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Hadoopを始めとする高度な分析技術、独自の広告効果測定技術etc.
サイバーエージェントが拓くネット広告の高度分析技術
サイバーエージェントのインターネット広告代理事業。現在、個別ユーザーの関心に応じた広告を表示する高度な分析技術をはじめ、インターネット広告の最適化をめざした凄まじい競争が始まっている。その最先端領域を切り拓くため、同社は自社技術の強化に乗り出した。
(取材・文/広重隆樹 編集/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.03.24
その人にそのとき欲しい商品を、リアルタイムに表示する
内藤 貴仁氏
株式会社サイバーエージェント
取締役 インターネット広告代理事業管轄

内藤 貴仁氏

 近年は、「Ameba」のブログサービスやアバターコミュニティ「アメーバピグ」などのコミュニケーションサービス事業で知られるサイバーエージェントだが、創業時はインターネット広告の代理業務が中心。現在もこれが売上高の過半を占めるメイン事業だ。

 昨年暮れに「アメーバピグ」内で開催された同社の新卒採用説明会で、藤田晋社長は「インターネット広告産業は、これから30年は伸びる市場」と語った。インターネット広告の市場規模が新聞を抜いたのが2009年のこと。現在はテレビに次ぐ第2位の広告媒体だ。今後はさらにテレビをしのぐかもしれない。こうした成長を期待される市場で、同社が今後もトップクラスの地位を占め続けるためには、インターネット広告にかかわる技術開発力が欠かせない。

 そもそもインターネットには情報・文化を発信するメディアとしての役割と同時に、広告媒体としての価値がある。それは、既存のテレビや新聞も同じことだが、広告を掲示したり、その効果を測定する技術は、紙や電波媒体に比べて、はるかに高精度のものをもっている。

 Googleの「アドセンス」がそのよい例だ。システムが自動的にサイトの内容を解析し、そのサイトにあったコンテンツ連動型広告を配信する。すでに自然言語処理と人工知能を組み合わせた「セマンティック変換(意味変換)」など次世代型の広告技術開発が進んでおり、個別の利用者にとってそのとき重要な情報を、より高精度に推測して表示することも、今後は可能になるという。

 また、これまでは個々のサイト内でしかネット利用者の嗜好は把握できなかったのを、ユーザーの訪問履歴などの個人属性を一元管理することで複数の媒体で共有する試みも始まっている。これによって多数の広告を需給に応じて適宜配信することができるようになる。「アドネットワーク」や「デマンド・サイド・プラットフォーム(DSP)」という考え方だ。

 単にWebサイトだけでなく、ブログやFacebook、Twitterに代表されるソーシャルメディアも重要な広告媒体に育ってきた。またアクセス端末もこれまでのPC、携帯に加え、スマートフォンの占める割合が増えてくる。それぞれの媒体や端末に最適化した広告をリアルタイムに配信する技術も大きな技術課題の一つだ。
 こうした状況で、サイバーエージェントは広告配信や効果測定にかかわるアドバタイジング・テクノロジーの技術者採用を強めている。

世界に負けるな。広告効果測定などで独自の技術とプラットフォームにこだわる

 サイバーエージェントが、モバイル広告の効果を測定・検証するシステム「CAMP(Cyber Agent Marketing Platform)」のサービス提供を広告主企業向けに開始したのは、2009年7月のこと。モバイル・インターネット利用の拡大を見越し、モバイル広告から広告主の Webサイトへの流入数や目的ページへの到達数を出稿媒体別に集計する自社オリジナルのツールとして開発した。

 さらに同年10月には、これをPCサイト向けに機能拡張。PCインターネット広告において、広告出稿に伴う業務負荷の軽減や広告効果の最大化、さらに広告プランニングの精度向上を図るものとして注目を集めた。

 その後もCAMPは、リスティング広告自動入札、コンバージョン属性レポート、mixiアプリ解析、SEO計測、パナー最適化配信機能などの各機能を追加して拡張をつづけ、今年3月には、スマートフォン計測機能を追加するに至っている。

「1年半前にCAMPをリリースしたときは、効果測定ツールとしては後発でした。しかしこの1年半の間に技術基盤を拡充することで、すでに数百社以上の企業が利用するまでに成長しています。今後はこの技術基盤をさらに強化していきます」  と語るのは、同社で広告代理事業を担当する内藤貴仁取締役だ。

 CAMPを自社で開発する前は、同社もアメリカの技術を採用していた。アメリカのインターネット広告技術は、まだ日本の先を行っている。例えば、Yahoo!やGoogleの検索連動型広告では、膨大な検索キーワードを検索エンジン側がプールしており、それらの利用権はキーワードごとにたえず入札にかけられている。利用者が検索窓に「格安チケット」と入力したとき、これに自社のサイトを紐づいていれば、それがリスティング広告のトップに出てくる。ただその時間帯は落札できていても、次の時間に落札できていなければ、今度はライバル社が上位に並ぶ。

CAMP(Cyber Agent Marketing Platform)
http://www.ca-mp.jp/index.html

 このキーワード入札を株式運用に見立て、金融工学に基づくポートフォリオ運用技術で管理するパッケージソフトがすでに存在する。単純に個々のキーワードを購入するのではなく、広告効果の計測から分析、入札金額の指定などを一貫して行うことで、広告主にとってROI(費用対効果)が最も高い選択をリアルタイムに自動的に行っているという。
「相当なチャレンジだとは思うけれど、これからのグローバル市場でのインターネット広告代理店としてのポジションを確立するためには、そこまで技術力を高めることが欠かせない。それをやらないと、海外企業にリードされっぱなしになってしまう」という危機感が同社にはあるのだ。

