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メーカー系とIT系の動向を緊急取材!今後の注目産業は何か? 震災の影響はあるか?エンジニア求人と雇用の行方 メーカー系とIT系の動向を緊急取材!今後の注目産業は何か? 震災の影響はあるか?エンジニア求人と雇用の行方
東日本大震災の被災や計画停電などにより、企業の活動はこれまでにないダメージを受けている。しかし、そんな状況下で「エンジニアの中途採用」は着実に進んでいた。メーカーとIT系企業に分けてその理由と現状をいち早く伝え、今後の「エンジニア雇用の変化」についても併せて載せた。
(取材・文 総研スタッフ/高橋正志 撮影/平山諭) 作成日:11.05.12
メーカー系求人 震災前の1割減、時期を考えれば影響は些少か リクルートエージェント

メーカーのエンジニア採用は「先行投資型」

 東日本大震災で東北地方の工場の多くが被災し、一方では増産による生産ラインのフル稼働もあって、メーカーは計り知れない影響を受けている。しかし、発生から1カ月が過ぎ(取材時)、メーカー系のエンジニア求人は大きな変化は見られない。取引社数で震災前の約1割減、案件数でも同じく約1割減だという。
「私たちはこの1カ月、多くの企業から状況をお聞きしてきましたが、震災前の採用計画を大きく変更する企業は多くはありません。もちろん、個社別では深刻な状況があります。ただ、地震発生後の求人は一時落ち込んだものの、翌週には回復を見せ、現在では総じて1割減の状態です」
 例年3〜4月は新卒採用で人事が多忙になるため、中途採用数は減少する傾向にある。それを加味するとこの1割という数字は、震災前とほぼ同レベルとも言えそうだ。ではなぜ、多くの企業は採用計画を変更しないのか。


「そもそもメーカーのエンジニア採用は、短期的な人材補強というよりも5年、10年先を考えた先行投資的な要素が大きいのです。震災で生産の稼働率が下がったり、事業計画の変更を余儀なくされる企業はあっても、エンジニアの採用はより将来を見すえてのものなのです。ですから逆に、工場が増産体制になっても、そのための求人が急激に増加するということはありません」
 とはいえ「面接どころではない」状態は続くので、面接が延期されるケースも震災直後は多かったが、5月〜6月には平常のペースに戻るのではないかと辻井氏は語る。

辻井 寿氏

EMCマーケット
RA1グループ
グループマネジャー
辻井 寿氏



自動車業界に多少影響あり、遊戯機器メーカーは独特

 業界別で見ると、家電メーカーと関連するサプライヤーには震災の影響がほとんどない。工場が被災するなどで生産現場に影響は出ていても、全体的な採用計画を大きく変更する企業はないという。化学・材料系のメーカーは工場が被災した企業などは別にして、概ね震災前の採用を維持しているそうだ。半導体系もさほど影響なし。採用計画を変更する企業はあっても、震災以外の要因が大きいという。
「ある程度の影響が出ているのが自動車業界です。ただ、同じ業界でも、ある企業では採用をストップさせ、別の企業では維持するなどの個社別に差があります」


 採用計画の変更が見られるのがパチンコなどの遊戯機器メーカー。こうした企業では製品化から収益までの期間が短いため、新しい機種の納入台数を決めたら、1台分の開発・製造に必要なエンジニアの数を考え、合算した人数を短期スパンで採用する場合が多い。つまり、先行投資型ではなく労働集約型の企業であり、また自粛ムードや節電対策も考慮して、採用を控えているようだ。
「多くはないですが『被災者向けの求人』も始まりました。工場など製造現場のオペレータが多いですね」


4月からの四半期が過ぎ、7月から見直しが始まるか

「震災の影響については色々と調べてきましたが、震災前とさほど変化なしというのが実感です。弊社のキャリアアドバイザーや営業職に調査もしていますが、皆が一様に『震災のダメージは想像以上に少ない』と感じていました」
 それでは、今後の採用はどうなるのか。辻井氏は、経営会議などで中期採用計画を話し合うことになるのだろうが、見通しが立つのは5月以降ではないかと語る。ただ、夏に向けての電力不足から節電も考慮せざるを得ないし、復興に向けての取り組みもある。メーカー各社は長期的な対策を迫られ、エンジニア採用への影響も懸念される。
「企業からは『どうなるかわからない』という返事が大半です。確かな見通しが立てにくい状況のようです。私見ですが、中途採用は4月以降は計画通りに進めて、四半期後の7月から見直すようになるかもしれません。ただ、各社一斉に採用を中止したリーマンショックのときとは明らかに様子が異なります。あれほどの事態にはならないと思います」


