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マルチデバイス戦略とグローバル戦略で会員数1億人を目指す
日本最大会員数SNS グリー田中良和社長が描く成長戦略
2010年6月期の単独営業利益が対前期比2.3倍の約195億円と過去最高益を達成したグリー。ソーシャルゲームの爆発的な伸びが注目の的だ。「明日のグリーは、今日のグリーとは違う」と、絶えず進歩への思いを持ち続ける田中良和社長。今後の成長戦略を聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:10.09.01
スマートフォン対応などマルチデバイス戦略でさらなる発展へ

「2004年に、家賃10万円の小さなマンションの一室からスタートしたグリー。今は東証一部上場企業。会員数でも日本最大のSNSに成長しました。もはやベンチャーではない。六本木ヒルズにはGoogleをはじめ、日本や世界を代表するIT企業が何社も入居している。私たちもそれに追いつかなくてはならない。その覚悟のほどを示そうと思いました」
 と、今年7月に本社オフィスを六本木ヒルズに移転した理由を語るのは、グリーの田中良和社長だ。

「インターネットを通じて、世界をより良くする」のがそもそもの起業の目的。以前から、グリーは単なるSNSやソーシャルゲームの会社ではないと言い続けてきた田中社長。ただし、現在日本のネット業界で最も成長しているのはソーシャルゲームだ。
 SNS利用者のうち45%がソーシャルゲームを継続的に利用しているというデータもある(註1)。「GREE」もまた、「釣り★スタ」「踊り子クリノッペ」など内製ソーシャルゲームで基盤を築いてきた。さらに外部企業がグリー向けソーシャルゲームを開発できる「GREE Platform」をスタートし、この6月にはソーシャルゲームの第1弾を公開した。このプラットフォームには、セガやスクウェア・エニックスなど大手デベロッパーを含む約30社が参加。メジャータイトルを含む約60種類(8月現在)が揃い、ソーシャルゲームのフィールドはますます熱気を帯びている。

 ソーシャルゲームの拡大のさらなる飛躍点になるのは、 iPhone、Android携帯などスマートフォン市場の伸張だ。
「これから3年ぐらいの見通しを考えると、スマートフォンが従来の携帯電話(フィーチャーフォン)を超え、主流になるのは確実。当社のソーシャルゲームも、この1年、スマートフォン対応を進め、最近β版としてiPhone向けのサービス提供を始めました。スマートフォンであれば、言語さえ変えればグローバル市場にそのまま対応できる。私たちのビジネスをグローバルに拡大するうえでも、スマートフォンというデバイスは重要です」(田中氏)

2010年8月9日より、iPhone版をβリリース。

(註1)日米中ソーシャルアプリビジネス調査報告書2010  http://www.impressrd.jp/news/100617/socialapp2010

グローバル戦略を推進し、全世界へサービスを展開

 よいサービスを実現するためには、より多くの人に使ってもらう必要がある。会員数拡大はソーシャルメディアのビジネスにとっては必須の課題だ。田中社長が指標とするのは、世界最大のSNSである Facebook のユーザーが5億人という数字。それからすれば、日本最大とはいえ2,125万人(7月末現在)というグリーの会員数はまだまだ小さい。逆にいえば、それだけ成長余力があるということだ。

 グリーが今掲げるのは、「今後全世界でサービスを展開し、会員数を1億人に伸ばす」というもの。1億人は日本の人口に匹敵する数。もちろん、国内だけでそれを集めるのは無理。海外市場やスマートフォン対応を前提にしての話だが、勝算はある。
「これまでも日本のゲームソフトは世界の人に受け入れられてきました。グリーのゲームもこれだけ日本で支持されているのだから、世界市場でも競争優位に立てる自信があります。ソーシャルゲームを軸にして、eコーマスや他のエンタティンメントと連動した新しいサービスを展開していきたい」(田中氏)

 グローバル戦略はけっして絵に描いた餅ではない。この6月、田中社長はTwitter上で「12カ月以内に米国・中国にオフィスを開設します。グローバル展開とスマートフォンに挑戦したい人を大募集です」といったメッセージを発信した。楽天のように社内公用語を英語にするかどうは未定だが、人種、国籍を問わない採用方針をさらに強める。

 インターネットは容易に国境を超える。自動車、家電などのものづくり産業がかつて超えなければならなかった国境や文化の壁は、インターネットビジネスにとっては相対的に低い。「日本のグリー」が「世界のグリー」になる日は意外と近いのかもしれない。

ソーシャルメディアはミッションクリティカル。SI系エンジニアへの期待

 ソーシャルゲームの歴史は浅い。日本ではこの3年といってもよい。ゼロからの取り組みにあたって、エンジニアが果たした役割は大きい。インターネット技術の進展をウオッチしながら、自分たちで考え、学びつつ、企画からアプリ開発、ネットワークインフラの構築まで、常にエンジニアが主導的な立場を担った。
「エンジニア中心にサービスを企画するというのが、私たちを含むソーシャルメディア企業の特徴。FacebookもYouTube もそうです。そこのエンジニアたちは、インターネットの最先端テクノロジーを使って、新しいサービスを一般のコンシューマに提供し、それによって世界を面白くしたいというマインドに溢れている。何よりユーザーのレスポンスをダイレクトに受け止めることに仕事の喜びを感じ、サービスの収益性にも責任をもつエンジニアたちです」

