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絶対にあきらめない姿勢が突破口を拓く!

機械

機構設計・生産技術★
モノづくり最前線のプロの流儀

仕事を通してエンジニアを「グン」と伸ばす転換点がある。切迫した環境の中で障害を逃げずに乗り越え、製品を完成させたという自信と自覚がそうさせるのだ。今回は機構設計と生産技術の現場から、こうした「プロの流儀」を見てみたい。こんな仕事をしてみたいと思うはずだ。

(取材・文・撮影 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:11.03.02

HV用部品で新規受注に成功した機構設計エンジニア/矢崎総業

HV・EV用電装部品の機構設計を一貫して担当

矢崎総業

矢崎総業株式会社
EVシステム開発設計センター
EVシステム部品開発部 第12チーム
リーダー
瀧下隆太氏(36歳)

静岡県出身の瀧下隆太氏は大学工学部を卒業後、地元の有力企業である矢崎総業に1999年に入社した。クルマ好きの彼にとって、電装系部品のサプライヤーである同社はうってつけの企業。かつ、当時はHV(ハイブリッド車)の黎明期であり、入社後は一貫してHVやEV用バッテリーパック内の部品開発に取り組んできた。

具体的には高圧2次電池周辺の接続部品であり、車両のメンテナンスや事故などの緊急時に電気回路を遮断する「サービスプラグ」、高圧のHV用電池を直列に接続するなどの「バスバーモジュール」、車両の多様な電装部品の制御回路などをまとめた接続ボックス「高電圧JB(ジャンクション・ブロック)」の、機構やきょう体の設計に携わってきた。特に高電圧JBの設計には長年取り組んでおり、「もう職人ですね」と語る。

「私は電気工学科卒ですが、弊社には電気系出身の機構設計者は多いですね。これまで多くの部品を設計してきましたが、CADでデザインして形になるのがまず喜びですし、構想したものが実際のモノとして完成したときにも醍醐味を感じます」
矢崎総業は車両内の電力や情報伝達を担うワイヤーハーネスで世界トップシェアであり、サプライヤーとしての地位を確立している。HVやEV用部品の開発もいち早く手がけ、瀧下氏が設計に携わった製品も、すでに国内主要メーカーのHVやEVに搭載されている。

「私たちの仕事は、数年後に発売される次世代車やモデルチェンジ車用の部品開発。求められるのは高性能で小さく、しかも安価な部品。HV普及の一因には価格の低下があると思いますが、そのためには部品のコストダウンも必須なのです」

「エンジニア魂」を理解してHV用部品の新規受注に成功


サービスプラグ

サービスプラグ「HEV SD-SW」

完成車メーカーは数年後の新車やモデルチェンジ車の開発に当たって、使用する部品を想定した仕様書などをサプライヤーに渡す。サプライヤーはこれを基に完成車メーカーと開発を進めるのだが、その前にはサプライヤーの選択がある。
矢崎総業といえども参入できていない車種はあり、競合他社を破って新規の「商権」を取りに行くことが求められる。4年ほど前、あるメーカーのHV用高電圧JBで瀧下氏は、この商権を取ることに成功した。矢崎総業の飛躍にもつながったが、彼の大きな実績ともなった。

実は瀧下氏が入社した後、先輩社員が別の会社のHVにおいて、同じように高電圧JBの商権を獲得していた。彼はこの「サクセスストーリー」を身近に見ているし、仕事の受注手法なども学んでいた。こうした経験はこの商権獲得に活かせたものの、受注のための手法は全く別のものだったそうだ。なぜなら顧客企業が違うから。

