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エンジニア給与知っ得WAVE Vol.
106
エンジニアの転職後年収は
平均3%増、半数以上が満足
東日本大震災の影響を脱しつつある日本の産業界。中途採用も大きく動き出している。転職活動を行うエンジニアの関心のコアにあるのは、やはり転職後の年収変化。2010年7月以降に転職したエンジニア108人の調査からその相場観を紹介しよう。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:11.11.11
転職理由──「会社や業界の将来に不安を感じた」(47%)

 Tech総研では、2010年7月〜2011年9月に転職したエンジニア(25〜35歳)にアンケートを行い、108人の回答を得た。今回が初めての転職という人が13%いる一方で、4回以上という人も12%いる。過去の転職は「1回」つまり今回が2回目という人が最も多く34%だった。

 転職理由については、最も多いのが「会社や業界の将来に不安を感じた」(47%)というものだ。ついで「会社からの評価や給与が上がらない、下がった」(42%)が続く。「会社の人間関係に不満を感じた」(26%)、「休日数、残業、勤務時間に不満があった」(23%)という理由も決して少ない数字ではない。(DATA1)

DATA1 転職しようと思った理由は何?
DATA1 転職しようと思った理由は何?

 これらは好不況に限らず、必ず転職理由に挙げられるもの。ただ、業種や企業によって事業の明暗がはっきりしている最近の経済情勢では、企業の将来性に不安を感じる人が多くなるのは当然だろう。また、好況業種とはいえ給料が右肩上がりに増えないのも最近の特徴。成果主義型の評価・報酬が一般的となっている現在では、評価への不満が転職の引き金となることはよくあることだ。

 もちろん実際はこうしたネガティブ要因だけでなく、「そろそろキャリアアップを考えて」とか「結婚して子どもが産まれるので」とか「実家に戻る必要が出てきたため」などの、より個人的な理由も含まれると思われるが、今回のアンケートでは対象項目には含めていない。

「川上から川下へ」企業の関心は動いている?

 同じ技術系の転職とはいえ、仕事の中味が変わるかどうかは重要なところ。異業種・異職種への転職は、同業種・同職種の転職に比べても、転職活動は容易ではない。とはいえ、そうしたドラスティックな転換によって自分のキャリアの道を開くという考え方もある。またこの職種転換、業種転換の様子は、マクロにみれば、最近の人気の仕事を知るバロメーターにもなる。

 今回はアンケート対象者の転職前・転職後の職種・業種の割合の変化に注目した。業種の変化で注目したいのは「インターネット関連」だ。転職前にその業種にいた人はゼロだったが、転職後は2%に増えている。変化率は小さいとはいうものの、この変化の背景には最近のソーシャルアプリ業界の活発な求人活動などもあるものと見られる。(DATA2)

 ほかに転職後に増えているのが「半導体・電子・電気部品メーカー」「機械関連メーカー」「化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー」など。反対に減らしているのが「ソフトウェア・情報処理系」「サービス系」などだ。

 職種の変化では、「機械・機構設計」「セールスエンジニア」「サービスエンジニア・FAE」での増加、「研究開発」での減少に注目したい。製品がなかなか売れない時代には、本当はイノベーションこそが求められるのだが、ゼロからの研究開発には時間もお金もかかる。勢い、現在ある製品をいかに売るかということに企業の関心は向けられる。つまり川上よりは川下、研究開発工程よりは、より市場に近いフィールドへと人材を投入したくなるのだ。もしかすると企業のそうした関心が今回のアンケートの転職結果には出ているのかもしれない。(DATA2)

DATA2 転職前・転職後の職種・業種に変化はあった?
会社業種 転職前 転職後
ソフトウェア・情報処理系 48 40
通信系 4 5
インターネット関連系 0 2
その他IT・通信系 4 4
総合電機メーカー 1 0
コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 2 2
半導体・電子・電気部品メーカー 3 5
家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 2 2
精密機器・計測機器メーカー 2 3
重電・産業用電気機器メーカー 2 2
機械関連メーカー 1 10
自動車・輸送機器メーカー 9 8
医薬品・化粧品メーカー 0 1
プラント・設備メーカー 1 0
その他メーカー電気・電子・機械系 2 1
化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 4 7
鉄鋼・金属メーカー 1 2
住宅・建材・エクステリアメーカー 0 1
医療機器メーカー 0 1
食料品メーカー 1 0
その他メーカー 2 1
商社系電気・電子・機械系 1 2
流通・小売系 2 2
サービス系 7 3
マスコミ系 1 1
金融・保険系 1 0
不動産・建設系 0 1
その他 7 2
職種 転職前 転職後
コンサルタント・アナリスト・プリセールス 1 3
プロジェクトマネジャー 4 3
アプリケーション開発(Web・オープン) 25 21
基盤・インフラ 5 4
アプリケーション開発(制御) 4 4
運用・監視・テクニカルサポート 6 6
アプリケーション開発(汎用機) 4 4
社内SE 7 9
アプリケーション開発(パッケージソフト) 3 4
研究・特許・品質管理ほか 5 6
その他のIT系職種 3 0
研究開発 12 8
光学技術 0 1
回路設計 4 5
制御設計(ハード) 0 1
機械・機構設計 1 4
制御設計(ソフト) 3 2
生産技術 2 2
製造技術 5 3
生産管理 1 1
品質管理 3 3
セールスエンジニア 0 3
サービスエンジニア・FAE 5 7
素材、半導体素材、化成品関連 0 1
その他の電気・電子・素材系職種 5 3
転職活動は半年が目安。ネットメディアは決め手になるか

