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オフィスワーカーの生産性を向上するIT環境整備
アクセンチュアが強化するワークプレイス戦略とは
アクセンチュアが今後の成長領域として挙げる「ワークプレース・テクノロジー&コラボレーションサービス」。オフィスワーカーが日常利用するPC環境や、ポータル等のコラボレーション環境を組み合わせて、業務効率を向上させるという。その戦略と実例を聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.08.31
オフィスワークの変化に対応し、新しいITソリューションを提供
菱沼 昭行氏
アクセンチュア株式会社
テクノロジーコンサルティング本部
インフラストラクチャコンサルティンググループ
シニア・マネジャー

菱沼 昭行氏

 オフィスワーカーの生産性の向上は、ITにとって大きな課題の一つ。これまで定型的な業務を効率化するために業務アプリケーションの開発は積極的に行われてきたが、それでもまだ取りこぼされているのが、非定型業務の効率化だ。
「オフィスワーカーの仕事を見ていると、メールの読み書きや、資料を探すなどの作業に多くの時間が費やされていることがわかります。会議に取られる時間もまた少なくない。例えば会議と会議の間の移動の時間というのは、何も価値を生み出していないに等しい。そうした非定型業務の全体を含めて、なんとか効率化できないか、というのが私たちの課題です」
 と言うのは、アクセンチュア、シニア・マネジャー菱沼昭行氏だ。菱沼氏のチームが提供するサービスは、単純な業務システムの開発・導入というものではなく、よりオフィス全体の働き方、ワークスタイルにかかわるものである。それらを担う部門が菱沼氏が所属するIT戦略・インフラグループの「ワークプレイス・テクノロジー&コラボレーション」(略称WT&C)と呼んでいる。

 ワークプレイスとは、狭義には人々が働くオフィス環境のことを指すが、最近は必ずしも会社のデスクだけを意味しない。在宅で仕事をする、サテライト・オフィスに移動して仕事をするなど、ワークプレイスの多様化が進んでいる。
「特に、東日本大震災以降、在宅勤務の導入を考えるお客様が増えてきました。在宅しながらでも、オフィスワークと同様の効率的な仕事ができるようにするためにはどうすればよいかという問題意識が強くなっています」と、菱沼氏は指摘する。

 地震などの天災以外でも、感染症の流行(パンデミック)でも、全員が出社できないという事態は生じる。そのとき、在宅オフィスやサテライト・オフィスをつないでどのように業務を継続するか、というBCP(事業継続計画)とも、これは密接に関連するテーマである。

 またオフィスを構成するメンバーやそのワークスタイルにも、最近は大きな変化がある。正社員に混じって、契約社員やアルバイトなど非正規社員が一緒に作業を進めるのは当たり前。終身雇用が崩壊し、転職する人も増えている。気づいたら隣に見知らぬ人が座っているということもよくある。勤務時間もフレキシブル化し、育児・介護休暇や時短制度の利用が活発になると、同じ正社員でも人によってオフィス内での勤務時間が違ったりする。こうした多様な働き方の人々が、それでもチームワークを組み、コラボレーションしながら仕事を続けなければならない。それに資するための、新しいITソリューションが求められているのだ。

ワークプレイスを変えるキーテクノロジー。モバイル活用や遠隔地会議システム

 ここでのキーテクノロジーの一つが、iPhone、Andoroidなどのスマートフォンや、iPadなどのタブレット型端末の活用だ。これらを活用することで、オフィス間や客先への移動時の時間を有効活用できるようになる。従来はノートPCの活用が一般的だったが、移動中などの短い空き時間に業務を行うには、使い勝手が悪くあまり効率的ではなかった。その点、スマートフォンやタブレット端末なら持ち運びが容易で、瞬時に起動するため手軽にメールや資料を確認することが可能だ。

 また、在宅勤務では、ストレージを持たないシンクライアントの活用もポイントになるだろう。社員全員にシンクライアントを配布している企業も登場している。
 オフィス間では、ビデオ会議など遠隔地会議システムの導入も重要だ。ただ、大掛かりなビデオ会議システムでは導入コストや利用形態が課題になる。最近は、より低コストで導入できるPC上のWeb会議の活用が流行だという。

「私たちは、社内用にセキュアなインスタント・メッセージング・システムやWeb会議システムを活用しています。チャット形式で議論を行いながら、ExcelやPowerPointの資料を共有することも可能です。キーボードでのチャットが効率的でない場合は、ボイス・チャットにシームレスに切り替えることもできます。実際に私たち自身がチームの拠点間会議や、パートナー企業、お客様との会議にも使っており、そこで得たさまざまなノウハウをお客様に提供できることができます」(菱沼氏)

 固定電話、携帯電話、メール、FAXなど多様なメッセージ手段を、IPネットワーク基盤上で一つに統合するユニファイド・メッセージングも、オフィスの生産性を高めるのに役立つ。
「あの用件は、メールで来たんだっけ、それともボイス・メッセージに入っていたんだっけと戸惑うことはよくあると思います。これらあらゆるメッセージを一つの受信ボックスの中に入れておくことができれば、探し出す手間が省けます。ユニファイド・メッセージングを実現するハード・ソフトのツールは各社から登場しており、それらを柔軟に組み合わせて、お客様に提供することができるようになりました」

