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動くアバター「アメーバピグ」、自社開発の検索エンジンetc.
エンジニアの成長が新事業を生むサイバーエージェント
一見不可能なアイデアも技術でカタチにしてしまう。そんなエンジニアが存分に自分のスキルを試せるフィールドをもつサイバーエージェント。高い技術力を駆使し、世界のユーザーを魅せるサービスを日本から発信することを目指す。
(取材・文/井元康一郎 編集/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:10.09.08
【戦略】世界市場で利用率No.1のサービスを作るためにエンジニアパワーが必要

株式会社サイバーエージェント 新規開発局 局長 兼、アメーバ事業本部 ゼネラルマネージャー(サービス企画・開発部門)
長瀬 慶重氏
通信会社の開発系エンジニアを経てサイバーエージェントに入社。「Ameba」をはじめ、サイバーエージェントの新規サービスの開発を担当してきた。技術オリエンテッドな会社作りを目指している。

Ameba会員1,000万人突破の原動力となったエンジニアの創造性と技術力

 日本を代表するインターネットサービス「Ameba」の会員数が今年7月、ついに1,000万人を突破した。04年のサービス開始後、5年近くを費やし、09年4月に会員500万人を達成した。それからわずか1年あまりでユーザー数を2倍に増やしたことになる。

 原動力の一つに考えられるのは、09年2月に「Ameba」に実装された、ブラウザ内で動くアバターを使ったコミュニケーションサービス「アメーバピグ」だ。Javaプラットフォームを使ったこのサービスは一見、シンプルな動きに見える。だが、大勢のユーザーが同時にアクセスする動的コンテンツをスムーズに、しかも低コストで処理するのはきわめて難しかったという。その壁を突破することを可能にしたのは、エンジニアの持つ創造性と技術力だった。

エンジニアパワーあってこそユーザーを喜ばせることができる

「当社はインターネット広告代理事業というイメージが強いのですが、既に売上構成比の半分はインターネットメディア事業によるものであり、「Ameba」を中心としたメディア企業として存在感を出していきたいと思っています。そのためには、「アメーバピグ」のような多くのユーザーに支持されるサービスをこれからもどんどん出していく必要がある」
 新規開発局 局長兼アメーバ事業本部のゼネラルマネージャーとして、サービス企画と開発を統括する長瀬慶重氏は語る。
「インターネットメディアを開発する際に、2つの大事な要素があります。まず重要なのはユーザーニーズを素早くキャッチアップし、必要なものをすぐに出すこと。しかし、それだけでは十分ではありません。もう1つは、ユーザーを驚かせ、楽しんでもらえるものを創り出すこと。それを実現するのに必要不可欠なのは、エンジニアの力なのです」

 世界には無数のB to C Webサービスが存在し、激しい競争が繰り広げられている。その競争に打ち勝ち、成功を収めるサービスは、ほぼ例外なく優れたユーザビリティと低コストを両立させている。「Ameba」が成功を収められたのは、基本的なサービスを作ったり、アメーバピグのような付加機能を実装したらそれでおしまいというのではなく、改良と新たなサービスの追加を絶え間なく繰り返していることも大きい。

エンジニアパワーあってこそユーザーを喜ばせることができる

 現在、「Ameba」で使用されている検索エンジンは大手ベンダーのものではなく、経験3年目のエンジニアがもっと便利な検索エンジンを創れるのではないかと考え、チャレンジの末にできたものだ。Webサービスをさらに楽しく、快適なものにすることができると判断すれば、サイトの表側をまったく変えないまま、バックエンド側をガラリと変えるといったこともやるという。
「そうした改良のタネは、これからも尽きることはありません。例えば現状では5分、10分と決まった間隔でブラウザの情報更新がされているのですが、さらに軽い負荷でリアルタイムに情報更新を反映できるようになったとしたらどうでしょうか。おそらく今の常識にとらわれない、新しいサービスが生まれることでしょう。そういうチャレンジをこれからも引き続き行っていくためにも、高いスキルを持つエンジニア且つ新しいことに挑戦していきたいと考えているエンジニアをどんどん迎え入れたいのです」(長瀬氏)

