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実録 求人魂!知られざるエンジニア採用の舞台裏 Vol.22

社長自ら応募者に会うため、
沖縄&北海道に出向くわけ

「地方在住エンジニアが東京への転職を目指す時、もし転職希望先の社長がわざわざ自宅に訪ねてきたら?」。今回の求人魂では技術者を育てることに熱心かつ、とことん社員を大事にするハートフルな企業を紹介したい。

(総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:10.08.19

【今回の求人魂】 全国1400か所の顧客から信頼される、電気のプロフェッショナル集団


今回紹介企業
株式会社稲葉電機

千葉市を拠点に事業を展開している株式会社稲葉電機は、社員数25名(そのうちエンジニアは13人)の小規模な企業。しかし“電気のプロフェッショナル集団”として、全国で約1400か所(事業所や工場施設)にも及ぶ顧客から厚い信頼を獲得している、非常に存在感の大きな企業だ。
海外の場合、特に発展途上国などでは停電は日常茶飯事の出来事だが、日本は年間平均停電時間が4〜5分と世界最高レベルのインフラを有している。それゆえ、「電気は24時間365日使えて当たり前」という感覚が半ば常識化しつつある。
しかしその一方、ここ数年多発している“ゲリラ豪雨”等に代表される異常気象による水害や地震等の自然災害、また電気配線等のインフラ設備の故障によるトラブルによって、停電を引き起こすケースは年々、増えているという。

そこで重要になってくるのが、「いかにトラブルを起こさないインフラやシステムを構築し、維持管理できるか」、そしてトラブルが発生した場合「いかに迅速に対応・復旧できるか」という点。その2点に対応するためには、電気に関する根本的な仕組みを理解しつつ、どんなトラブルやアクシデントにも過去の豊富な経験から素早く解決策を導き出し、現場で対応できる高度な技術力が必要不可欠になる。
その点、稲葉電機は少数精鋭ながら技術者それぞれが、豊富な経験と高い技術力を武器に日々、全国各地を飛び回りながら迅速に対応することで多くの顧客から信頼され、「電気のことなら稲葉電機」といわれるほど、唯一無二の存在となったのだ。

【求人背景】1年で平均1〜2名の厳選採用ながら、時間をかけてじっくり育てる方針


株式会社稲葉電機
代表取締役
吉澤鎌二氏

少数精鋭を貫く稲葉電機では、採用に関しても1年に平均、1〜2名と少数に留めている。
その理由について、代表取締役の吉澤氏は語る。
「一人前のプロになるためには、非常に長い期間が必要。まず採用後、最初の2年間は先輩技術者について現場を駆け回りながら、電気に関する基本的な知識やトラブル対応に関するノウハウを吸収します。その後、一人で対応しつつ、何か問題があれば周りの先輩にアドバイスや応援を求めつつ、経験数年積んで初めて本当のプロになれる。そのため、当社で育成できる技術者の枠は限られてしまうわけです」

じっくり時間をかけて一人の技術者をプロに育てていく。そこには、顧客に信頼され続けていくために何をするべきか、という吉澤氏の強い信念がある。
では、稲葉電機が求める技術者とは具体的にどのようなタイプなのか?
「最も大事なのは、技術よりも人柄なんです。目の前のことをじっくりコツコツとこなす姿勢や、顧客に対して明るく接しようとする態度があれば、技術は後から自然と付いてくるはず。さらに“想像力”があればなお、理想です。未然にトラブルを防ぐためには、目に見える結果だけではなく、そこから想像力を働かせてトラブルを起こさない新たな仕組みを生み出すことが、この仕事で一番求められる能力。とにかく常に考え、想像することが、プロで電気技術者になるための近道なのです」

