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シリコンバレーで開発してきた、ワークス小松氏だから言えること
日本発のソフトウェアが、世界を相手に勝つ方法とは
日本発のERPで国内市場をリードするワークスアプリケーションズ。2年前から最先端技術開発とその成果を社内のエンジニアリングに活かすため、専門の研究開発部門を立ち上げた。彼らは一体何をめざすのか。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.09.22
シリコンバレーでの経験から見えてきた大きな課題
小松 宏行氏
株式会社ワークスアプリケーションズ
アドバンスト・テクノロジー&エンジニアリング本部
エグゼクティブ・フェロー

小松 宏行氏

「日本のソフトウェアづくりを、本質的なところから強化したい。そのためにワークスアプリケーションズという企業ができることは大きい」
と語るのは、同社エグゼクティブ・フェローの小松宏行氏だ。

 小松氏は、1989年に米国に移り住み、日本ディジタルイクイップメント研究センター(旧DEC)で働き、その後、現地で築いた人脈を元に、シリコンバレーの複数の会社で開発者として経験を積む。
 ロータスなどの外資系IT企業を経て、ネットスケープ社の草創期を支えたエンジニアの一人である。帰国後、2002年にアリエル・ネットワークに入社し、代表取締役社長を務める。P2Pなど先進技術の研究と共に、大手企業向け情報共有パッケージソフトやクラウドサービスの開発に力を注いできた。現在では、アリエル・ネットワークの代表取締役会長を務めながら、2009年よりワークスアプリケーションズのエグゼクティブ・フェローも務める。
 このように、技術者として華麗な経歴を持つ小松氏が、なぜ次のステージとして、ワークスアプリケーションズを選んだのか、そして、何を実現しようとしているのだろうか。

Made in Japanならではの強みを

  米シリコンバレーでの経験が長い小松氏には、シリコンバレーと日本のソフトウェア開発の事情の違いもよく見えている。だからこそ、地方自治体などが地域集積型の日本版シリコンバレーをつくって、ソフトウェア開発の競争力を高めようという構想には懐疑的だ。
「日本では、優秀な技術者がひとつの会社にずっとい続けるケースが多いですが、アメリカでは、エンジニアが企業間をしょっちゅう異動しています。そのため、特にシリコンバレーでは、街を歩けばその分野のエキスパートに出会えるし、自然に交流が生まれます。その結果、優秀な技術者が個人のネットワークを介して、異動をさらに促進するという循環を生んでいるのです」

「労働市場のサイクルが異なるのだから、日本で、それをそのまま真似てもうまくいくはずがない。ただ、以前よりも流動化は進んでおり、最近は東京でもエンジニアの勉強会等を通して、技術者同士の交流が頻繁に行われるようになっている。自主的な勉強会やセミナーが企業間の垣根を超えて、エンジニアの交流を生み出す原動力になっているのは、良いことだと思います。インターネット技術への取り組みも、特に若い世代は熱心で、頼もしさを感じます」
「日本は、クルマや家電などのモノづくりでは、その品質が世界に高く評価されていますが、これまでソフトウェアに限っては、同じモノづくりにも関わらず、全く評価されてこなかった。それは、ソフトウェアでは、日本のモノづくりの特徴である『繊細さ』『使い込んでいくと馴染む』というような、製品の企画者が使い手のことを考え抜いてモノを作るということが、できていないからです。私はこの問題を何とかしたいと思うのです」

ワークスアプリケーションズを通して、日本のソフトウェアの競争力を上げる

 日本のソフトウェア技術をグローバルレベルで競争力のあるものにすること。そのためのアプローチはさまざまな方法があるが、小松氏が選んだのは、日本発のソフトウェア・プロダクトを持つ企業において、最先端分野の研究を強化し、高度な技術力を持つ人材を育成することだった。
「システマティックな最先端技術の研究には、当然、時間とお金がかかります。アメリカでは小さな研究開発型のベンチャーに膨大な資金が集まり、それが研究をリードするということがありますが、日本では難しい。だから日本では、国内市場で自社製品を販売して、しっかり稼いでいる企業が、そこにコミットすべき。ワークスアプリケーションズという会社にはそれができると思っているんです」
 この点は、小松氏をフェローに招いたワークスアプリケーションズCEO牧野正幸氏も同意見だったという。かくして、ワークスアプリケーションズにアドバンスト・テクノロジー&エンジニアリング(ATE)本部が誕生した。これによって、ワークスアプリケーションズは、国産ERPのトップ企業というだけでなく、エンタープライズ分野におけるソフトウェア技術の高度化という点でも、リーダーシップを握ろうとしているのだ。

 このATE本部の社内における役割は、最先端技術の研究開発および品質技術の強化と、技術教育の3つ。
 最先端技術の研究では、クラウドのネットワーク技術や、NoSQLなどオープンソースの分散データベース技術、さらには並行処理などコンピューティングの基礎技術の研究も行っている。社内で開発したクラウド監視ツールは、Amazonのユーザー会等社外のセミナーでも好評を得て、社外展開への要望も大きい。
 その他、「月刊アスキードットテクノロジーズ」でクラウド、Cassandra等最先端技術に関する連載を続けるなど、社外への積極的な情報発信も行っている。
 ワークスアプリケーションズが手がけるERPという企業向け製品とは、一見直接の関係がないようにも見えるが、エンタープライズ・コンピューティングの新しい流れを見極めるためにも、こうした最先端の技術への関心は不可欠。クラウド、SaaS、SNSといったインターネットを活用したコンシューマー向けサービスも含めて、取り込むべき技術は、常識にとらわれず製品に取り入れていくべき。そのためにも分野に関わらず、先行的な研究開発投資は重要だという。