 転職活動を始めてから実際に転職先に入社するまでの期間はどのぐらいかかっているのだろう。不況期には一般に、エントリー(応募)から内定までの期間は延びる傾向があるといわれる。人材を厳密にセレクトするために面接を何度もくり返すなど、企業の採用選考プロセスが長期化する傾向があるのだ。また、こうした人材絞り込みの時代には、人事レベル、現場レベルでの面接はパスしたとしても、役員レベルでの最終面接に落ちるというケースも増えてくる。そうしたことも内定までの期間の長期化に反映してくる。

 アンケート回答では「1〜3カ月未満」で決めた人が41%、「3〜6カ月未満」が32%に上る。「1ヶ月未満」という短期決戦は12%に過ぎない。やはり長期化の傾向は出ているようだ。この傾向が大幅に改善する見通しはないだけに、これから転職活動をしようとする人はこの「半年」を一つの目安と考え、長丁場に耐えるだけの戦略目標を持つことが必要になるだろう。(DATA3)

DATA3 転職活動を始めてから実際に転職先に入社するまでの期間は?
DATA3 転職活動を始めてから実際に転職先に入社するまでの期間は?

 最近の転職活動ではインターネット上の転職メディアが情報源になるケースが多い。企業の中にはTwitterやFacebookなど新しいソーシャルメディアを活用して、人材を募集したり、自社への転職誘導を行うところも増えてきた。アンケートではこうした情報手段、決定手段についても聞いている。

 事前の情報収集メディアとしては、やはりリクルートを含む大手転職メディアの重要度は高いが、ハローワークも健闘している。Twitterや2ちゃんねるがそこそこの割合を占めているのも注目される。ただ、実際に転職先を決定する段階になると、ソーシャルメディアは影を薄める。この段階では「リクナビNEXT」が圧倒的に強く、その後を「友人・知人の紹介」とハローワークが追う形となっている。「友人・知人の紹介」がけっこうな割合を占めていることは少々驚きだ。自分の背中を押してくれる友人・知人のクチコミは、このネット時代にも意外と強いものがある、ということなのだろう。(DATA4)

DATA4 転職活動で使った情報手段は何を使った?
情報収集に
使った手段
転職先を決定する
のに使った手段
転職系サイト 72 28
ハローワークインターネットサービス 28 8
人材紹介会社 37 19
友人・知人の紹介 21 17
ハローワーク 27 17
企業HPで直接応募 12 6
Facebook 0 0
Twitter 6 0
Linkdin 1 0
mixi 1 0
2ちゃんねる 5 0
技術系イベントやカンファレンスを通じて 2 0

 こうした求人情報をチェックする際に、転職者はどんな項目を重視しているのだろうか。重要度が高いのは「仕事で求められる経験・スキル」「あれば活かせる経験・スキル」「仕事で扱う技術」などのスキル系に関する情報だ。「モデル賃金」など給与への関心も相当なものだが、それ以上に「エンジニアが働く環境」への関心が高いことがうかがわれる。この「環境」という言葉には、コンピュータや実験装置などの設備類から、残業時間や福利厚生、教育研修など多様な項目が含まれるはずだ。それらをすべて含むものとして「環境」にチェックした人も多かったのではないだろうか。(DATA5)

 反対に重要視しない情報としては「取引先」や「上司・先輩・同僚に関する情報」が上位に挙げられている。たしかにこれらは、会社に入ってみないことにはよくわからない、というのが実際のところだろう。

DATA5 転職者が重視している求人情報の項目は?
DATA5 転職者が重視している求人情報の項目は?
平均年収441万円が454万円に。中にはアップ率66%の人も