【求人魂1】 応募者の素の姿を把握したいから。社長自ら地方出身応募者に会いに行く


社長が自ら会いに行き、認めた技術者が毎年着実に増えている

技術よりも人柄。そう語る吉澤氏は採用に関してもある“2つのこだわり”を持っている。
まず稲葉電機では、転職サイト経由で応募した中から書類選考を通過した応募者に対して、履歴書等の応募書類を改めて郵送してもらう選考プロセスを取っている。その時吉澤氏は、中でも自筆で書いたものを重視しているという。
「もちろん書かれた内容も重視しますが、人柄というものは筆跡や履歴書に貼られた写真を見ればだいたい、把握できるもの。そして中からピンときた方に対しては、電話で連絡をとりますが、その時のちょっとした声や応対方法でもわかりますね」

そしてもうひとつのこだわりが、応募書類を見て「採用したい」と判断した場合、応募者が住む所へ本人にあらかじめ了承を得てから、社長自ら出向いて面接をする点だ。その意図について吉澤氏は
「理由は2つ。ひとつは特に応募者が遠方の場合、わざわざ1時間の面接を受けるためだけに遠くから来てもらうのは、大きな負担になるためその点を配慮して。もう一つは会社で行う面接だと応募者が緊張してしまうなど、どうしても普段とは違う仕草や姿勢になってしまいがちです。そこで応募者が普段生活している場所、つまりリラックスできる環境の中でざっくばらんに話をすることで、応募者の“素の姿”を通した人柄を正確に把握することが目的なのです。私の使命は技術を残すことではなく、人を残すこと。仕事や顧客に対する当社の理念をしっかり受け継ぐ素質や人柄のある人を採用し、長く活躍してもらうことが何より重要なのです」と語る。
これまでにも北海道や沖縄から応募してきた技術者にも実際、忙しい合間を縫って出向いているというのだから、吉澤氏の「よい技術者を採用したい」という強い思いが表れているのではないだろうか。

【求人魂2】毎年実施する1週間の海外研修が、プロの技術者への近道



シンガポールでの研修旅行記念撮影。毎年、海外での新たな発見が日々の業務に役立っている

人を大事にする吉澤氏の考えは、21年前から毎年1週間実施している海外研修旅行の目的にも色濃く反映されている。
「人を育てる上で非常に大事なのは、一人ひとりがあらゆるモノに対して疑問を持つということ。そこからすべてが始まるのです。疑問を持った人に対して教えることは、疑問を持たず全く何も考えていない人に対して教えるよりもはるかに教える価値が高い。海外研修でも観光地だけでなく、あえて現地の暮らしを実感できる場所に連れて行きます。その後、ある程度のお金や時間を与えて社員それぞれが思い思いに行動するのです。日本とは全く異なる環境に身を置くことで初めて生まれる疑問、それが新たな発見への重要な糸口になる。つまり何かと別の何かを比較しなければ気付かない、わからないことを自覚することこそが、当社の研修の目的なのです」

帰国後、社員はレポートを書くのだが、その中には異国の地で知った新たな発見や疑問、そしてその答えを日々の業務にフィードバックさせたいという意欲がにじみ出ているという。

【今後の展望】継続的に一人ひとり、厳選採用してプロの技術者を育て、継承していく


「刻一刻と変化していく技術に対応できる技術者を今後も育てていきたい」と語る吉澤氏

今後も今まで通り、1年に1〜2人のペースで採用し、プロの電気技術者になることを目指してじっくり育てていく方針だという。しかしながら、その教え方や技術の伝え方に関しては時代の流れや変化に応じて、臨機応変に変えていく必要性を吉澤氏は指摘している。
「電気の世界では、今日習得した技術が明日にはもう使い古されたモノになるほど、実は変化が激しい。その変化にどう対応していくか、さらに長期間に及ぶ育成期間内で変化の対応できる技術力(更新技術)をどのように伝え、教えていくのかをもっと深く考えながら、進めていきたいと思います」

精度の高い図面を描くのに3年はかかるというこの世界で、じっくり時間をかけて育成しつつ、激しい変化の波に対応できるプロの技術者を育てることに尽力する企業は、普段目立つことはなくても世の中に必要不可欠な存在。もし本気で電気のプロを目指すのであれば、まず転職サイト経由で応募しつつ、自筆のレジュメを吉澤社長宛に送ってみてはいかがだろうか。

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