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美味しいジェラートと冷たいフラッペが食べたい!アイス、かき氷!夏を彩るCOOL☆マシーン
夏だ! 夏が来た! 夏と言えば何だ! アイスクリームとかき氷だ! どうやってつくっているんだ? 決まっているじゃないか、エンジニアが開発したマシーンでつくっているんだ。じゃ、彼らはどんなエンジニアなんだ? そんなことも知らないのか、エフ・エム・アイと池永鉄工のエンジニアだ!
(取材・文・撮影/総研スタッフ 高橋マサシ)作成日:11.07.14
好きなジェラートを食べよう!この違いがわかるかい?
質問:「アイスクリーム」と「ジェラート」の違いを述べよ。
「ジェラートブーム」を起こしたのは弊社かも
 上の質問に続いて……ソフトクリーム。ジェラートとソフトクリームの違いとは? それは空気の含有量(オーバーラン)と製品の温度。ジェラートのオーバーランが30%前後、製品温度が−8〜−10度なのに対して、ソフトクリームは50%前後で、−4〜−6度。だからソフトクリームは、食べ終わる前に溶けてしまうのだ。
「ソフトクリームとは全然違いますよ。ただね、ジェラートは数百円するから、ちょっぴり高いかな。でも、美味しいでしょう(笑)」
ハイパートロンミニのHTF-3(1L用:左)とHTF-6N(1.5L用)
ハイパートロンミニのHTF-3(1L用:左)と
HTF-6N(1.5L用:右)
株式会社エフ・エム・アイ 開発課 シニアマネージャー 一色貢氏
株式会社エフ・エム・アイ
開発課 シニアマネージャー
一色 貢氏
 こう語るのは株式会社エフ・エム・アイ開発課の一色貢氏。卓上型アイスクリームフリーザー「ハイパートロンミニ」を独力で開発したエンジニアだ。

「弊社の社長がイタリアでジェラートを食べて、これは美味しいと、1984年からイタリア製ジェラート製造機器の輸入販売を始めました。大量生産のアイスクリームと違って、各種のフレーバー(香料)を入れられ、ショップ独自の手作りの味が出せる。舌触りもなめらか。日本の『ジェラートブーム』に火がつきました」
 年数がたつうちにユーザーの声が聞こえてきた。輸入機器は大型で、一度の処理能力が30Lや60Lと大容量、やはり価格も高い。そこで、コンパクトで安価な製品を望む声が出てきたのだが、探すと海外製品にさほどよいものはなかった。ここから自社開発が始まったのだ。まずはアイスクリーム製造機の原理から語ってもらう。
衛生管理の縛りあり、電気も材料もここで覚えた
「アイスクリームをつくるには、水分と脂分(乳脂肪分)を高速回転させて混ぜ込み、同時に急速冷却してホモゲナイズ(乳化)させます。水と脂は分離しますが、こうすることで氷の結晶が大きくなる前に混ざり、アイスクリームとして舌に乗せたときに氷晶のざらつきがなくなります」
 原材料を入れた容器を冷媒で蒸発させて−35〜−40度で冷やす。同時に容器の中の刃物(ブレード)を高速で回して、壁面についた液体を、水が氷になる瞬間に削り取る。刃を回転させて、「かき取って、練り込む」を繰り返すという。

「粘性の低いアイスクリームが、かき取られた後にどういう流れでブレードの下に潜り込み、どう容器の底から上がってくるか。それを想定してどんな形状の刃を、何度の角度で取り付けるか。また、小さい卓上型なのでコンプレッサーの能力に限界があり、急激な冷凍が難しい。すると組成が変わって美味しくならないので、どうカバーするか。不安定な要素が多すぎて正解が見えない開発でした」
容器とその中のスクレーパー(白い部分がブレード)
容器と中のスクレーパー
(白い部分がブレード)
かき混ぜて乳化しているイメージ
かき混ぜて乳化しているイメージ
 ちなみにこの工程の前には「パステライザー」という殺菌装置を使う。牛乳、生クリーム、糖分、フレーバーなどの原材料を混合して加熱殺菌し、冷却させるのだ。その液体をフリーザーに入れて乳化させる手順となる。乳製品には大腸菌の危険があるので、徹底した衛生管理が欠かせないという。

「フリーザーでも、ブレードやブレードを回すスクレーパーの表面に小さな穴や傷ができると、そこに栄養分が残って菌が繁殖する場合もあります。食品衛生法で製品の材料も限定されています。私は機械工学科の出身ですが、電子回路以外の電気、樹脂などの材料はここで勉強しました。何が大変といって、それがいちばんの苦労でした」

