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大不況が何だ!逆境転職に成功したエンジニア奮闘記

基幹システムがやりたい!
未経験からのERP転職成功記

不況下転職に成功したエンジニアたちを紹介していく連載企画。基幹システムがやりたいという思いを強く抱きつつ、全くの未経験であった27歳SEが、これまでの経験を生かした新たな提案をしたことで、晴れてERPコンサルタントになった事例を紹介しよう。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:11.02.07

オープン系エンジニアが、SAP ERPコンサルタントに転職できた要因とは?


転職エンジニア
日本ビジネスシステムズ株式会社
エンタープライズソリューション本部
ERPコンサルティング部
細川守氏

 2009年秋に現在の職場である日本ビジネスシステムズ株式会社(以下、JBS)に転職し、現在はSAPのERPコンサルタントとして活躍している細川さん(28歳)。ERPといえば、企業の情報システムの根幹を形成する基幹システムであるが、細川さんの場合、前職までは全く畑違いの領域で活躍していた。

Webアプリの開発や、動画ポータルサイトの構築、またECサイトのコンテンツ開発等、主にWebオープン系の分野でSEとして6年近くのキャリアを積み重ねてきたのだ。
しかしある時、「エンジニアとして、もっと上流工程に携わりながらさらに技術の深い部分を極めたい」と思い、その矛先として向けられたのがERPだった。
通常ERPの中途採用の場合、ある程度の経験がなければ入社が難しいといわれている中で、あえて細川さんは前職を退職後、退路を断って転職活動を開始する。
 
時は経済危機後の不況真っただ中。しかも未経験の細川さんは序盤、苦戦するもののある工夫をすることで、4カ月で現在のポジションをつかむことができた。
果たして細川さんはどのような工夫をして、転職成功にこぎつけたのか?早速、その点も含めた転職活動の内容について本人に語ってもらおう。

技術者として一つの技術を極めたい思いを胸に、転職を決意


JBSに入社するまでに2度、転職経験があります。

IT系の専門学校を卒業後、就職したのはITスタッフの派遣企業。短期案件を中心に、個人のエンジニアを客先に派遣するスタイルをとっていて、その案件も業務システムの一部カスタマイズや動画ポータルサイトのアプリ開発、また製造業のシステム運用保守からWebアプリ開発まで、業種や分野を問わず非常に幅広い領域を請け負っていました。
まだ経験の少ない若手のころは、短期間でさまざまなシステム開発を経験できるというメリットが得られ、ある程度満足はしていました。しかし3年目、4年目と過ぎていくうちに、「一つの技術を極めたい」「上流工程に携わり、ステップアップしたい」という思いが強くなっていくことに。
 
そこで6年目を迎えるタイミングで、前職である大手ECサイト企業に転職をしました。
ECサイトのコンテンツの開発や集計処理などを担当したのですが、当初自分が描いていたキャリアアップの目標と違う方向に……。常に売上アップを至上命題に掲げられた上、実際の開発業務は外部のITベンダーに丸投げで技術的な領域に携わるチャンスがほとんどない状態。そのため、入社後半年で早々に見切りをつけ、再び転職活動をスタートさせました。
 
しかし活動を始めた2009年夏ごろといえば、最も不況の影響が採用市場に色濃く出ていた時期。中途採用をストップしている企業も多く、困難な活動を余儀なくされることは容易に想像できました。
事実、活動当初は人材紹介企業にお願いしていたのですが全く紹介できる企業がない状態。正直焦りはありましたが、前職の失敗もあったことから、逆にこういう状況だからこそしっかり選んで長く勤められるいい会社を見つけようと決意、今度は自分自身で転職サイトを活用して活動を仕切り直したのです。

Webオープン系に強い利点を、SAP ERPにどう役立たせるのかをアピール


 具体的にどの分野で技術力を高めたいのか考えたとき、浮かんだキーワードが「ERP」でした。これまでERPそのものの開発経験はありませんでしたが、その周辺領域で協力した経験があり、「技術者として根本的なキャリアアップを図るためには、基幹システム領域を根底から理解する必要がある」と常々、考えていました。

