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ブラウザベースでHTML5、JavaScript、CSSのコードが投稿できる
5千人以上の技術者が利用する面白法人カヤックjsdo.it
Web開発者が技術、デザイン、アイデアを競い合うWebアプリコンテスト「Mashup Awards 6」。Tech総研編集部も、メディアスポンサー賞の一つとして、「エンジニアライフ応援アプリ賞」を設けている。当日の授賞式の様子と併せて、同賞受賞者へのインタビューをお伝えする。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:10.12.28
3カ月の長丁場で磨かれるスキル。応募は歴代最多の544作品に
「Mashup Awards 6」表彰式
「Mashup Awards 6」表彰式

 Webサービスの開発において、提供元の異なるAPIやコンテンツ、技術を組み合わせて、一つのサービスとして形成するマッシュアップ型開発。その浸透とともに、マッシュアップアワードへの注目度は年々高まっている。第6回を数える今年(MA6)は、前回の346点を大幅に上回る544作品の応募があり、参加登録者も690名と、過去最大規模に膨らんだ。APIやプラットフォームなどを提供する協賛企業も、リーディングパートナーとして12社、他の協力企業・団体数が52社、合わせて64社とその数は歴代最多だ。

 アワードへの応募条件はシンプル。グーグルやヤフー、DeNAなどの協力企業が提供する222種類のAPIの中から、最低1つ以上を利用して、新しいWebサービスやアプリを開発すること。単に作品の応募を受け付け、審査・表彰するだけでなく、開発者のスキルアップのために、「Mashup Caravan」という技術セミナーを期間中に継続して行うのがMAの特長だ。今年は、その場でチームを組み、アプリをつくってしまう開発イベント「Mashup Camp」も同時並行で開催された。企業や専門の枠を越えたコラボレーションを通して、開発者の交流を図り、開発者コミュニティにおけるスキルの底上げを狙っている。

 3カ月にわたる長丁場のイベントの集大成として、12月4日には、約200名の参加者を集め、東京・有明TFTホールで表彰式が開かれた。今回は、特別審査委員に勝間和代さん(経済評論家)、広瀬香美さん(シンガーソングライター)、小飼弾さん(アルファブロガー)など著名人が加わり、マッシュアップ技術の社会的認知を広めるのに一役買った。また授賞式の途中で広瀬さんが生演奏を披露するなど、エンジニアイベントにしては珍しい華やかさも加わった。

 審査員一同の圧倒的な支持で、栄えあるMA6の最優秀賞に輝いたのは、上田哲郎さんの「育児日記 EmiriSystem」。2001年上田さん自身に子供が生まれたのをきっかけに、その育児日記を公開。子供の写真、動画を投稿したり友人同士で共有したりするサービスへと発展させた。上田氏がこれまでにアップした写真は約12万枚、約870Gバイトにも達する。世界23カ国に約3300人のユーザーがおり、合計で写真約370万枚、動画約6万本がアップされている。

 その“真正親ばか”ぶりには審査委員一同も深く感動。技術的にも、PC、携帯電話、スマートフォンだけでなく、デジタルフォトフレームやテレビ、さらにPicasaなどのオンラインサービスと同期し、多様なフォーマットで出力できるようにした多彩な実装技術が高く評価された。

上田哲郎さん
MA6の最優秀賞「育児日記 EmiriSystem」
上田哲郎さん

「Social Game賞」(DeNA)
リーディングパートナー12社のテーマ賞も続々「Social Game賞」(DeNA)
勝間和代さん
特別審査委員、勝間 和代さん
(経済評論家)
勝間和代さん
広瀬 香美さん
(シンガーソングライター)
小飼弾さん
小飼 弾さん
(アルファブロガー)
Tech総研賞は、面白法人カヤックの技術共有サービスに