 試行錯誤の末、スクレーパーはステンレス、ブレードはポリアセタールとなった。量産できない手作りの製品だ。それだけではない。容器の周囲に冷媒が通る管を巻きつけ、コイルを密着させ、外側に断熱材をつける。この金型作りで、型を外す離形がうまくいかなかったという。また、輸入機器では駆動系でトラブルもあったので、駆動部分も一新させた。
「文献を調べて理論や数字がわかっても、簡単には実現できないし、実現してもバラツキが出てくる。とにかく『やるしかない』を続けたんです」
「もう働きたくない」は嘘ですよね?
 日本でアイスクリームフリーザーを開発している企業は非常に少ない。一時は何社かの日本企業が参入したが、徐々に撤退していき、現在使われている多くは輸入製品だ。その中でハイパートロンミニを開発した一色氏は当然「業界」に詳しい。

「出来上がったジェラートを冷凍庫に入れて−18度程度にし、それをオープンショーケースに移して保冷し、−10〜−12度くらいで販売します。−15度以下だと固くてヘラですくえないんですよ(笑)。ヘラですくって裏返しにして、落ちない程度の−8度が製造温度です」
スクレーバーから取り外したブレード
スクレーバーから取り外したブレード
 エフ・エム・アイは業務用調理機器・仕込み機器のメーカー兼輸入代理店だ。数多くの機器も開発しているが、その多くに一色氏が携わっている。ハイパートロンミニも一色氏が、約2年を掛けて開発した。1回の処理能力が1.5Lの発売は1994年、1L用の発売は1998年。実は約15年前に開発された、息の長い製品なのだ。1976年の創業期に中途入社した一色氏は昨年退職し、今は嘱託としてエンジニアを続けている。
「技術スタッフが少ないから、この年になっても駆り出されてます。ホントはもうね、働きたくないんですよ」

 嘘ばっかり。だって今、ハイパートロンミニの超小型版、0.5Lサイズを開発してるじゃないですか。
「お客さんには海外の家庭用機器を業務用として使っている方もいます。ネットで探すと多く出てくるという理由もあるでしょうが、残念ながら家庭用では冷却能力が低い。だったらもっと小型の業務用を開発できればと思っています」
 やっぱりエンジニアだ。
日本で「かき氷」、世界で「フラッペ」、どちらもうまいぞ!
質問:かき氷を美味しく食べるための「氷の作り方」とは?
「冷蔵庫の氷」で作れるかき氷機をつくって
 池永鉄工のスワン印のかき氷機(氷削機)は、日本ではトップ級のブランド。製品の約3分の1はヨーロッパ、アメリカ、東南アジアに輸出している。そもそも海外にかき氷の文化はないそうなので、「世界のスワン」とも呼べそうだ。
「アメリカでは自由業の輸入者が多いですね。氷さえあれば、ワゴン車に積んで公園や駐車場ですぐ商売ができるでしょう。加えて原価率が低いので人気のようです。一方、ヨーロッパで日本のシロップの評判が悪い。合成着色料などの添加物を使っているだけでNGなのですが、味もそうです。例えば、日本でいちばん人気のあるイチゴシロップ。『こんなのストロベリーじゃない!』と言われますからね(笑)」
ブロック氷専用氷削機SI-80とバラ氷専用氷削機FM-500
ブロック氷専用氷削機SI-80(左)とバラ氷専用氷削機FM-500
池永鉄工株式會社 取締役 製造部長 池永哉氏
池永鉄工株式會社
取締役 製造部長
池永 哉氏
 池永鉄工株式會社の製造部長、池永哉氏は語る。同社が氷削機の販売を始めたのは1950年。昔の縁日などにあった、約15cm角の「ブロック氷」を使った手動式だ。当時としては最後発ですでに7〜8社の競合他社があったというが、次に電動化を成功させ、その次に開発した電動のバラ氷専用氷削機がヒットする。