しかし応募したERP企業はことごとく落とされ、不況の上に未経験という2重のハンデを背負う厳しさを実感。
 
その中で出会ったのが、今勤務しているJBSでした。調べてみるとSAPのERPの実績が豊富にありつつ、単にパッケージを売るのではなく、お客さまのニーズに合わせてきめ細かくカスタマイズして提案していく姿勢に共感。ぜひここで仕事がしたいと思いました。
しかし普通に応募すれば、ERP未経験の私が落とされるのは確実。そこで自分なりに考えた結果、これまで培ってきたWebオープン系の技術をERPに取り込むことで、新たな付加価値を生み出せるはずだと確信したのです。例えばERPは独自のUIを使っていますが、人によっては使いにくいケースもあります。そこで、ユーザビリティの向上を目的にスマートフォンで決済ができる仕組みや一般的なブラウザで利用できる仕組みを導入するなど、オープン系の知識を活用することで、もっとERPを便利にすることができるはず。
面接では、そうした付加価値を生み出す理由や方向性を説明しつつ、ERPはゼロから覚えていく姿勢を積極的にアピールしたことで、内定をいただくことができました。
 
入社後、SAP ERP導入プロジェクトで検証・テスト・品質管理などを担当し、従来の古い会計システムとERPをどう連携させていくかといった課題に取り組んでいます。また最近ではチームリーダーとして、ERPによってどんなメリットが得られるのかをお客さまに提案していて、自分の理想に近い環境で仕事ができていることに満足しています。
今回の転職成功の要因としては、「ERPは畑違いだから……」と最初からあきらめなかったことに尽きると思います。一見全く違う分野でも、考え方一つで自分の経験を十分生かせるチャンスがあることを今回の経験を通して実感しました。
今後、Webオープン出身でなおかつSAP ERPも理解している希少なエンジニアとしてさらにステップアップしていくつもりです。

細川さん採用企業:日本ビジネスシステムズ株式会社の採用戦略


日本ビジネスシステムズ株式会社
エンタープライズソリューション部
ERPコンサルティング部部長
兼ビジネスシステムインテグレーション部部長
犬飼泰一氏

独立系ソリューションプロバイダーとしてJBSは設立から20年にわたり、ITソリューションを提供してきました。特にSAPを中心にしたERPに関しては、10年前からいち早く取り組んできたことで、日本を代表する企業に対して導入から運用保守までトータルでサポートしています。
 
今回、ERP事業を中心に語らせていただきますが、当社が求めているエンジニアは「今持っているスキルを活用して、創造性を持って新しい領域に挑戦できる人」。今後、ERP事業はお客さまのニーズに対応できる「新たな付加価値」を生み出していかなければ、将来性は見えてきません。そこで重要なのは、今回紹介した細川のような、異業種のキャリアを持つエンジニア。当社にいるERPエンジニアの多くは、Webオープン系の知識やスキルがありません。しかし今後、ERPはeコマースなどのWebサービスやアプリ・端末と連動したシステムに対応していく必要に迫られている状況で、まさに細川のようなエンジニアが活躍できるチャンスが訪れています。
 
ERPの経験があることに越したことはありませんが、大事なのは顧客の要望に対して具体的に提案できるアイデアを持てるかどうかということ。今後のERPビジネスにはさまざまな発展可能性がある、エンジニアにとって非常に刺激的で面白いテーマです。ぜひERPの経験がなくとも、あなたなりのスキルやアイデアを生かして、これまでにないERPを生み出す意欲があればお会いしましょう。 

【転職活動のカギ】これまでのスキル×未経験分野の技術を組み合わせて、独自のアイデアを生み出す

 一般的にWebオープン系のエンジニアが、ERPのような業務系の基幹システム分野に転職するケースは少ない。今回のケースも通常であれば、採用難などの事情も考慮すると前職と同じ業界に進むのがベストだと誰もが思うだろう。

しかし細川さんは、目先のことではなく、将来エンジニアとしてキャリアアップしていくために、あえて未経験分野のERPに挑戦した。その中で転職成功に結びついたのは、「自分の得意分野をERPにどう生かすか」という視点を持って、その答えを面接の場で提案できたことが大きい。
もし自分のキャリアで行き詰まりを感じているのであれば、転職するしないは別としても、一度全く違う分野に目を向けてみるのも、キャリア停滞打開の糸口になるはず。未経験だからこそ、新しい価値や可能性を生み出せるチャンスが得られることを、今回の事例は証明している。

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