 田中社長自身が、法学部出身であるにもかかわらず、楽天時代には、必要なプログラミングをゼロから覚え、サービスの企画から実装、カスタマーサポートまで何でもこなしたことで知られる。いま世の中で求められることを必死で「頭」で考え、それを提供するために同時に「手」を動かすことの重要性をよく知っている。
「今、私たちが求めているエンジニアの一つの像が、自分でサービス企画を考え、自分で作れるというタイプ。ただ、それだけでなくインフラの運営に長けたエンジニアも求めたい。例えば、グリーはいまサーバーを数千台以上抱え、日本最大級のWebサービスを展開する企業です。これほどの高負荷のトラフィックを処理しながら、サーバーを安定的に運用しなければならない。ソーシャルメディアがこれだけ普及すれば、従来の電話やメールと同じように、一瞬たりとも止めてはならない社会インフラになる。そこを支えてくれるエンジニアが必要です。サーバー技術者としても、ここでしか学べない環境を提供できると思います」

 ミッションクリティカルとは、これまで金融系やeコマース系など24時間365日、一瞬も止めることの許されないサービスに使われる用語だったが、ソーシャルメディアもその一つになろうとしている。
「だからこそ、これまで大規模な基幹系システムの構築・運用に携わってきたSI系のエンジニアの力がぜひ欲しい。その高い技術力をぜひ当社で活かしていただきたい。クライアント企業の仕様通りに作るというより、自社発信のサービスを世界に展開するダイナミックさがあります」と、田中社長はSI系エンジニアへの期待を語る。

エンジニア入社支度金への思い。強固な財務基盤と変化対応力に自信あり

 この8月、グリーは11月30日までの期間に入社を決定し、かつ入社したエンジニア職に、同社基準で選考の上、200万円までの入社支度金を支給することを発表した。上記で語ったような優秀なエンジニアを、喉から手が出るほどに欲しいという田中社長の強い思いがこめられたプロモーションだ。
「転職するには、当然ながら引越しなど準備が必要。今回の支度金制度は、そのサポートが出来ると考えている。さらに、ネット業界の待遇条件を、私たちが率先して引き上げたいという気持ちもある」と田中社長はその狙いを明かす。

 同じインターネット企業のDeNAやドワンゴが同様の発表をしたこともあり、ニュースが Twitter などで伝わると、エンジニア業界にはどよめきが走った。「思い切った優遇策」と評価する人が多い中で、「今はよくても、5年後はどうなっているかわからない」と、懐疑的な感想をもらす人もいたことは事実。急成長企業がゆえに、一度は洗礼を受けなければならない、周囲の不安というものだ。

「携帯ゲーム市場だけを見れば、いずれは臨界点に達することはあるかもしれない。しかし、そのたびに事業を変えていけばよいだけのこと。例えばアップルはかつてパソコンの会社だったが、今は iPhoneやiPadなどの革新的なデバイス、iTunesストアなどの新しいビジネスモデルで、新しい会社に生まれ変わった。私たちもPC向けのSNSからモバイルへ展開し、さらにこれからはデバイスを超えたソーシャルメディア企業へと一歩踏み出している。企業はたえず変化するもの。とりわけネットに足場をおく企業にとっては、今の姿が5年後も同じであると考えることのほうがおかしい」と田中社長は言う。

 この変化への対応力が失われない限り、グリーの成長は続くだろう。同時に、企業財務的な視点からみても、同社の財務基盤の安定性には定評がある。なかでも、豊富な現預金を保持していることは、継続的な投資戦略と経営の安定を見込める好材料だ。
「高水準の利益率、売上高に加え、保有現金の大きさでも、他のネット企業はもちろん、一般の事業会社に比べても優位に立っているという自信がある。また、私たちは急成長しているといわれるが、Facebook など世界のソーシャルメディア産業の成長力はそれを上回る。私たちの本格的な成長もこれからだ」と、田中社長は、一部の懐疑的なユーザーがもつ成長鈍化の懸念を一蹴する。

「インターネットを通じて、世界をより良くする」という明確なビジョンのもと、成長と安定のバランスを維持しながら、エンジニアが自らの創造性を発揮できる企業。グリーの動向にはこれからも目が離せない。

田中 良和氏 グリー株式会社 代表取締役社長
1977年、東京都生まれ。日本大学法学部政治経済学科在学中に、仲間と共にインターネットサービスの研究を始める。99年、ソニー・コミュニケーション・ネットワーク(現So-net)入社。2000年、友人の紹介で楽天に転職。03年、仕事のかたわら趣味でSNS開発を始めた。04年2月に個人サイト「GREE」公開、同年12月に楽天を退社し、グリー株式会社設立。06年、モバイル版を本格稼働。08年、東証マザーズ上場。テレビCMなどの宣伝広告でも知名度を上げている。
田中良和が語る「グリー成功を支えた技術への思い」

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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る

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