 メディアスポンサー賞の一つとしてTech総研編集部も「エンジニアライフ応援アプリ賞」を設けた。今回は、面白法人カヤックによる「jsdo.it」を受賞作品に選んだ。「jsdo.it」は正式名称が「jsdo.it - Share JavaScript, HTML5 and CSS」というもの。HTML5、CSS、JavaScriptのソースコードを投稿し、共有できるWebサービスだ。

 ブラウザ上に各コードを記述すると、Webサイトが自動的に作成できる環境を構築。また、その制作環境を活かして他のユーザーが記述したプログラムコードを自由に改造できるコラボレーション機能や、制作に行き詰まった時に、他のユーザーへ質問ができるQ&A機能なども実装している。また、プログラムコードを入力するエディターには、エラーコード判定機能や入力時の変数チェック、そしてユーザーが自由に「JavaScript API」を追加できる拡張機能を設けている。

 Tech総研の授賞理由は、最近Web開発で人気のHTML5のソースコードを共有し、コラボレーションし、さらに作品まで集約できるという点だ。「新しいもの大好き」「知ってることは教えたがる」「知らないことは解明したい」というエンジニアの本能を巧みに刺激しており、エンジニアのキャリアを応援するTech総研賞にはピッタリの作品だと判断した。

 jsdo.itのプロデューサーの片岡巧さんは、「これまで共有しづらかったHTML5の情報をコードとともに集約できる他にはないサービス」と自負する。以下、片岡巧さんと同サービスプロジェクトマネジャーを務めた瀧澤紗由梨さんへの受賞記念インタビューをお送りする。

エンジニアライフ応援アプリ賞 〜〜面白法人カヤック
「jsdo.it - Share JavaScript, HTML5 and CSS」

※HTML5に対応した最新のブラウザでご覧ください。非対応のブラウザでは正しく表示されません。

はじめてのかんばす。 - jsdo.it - share JavaScript, HTML5 and CSS (http://jsdo.it/vesperworks/A6C0)

Webデザイナー、マークアップ・エンジニアの学習意欲を刺激するWebサービス。eラーニングなどへの拡張も進む ──面白法人カヤック「jsdo.it」
ブラウザベースでJavaScript、HTML5、CSSのコードを投稿し、Webサイトをつくる

──Tech総研賞の受賞おめでとうございます。「jsdo.it」開発の狙いは?

片岡

カヤックでは2008年12月から、ブラウザだけでFlashをつくることができる「wonderfl build flash online」(以下、wonderfl)を運営しています。ブラウザ上にActionScript3.0を投稿して、Flashサイトを作成するサービスです。これまでは、Flashの開発というと専用のアプリをマシンにインストールしないと使えなかったのが、ブラウザベースだけで開発できるようにした点が技術的に新しく、多数のFlashクリエイターに参加していただいています。

wonderfl の好調な展開をみながら、Webエンジニアの開発を支援するサービスをもっと広めたいという思いがありました。瀧澤を含むチームのメンバーと話しているうちに、ちょうど注目を集め始めた「HTML5」にフォーカスしたサービスは面白いかもしれない!という話になりました。

瀧澤

Webデザイナー、マークアップ・エンジニア、JavaScriptエンジニア(Webプログラマー)の3職種の方々に、作品を投稿してもらったり、技術の勉強もしてもらえたら…という思いですね。

──wonderflがベースにあるんですね。

片岡

単にWebサイトをつくれるだけでなくユーザー同士がコミュニケーションし、誰かが投稿した作品をカスタマイズして発展させることができる「Fork」という機能は、wonderflで培ったものを投入しています。しかし、ActionScript3.0とJavaScriptではは扱う言語が異なります。Flashを作成する機能とWebサイトを作成する機能は、技術的には大きく異なりますので、僕たちにとってもこれはチャレンジでした。

