実録 求人魂!知られざるエンジニア採用の舞台裏 Vol.28 |
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言語の専門性〜マナー遵守まで |
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仕事の成果に対して正当に評価してもらえない不満を抱くエンジニアが多い中で、積極的にその不満の芽を摘みとり、独自の評価制度を確立しようとしている企業がある。今回は、その具体的な評価制度の中身について紹介したい。 (総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:11.08.18
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【今回の求人魂】 ヤマトグループ案件を中心に、上流〜下流までワンストップソリューションを実現
今回紹介企業 |
今回紹介する株式会社システム・ベルーフは、社員50人規模のシステム開発事業を展開する、一見するとごく普通の中堅企業。しかしその実情は、いわゆる一般的なSI企業と大きな違いがある。そのひとつは日本最大の物流企業であるヤマト運輸グループとの関わり。グループ企業であるヤマトシステム開発の資本参加を受けつつ、会社設立から20年以上にも及ぶ長い付き合いがある。そのため、ヤマトグループの中核をなす物流システムや金融システムなどのさまざまな大型案件に携わっていることが、同社の強みとなっている。 |
【求人背景】先行投資した案件の本格始動&近い将来の世代交代を見据えたエンジニア採用を積極的に展開
株式会社システム・ベルーフ
システム開発部 システム営業課
統括マネージャー
小林和彦氏
ここ数年、定期的にエンジニア採用を展開しているシステム・ベルーフ。その求人背景について、採用担当の小林氏は「新規案件の増加」&「将来を見据えた世代交代」の2つの要因を挙げる。
「当社に限らず、システム開発業界ではパッケージ化やクラウド化が進み、将来的に個別の開発案件数の減少は避けられない厳しい見通しとなっています。そこで当社では、まだ事業として成熟していない段階から先行投資的に専属のエンジニアをアサインするという種まきを、複数の案件で展開してきました。その結果、ここ最近続々と開発案件化されてきたため、特にプロジェクトを仕切れる上級SEを中心に積極的に採用活動を強化しています。
その一方、これから数年後に当社は一気に世代交代を展開する予定。現在、現場のエンジニア社員の最年長が42歳なので、これから一緒に新しい事業を生み出し、会社をともに動かしていくことに関心を持つエンジニアの採用も合わせて今後、展開していく予定です」
【求人魂1】「保有能力」×「発揮能力」=「仕事の結果」3つの軸で春・夏・冬期に評価するスタイル
システム・ベルーフが取り組んでいる特徴的な取り組みが、エンジニア社員に対する評価制度にある。元来、評価制度に対して不満を抱くエンジニアは多いが、その多くが「評価制度の仕組みに納得できない」「評価基準があいまい」といった点にあった。そこで同社では、「保有能力」「発揮能力」「仕事の結果」の3つの評価軸を設立したのだ。
「保有能力とは知識や技能、理解力などの基本的なスキル能力。また仕事の結果に関してはその名の通り、目に見える仕事の成果を示します。一般的にこの2つの能力・成果に対する評価はある程度確立されていると思われますが、もうひとつの“発揮能力”に関しては、あいまいな評価になりがちで、その点に対する不満もありました。そこで当社では規律・責任・協調・積極性といった新たな項目軸を加えることで、より多角的な観点から評価する制度を構築したのです」(小林氏)
またもうひとつ、注目するポイントとして上記の3つの評価を「春・夏・冬」の3つの時期にそれぞれをバランスよく振り分けて評価していく運用スタイルにある。
まず春には、主に「保有能力」を中心とした総合力を評価し、昇給・昇格させる。次に夏、先ほど注目した「発揮(執務)能力」を中心に評価することで、下期に向けて実績を上げようとするモチベーションを高める。そして冬、この1年間で積み重ねた「仕事の成果」を実績評価しつつ、それによってスキルアップした基本能力や実績が本人の実力となるため、結果的に翌年の春に高く評価される、というサイクルを確立させたのだ。
このように常に違う観点で評価される時期を設定することで、1年を通して常に高いモチベーションを維持できる仕組みを制度面からサポートしているといえよう。
「保有能力」×「発揮能力」×「仕事の結果」3つの評価軸で、春の保有能力評価→夏の発揮(執務)能力評価→冬の実績評価をローテーション実施。それによってモチベーションを維持する仕組み
【求人魂2】保有能力&発揮能力合わせて50以上の詳細な項目設定&評価で社員満足度93%を達成!
主に保有能力を中心にした評価項目に加え、今年から新たに発揮(執務)能力に対する評価項目を加えたことで、50以上のチェック項目で詳細に評価していく
また実際の評価制度の項目に関しても、これまでの実績をもとにブラッシュアップしてきた。それが、50以上に及ぶ評価項目だ。
例えばSEであれば、「プロジェクトの要件定義からの参画経験を有する」という項目があるが、これも「10人月以下」ならレベル4なのに対し、「50人月以上」ならレベル7というように、細かく設定されている。そしてレベルごとに対象ポイントが設定されていてその結果、どれだけ給料に反映されるのかエンジニアはすべて把握しているのだ。
「一番意識したのは、『評価の透明性』です。どこまで細かいポイントで評価できるのか。そしてその評価によって、具体的にどのように給料として反映されるのか。その評価基準〜評価決定〜給料への反映までをわかりやすく社員に理解してもらえるように、すべて情報公開しています」と小林氏は語る。
そのほかにも、「プロジェクト外の設計レビューに参加し、品質の指摘ができる」「Java設計における専門性を保有」「担当機能に関わるPGのスケジュール管理を適切に行える」「保障できる生産性は何人月か」といったように「活動局面」「品質条件」「スキルアップ貢献度」「管理実績」「業績評価」など多岐にわたる。
さらに今年からは新たに先ほど触れた「発揮能力」を評価するための「執務評価シート」を制作。例えば「与えられた仕事や自分のできる仕事を意欲的に取り組み、多少の困難もファイトを持って乗り越え、日ごろから上司に意見を述べ、発言を行っている」「勤怠や身だしなみについては他の社員の模範となり、上司の指示・規則・ルールを守り、職場の規律維持に努めている」など、「積極性」「規律性」「協調性」「責任性」の4つの軸で計20項目が用意された。
このような数々の取り組みによって社員の、会社評価に対する満足度が約93%という高い数値を達成している。
【今後の展望】上級SEだけでなく、新卒や若手も含めて幅広く採用していきたい
満足度の高い評価制度によって、高いモチベーションで日々の業務に挑むエンジニア社員たち
「今後は上級SEだけでなく、若手や新卒も含めて今後、当社を大きく変える原動力となるエネルギッシュなエンジニアを広く採用していきたい」と語る小林氏はさらに、評価制度の更なるブラッシュアップにも積極的に取り組んでいくそうだ。
それは「時代に合わせて会社も評価も常に変わっていかなくてはならないし、会社の基本指針となる評価が変われば会社も変わる」と本人が語るように、“人を正当に評価する仕組みに完成はない”という信念があるから。今後、さらにどんな評価制度に進化していくのか楽しみだ。
今回の評価制度も含めたシステム・ベルーフの企業理念や今後の事業展開に関心を持った方であればぜひその目で、確かめてほしい。
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