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技術人事・鷲田学氏に聞いた採用、環境づくり、技術PR etc.
サイバーが取り組むエンジニアキャリア支援制度・待遇
サイバーエージェントは、エンジニアが自由に技術を選び、サービスを開発できる環境づくりに徹底的にこだわる。エンジニアのアイデアやモチベーションを引き出すことに力を入れる同社にとって、エンジニアが働きやすい環境とは何か。技術人事を担当する鷲田学氏に聞いた
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:11.08.11
「技術のサイバーエージェント」実現に向け、社長・役員・人事が知恵を絞った
鷲田 学氏
株式会社サイバーエ一ジェント
人事本部 技術人事責任者

鷲田 学氏

 ソーシャルネットワークを活かしたさまざまなコンシュマー系サービスを展開するサイバーエージェント。この数年、Webアプリケーション、スマートフォンアプリ、モバイルゲーム、サーバー・インフラ系を問わず、幅広い分野での技術者採用を強めている。

 もともとサイバーエージェントは、ネット広告の代理店として創業したこともあり、代理店としてのイメージが強くその技術力については、エンジニア・コミュニティの中ではあまり話題になることがなかった。しかし、2004年に立ち上げた「Ameba」など、自社サービスを手がけるようになってからは、その技術力が次第に注目されるようになった。近年は藤田晋社長自らが、「これからのネットビジネスは、優秀なエンジニアを集めた会社が成功する」と語り、「技術のサイバーエージェント」を採用戦略の全面に打ち出すようになった。

 採用活動の中心を担っているのが「技術人事」のセクションだ。
「2010年の秋に、社長、技術担当執行役員、人事担当者が集まって合宿を行いました。技術のサイバーエージェントであるためには、まずは技術者にとってより魅力的な会社にならなくてはならない。どういう取り組みが必要か、腹を割って話し合ったのです」
 と、振り返るのは、人事本部で技術人事を担当する鷲田学氏だ。2009年に人事本部に異動し、2010年に技術人事セクションを作ってからは、技術開発の現場に顔を出し、開発現場の声を小まめに拾うようになった。

 すでに、技術者積極採用の体制は整いつつあった。藤田社長が技術担当役員を兼務し、執行役員には長瀬慶重氏(技術推進本部本部長)、佐藤真人氏(最高技術責任者)、名村卓氏(主席エンジニア)のトップエンジニア3人が名を連ねる。この3人は、普段からサイバーエージェントの技術力の底上げに努めると同時に、技術者の採用面接にも積極的に関与する。これら技術のトップ・マネジメント層と絶えず密接な連携をもって、具体的に技術者の採用・育成に取り組むのが技術人事の役割だ。

 合宿の中で強化すべき課題としてあげられたのが、以下の4点だったという。
1) ヒットサービスをつくる──ヒットサービスを生み出した結果、世界に誇れるような技術力を持った会社にする 2) 採用戦略──新しいサービスを創ること、高度な技術を追求することにワクワクする技術者の採用を強化する 3) 環境づくり──技術者のアイデアを引き出す環境・制度をつくる 4) 技術PR戦略──サイバーエージェントのエンジニアやクリエイターの技術力を対外的にアピールし、技術者採用を支援する

 担当してからの1年弱で、順調に技術者中途採用を進めていた鷲田氏だが、合宿の場では社長から「流行るサービスをたくさん生み出すためにはまだまだエンジニアが足りない。更に採用には力を入れよう」という言葉をもらったという。それに押されるようにして、サイバーエージェントの技術をより深く理解し、技術者たちを活性化し、その技術力をエンジニア採用市場で広く訴える活動が始まった。

合宿
社長、技術系執行役員、人事担当者が集まった合宿
エンジニア、クリエイターのアイデアを引き出す環境をつくる
アプリコンテスト
自ら企画を考え開発し提案する
「アプリコンテスト」

新規開発会議
エンジニアを毎回6名指名して行う
「新規開発会議」

ブレストランチ
Amebaに関する改善案や新機能追加を提案する
「ブレストランチ」

 合宿で見えてきた課題の中でも気になるのは環境づくりだ。サイバーエージェントには、半期に1度の新規事業プランコンテスト「ジギョつく」、社内異動公募制度「キャリチャレ」など、ユニークな名称の社内制度がいくつもある。若手社員の自主性を重んじ、自らキャリアプランや事業プランを創出する行動力のある社員を育てようというのが狙いだ。単に社員の福利厚生を厚くする“保護政策”というより、自由と自己責任原則で、社員一人ひとりの能力を引き出すこと。それが結果的に、社員の働きやすい職場環境づくりにつながる、という考え方である。

 エンジニア向けにも、半期に一度自分の好きなテーマで技術論文を提出する「研究課題レポート」、同じく半期に一度、自ら企画を考え開発する「アプリコンテスト」が2、3年前から開催されていた。とにかく社員ひとりひとりの提案機会が多い会社なのである。
「エンジニアの中には、モノづくりは好きで、自分でアイデアを持っているが、それを大々的にアピールするのはあまり好まない、という方もいるかと思います。任意参加のコンテストだけでなく、きっかけを作り、内に秘めているアイデアを出す機会をつくろう」(鷲田氏)考えて、年末より始まったのが「新規開発会議」や「ブレストランチ」だ。

 「新規開発会議」は、技術担当執行役員が現場のエンジニア、クリエイターを毎回6名ずつピックアップし、それぞれがスマートフォンアプリなどを企画し、実際にモックをつくり、社長や執行役員たちの前でプレゼンテーションを行う。一ヶ月前に指名を受けた対象者が、会議当日までサービスを考えてくるという、締め切りを設けることで脳の生産性を高める効果が狙いだ。エンジニア、クリエイターの隠れたアイデアにスポットライトを当て、本人たちのアイデアを奨励すると共に、良いアイデアであれば、そのままAmebaのサービスとして世の中に出していく。エンジニアにとっては、業務を離れたところでも、日頃の技術やアイデアを提案する良い機会になっているという。