IT系求人 震災前の5%減、今後の中途採用は上向くと読む リクルートエージェント

震災対応に追われたものの、採用意欲に変化なし

 他業種と比較してエンジニアの積極採用が目立っていたIT系企業。その勢いは続いているのか。震災から1カ月が過ぎ、「影響はほとんどない状態になった」という。震災から2週間後には震災前の1割減に戻り、4月中旬現在では5%減だそうだ。
「SIer、NIer(ネットワーク・インテグレーター)、ソーシャル系、ゲーム系などは震災後1週間でほぼ元に戻り、インターネット系、特にポータルサイト系は2週間で戻りました。ポータルサイト系が遅れたのは、地震後一斉に被災者支援サイトを立ち上げたので、その構築や運用で多忙だったことが大きな要因です」


 震災の影響はもちろんある。例えば、オフィスやビル自体の電力や通信が止まるなどで、すぐには企業活動ができなかったこと。あるいは、「面接官がアサインできない」状況になったなどだ。
「例えば、SIerは採用したくても社員が自宅待機になって面接ができなかったり、NIerは求人に変化はなくても、データセンターを持つ企業が多いので復旧・復興対応が忙しく、やはり面接どころではなかったなどです。外資系企業では面接官が帰国してしまったなどもあります。現在はほぼ平常に戻り、『採用を強めたい』と相談される企業があるほどです」

大月英照氏

ITマーケット RA2グループ
リクルーティングアドバイザー
兼 テクニカルアドバイザー
大月英照氏



EC系やSEO系で影響が出たが、技術職の採用は続く

 震災の影響を受けたのは、インターネット系でもポータル系ではなくECサイト系。物流を伴うため、「発注した荷物が届くのか」「きちんと送れるのか」といったユーザーからの問い合わせに追われたという。ただ、現在は採用も元に戻ったとのこと。
 より影響が出たのがネット広告やSEO対策などの企業。これらの企業ではもともと技術職の募集は少なく営業職が中心であり、採用を縮小した理由は「この時期に営業しても新規契約が取れない」から。エンジニアへの影響は些少だ。


 その一方で忙しいのがコールセンター業界。家電、AV機器、ゲームから保険まで業種を問わず、ユーザーからの問い合わせが殺到しているという。先のように面接官の時間が取れず、採用後の教育担当者も目の前の業務に追われているようだ。
「ただ、現場が忙しいから人を増やすという判断はないようです。この業界は1年の中で人材の増減を予想しているのですが、震災はあくまで突発的なことであり、業務はいずれ落ち着くと見ているのでしょう」


SI、NI、ソーシャル……HTML5やLTEでも新規需要が

 IT系企業のエンジニア中途採用について、今後も上向くと大月氏は考える。企業の情報システムの復旧やリプレイスなどが見込まれることで、SIerは微増。インフラ系でも同様な理由からNIerも微増。インターネット系、ソーシャル系、ゲーム系企業も、従来の勢いが続くと見ている。
「データセンター関連でもエンジニアのニーズが生まれると思います。ここ数年でデータセンターの『都心回帰』が進んでおり、沿岸部にも多く建てられました。関西よりも近いという理由から東北地方にもあった。それが今回の震災で、より安全な場所に移管する動きを感じるからです。また、データセンターは自家発電できず、無停電電源装置も電力不足対策にはならないので、ここでもエンジニアが必要になると思います」


 また、現在では「Windows7+IE9」など実装できる環境が制限されているHTML5の本格普及、LTEの一般化に伴う新たな基地局の開発や設置、Android系でもITエンジニアの採用に拍車がかかりそうだと語る。
「今のスマートフォンはクレジット決済ですが、携帯電話のようなキャリア決算に進むと、Androidの開発エンジニアが必要になります。これがLTEやWiMAXにシフトするタイミングでなされるかと思うので、ここで基地局系の求人が生まれる。IT系企業は今後もエンジニアを求めてくると思います」