片岡 巧さん
片岡 巧さん
(プロデューサー:面白法人カヤック演出部クリエイター)
瀧澤 紗由梨さん
瀧澤 紗由梨さん
(プロジェクトマネージャー:同演出部クリエイター)
瀧澤

wonderflとjsdo.itは、言語の違いからユーザー層も異なるだろうとは思っていました。最初はjsdo.itにもみんな集まってくれるかなという不安もあったのですが、これまでにこういったサービスがなかったので、すぐに色んなWebクリエイターの方が遊びにきてくれました。また、リリースしてまもなくグーグルやアドビシステムズ社と「JAM - HTML5♥Flash」というWebイベントを共催することになりました。JAMは一つの「お題」に対して、「JavaScript/HTML5/CSS」と「Flash」それぞれの言語を使い、クリエイティブなWeb表現を追求するというプログラミングイベントです。そこでも、たくさんのクリエイターの方に参加いただきました。

片岡

JAMについて補足しますと、FlashとHTML5の優劣についての議論を目にすることもあるのですが、やはり一番大事なのは、エンドユーザーにとってどれだけ最適な体験をしていただけるか、ということだと思います。そういう意味も込めましてJAMのイベント名も、「HTML5 vs Flash」ではなく、2つの間をあえて♥マークで結んでいるんです。

開発期間は2カ月。すでに4000人以上のエンジニアが投稿

──Mashup Awardsへの参加は、これまでにもありましたね。

片岡

はい。過去にも何回か参加しています。今回は対象となるAPIがものすごくあったので悩みました。そのなかから技術的にチャレンジしがいのあるものを選び、結果的に4つの作品を出品しています。制作チームの規模はたとえば、ディレクターとデザイナーだけでつくったり、デザイナーとエンジニアだけでつくったり、チームの組み方はその時々で大きく変わります。

──jsdo.itの開発にはどのぐらいかかりましたか。またどのような制作体制だったのですか?

片岡

開発期間は約2カ月ほどです。まず、プログラマーとデザイナーが、企画から開発までを一気通貫で実装しリリース。その後、「このサービスをもっとドライブさせてみたら?」という話が持ち上がり、ディレクターが投入し、プロジェクトとして運営ができるようチームを固めていきます。

──すでに、jsdo.itのサイトは6月にオープンしています。いま登録者はどのぐらいですか。

片岡

12月初めの時点で5000人ほどです。現在、「HTML5」というバズワードは世界中で広がっていますが、そのHTML5と連携するJavaScript はサーバーサイドエンジニアだけでなく、Webデザイナー・マークアップエンジニアでも注目されています。現在、jsdo,itは日本と英語の環境を用意していますが、さらに多言語対応にすることで、世界中のエンジニアからアクセスを集めることができると思います。また、 投稿された作品の投稿理由や背景などのストーリーが見られるようになると、もっと活発になるだろうなと期待しています。

──カヤックからの作品は他にも、相手の居場所を知ることができる iPhoneアプリ「安心レーダー」がありますね。これは今回優秀賞の一つでした。全体にカヤックの作品には開発意欲の高さというものを感じるんですが、MA6というイベント全体についてどんな感想をもっていますか。

瀧澤

APIを使うことで私たちの表現の場が広がるし、アイデアも出やすくなります。ふだん使えないAPIもこのイベントに合わせて公開されており、その意味では刺激なイベントだと思います。

片岡

同じAPIを使っていても、ミックスさせる技術によってサービスの内容が変わってくる。その違いも楽しめますね。これからも応援ではなく、より積極的に参加していきたいです!