 一方で、クラウドの活用は、これからのWTCの重要な柱になろうとしている。
「グループウェアや業務アプリをオンプレミスではなく、クラウドで提供するサービスを各社が始めています。たとえば、メールシステムをGmailに切り替えるという決断を下す企業も増えています。情報を自社のインフラに溜め込まず、クラウドで処理する。その方が、容量的、コスト的、機能的にも自社の業務にフィットするという判断ですね」
 と、最近のキーテクノロジーを語る菱沼氏。単なる業務アプリのプログラミングやシステム・インテグレーション以上に、エンジニアにとっても興味深い世界が広がっていることがわかる。

企業組織とワークスタイルの効率化をトータルに捉える視点

 アクセンチュアのWT&Cソリューション提供は、パートナー企業との協業で行われることが多い。たとえば、アクセンチュアとマイクロソフトの出資による戦略合併企業アバナードの設立により、アクセンチュアのコンサルティングノウハウとマイクロソフトの先端技術を、より密に組み合わせた。この協業によって、アクセンチュアのコンサルティングノウハウと、マイクロソフトの最先端技術を組み合わせたソリューションが展開できるようになった。

「とはいえ、マイクロソフトの製品を提案することが前提になっているわけではありません。例えばLotus Notes(IBM製品)を活用して業務効率改善などを行うこともあります。要は、対象製品は問わず、しかも製品の導入だけにとどまらず、その活用・運用をサポートすることができるというのが私たちの強み」
 と、菱沼氏は言う。

 こうしたソリューション力を強化するために、いま求められるコンサルタント人材はどんな人たちなのだろうか。菱沼氏がまず挙げるのは、オフィスワーカーの仕事のフローや、働き方をトータルに見る視点だ。
「私たちは、ITインフラ全般の戦略立案などトータルな取り組みの一貫として、ワークプレイス・テクノロジーの提案を行うことが多く、総合的な視点に立ちながら、企業とそこで働く人たちにとって真に役立つITを考えることを欠かしません」

 実際のシステム開発はパートナー企業にて行う場合もあり、コンサルタントとしての仕事はそれを含めたワークスタイル改革全体の統率が中心になる。オフィスワーカーの生産性向上のために何が必要なのかを考え、改善のために必要なのは、ソフトウェアの強化なのか、運用の改善なのか。そういう判断を的確に行う必要があるのだ。

 例えばメールの処理に割く時間が膨大で、それが社員の生産性の低下につながっているのではないかと考える顧客がいるとする。実際に顧客のキーパーソンにヒアリングし、メールの流量を分析し、作業時間を計測するなど実態把握に努めるのもコンサルタントの役目。その上で、従来のメールに変わる、あるいはそれらを統合するような新たなメッセージング・システムを提案するわけだ。

 あるいは、拠点が全国に広がり、社員の出張が日常茶飯事になっている企業では、出張コストの低減が課題になる。遠隔地会議システムの導入でそのコストを何%低減できるかという具体的な数値の提案も求められてくるだろう。

 さらには、「今のAndoroid端末は業務に使えるか?」「クラウドのセキュリティはどうなっている?」「ITによるワークスタイル変革の先進事例は?」といった顧客からの問いにもその都度応えていかなければならない。エンタープライズITの動向や個々の技術についての幅広い知識は、ITコンサルタントとして不可欠の素養だ。

「ただ、そうした知識の活用や具体的な提案は、個別最適というよりは、常に全体最適を考えて行われるべきです。それができるのがアクセンチュアだと考えています」
 と菱沼氏は、単なる業務システム導入を超えた戦略的ITソリューションの重要性を指摘する。

グローバルなナレッジの活用と、企業文化への理解が不可欠

 オフィスワーカーの生産性を高めるために、ワークプレイス改革を提案する仕事。IT活用の先端的領域とはいえるが、日本ではまだそうした分野での経験をもつコンサルタントが少ないのも事実だ。即戦力の経験者が欲しいのはやまやまだが、そうでない場合でも、アクセンチュアには彼らを育てる環境がある。

 その一つが、世界各国のアクセンチュア拠点を結ぶグローバル規模のナレッジベースだ。WTCソリューションは日本だけでなくアクセンチュアの各国拠点がそれぞれ自国の顧客に提供している。ナレッジベースにはそうしたソリューション例が膨大に蓄積されており、コンサルタントはそれを自由に参照することができる。

 いま、日本企業の世界展開が急ピッチで進むが、世界各地の拠点を結ぶビデオ会議のシステムなどは、やはり欧米企業が先行している。そうした事例を参照しながら、日本企業にとっての最適解を提供することができるのだ。

 また、オフィスワーカーの生産性という点でも、日本企業は欧米に遅れを取っているといわれる。欧米企業のワークプレイス戦略が、日本企業にとって参考になるケースは、これからますます増えてくるだろう。

 とはいえ、会社の仕事のやり方というのは、それぞれの企業の業種や歴史的経緯で違いがあるものだ。パッケージやテンプレートを一律に導入して、それに合わせるというのではなく、企業文化を活かした改善のほうが、結果的には成果を生むことが多い。
「企業文化を理解するためには、顧客との深い会話が必要になります。コミュニケーション力と、それをベースにした論理的思考力。コンサルタントのヒューマンスキルとしては、これらを最も重視したいですね」
 菱沼氏は最後にそう強調するのだった。

アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 インフラストラクチャコンサルティンググループ シニア・マネジャー 菱沼 昭行氏

1994年外資系ソフトウェア会社入社。デスクトップソフトウェアを中心とした開発に携わる。2001年外資系コンサルティング会社に転職。ポータルシステム等のコンサルティングを手がける。2003年アクセンチュアへ再転職。現在は、オフィスワーカーの生産性向上に向けたコンサルティングに従事。

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