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モバゲータウンに「モンハン」シリーズを配信!
市場拡大が続くソーシャルゲーム業界にカプコンが参入
ゲームを通じてユーザーが交流を深めるソーシャルゲームが世界的にブレイクしている。このホットな分野にゲーム業界大手のカプコンが進出を決めた。ソーシャルゲームの隆盛は、これからのエンジニア転職市場にどのような影響を与えるのか。カプコン、DeNAの開発担当者に話を聞いた。
(取材・文/広重隆樹・井元康一郎 編集/宮みゆき 撮影/佐藤聡・栗原克己)作成日:10.08.25
ゲーム業界大手参入で、にわかに活気づくSAP業界
モンハン日記モバイルアイルー村
事前登録者数7万人突破!
『モンハン日記モバイルアイルー村』
2010年8月10日より配信開始

 カプコンといえば、アーケードゲーム、家庭用ゲーム機向けソフト、「モンスターハンター」などのオンラインゲームと、多彩なゲームラインナップを保有する、業界有数のゲームプロバイダだ。なかでも人気なの「モンスターハンター(モンハン)」シリーズ。そのソーシャルゲーム版第一弾が、8月10日、モバゲータウンで配信開始された。

 タイトル名は「モンハン日記モバイルアイルー村」。「アイルー」は、モンハンのマスコット的キャラクターだが、集まってくるさまざまなアイルーたちの希望を叶えて、コスチュームやお金などのアイテムを得ることで、「村」を発展させていくゲームだ。携帯からモバゲータウンにアクセスし、ユーザー登録すれば誰もがプレイできる。正式リリース前の事前登録者は8万人を超え、ファンの気持ちの高ぶりがわかる。

 カプコンのモバゲー進出は初めてだが、これは単に有力ゲームの登場で、モバゲーのラインナップが充実したというだけでなく、ソーシャルアプリという新しいマーケットが、既存のゲームプロバイダを巻き込んで発展しつつあるという状況を示す端的な証拠といえる。IT・ソフト系エンジニアにとっては、こうしたSAP(ソーシャル・アプリケーション・プロバイダ)業界の状況は、ゲーム自体への興味を別にしても、注目に値するものだ。

 そこでまずは、なぜ今、ソーシャルゲームという新境地に挑もうとしているのか。カプコンの担当者に話を聞いた。

ソーシャルゲーム進出を決めたカプコンの真意とは

 さて、ソーシャルゲームに参入するカプコンの狙いは何か。
「ゲームの楽しみにはゲーム性、ビジュアル、通信などいろいろな要素があります。今日、とくにニーズが急増しているのが、ゲームを介したコミュニケーション機能です」
 と言うのは、今回のソーシャルゲーム・プロジェクトの旗振り役を務める、カプコン開発統括本部の手塚武MC(モバイル・コンテンツ)開発部長だ。

「ニーズに応えるため、ソーシャル機能を実装し、コミュニケーションを楽しむことを前提にしたゲーム作りに乗り出そうと考えました」
 ソーシャルゲームへのカプコンの期待は大きい。コミュニケーションという新しい楽しみを付け加えることで自社のゲーム商品をより豊かにできるということだけではない。これまでゲームにあまり興味を示していなかったユーザー層を、ゲーム市場に呼び込める可能性があるとみているのだ。

 従来型のゲームの多くは、ゲームセンターの専用機、家庭用ゲーム機、PCなどのハードウェアを使用する、どちらかといえばヘビーユーザーを対象とするものが多かった。しかし携帯で楽しむソーシャルゲームは違う。
「従来のゲームと大きく異なるのは、ゲームに手を出す敷居の低さ。ゲーム内容はシンプルで、コミュニケーションを取り合う楽しみもある。これまでゲームにあまり興味を示さなかった層をゲームの世界に引き入れられる大きなチャンス」というのだ。

手塚 武氏
株式会社カプコン
開発統括本部
MC開発部長 兼プロジェクト企画室長
手塚 武 氏
90年にカプコンに入社後、アーケードゲーム、家庭用ゲーム機向けソフトの開発を担当。99年、NTTドコモのiモードのスタート時に、同サービス向けimodeゲームの開発担当に。現在はiPhoneをはじめスマートフォン向けのゲームアプリを開発する一方で、ソーシャルゲームの企画開発を推進している。
第一弾『モンハン日記 モバイルアイルー村』が狙うユーザー層
モンハン日記モバイルアイルー村
メインキャラクターのアイルー
手塚武氏

 カプコンがモバゲータウンで配信する、本格ソーシャルゲームの第一弾は、同社のメガヒットソフトである「モンスターハンター」(モンハン)シリーズの派生ソフト『モンハン日記 モバイルアイルー村』。モンハンは強力なモンスターを様々な武器や技を駆使して倒していくというもので、難易度は比較的高く、グラフィックもリアルだ。それに対してアイルー村は、モンハンに登場するマスコット的存在の癒し系の猫「アイルー」をメインキャラクターとする、のんびりとしたゲーム性の作品だ。