 もう一つ、今年から始まったのが、「ブレストランチ」だ。60〜70名の規模のメンバーが一堂に会し、ピザなどを食べながら4時間かけて行うブレスト会議だ。5〜6名ずつチームに分かれ、Amebaに関する改善案や新機能案をざっくばらんに語り合う。最後の1時間ではその改善案などを社長や執行役員の前でプレゼンする。新規開発会議など、提出期限があるものとはまた違って、事前準備ナシで、普段接点の無い人と話すことで新たな視点を引き出そうという試みだ。
「ブレストですから“こんなことまで言っても構わないんだ”というレベルの話でもOK。 その場で藤田が“それいいね、すぐにやろう”と太鼓判を押すような思わぬヒントもこの場からどんどん生まれてきます」(鷲田氏)

 ブレストならではの気軽さが、エンジニアの口を軽くし、発想を広げる。サイバーエージェントは新たなサービスを生み出すために、様々な環境づくりをしている。

エンジニアの数だけあるキャリアプラン。その実現を会社が全力でサポート

 エンジニアの環境づくりというと、通常思いつくのはキャリア開発制度だ。大手のSIerやソフトウェア企業だと、新卒で入社するとまずは初級プログラマ、その後、年次ごとの研修や社内試験などを受けて、上級SEやコンサルタント職などへと登りつめる階段が用意されている。階段は途中からスペシャリスト志向やマネジメント志向などに分かれることもある。その階段は「自分は入社5年目だから、このぐらいできていないといけない」という目標にもなる。

 しかし、こうした階段を一つずつ昇っていく、ステップアップ型のキャリアプランは、大量の新卒一斉入社と終身雇用が当たり前だった時代の名残り。技術や事業内容が10〜20年は基本的には変わらないことを前提にしている。日々変わりゆくインターネット技術とインターネットサービスの事業領域で勝負する会社にとっては、技術者のキャリアプランを、このように固定化することの意味はほとんどないのだ。

「基本的には、エンジニアには常にエンジニアでいて欲しい、常に最新の技術に触れていて欲しいと思っています。そのために、個々のエンジニアを全力でサポートするのが、私たちのすべて」と、鷲田氏は言う。つまり、あらかじめ決まり切ったキャリアプランなどはない。キャリアのハシゴなどどこにもないのだ。

 その代わり、エンジニアの数だけ、その人のキャリアプランがある。サイバーエージェントは特に対話を重視しているが、技術担当執行役員や人事との面談時に、キャリアの方向性や、今後チャレンジしたいことを聞くようにしている。「自分が今、夢中になっていることや、今後チャレンジしたいことを話してくれると、会社としても応援したくなりますね」(鷲田氏)

 自己啓発や知識習得、スキルアップのためであれば、技術書やPCの購入など、10万円まで会社がサポートするという「サポ10」制度も昨年から始まった。技術系のセミナーやカンファレンスへの参加も、業務に支障のない範囲なら何でもOKだ。しかし、キャリアプランとは、会社が用意するメニューから選ぶのではなく、自分が準備し、開発するもの。キャリアの主人公は常にエンジニアにある、という考え方がこの会社には貫かれているのだ。

エンジニアの自由を奪わない。だから、彼らは日々成長し続ける
エンジニアアカデミー
若手エンジニア向け技術セミナー
「エンジニアアカデミー」

 サイバーエージェントは、インターネット業界で技術者として働きたい人向けの技術セミナー「エンジニアアカデミー」を昨年から開いている。テーマは様々だが、前回はJavaによるWebサービスの開発プログラムを実施。仕事でWebサービスを開発したことがないが、最先端の技術にチャレンジをしたい、というエンジニアが多く集まった。今年の夏はテーマをスマートフォンに特化し、スマートフォンアプリ開発のスキルの向上を目指している。業務上、機会がないエンジニアに対し、週末の時間を利用し、Webサービス開発へのチャレンジの機会をつくった形だ。もちろん、彼らがサイバーエージェントに転職したいと思ってくれれば、いうことはない。

「本来は、週末に開講する外部のエンジニアを対象にした講座なのですが、社員の中にも参加したいという声が出てきました。もちろんOKしました。休日の自分の時間を投資し、新たな技術にチャレンジをしたいと考える前向きの姿勢のエンジニアを、あえて断る理由はないですからね」と、鷲田氏は最近のエピソードを語ってくれる。

 自己成長のためのチャンスは、こうして社内外にふんだんに存在している。手を挙げて、それを自分のものにするかどうかは、エンジニアの姿勢次第なのだ。成長のための自由が、そこにはある。

「新たな技術に挑戦したい、多くの人に喜ばれるサービスを生み出したい──それはエンジニアにとって何よりもかけがえのない欲求だと思います。その欲求を発揮する自由を100%保証することが、私たち技術人事の役目。エンジニアの自由を奪うことは、彼らの成長を止めることだと、いつも思っています」
 という鷲田氏。更に働きやすい環境をつくるために、最近中途入社したエンジニアからも積極的に声を拾っていきたいと言う。

株式会社サイバーエ一ジェント 人事本部 技術人事責任者 鷲田 学氏
大学卒業後、システムエンジニアとして、就業。2004年12月、サイバーエージェント入社。広告代理店部門のアカウントプランナー、局長などを経て、2008年から広告代理店部門人事責任者。2009年1月に人事本部に異動し、2010年3月から技術人事セクションを担当。
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