「昭和40年くらいに、徐々に増えつつあったファミリーレストランさんから依頼がありました。冷蔵庫の製氷機でできる約3cm角の『バラ氷』を使って、自動でかき氷をつくりたいというのです」
 ブロック氷専用の電動氷削機は昭和30年代からあったという。基本的な仕組みは手動式と同じで、刃物が付いた円盤の上に氷の固まりを載せ、スパイクのついた円盤で上から固定し、モーターで回転させて氷を削っていく。
 しかし、この構造では、冷凍庫のバラ氷を使うことはできない。考えたのは、大量のバラ氷を高速で回転させる方法だった。
ブロック氷では細かいわた、バラ氷ではサクサクの食感
 ポイントは大きく3つに絞られた。騒音、モーター、刃だ。騒音とは、多くの氷が容器内を動き回ることで「ガガガガ」と大きな音が出てしまうこと。そこで、容器を二重構造にし、材料の樹脂を変えたほか、駆動用のギヤをVベルトにした。自動車用のゴム製ファンベルトを流用することで、静音効果を高め、同時に耐久性もアップさせたのだ。
 モーターはメーカーから調達した。バラ氷用は卓上タイプなので小型のモーターが必要になるが、メーカーに尋ねると「50万個必要ですか、100万個ですか?」という返事。業務用なので欲しいのはせいぜい数千個単位だ。

「その中で、三菱電機さんから洗濯機用モーターを流用するご提案があり、個数も納得していただいたので、以降は三菱電機さんのものを採用しています。樹脂メーカー、ベルトメーカー、電気メーカーなどのご協力で完成した製品ですが、刃は弊社の得意分野です」
ブロック氷専用氷削機の刃の部分
ブロック氷専用氷削機の刃の部分
バラ氷専用氷削機のプロペラと刃
バラ氷専用氷削機のプロペラと刃
 それまではよく切れる鋼の刃を使っていた。確かに刃こぼれや錆びが出るし、衛生面に不安もあったが、海の家などが主なユーザーだったので刃は研げたし、洗浄なども楽だった。しかし、今度の顧客はレストランだ。錆びずに衛生的なステンレスの刃を考えたが、氷は意外と硬度があるため、すぐに切れなくなってしまう。そこで、ステンレスに鋼の材質を混ぜた、ステンレス特殊鋼を共同開発した。

「同時期にブロック氷専用氷削機をアメリカに輸出する計画があり、鋼では食品機械のNSF規格に適合できませんでした。マシンの開発には3年ほどかかりましたが、ステンレス化は必然の流れだったと思います」
 ブロック氷用はカンナのように氷を薄く削れるので、細かいわたのような食感となる。一方、バラ氷用は容器に入れたいくつもの氷をプロペラで回転させ、下部の刃にぶつけて削り出すので、若い人が好むサクサクとした舌触りになる。溶けにくいのでテイクアウトにも便利だ。
 祖父が創業者で、「子供時分から工場や倉庫が遊び場だった」という池永氏。大学の機械工学科を卒業して入社し、最初に携わった氷削機はバラ氷用の小型機「FM-5S」だった。 「サイズを小さくするとどうしてもパワーが落ち、氷削の能力も下がるのですよ。それなりに苦労をしましたから、今でも愛着のある製品ですね」
バージョンアップして「SI-90」から「SI-80」、なぜ?
 韓国、中国、台湾には同社の3分の1程度の値段で販売するメーカーもあるという。ただ、安心して長期使用ができること、性能に優位性があることなどから、スワンには固定ファンも多い。
「ただ、買い替え需要が少なくて、40年前の機械を使っているお客さんもいます。うれしいやら悲しいやらで複雑な気持ちですが、代理店さんからは『新製品を出さないと売れないぞ』とも言われます(笑)」
 実はさまざまな氷削機で、マイナーチェンジやフルモデルチェンジを繰り返している。ユーザーの要望に沿ってふたのサイズを変える、カラーを増やすなどだが、刃は開発当時のものを継続しており、仕上げは職人の手作りだ。

「機械で研磨するのですが、削ると刃にかえり(バリ)が出ます。これを取るのは職人が砥石を使わないと無理なのです。こうした手間から『池永の刃は一味違う』と言っていただけるのだと思います」
 バージョンアップの度に品番も変えるが、その名付け方がユニーク。例えば、ブロック用として定評のある「SI-80」は、当初は「SI-90」だった。なぜ数字が下がるのか?
「SI-90をマイナーチェンジして、スーパーの『S』を最後に付けたんです。『SI-90S』とね。次が『SI-90SS』、その次が『SI-90SSS』となるところですが、さすがに長いだろうと。そこで末広がりの8で『SI-80』にしたわけです。縁起がいいでしょう」
池永氏が開発に携わったFM-5S
池永氏が開発に携わったFM-5S
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
一色さんも池永さんもとても個性的で、楽しい取材になりました。実はこの2社は大阪にあり、歩いて30分ほどの距離という近さなのです。かなり思い付きの提案なのですが、両社が組んだら、日本発の「かき氷アイス製造機」が生まれたりして。悪ノリしすぎですね。

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