 目指しているのは、利用率ナンバーワンのWebサービス創り。そして、ターゲットは国内に限らないグローバル市場。その目標を達成していくためには、エンジニアの才能、スキルを最大限に生かしていく必要がある。

 サイバーエージェントのエンジニアの活躍スタイルは一種独特である。IT業界に限ったことではないが、基本的に企業は製品やサービスを作るためのプラットフォームと詳細な開発計画を持っており、エンジニアはそれに合わせて仕事をする。が、サイバーエージェントではそれがない。プロジェクトは企画から始まり、どのようなアーキテクチャやフレームワークを使うかも全て、エンジニアの自主性に任されているのだ。

2010年8月9日より、iPhone版をβリリース。
ないものは自分で作る! ピグで作った自作サーバー(:ミルフィーユサーバー)
グローバル展開の鍵を握るのは “成長できる”エンジニア

「当たり前の話ですが、世の中はどんどん進歩するものです。ある時点において最も優秀なアーキテクチャが、しばらく経ったらいつの間にか時代遅れになっていたなどということは珍しくない。われわれがエンジニアに求めるのは、枠の中で働くことではなく、自分自身が最先端の技術をどんどん学ぶこと。そのエンジニアの成長とセットでサイバーエージェントが発展していくことが理想的な状態だと思います。そのためにも、エンジニアが新しい技術を身につけた成果を、開発にどんどん反映させられる環境づくりを、常に心がけています。技術は実際に試してこそ本質がわかるものですし、成長できるエンジニアにとってはそれが楽しみでもある。それをスポイルする理由はない」(長瀬氏)

 ITの技術革新はまさしく日進月歩だが、アルゴリズムのように技術革新のカギを握る分野における研究成果はまず、アメリカの学会で発表されるケースが多い。サイバーエージェントは日本とアメリカ・カリフォルニア州に開発拠点を持っており、エンジニアの一部はアメリカ側に常駐している。必要とあらば、エンジニアがアメリカで学ぶことが可能な体制も持っている。
「世界には巨大なネットサービスがいろいろあります。既に「アメーバピグ」を「Ameba Pico」として世界展開していますが、Facebookのプラットフォームでサービスを提供することで、英語圏だけでなく、様々な言語圏のユーザーに利用されています。私たちは、世界中の人に使ってもらえるサービスを日本から発信していきたいと思っています。インフラ、データベース、ネットワークからSE、プログラマ、Webデザイン、Flashなど、さまざまなスキルを持つ優秀なエンジニアに門戸をたたいてもらい、その実現に向けて共に進んでいきたいですね」(長瀬氏)

【現場力】“動くアバター”アメーバピグはエンジニアのアイデアから生まれた
株式会社サイバーエージェント 新規開発局 ソフトウェアエンジニア
名村 卓氏

SIerのシステムエンジニアを経てサイバーエージェントにソフトウェアエンジニアとして入社。Javaを基盤技術としてノンブロッキング通信のサーバー構築に成功。世界に通用する日本発のサービス作りを目指す。

サービス内容や仕様の策定は開発者のアイデアに任される

「アバター機能をAmebaに実装しよう」
 最大手ブログサービス「Ameba」を、ブログにとどまらないコミュニケーションサービスとして利用者を増やす原動力となった“動くアバター”「アメーバピグ」。開発要件は、この一言だけであったという。

「当社は何かを開発するとき、何をどのように作れという細かい要件はあまり出ません。アメーバピグのときもそうでしたが、要件は大抵大まかなもので、実際にどのようなものを創るかは、開発チームの意思に任されることが多いんです」
 Javaのスキルを生かして「アメーバピグ」を作り上げた立役者の一人、新規開発局のエンジニア、名村卓氏は、サイバーエージェントの開発スタイルをこのように語る。子供の頃からプログラミングに興味があり、大学ではPerl、PHPを用いたサイト構築に興味を持った。卒業後はSIerで業務系アプリのSEとして働いたが、自分のスキルを大きく試せるフィールドで働きたいという思いから、Webサービスの強化を目指していたサイバーエージェントに入社した。