技術誌との連動企画、大学でのeラーニングへの活用も進む

──今後、jsdo.itはどんな拡張をめざしていますか。

片岡

jsdo.itの可能性は制作技術の共有だけではなく、たとえば、人材採用などにも利用できると考えています。たとえば、企業は人材募集時に「ソースコードや作品など、あなたの技術をアップしてください」と伝えます。そうすると、その企業は作品だけでなく、コードも確認できますので、スキル評価がより緻密にできると考えています。一方で応募者は、ポートフォリオとしてjsdo.itを利用いただくと、ランキング機能やフェイバリット機能などを利用して、第三者の評価を自己アピールに利用できます。jsdo.itやwonderflを利用することで、Webクリエイターの採用方法を大きく変えることができるかもしれません。

 

また、年明けからは技術評論社と協業して、HTML5の技術解説記事をjsdo.itとコラボレーションして展開していきます。実際のコードやその実行結果を確認しながら、解説記事を読むことができますので、読者の方により有益な技術情報を提供できるのでは、と考えています。jsdo.itはiPadでも確認できますので、技術書の電子書籍化など、この方法は、他のWebマガジンや電子書籍でも使えますね。

一方wonderflは、神奈川の大学へ、クラウド型eラーニングシステム『wonderflラーニング』を導入していただいています。従来のFlashの授業では、デスクトップにそれぞれアプリをインストールしたり、コードをメールで添付するなど、指導者と学習者がコミュニケーションを図るのにひと手間もふた手間も工夫が必要でしたが、『wonderflラーニング』を利用いただくと学習者は学校でも自宅でも勉強ができる環境を提供しています。次世代のWebクリエイターが「jsdo.it」や「wonderfl」を通じて誕生することができたら、こんなに嬉しいことはありません!

【コラム】Mashup Awards 6」審査員の声
肩肘張らず気軽にやっちゃうのがマッシュアップ
小飼弾さん
特別審査員 小飼弾さん
アルファブロガー

 今回、初めて特別審査員になりました。最初は僕が何かもらえるのかなと思ったけれど、逆に、審査員ということで何か出してと(笑)。それで僕が開発したAPIを提供しました。マッシュアップというのは、そもそも仰々しい式典を催すというよりは、エンジニア系のブログのネタになる程度の地味なものなんですよ、僕にとっては。本来のマッシュアップというのが、そういう性格のもの。つまり、肩の力を抜いて気軽に試してみてほしいってことですね。

 僕が受賞作品(小飼弾 404 API Not Found賞 横山 彰子氏「オンラインコード共有ツール Codetype」)に選んだのは、僕のAPIを使ったなかでは、いちばん地味なものでした。いかに軽く、作っているかというところが授賞ポイント。その軽さがいろんなサービスの基盤になる。だからみんなもっとやろうよ、というのが僕の主張ですね。
 とはいえ、さすがに優秀賞を取るような作品のレベルは高い。すぐにでもお金を取れるようなサービスが多いなというのが実感です。

多彩なAPIの組み合わせによる、新しいサービスの創造を期待

 最優秀賞の「育児日記 EmiriSystem」。誰でも思いつくアイデアだとは思いますが、その完成度は非常に高く、あれだけのデータを集められるサービスに仕上がっているのは、「親」としてのニーズを的確に汲み取っているためだと思います。審査員からの評価はダントツで高かったですね。一方でライブの面白さというか厳しさというか、授賞式でのプレゼンまでが審査対象になるのですが、一つだけ、うまくデモンストレーションができなかったものがありました。あれはちゃんと見たかったですね。残念でした。

 グーグルもいくつかAPIを提供していますが、その利用にはやや偏りが見られました。ニーズや、テーマに合わせて必要なAPIを組み合わせて新しいモノを生み出さないと意味のあるマッシュアップにならない。単にAPIを利用しましたというだけでは、物足りません。このあたりは作品を開発する上で大切なことだと思います。

 MAも6回目を数え、よい具合にWebエンジニアの交流の場、腕試しの場になっているのではないかと思います。私は採用担当者ではないのでよくわからないけれど、協賛企業の中には今後仕事を依頼したり、採用したい人を発掘する場にもなっているんじゃないでしょうか。そういう意味でも意義のあるイベントだと思います。

「Mashup Awards 6」表彰式
審査員 藤井彰人さん
グーグル株式会社
エンタープライズ部門
シニア プロダクト マーケティング
マネージャー

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