 品質技術についても、小松氏の思い入れはかなり強い。
「品質技術は、ソフトウェア生産において最も未開の技術領域です。これまでも、例えばテストの自動化や効率化に関し、さまざまな試みが行われてきましたが、最善の解はまだ見つかっていない。私たちは、ここに統計と計量に基づいた科学的なアプローチを導入し、大規模ソフトウェア開発分野における品質技術の確立を目指したい。そのことが、ワークスアプリケーションズの製品のブランド力に直結するし、ひいては日本のソフトウェアづくりの強化にもつながっていくと期待しています」
 また、日本の製造業では製品設計など初期工程の段階から、後工程のことを考えて設計を行う、フロント・ローディングが主流になっている。これは、初期工程から品質を作り込むという発想だ。
 ソフトウェア開発でも同じことがいえる。開発者が書いたコードを、後からテスターがランダムにテストするのではなく、開発者自らがテスト工程も考えて設計することが大切だ。簡単にいえば、きれいなソースコードを書けるエンジニアが増えれば、バグの低減や生産性向上につながる。

 そうした品質意識と最先端技術を併せ持つエンジニアを育てる技術教育が、ATEの3つ目の役割。ここにも小松氏は大きなやりがいを感じている。

ネットワーク技術への強い興味。グローバルで勝負する志向性

 ATE本部の目下の戦略は、こうした最先端の技術研究とエンジニアリング推進のために、ポテンシャルの高い人材を確保し、育てていくこと。現在、小松氏をサポートして「中心的な核」となっている人材は何人かいるが、その核となる人材を増やすことが新たな課題となっている。
「技術の内容でいうと、Java、JavaScript、HTML5といった技術とエンタープライズ向けソフトウェア開発のための各種フレームワークに精通していることが一つの条件です。それに加えて、ネットワークに強いエンジニアも必要になっています。これまでのメモリやバスなどと同様に、いまやネットワークはコンピューティングを考える上で欠かせない条件になっているからです。例えばクラウド技術をエンタープライズ向けソフトで使う場合、ネットワーク・セキュリティやパフォーマンスについての関心は不可欠。ネットワークに触れていれば、食事も忘れるほど、これが好きだというエンジニアがいるといいですね」

 こうした志向性があれば、前職での業務経験の種類は問わない。システムインテグレーション、インターネット技術、あるいはSNSなどソーシャルネットワーク業界での経験も活かせる。
「ATE本部から業務アプリケーション開発に援軍として出かけていくことも多いし、相互の情報交流、人的交流も活発です。業務アプリで顧客の要望を聞いて、それらを実装しつつ、同時にソフトウェアのより本質的な理解を深めていく、そうした思考の往復ができればベスト」
と、小松氏はATEにおける人材要件を語る。

 最先端技術を研究したいエンジニアにとって、ワークスアプリケーションズで働くことのメリットは、先に挙げた研究開発資金の継続性だけでなく、他にもある。
「ワークスアプリケーションズは日本を起源とする最大規模のソフトウェア会社になることを目指す会社。いわばソフトウェア業界のトヨタになろうとしている。だからこそ、エンジニアの技術は、日本のソフト技術全体の発展に貢献できる可能性があります。それに、国内だけでなく、これからは海外にも進出しようとしている。グローバルな立ち位置で自分の技術を見直す絶好の機会だといえます」
 現に今年の秋には、ワークスアプリケーションズは海外拠点を構える予定。ここでは、ATE本部におけるエンジニア人材の確保も目的としている。
「これからは日本のソフトウェア技術者も、世界の優秀なエンジニアと肩を並べながら、競い合う時代に入っていきます。中国進出がまずその布石」というわけだ。

 もちろん、日本のソフトウェア技術が世界をリードするようになるまでには、長い時間が必要だ。いきなりワールドカップで優勝というわけにはいかない。ただそれを強く意識して、今からすぐに準備を始めなければならない。それを小松氏は、ワークスアプリケーションズという企業で始めた。その“実験”が成功するかどうか、それは小松氏に続くエンジニアの存在にかかっている。

株式会社ワークスアプリケーションズ アドバンスト・テクノロジー&エンジニアリング本部 エグゼクティブ・フェロー 小松 宏行氏

1964年生まれ。東京大学理学部数学科卒業後、日本ディジタルイクイップメント研究開発センター入社、その後、ロータス、米ポイントキャスト、米ネットスケープ・コミュニケーションズ社を経て、2002年アリエル・ネットワークへ入社、現在は代表取締役会長を務める。2004年、ワークスアプリケーションズによるアリエルの完全子会社化に伴い、2009年、エグゼクティブ・フェローとしてワークスアプリケーションズに迎え入れられる。

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