「メーカーによってエンジニアの思想、いわば『エンジニア魂』の切り口が違うのです。求める製品の機能、耐久性、信頼性といったベースは同じでも、その上に企業のカラーが乗るというか、接続部材の設計においてのこだわる箇所が驚くほど異なるのです。それを実現するための技術力や設計理論を持っている、しかも小さく、軽く、低コストが可能であることを提案しました」
受注獲得のためのエンジニアチームは人数が少なく、提案までの期間も短かった。また、生産技術や営業など関連部署との共同作業にもなる。その中でベストな設計を実現する苦労は多かったが、逆にこの環境が自分の成長につながったと瀧下氏は振り返る。

「どんなに安い部品を提案しても、そこに技術力が伴わなければお客様は採用しません。ですから、『御社に発注します』と言われたときは嬉しかったですね。しかし…その後が問題でした。数年後に向けての開発がいきなり立ち上がるわけですから、実作業のほうが何倍も大変だったんです(笑)」

3部品の開発を統括するリーダーに抜擢

矢崎総業

瀧下氏が勤務する大東工場

歳を重ねるごとに製品の出来栄えは上がっていると瀧下氏は語る。当然のようだが、経験やノウハウが積み重なってくるからだ。そして、その分だけ責任も大きくなってくる。
こうした中で心がけるようになったのは「定量的に物事を判断する」こと。例えば、「この部品はなじんでいますから」などとフィーリングでの説明は極力避け、数値化するなどして「なじむ」を理論的に説明することだ。

仕事の仕方についても変化があった。以前ならば指示を受けたら、「まずやってみよう」というタイプだった瀧下氏。しかし今は違う。顧客は何を望んでいるのか、それをいつまでに、どういった形で実現すればよいのか。こうした内容を熟慮してから仕事に着手するようになったという。設計はもちろん、日常的な業務でも「手段」ではなくまず「目的」を見極めてから始めるようになった。

「上の職位の人に対しても、エンジニアなら正しいことは正しいと言える。若い人でも、理論的にそれが正しいと証明できれば主張が通る。技術者とはそんな職業であると思います」
2009年12月から、先の3つの部品の開発チームを統括するチームリーダーとなった。実質的なマネージャーであり、現場の設計業務は行わなくなったものの、「部下が私の思想を実現してくれている」と現在を語る。
「不良品は絶対に出さない。何年、何万キロの使用に耐えるものを作らなければならない。これが最低限の私の命題です」

進行管理で成長しベトナムで活躍する生産技術エンジニア/駿河生産PF

思わぬ転職から2年後、新商品開発のプロジェクトに参加

駿河生産プラットフォーム

株式会社駿河生産プラットフォーム
駿河FA製造社
生産技術部 生産技術チーム
サブリーダー
谷口英久氏(32歳)

大学工学部で機械工学を学んだ谷口英久氏は、就職に当たって自宅(埼玉県)から通える企業を選んだ。入社したのはメカトロニクス機器メーカーで、機械設計や生産技術を担当する。働くうちに「ゆかりのない土地で技術を学び直したい」という気持ちが強くなったが、積極的な転職活動はしていなかった。

そんな折、中途採用の企業合同説明会に行く友人から「一緒に行かない?」と誘われる。ふらりと訪れた会場で出会ったのが、駿河精機(現・駿河生産プラットフォーム)のマネージャーだった。
「この人の下で働きたいと思いました。また、前社では購入していた機構部品を自分でつくりたくなりました。(同社のある)静岡は初めての土地でもあり、入社を希望したのです」

駿河生産プラットフォーム(駿河生産PF)は金型・金型用部品や、FA(ファクトリー・オートメーション)用部品の開発から製造までを行うメーカーであり、機械加工製品を販売するミスミグループの関連会社だ。
2004年に入社した谷口氏はFAの生産技術エンジニアとなり、2年ほどは組み立ての手伝い、部品図の仕上げ、製品の耐久テストなどをして、同社の業務全般を学んだ。そして、2006年から新プロジェクトの立ち上げに参加する。検査ロボットや組み立てロボットなどに使われる「一軸アクチュエータ」の新商品開発だ。