 将来は広告の効果測定・分析・マーケティング技術を高め、大量の広告をマルチデバイスに向けて最適配信を行う総合ツールとしてCAMPを育てていくという。
「これからはすべての企業がネットで広告を展開し、消費者がそれを見てモノを買うような時代になる。ネットの広告マーケティング技術は、企業の生産活動や人々の消費構造変える重要な社会インフラになります」と内藤氏は断言する。

グローバル規模で消費構造を変える、新しい社会インフラに関わる

 社会インフラとしてのインターネット広告。ただ、国内のインターネット広告代理店という狭い業界だけを見る限り、このアドバタイジング・テクノロジーにかかわる技術者はまだ多くはない。もちろん、分析ツールを活用するマーケッターやクリエイターは多いが、そのツールやプラットフォームを一からつくり出すことのできるエンジニアは数えるほどなのだ。

 サイバーエージェント社内でも人が足りず、「Ameba」などの開発に携わったエンジニアがCAMPの開発に従事しているのが現状だ。
「今後我々が目指すシステムを構築するためには、とうていテラバイトでは効かず、ペタバイト級のデータ量を扱うことになる。ソフトウェアのフレームワークとしては、Hadoop の技術が欠かせないし、それを回すサーバーの負荷分散技術も相当高いものが要求されることになる。これまで、大容量のデータをマイニングするとか、分散処理してきたエンジニアにとっては、きわめて面白い仕事になるはず」  と、内藤氏は指摘する。

 インターネット広告というと、一般的な業務システム開発にかかわるエンジニアには、必ずしもミッション・クリティカルではない、特殊な領域の仕事のように見えるかもしれない。しかし、実は大きな可能性を秘めているのだ。インターネットが世界を変えるとすれば、なかでも重要な役割を果たすことは間違いない。
「インターネット広告はビジネスとしてもテクノロジーとしてもまだまだ未開拓の領域。サイバーエージェントという会社も、この大きなリンゴの一角をかじった程度にすぎない」
 と内藤氏は、未開拓領野へのエンジニアのチャレンジを促すのだった。

変革期だからこそチャンスがある。インターネット広告技術の未来を拓け
渡部 智和氏
株式会社サイバーエージェント CAMP局 システムエンジニア
渡部 智和氏

「Ameba」のデータベース開発をしていたころ、内藤氏の考える今後のインターネット広告の未来に共感し、2008年の11月からCAMPの立ち上げを行ってきたのが、渡部智和氏だ。現在は、各種インターネット広告をクリックしたユーザーがコンバージョン・ポイントへ到達するまでの集客率などを計測する「トラッキング・システム」を始めとする、CAMP開発の全体を指揮する。

 CAMPには、Javaエンジニア、サーバーインフラ・エンジニア、クリエイティブ・デザイナー、テクニカル・サポートなど総計20名のスタッフが携わっている。これまでサイバーエージェントでは、インターネット広告に関連するシステム開発の多くを外部ベンダーに委託していたが、急ピッチで自社開発に移行しつつある。その理由を渡部氏は、「いまインターネット広告の技術は大きな変革期にあり、その流れは非常に速い。その流れの中で、サービスを進化させつつ提供を行っていくには、迅速かつ柔軟な対応が可能となる自社開発体制がきわめて重要となる」という。

 インターネット広告の変革と革新は、米国のネット・ベンチャー企業を中心に急速に進んでいる。その進化スピードは、IT全体の平均よりも速いといわれる。サイバーエージェントもそうした変革の流れに対して、率先した対応をしていこうとしている。それが今回のCAMP局の人的拡充だ。

 いま最も強化したい技術として渡部氏が挙げるのは、「Hadoopを始めとする分散環境でのデータ分析技術」だ。CAMPでは既にHadoopを導入しており、今後も積極的な利用や新たな技術の導入を予定している。他企業でHadoopを経験しているエンジニアにとって、データ規模と複雑性という点で、チャレンジブルな環境であると言えるだろう。

 そうした技術要件に加えて、渡部氏はインターネット広告への興味・関心をエンジニアに求める。
「私もCAMPに関わるまでは、インターネット広告特有のデジタル・マーケティングの知識は詳しくありませんでした。開発に際して、様々な広告知識と共に、マーケティングにおける考え方を知る機会を得て、その興味は深まるばかりです。そういう意味での関心は持っていてほしいと思います」

 サイバーエージェントは国内のネット広告取り扱い高ではトップに位置する企業だけに、GoogleやYahoo!などの世界的な検索ポータル企業との協業機会も頻繁にある。インターネット技術の最先端に触れるチャンスが多いという点は重要だ。

 同時に、「Ameba」という強力なソーシャルメディアを自前で展開しながら、広告代理店として広告主企業のニーズをダイレクトに把握できるという独自の立ち位置も、同社の強みといえよう。
「ネット広告の技術は日々進化しているとはいえ、まだまだ発展途上。自分たちが提案して、それを開発できる余地がふんだんに残されています。自分たちが欲しい技術は、自ら手を動かしてつくり出すというサイバーエージェントならではの文化が、広告代理事業でも生まれつつある。それを一緒に担える人を求めています」
 と渡部氏は、これからのアドバタイジング・テクノロジーを担うエンジニアへの期待を語っている。

株式会社サイバーエージェント 取締役  インターネット広告代理事業管轄  内藤 貴仁氏
2001年入社後、インターネット広告代理事業管轄を経て、2010年取締役就任。株式会社CyberCasting&PR取締役兼務。
株式会社サイバーエージェント CAMP局  システムエンジニア  渡部 智和氏
2005年入社。新規開発局で「Ameba」の開発を経て、2006年にCAMP局に異動。バナー広告をクリックしたユーザーがコンバージョン・ポイントへ到達するまでの集客率などを計測する「トラッキング・システム」の開発を中心に、CAMP開発の全体を指揮する。
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