 なぜ大人気となっているモンハンそのものではなく、外伝的なソフトをソーシャルゲームに選んだのか。手塚氏はソーシャルゲームのユーザー層の特性を考えての判断だったと明かす。
「ソーシャルゲームは、ゲームを始めるハードルが低い一方で、ゲームに慣れていない人がプレイする割合も高い。いきなりハイレベルな技術を要求されるようなゲームでは、あっという間にプレイを中断されてしまい、そのうち飽きてしまう。誰でもできる簡単なコンテンツであることが、ソーシャルゲームの重要なファクター」というわけだ。

 これまでも、コミュニケーションが可能なゲームはいくらでも存在した。たとえばカプコンのアーケードゲーム、「ストリートファイター」はランダム通信対戦機能が大変な人気を博した。モンハンもプレイ中にチャットで意思疎通を図れる。が、それらをソーシャルゲームとは呼ばない。
「それらのゲームは、ゲームが主でコミュニケーションは従だった。ソーシャルゲームは逆。気の合う友達が集まったところで始まるトランプや大富豪のようなもので、いわばゲームはコミュニケーションを通わせるための媒体なんです」と、手塚氏は“主従逆転”がポイントであると指摘する。

 カプコンにとって、モバイルコンテンツやオンラインゲームの開発は、これが初めてではない。有力タイトルを携帯用に移植したノウハウもある。例えば、携帯版「バイオハザード」では、オリジナルゲームのような、大規模なストーリーを延々とプレイさせるのではなく、ミッションごとにゲームが細かく完結するようにプレイシステムを全面変更。そのことによって、ユーザーの支持を集めることに成功した。
「モバイルソーシャルゲームについても、我々は単にヒット作を移植しようなどとは考えていない。これからもソーシャルならではの面白さを出していきたい。これまで我々が培ってきた携帯アプリの豊富な開発経験が生かせるところだと思う」と、このジャンルにも大いに自信をもっているのだ。

急拡大中のグローバル市場をターゲットにした未来展望

 モバゲータウン、GREE 、mixiなどの急成長で話題沸騰のソーシャルゲームだが、これは日本特有の現象ではない。もともとゲームを含むソーシャルアプリというサービス概念は、海外で確立され、浸透してきたもの。当然、国内ソーシャルゲームのプラットフォーム各社は、海外展開を視野に入れている。

 コンテンツ・プロバイダーのカプコンもまた、ソーシャルゲームを国内のみに向けて展開するつもりはさらさらない。 「当社はアーケードゲームを多数手がけていたこともあって、全世界で売れてこそ良い商品と考えるDNAがある。ソーシャルゲームでも、持てる開発力、企画力を駆使して、世界市場を目指していきます。すでに Facebookを利用した展開など、様々な手を打っています」と、手塚氏はグローバル市場への展望を語る。

 もちろん、すべてのフェイズで道筋が見えているわけではない。ソーシャルならではの未知の部分もある。なかでも、ソーシャルゲームのインフラ基盤である、サーバーの構築・解析技術は重要だ。 「これまでもオンラインゲームなどである程度経験は積んできていますが、ソーシャルゲームはそれよりはるかに大規模な統計データの解析が必要になる。解析結果を受けて、サービス、ソフトの改良につなげていく。このサイクルも従来のゲームに比べてはるかに短くて速い。この部分は今後技術を磨いていきたいところです」(手塚氏)

 ゲーム・プロバイダーが、ソーシャルゲームに進出するにあたって、その開発・運用にあたる技術者のプロフィールはどう変化するだろうか。ソフトウェア開発については、帯域の広さに頼らないスリムなプログラム開発が求められており、フラッシュ、CGI、Javaなど、エンジニアに求められる基盤スキルは今と比べそれほど大きく変化することはなさそうだ。

 それ以上に重要なのは、「パフォーマンス向上が要求されるサーバー側のスキル」と手塚氏。この部分の強化は急務だ。さらに、「ソーシャルゲームでモノを言うのは、どういうコンテンツ、サービスをどういうシステムで提供するかという企画の部分」と指摘する。  エンジニア自身が、企画力を併せ持つことになれば、鬼に金棒だ。ソーシャルゲームの世界をより広げるためには、企画+技術をあわせもつエンジニアへのニーズが高まることになるだろう。

手塚 武氏
2011年には課金売上だけで1000億円市場へ
日本国内におけるソーシャルゲーム市場規模推移と予測
出典:(株)矢野経済研究所
大塚 剛司氏
株式会社ディー・エヌ・エー
ソーシャルメディア事業本部
プラットフォーム統括部
統括部長 大塚 剛司氏
東京大学卒業後、2005年新卒採用でDeNAに入社。営業からエンジニアに転身し、モバゲータウンのソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」の企画から開発を総責任者として担当。大ヒットゲームに育て上げる。現在はプラットフォーム統括部長として活躍中。