同業他社でも同様の製品は販売されている。同社の狙いは同等のスペックでも大手メーカー製の約7〜8割という価格帯と、他社なら最低でも3週間という納期を「3日」で納めるスピード。そのため特注品には対応しない規格品一本の開発や、マーケティングや在庫調整でミスミと協力するなどの方法が取られた。そして、機能や性能を高める実動部隊は5人。マネージャー、設計者、熱処理担当者、ミスミ担当者、生産技術と進行管理を行う谷口氏で、彼にとって入社後初の本格業務となった。

スケジュール管理の経験がエンジニアとしての成長に

アクチュエータ

一軸アクチュエータ「LX20」

アクチュエータ

可動部とレール(本体の右内側で光っている部分)

「溝を掘ったり穴を開けるには社内のどんな加工機が必要になるか、どんな形状にするか、どう加工するか、生産工程は…技術的な課題でも当然苦労しましたが、数年間の『社内修行』で培った部分もあります。しかし、スケジュール管理は全くの未経験で、もう大変(笑)。社内のいろいろな人たちに聞きまくりました」

部署間の折衝や納期の確認などに始まり、全体の進行をどう進めていくか。そのためには周りを見て、自分をその場に合わせることも学んだ。「言われたことだけやっていた」これまでに比べて、明らかにモチベーションの変化があったと語る。苦しいことも多かったが、それを「楽しい」と感じられたときに自分の成長を感じられた。

 もちろん、エンジニアとしての技量も製品に注ぎ込まれている。一軸アクチュエータの可動部と接する本体部分にはレール(溝)があり、可動部の両サイドには直径1.5ミリ程度のボールが入っている。このボールがレールと接して回転することで、スムースな可動を生む仕組みだ。他社製品では本体片側にレールが2本ある場合もあるが、この製品は1本のみ。その理由は溝の形状にあった。

両側のレールの溝は「(  )」のような半円形でなく、「<  >」に近い円が崩れたような「ゴシックアール」となっている。「(」の形状だとボールとレールの接点はひとつ。そのために片側に2本のレールをつくって合計4か所の接点で動きを安定させているが、「<」の中にボールが入ると上下の2点で接するため、片側1本で同じく4か所の接点となる。こうすることで加工の手間が減るだけでなく、コストダウンも実現できるという。
「この構造は私が考えたわけではなく、以前からありますが、メーカーによって選ぶ手法が異なるのです。安かろう悪かろうではお客様に購入していただけませんから、そこには皆で知恵を絞りました」

ベトナム工場での工程改善、今後は若手を育成したい

ベトナム

ベトナム工場から届いた製品のパッケージ

工場

昨年12月に完成した清水工場の一部

こうして一軸アクチュエータは2007年11月に完成する。そしてこの話は、実はベトナム工場での出来事も含まれている。生産は同地で行うため、谷口氏は何度も現地に足を運んだという。現在でも同製品を初め多くがホーチミンの工場で生産されており、工場では約1500人の現地の人が働く。谷口氏は1年のうち3〜4カ月はベトナムに赴任するようになった。

「商品の追加企画に参加する一方で、ベトナム工場の工程改善も行っています。現地の人にわかってもらうにはまず自分でやって見せて、同じサイクルで仕事ができると納得してもらい、最終的には確認の指示書を発行します。言葉は英語とベトナム語のミックスですが、エンジニア同士ですし技術ワードが多いので、さほど苦労はしません。現地での買い物のほうがずっと難しいです(笑)」

上記のプロジェクトでスケジュールの大切さを知り、「ちょっとお願い」といった小さな仕事でさえまずは予定を組むように変わり、しかもそれが苦にならなくなったという。そして現在、今年からサブリーダーとなった谷口氏は若手の指導を考えている。
「30歳までなら失敗を許してもらえても、逆に30歳を過ぎたら変な質問はできなくなると思うのです。だから若い人にはガツガツと何でも聞いてほしい。昔の私がそうであったように」

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