ1〜2年で顕著になってきました。当社は自社開発のクラウドサービスを提供する傍ら、ITエンジニアをクライアントに派遣する事業も展開しているのですが、クライアントからの人材ニーズが日に日に増している状況。しかし即戦力となりうるエンジニアは必ずしも多いわけではないため、どうにかして人材を増やしていかなければならない。そうなった時『当社で人材を育成してみよう』というアイデアが自然と浮かんだことで、今回の勉強会を開催するに至りました。そのため、勉強会を事業としてではなく、将来の人材育成のための場として提供するために、今回は無料でトライしてみることにしたのです」
慢性的な人材不足を解消するための切り札として、ラクスが先行投資的な位置づけで今回、無料の勉強会の開催に踏み切ったのだ。
そこで10月から始まった勉強会にはITエンジニアを目指す20代前半〜中盤の方を中心に200名の応募があり、30名を抽選。1クラス定員10名×3クラス分を、それぞれ週1回(1コマ80分×2コマ)、全8回を開催していくことになった。
【勉強会の特徴1】以前スクール事業を展開していたノウハウを凝縮した独自のプログラムを提供
株式会社ラクス
HR事業部
コーディネート課 リーダー
伊賀将之氏
では勉強会の中身について、講師を担当している伊賀氏に伺った。
「初心者が対象になるので、Javaとは何か、という本当の基礎から教えていきます。基礎からの内容ですが資格取得のための知識というより、実際に実務でプログラムが書けるようになるため、手を動かす演習課題にも時間を割くようにしています。全8回のうちの後半は、実際にJavaで簡単なアプリを作る実習を予定。今回はショッピングサイトによくある『ショッピングカート』機能をJavaで作ることを課題にして、このコースが終わるころには必要最低限のことは身につくはずです」
これだけを紹介すると、普通のJava講習会とあまり変わらない。しかし実際に勉強会を受けている受講者からは、特に勉強会で使用しているテキストに対して非常に好評を得ているという。そのテキスト、実は市販のものではなくラクス独自のもの。しかも今回の勉強会のために急遽作られたわけではなく、10年以上の改善活動の積み重ねによって作り上げられたものだ。
「実は以前、当社ではスクール事業を運営していて、受講料を頂いて未経験者の方に授業を行っていました。その時使用していたテキストがベースになっています。その後、スクール事業はなくなりましたが当社の新人研修で引き続き使用して、毎年のように中身をブラッシュアップしてよりわかりやすいテキストに改善。10年以上に渡る改善によって、初心者の方でも非常にわかりやすいテキストになっていると自負しています」
実はこのテキスト、全部で3冊あり、今回の勉強会では1冊目だけを使用する。しかし受講者からは「2冊目、3冊目も授業をしてほしい」という要望が早くも上がっているそうだ。
【勉強会の特徴2】休んだ人や自宅での開発環境構築などをきめ細かくサポート
勉強会の開催風景。1回10人を定員として、約3時間に渡りJavaに関する基本的な知識や実習を教えていく
またテキストだけでなく、受講者に対するサポートにも全力で取り組んでいるという。
休んだ人には今日、どんな授業を行ったのかを伝えたり、また実際に自宅でJavaを使ってアプリを作りたい人には、開発環境の構築をサポートするなど、できる限りのことを講師陣が率先して取り組んでいる。
「もし受講者に『つまらない』『あまり意味がない』と捉えられてしまったら、という危機感が私たちにはあります。この勉強会の目的は、一人でも多くの人にITエンジニアとして、Web業界で活躍してほしいという私たちの切なる願いが込められています」
プログラムの楽しさや、アプリを作るやりがいを感じてほしい。そして逼迫するITエンジニア不足を、今後のIT・Web業界の発展のためになんとか解消したい。そうした強い決意があるからこそ無料で、今回の勉強会が直接的な収益につながらないにもかかわらず、手間暇かけて準備をしたり、きめ細かくサポートすることができるのかもしれない。
また今回、初心者の方を対象にしつつも、中にはVBAやCの経験があったり、プログラミングの理解度やセンス・素養の高い人もいるため、そうした可能性を持った若い人に出会えたことも、勉強会を開催したことによる大きなメリットだという。
【今後の展望】来年は1月から開催。来期以降も継続していきたい
次回開催は2012年1月。すでに募集を開始している
今後の予定について、後氏は「現時点では、年明け1月から今回と同じプログラムで開催する予定で、現在募集をしているところです。ただし来年度以降に関しては開催するかどうかは未定」だという。
しかし、ITエンジニアを本気で目指す受講生が、真剣にJavaを習得するために取り組んでいる姿を垣間見るだけで、今回の勉強会を開催した意義は大きいようだ。そして今回の勉強会を主催したラクスにとっても、この中から数人でも社員としてごく近い将来、活躍してくれることを切望している。
Webアプリ開発者が圧倒的に不足している今、エンジニア獲得競争も激しくなる一方。その中で今回紹介した取り組みは、数年先を見越したひとつの解決策として業界にとっても、そしてこれからエンジニアを目指す人にとっても、小さくとも大きな一歩になるはずだ。
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