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昨年から半減!エンジニアの
自己投資月額7478円の実情 |
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進化する技術に対応するため、日々の勉強は欠かせない。では実際にエンジニアはどのくらいの自己投資をしているのか。またどのような技術・スキルを身につけたいと思っているのか。エンジニア1000人にアンケートを実施し、実態を調査した。
(文/中村仁美 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:12.04.09
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1カ月の自己投資金額は7478円。昨年より大幅ダウン
日々、進歩している技術。それをキャッチアップしていくためにも、エンジニアは常に勉強が必要だ。そこでいまどきのエンジニアは勉強にどのくらいお金を使っているのかを調べるため、Tech総研ではエンジニア1000人にアンケートを実施。結果はソフト・通信ネットワークなどのIT系(以降、IT系)エンジニアの1カ月の学習費用は7772円、電気・電子・機械・素材などのEMC系(以降、EMC系)エンジニアは7182円、全体では7478円だった。
実はTech総研では2010年にも同様のアンケートを行っている。このときはIT系だけに絞って行われたが、そのときの金額は1万5000円だった。今回はその約半額というわけだ。
とはいえ、2010年よりも技術力維持・向上のために努力をしなくなったというわけではなさそうだ。「技術力維持・向上のためにどんなことをしていますか」という質問に対して、約6割の人が技術関連の書籍を読んだり、ネットで情報収集したりしていると答えている。また勉強会に参加しているエンジニアは25.9%、国内のカンファレンスに参加している人は12.7%、さらに国外のカンファレンス参加しているエンジニアを含めるとカンファレンスに参加して技術力維持・向上を図っているエンジニアは13.9%となる。(DATA1)
そのほかにも11%のエンジニアが技術スキルやキャリアアップのための人脈形成をしたり、6.8%のエンジニアが技術系のQAサイト・サービスを利用(githubなど)したりして技術力維持・向上を図っているのだ。
DATA1 技術力維持・向上のためにどのようなことをしているか?
ではなぜ、お金がかからなくなったのだろう。実は今回のアンケートは前回とは大きく異なった結果が得られた項目がある。技術やキャリアアップのための会社の支援制度の有無についてである。前回のアンケートで「支援がない」と答えた人は63%。今回のアンケートでは「支援がない」「わからない」を含めて36.6%(IT系)だった。EMC系を含めると、31.9%という結果となった。つまり支援されている分、自己投資額が減ったというわけだ。(DATA2)
DATA2 会社から技術やキャリアアップのための支援制度があるか?
もう一つ理由として考えられることがある。それは東日本大震災の影響である。未曾有の大災害により、私たち日本人の仕事観、人生観が大きく変わったといわれている。例えば某生命保険会社が震災3カ月後、1万人の顧客に行ったアンケートによると、「高収入を得たい」「出世したい・社内で認められたい」という価値観が減少し、「家族の近くで働きたい」という価値観が高まったという。Tech総研アンケートに答えたエンジニアの4割は既婚者。その既婚者を中心に、これまでプライベートで学習に費やしていた時間を家族と一緒に過ごすことに回したエンジニアが増えたことで、投資額が減ったとも考えられる。
カンファレンスやセミナー、勉強会は会社負担で
月額7478円の学習費用の内訳を見ていきたい。技術関連の書籍代が1772円、カンファレンスやセミナー、勉強会の参加費が891円、PC、スマートフォンなどの通信費が4093円、その他が722円となった。前回同様、通信費が書籍代や勉強会代を大きく上回った。 月額7478円は1000人の平均である。各項目にはゼロという回答も相当数含まれている(技術関連の書籍代ゼロは402人、勉強会の参加費ゼロは869人、PC、スマートフォンなどの通信費ゼロは393人)。ではこれらのゼロ回答を除くとどうなるか。技術書籍代は2963円、カンファレンス、セミナーの参加費は6799円、スマートフォンなどの通信費は6742円となり、かなりアップする。(DATA3) |
DATA3 月々の自己啓発費はいくらかけてる?