 さて、転職後に自分の給料はどのぐらい上がるのか、あるいは下がるのか。これは転職者の本音として、読者が最も知りたいことかもしれない。転職前の年収は、108人の平均値が441万円。これが転職後には平均で454万円に上がっている。約3%のアップだ。平均すると必ずしも大きなアップとは言えないが、個々のケースを見れば、それ以上のアップ率の人は少なくない。(DATA6)

DATA6 転職前・転職後の年収変化は?
転職前 転職後
平均 最小値 最大値 平均 最小値 最大値
IT系技術者 20代後半 327 万円 200 万円 500 万円 333 万円 252 万円 430 万円
30代前半 482 万円 150 万円 800 万円 493 万円 200 万円 900 万円
電気・電子・機械・素材系技術者 20代後半 372 万円 120 万円 700 万円 381 万円 250 万円 550 万円
30代前半 436 万円 200 万円 650 万円 472 万円 220 万円 750 万円
<転職前後の年収変化 CASE1>

 今回の調査で最も典型的な成功例というべきなのは、年収が700万円から750万円と7%アップのAさん(33歳)だろう。ソフトウェア企業から、大手家電メーカーへの転職だ。前職に特に不満があったわけではないが、ヘッドハンター会社から誘いがあり、転職に興味を覚えた。給与や希望の仕事内容を提示した上でしっかり交渉に臨み、3カ月で決断した。 「(大手なので)仕事内容の自由度が低いかもしれないと思っていたが、実際にはかなりの権限を与えられて仕事に臨んでいる」と転職結果に大満足だ。

<転職前後の年収変化 CASE2>

 480万円から540万円(増加率12.5%)を経験したBさん(自動車・輸送機器メーカー・制御設計・32歳)は、「贅沢を言えばもう30万くらい欲しい」し、「当初の希望通りの仕事はできていない」という不満があるが、それでも「給料があがったので良しとします」と答えている。

<転職前後の年収変化 CASE3>

 300万円から500万円と、今回のアンケートでもトップクラスの大幅な上昇率(66%)だったCさん(精密機械メーカー・研究・特許関係・32歳)の場合は、「とにかく前職の給与が低すぎた」という。転職でようやく同年代のほぼ平均レベルまで押し上げたことになる。

<転職前後の年収変化 CASE4>

 もちろん給与ダウンの人もいる。400万円が330万円と2割近くダウンしたDさん(化学メーカー・研究開発・35歳)は都会から地方の企業への転職だ。年収は減ったものの「残業もほどんどなく、田舎でのんびりと仕事ができるし、地方での生活で生活に必要な給料はもらえている」と、決して不満そうではない。

 たとえ転職初年度は一時的に年収がダウンしても、その後の仕事ぶりを評価されて前職を上回るケースもある。本人の頑張りと転職先企業の成長力が合致すれば、転職は年収アップのバネになることは確かなのだ。

満足度は両極に分かれるが、3分の2は転職「成功」と判断

 総じて今回のアンケートでは、転職後の年収については、「とても満足している」「やや満足している」を合わせると36%。「やや不満」「とても不満」の合計が38%で、満足層と不満層がほぼ拮抗する形になった。(DATA7)

DATA7 転職後の年収の満足度は?
DATA7 転職後の年収の満足度は?

 給与自体の満足度に反して、転職前に感じていた不満が転職によって「解消された」という回答は75%。今回の転職を「成功」と見ている人も全体の74%に上っている。これは転職満足度が、給与外の事情、例えば仕事のやりがいや職場環境、人間関係の改善などによるところが多いからと考えられる。

 ちなみに、転職先の企業を選択した理由として最も多かったのが「仕事内容の面白さ、醍醐味」(45%)、ついで「残業代を含む年収の額」が34%、選択理由の3位には「企業の理念やビジョンの明快さ」「企業の事業戦略や経営目標の将来性」「経営者や社員への好感度」「企業の風土や慣習との相性」などがほぼ同率で並んだ。(DATA8)

DATA8 転職先の企業を選択した理由は?
DATA8 転職先の企業を選択した理由は?

 今回の転職活動で実際に応募した企業の数は、「1社」31%、「3社」12%、「2社」11%と「1〜3社」という回答が全体の54%を占めた。その一方で「31社以上」という人が8%おり、「10社以上」にエントリーした人の割合は27%に達する。少ない企業への効率的な応募で転職を決めた人がいる一方で、10社以上にエントリーしてそこからじっくり企業を選んだ人がいる。このように、応募者数から見た転職活動は、両極化の様相を見せている。

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