震災後の雇用 エンジニアの仕事はその重要性を増す リクルートワークス研究所
雇用への影響は少なく、仕事の意義の再認識が広がる

 東日本大震災は今後、企業とエンジニアにどのような影響を与えるのか。例えば、企業の業績がじわじわと下がり続けたら、エンジニアの雇用や待遇が悪化する可能性も考えられる。
「それはないでしょう。各シンクタンクの予測でも、GDPは落ちるもののさほどの影響はないとしていますし、そもそも企業活動を減速させるような理由が見当たりません。東北地方の部品工場閉鎖などの問題が解決したら、むしろ復興に向けて、あるいは日本の産業の転換に向けて、エンジニアが活躍する場は広がるでしょう」


 個人の仕事へのモチベーションも変わりそうだ。「やりたいこと」「好きなこと」といった個人視点から、「世の中の役に立つ」「人から感謝される」という社会視点への変化だという。「製造業はやはり日本の柱なのだ」といった、自分の仕事の価値を再確認する人も増えそうだと語る。

「国際的にもそうでしょう。放射能汚染から食品の輸入禁止を決めた国もありますが、こうした弊害は短期的なはず。震災で国際社会は改めて『日本のポジションの重要性』を認識していると思います。震災の被害は甚大ですが、日本がへこたれる感じはしません」

豊田義博氏

主幹研究員
豊田義博氏


インフラ関連は伸びるが、クリーンエネルギーは疑問

 震災で需要を喚起される業種とは何か。それは住環境を含めたインフラ関連だろうと豊田氏は語る。社会的にも関心が高まるだろうし、国としてもフォーカスせざるを得ない。また、原発事故から新規の原発建設は難しく、代わりの電力の調達が必須だ。太陽光、風力、バイオマス、地熱といったクリーンエネルギーが期待される。
「ただ、それほど簡単にシフトできるとは思えません。エネルギー政策には政府の強力な後押しや資金援助などが必要ですが、現在の混迷した状態で早急な方向転換の余裕はないと思うからです」


 では、インフラの次に来る注目産業は何か。個人向け消費に関連した商品やサービスは期待されるものの、しばらくは財布のひもは緩まないだろう。将来に備えた貯蓄、余暇や趣味への消費の自粛、増税への不安感などがあるからだ。インフラなどB to B型のニーズは出てきても、B to C型のビジネスは苦しいかもしれない。
「消費の形や傾向は変わるかもしれません。少なくとも以前から変化があった大量消費型のライフスタイルではなくなるでしょう」


悲観する前に「技術」を使って日本を復興へ


 震災前から豊田氏は、エンジニアのキャリアに異変や揺らぎを感じていた。「ひとつの専門性を徐々に深めていく」スタイルから、ある分野の専門性を深めたら、そこで身につけた学習能力をもとに次の専門領域にシフトし、このシフトを繰り返しながら統合力を身につけていくスタイルへの変化。これが求められるようになってきたという。
 開発期間の短期化、組織体制の頻繁な変更、積み重ねてきた専門性のリセットなどがその理由で、特にB to C型の企業で顕著だそうだ。


「この傾向が強まるかどうかはわかりませんが、止まることはないでしょう。ただ、今回の震災では企業の対応に差が出ています。変な言い方になりますが、企業の本質を見るリトマス試験紙的な見方もできる。エンジニアはこうしたことに敏感なので、キャリアへの考え方が変わるかもしれません」
 震災で会社が被災したなどではなく、今後の日本の産業や技術を危惧して「俺たちはどうなるのか」と心配するエンジニアもいるだろう。しかし、悲観する必要はないと豊田氏は語る。
「短期的に厳しい時期は当然あるでしょうが、これからがエンジニアの出番。エンジニアのニーズや存在価値が下がることは、決してありません」

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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
この取材を行ったのは4月中旬から下旬にかけてでした。安心しました。私が感じたのは技術職の強みでした。他の職種だったらこんなに急回復しなかったかもしれない。日本の復興にはエンジニアの知識と経験が欠かせません。大変だと思いますが、よろしくお願いいたします。

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