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中でもカンファレンスやセミナー、勉強会の参加費が大きくアップしたのは、ゼロ回答が9割近かったからである。前回の調査では15%だったが、今回は13.1%とさらに縮小した。なぜ、このような結果となったのか。調べてみると会社の支援制度の充実が関係していそうなことが分かった。カンファレンスやセミナー、勉強会、学会などに関する支援制度があると答えた人は435人もいたからだ。
また、社内研修やセミナー、勉強会などの支援制度があると答えた人も200人いた。複数回答は含まれるとはいえ、カンファレンスやセミナー、勉強会などへの参加に関しては、企業が積極的に行う傾向にあるようだ。
自己投資額ベスト5までをIT系が占める
次に職種別で自己投資額に違いはあるのだろうか。冒頭でも述べたとおりIT系、EMC系それぞれの平均自己投資額を比べると、600円ほど高い結果となった。この差が出たのは主に通信費の違いである。IT系エンジニアの通信費の平均は4588円。それに対しEMC系の通信費の平均は3597円。ほぼ1000円の差があるのだ。
さらに細かい職種別に自己投資額を調べてみた。自己投資を行っている人のみで見た場合、最も投資額が大きかったのは、「通信インフラ設計・構築(IT系)」の1万3360円。一方、最も投資額が低かったのは「サービスエンジニア(EMC系)」の7765円である。その差5595円、約1.7倍の開きがあった。2位は「生産技術、プロセス開発」の1万2624円。以降「社内情報システム」(1万1799円)、「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理」(1万1528円)、「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」1万1323円と続く。見ればわかるように自己投資額ベスト5のうち4位までをIT系職種が占める結果となった。(DATA4)
IT系の中で最も自己投資額が少なかったのは「システム開発(汎用機系)」の8375円。すでに枯れた技術だけに新しい書籍を購入したり、勉強会などが開催されたりすることが少ないからだろう。
DATA4 職種別/自己啓発の月平均額 | ■ IT系 ■ EMC系 |
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書籍代が最も多いのは「通信インフラ設計・構築」
職種ごとに投資項目に違いはあるのだろうか。技術関連の書籍代が最も多い職種は「通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)」の3171円。次いで「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか(IT系)」の2816円。以降、「生産技術、プロセス開発」「半導体設計」「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」と続く。
一方、技術関連の書籍代が最も少なかったのは「サービスエンジニア(EMC系)」の1006円である。確かにトップ5を占める職種向けにはそれぞれ専門の書籍や雑誌が提供されている。一方、サービスエンジニア向けというものはほとんど存在しない。書籍や雑誌では情報が得にくい職種なのだろう。
次にカンファレンスやセミナー、勉強会などの参加費はどうか。最も平均投資金額が大きかったのは、「素材、半導体素材、化成品関連」の2429円。次いで「社内情報システム、MIS」の2194円。以降、「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」「半導体設計」「生産技術、プロセス開発」と続く。この項目でも最も投資額が低かったのが「サービスエンジニア(EMC系)」の152円。
とはいえカンファレンスや勉強会などに参加していないわけではない。なぜならサービスエンジニアの12%は、国内のカンファレンスに参加し技術維持・向上を図っている。また勉強会に参加しているサービスエンジニアは、21%と、他職種と比べそれほど極端に少ないというわけではないからだ。会社の支援が充実していると考えられる。
PC、スマートフォンなどの通信費についてはどうか。最も平均投資金額が多かったのは、「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか(IT系)の6263円。次いで「社内情報システム、MIS」の5694円。以降「ネットワーク設計・構築(LAN・Web系)」「サービスエンジニア(EMC系)」「光学技術」と続く。
この項目の最下位は「半導体設計」の1813円。技術系のネット系で情報収集している人は31%と全職種の中でも最も低かったことからもわかるとおり、インターネットではなかなか情報が手に入らないということなのかもしれない。
EMC系は英語力、IT系は仕事に直結するスキルアップに関心
エンジニアはどんな資格やスキルを習得したいと思っているか。これはIT系、EMC系で大きく異なった。IT系で最も多かったのは応用情報技術者資格。次いでOracle、ネットワークスペシャリストである。一方のEMC系で最も多かったのはTOEICテスト。2位は英語・英会話となっており、1位、2位ともに英語関連が占めている。IT系の場合、お客さまは日本に拠点を構えた企業となることがほとんどだが、EMC系の場合、ワールドワイドにビジネス展開を志向している企業が多く、英語の必要性をより実感しているのだろう。(DATA5)
DATA5 今年取得したいと思っている技術スキル、資格(フリー回答を集計)
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