斬新な技術をどんどん試せる。受託開発とはまったく異なる世界

 IT業界において、“曖昧な要件”は一般的には鬼門。狙い通りのモノを仕上げるために、できるだけ具体的なプランをエンジニアに提示するのが普通である。が、サイバーエージェントはまったく逆の発想で開発を展開していく。開発チームは大まかな要件をベースに、どのようなサービスが素晴らしいかアイデアを練り、自分の持てる技術と世の中にある技術を駆使して自らも成長しながら最高のものを創り上げていくのだ。
「受託開発と比較して、エンジニアに与えられる技術の裁量権の広さも深さもまったく違います。受託は期日までに注文通りのものを作って納めることが重要。斬新な技術などは試しづらく、技術のトップランナーから置いていかれているような感じがしました。それに対してサイバーエージェントの仕事は、とにかくユーザーに支持される良いものを創ることが最優先。もちろんユーザーが安心して使えるサービスであり続けることを前提に、最先端技術や、これはちょっと気になるという技術はどんどん試せるんです」

 アバターを使ったサービスを創ると決まったときも、後発で単なる2Dのものではなく、「Ameba」ならではの面白いアバターサービスを創りたいと考えたという。
「開発にかかる頃、ちょうどセカンドライフが話題になっていました。専用ソフトが必要で動作も重いが、アバターが動くこと自体は非常に面白く思いました。そこで、低スペックのパソコンでもサクサク動くアバターを創ってみようと。ちなみにもともとネットゲームのように、たくさんのユーザーが集まるコミュニケーションスペースでもっと新しいサービスが生まれるのではないかと興味があったのも動機のひとつでした。」
 名村氏は、「アメーバピグ」を開発する前は、リアルタイムで対戦できるオンラインゲーム「K-1 WORLD MAX タイピングバトル」を作っていた。その開発の経験から、同じような技術の組み合わせで動くアバターも、結構面白いんじゃないかと思ったのだという。

ノンブロッキング通信のJavaサーバーを自前で作った

 タイピングバトルの経験が生きたのは、Javaサーバーの構築だ。商用サービスとしてのクオリティを保つためには、多数のユーザーが同時にアクセスしてもオーバーロードにならないようにする必要があるのだが、当時は適切に負荷分散できる市販のサーバーが存在せず、1サーバーあたり1000ユーザーが精一杯。そのままでは設備投資がかさんでしまう。

「そこで試したのが、1処理ごとにスレッドが1つ立っていたブロッキング通信ではなく、データが来たときに随時スレッドを使うノンブロッキング・アルゴリズムを使うJavaサーバーを作ることでした。オンラインゲームのサーバーに近い考え方です。設計は簡単ではありませんでしたが、同じCPUを使いながら同時に接続可能なユーザー数を既存の1000人から1万人以上へと、文字通り桁違いに増やすことができました」
 PCの性能や通信環境への依存度が低く、ネットにつながるユーザーが誰でも楽しめるサービスである「アメーバピグ」は、こうした技術的チャレンジの積み重ねによって生み出されたのである。

テクノロジーはJavaだけじゃない。良いものはどんどん試すべき

 現在、サイバーエージェントのサービスの多くはJavaプラットフォームを用いて作られており、エンジニアもJavaのスキルを持つケースが多い。が、良いものを創るという目的を達成できるならば、Javaだけにこだわる必要はないと名村氏は言う。
「Javaだって、10年前は今日ほど便利で自由度が高いものになるとは思われていませんでした。僕はJavaが好きで、Javaに関してもこれからもスキルを磨いていきたいと思っていますが、当社はJavaオンリーと決まっているわけでも何でもありません。いいものはどんどん試すべきだし、それが出来る風土があると思いますよ」

 今後、サイバーエージェントはグローバル市場も視野に入れつつ、ビジネスを拡大していく計画であるという。各国の市場性やプラットフォームにフレキシブルに対応するため、柔軟性の高いシステム作りがますます要求されるようになる。高いスキルを持ち、先端技術の取り込みに貪欲、そして何より、新しいモノ好きなエンジニアにはありがたい環境であるといえるだろう。

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