 矢野経済研究所が2010年6月28日に発表した「ソーシャルゲーム市場に関する調査結果2010」によれば、2009年度の国内ソーシャルゲーム市場は前年度比7.5倍の338億円に達するという。この金額は、あくまでもユーザーがゲームの利用対価として支払った金額で、広告収入は含んでいない。mixi 、モバゲータウン、GREEのいずれのプラットフォームも基本プレイは無料だが、ゲームがコミュニケーションツールとして定着していくにつれて、アイテム課金が増えるなど、そのマネタイズ(無料サービスを収益事業化すること)にいち早く成功したことが急成長の要因とされる。

 むろん2〜3年前にはソーシャルゲームといってもほぼゼロの市場だったのだから、7.5倍という急成長は驚くには当たらない。ただ、同研究所の予測では2011年度には、09年度のさらに3.5倍の1,171億円市場に成長する見込みで、けっして一過性のブームではないことがわかる。

 倍々以上の成長を続けるソーシャルゲームについて、DeNAの大塚剛司氏はこう語る。
「DeNAに関して言えば、2010年1月のモバゲータウンのオープン・プラットフォーム化が成長に拍車をかけた。ここで一気に月間PVがそれまでの380億から700億にまで倍増した。SAP業界の中には、月間課金売上が1億円に達する企業が複数社あらわれるなど、プラットフォームの成長がSAP業界全体に波及していることがわかります」

 今回のカプコンの参入についても、もちろん両手を挙げて歓迎している。
「カプコンはゲーム業界の大先輩。ソーシャル部分とゲーム部分とでは、開発手法に違いもあるが、我々としては学ぶことが多い」
 ソーシャルゲームでは、ゲームのリリースはビジネスの第一歩にすぎない。ユーザーのアクティビティを随時モニタリングしながらチューニングを重ねることが、ヒットの最低条件だ。

「当社にはユーザーの動向を精緻に分析するツールがある。その数字を、ゲームプロバイダとも共有しながら、ものづくりの現場にいる人たちが腹をわって、より良いゲームの姿を探っていくこと。両者のコラボレーションにより、ソーシャルゲームの新しい可能性を切り拓いていくことを大いに期待しています」

大人のユーザーを納得させるクリエイティブ力が求められる

 大手ゲームプロバイダが参加することで、ソーシャルゲームの社会的認知度は否応なく高まるだろう。大塚氏は、モバゲータウンの今後の成長力についても明るい展望を描く。
「これまでガラケー(フィーチャーフォン)に限られていたアクセスが、10月以降PCやスマートフォンにも拡大されるため、現在、2000万人超のモバゲーユーザーが、数年内に3000万人以上に増やしたい」と、アクセス手段の多様化で、さらに成長力は加速されるとみている。

 問題はユーザー数の拡大に見合うだけの課金収益をどれだけ上げられるかだ。そこでターゲットになるのが、「これまでゲームのコアなファンではなかったが、ソーシャルゲームの登場で関心を持ち始めた、30〜40代のユーザー」だ。彼らは一人遊びのゲームではなく、世代を超えたコミュニケーションが可能なソーシャルゲームに、自身のライフスタイルの拡充を見いだしている。

「40代の人が、ゲームの世界では普段接することがあまりない若者と交流できる。そういう非現実世界でのエクスペリエンスが、リアル世界の充実にもつながっていく」(大塚氏)というわけだ。そして何より、この年代は中高生に比べれば、アイテム取得に費やせる金額も大きい。プラットフォーム側が待ち望んだ顧客層なのだ。

 一方で、ソーシャルゲームは、これまでゲームに全くといっていいほど関心を持たなかった若い女性層のマーケットをも新たに開拓しつつある。ペットを育てる、畑に作物を植えるなど、ほのぼのとした“育てゲー”の世界でのコミュニケーションは、彼女たちにとっては癒しの極致ともいえよう。
「一つのゲームはあくまでも入口にすぎない。それを通じてコミュニティが広がり、それが別のゲームを始めるきっかけにもなる。そういう全体の流れを企画・演出することが、これからのプラットフォーマーの役割であり、最重要のビジネス課題になっていく」と大塚氏は指摘する。

 DeNAではそうした企画を創造するのもエンジニアの仕事。
「もちろんWeb技術などに特化したエキスパート型のエンジニアや、マネジメント能力に長けたプロジェクトリーダーも必要ですが、当社が最も欲しいのは、サービスを考えながら手も動かせる(コードも書ける)というタイプのエンジニア。顧客の仕様に沿ってプログラムを組み立てればよいという話ではなく、ソーシャルゲームはゼロから1を生み出すクリエイティブの要素が強い仕事だけに、頭と手を同時に動かすことが欠かせないのです」という。

 ソーシャルゲームの隆盛は、Webエンジニアや、そのインフラを司るネットワーク・サーバー技術者、さらに業務系システム開発者も含めて、IT業界のエンジニア全体に大きなインパクトを与えようとしている。これまで「ゲームは自分の仕事ではない」と考えていたエンジニアも、ソーシャルゲームがもつ可能性を知れば、その固定観念を取り払わざるをえないだろう。自分の仕事をクリエイティブに捉えなおす、これはよいチャンスなのだ。

大塚 剛司氏
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