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エンジニア給与知ッ得WAVE Vol.
102
通信費に勉強会─IT技術者の
自己啓発費は月々1万5千円
新しい技術やサービスが次々と登場するIT業界。エンジニアたちは、日々の勉強が欠かせない。そのためにどのぐらいの費用を費やしているのか。会社はそれをどうサポートしているのか。ITエンジニア300人に聞いたいまどき「自己啓発費用」とは──
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:10.08.20
持続的に学習し続けるITエンジニアたち、その費用は?

 技術誌を買って勉強し、ネットで情報収集、セミナーに参加して最新技術動向に触れる。常に最先端で輝いているエンジニアになるために、欠かせないのが勉強。その学習費用として、エンジニアは一人あたり月1万5000円をかけている──そんな結果がTech総研の行ったITエンジニア調査から浮かび上がった。

 ITエンジニアの勉強といえば、昔からプログラミング言語の習得が定番だ。言語の種類は時代とともに変わってきたし、近年はWeb系のスクリプト言語などもそれに加わってきたが、いずれも仕事の道具として必須のものだ。海外で商品の売買を行う商社マンにとっての外国語、外科医にとってのメスさばきの技術とそれは似ている。

 IT関連の国家資格や、特定の製品技術を扱う上で必要なベンダー資格も、学習投資の対象だ。医師免許のように持っていないとその仕事に就けないわけではないが、現実的には必須とされる場面は多い。資格試験にパスするためには、参考書を買わなければならないし、試験を受けるにも費用がかかる。

 他にも専門領域ごとに無数の技術知識が必要で、しかもその中味が日々新しくなるのがITの世界。情報を追いかけるだけでも大変だ。これらの学習に関する情報は、今はネットにあふれ、日々更新されている。従ってインターネットのための通信費用も、広い意味では学習費用に含めてよいかもしれない。

 独学で勉強するだけでなく、セミナーや勉強会へ参加することで初めて得られる知識もある。ベンダーが開催する技術セミナーなどは、高額の参加費用がかかる。すべてを自前でまかなうとすると、かなりの出費だ。

勉強はネットでする? 通信費用が書籍代を上回る

 こうした自己啓発費は、月々どのくらいになるのだろうか。Tech総研がIT系エンジニア300人を対象に行ったアンケート調査によると、技術関連の書籍代が2,841円、月々の通信費が9,346円、セミナーや勉強会の参加費が1,402円、その他を含む合計が15,536円となった。

 意外と少ないという印象もあるが、これは各項目で「0円」と回答した人の分を含めての平均で、もしこの「ゼロ回答」を除くと、その平均は書籍代が5,074円、通信費が10,159円、セミナー参加費が9,779円などと大きくアップする。ゼロ回答の人もまったく勉強していないわけではないはずだ。「資格試験受験代や、セミナー参加費はすべて会社持ち(外資系SIer/34歳)」なので自己負担がゼロというハッピーな人もいる。(DATA1)

 注目したいのは、書籍代(雑誌も含む)と通信費の比較。圧倒的に通信費が多い。もちろん、その通信費にはプライベートで使う携帯電話の費用も含まれたりするわけだが、ネット経由で集める情報が豊富になり、あえて書籍を買う必要もなくなったということなのかもしれない。同じような調査を10年前に行っていれば、おそらく様相は異なっていただろう。いずれにしてもネット時代の勉強方法の特徴がここにもあらわれている。

 もちろん、通信費の出費がかさんで本を買えなくなっているという事情も見逃せない。月々の個人持ち通信費が「携帯電話8,000円、モバイル通信カード3,000円、自宅の光回線3,000円の合計14,000円(製造業社内SE/35歳)」ともなれば、単価の高い技術書を月に何冊も購入するのは難しそうだ。

DATA1 ITエンジニア300人に聞いた「ひと月の自己啓発費はいくら?」
月々の自己啓発費とその内訳
自己投資に糸目をつけない外資系コンサルタント

 勤務先企業の業種や、エンジニアの職種によってこの自己啓発費に違いはあるだろうか。業種別でトップは「外資系SIer/NIer、コンサルファーム」の62,417円。ついで「国内系大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダー」23,218円、「インターネット関連企業」15,722円などと続き、外資系のダントツぶりは、外資系企業の給与が高いと見ることもできる。一方で、自己啓発代を企業がサポートする割合が多い国内大手企業に比べて、自己責任原則が徹底する外資系は、自腹を切って勉強しなければならないという“苛酷な”状況の反映かもしれない。(DATA2)

 職種別の比較でも、「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」の37,420円に対して、通信インフラ設計・構築の7,429円では約5倍の開きがある。コンサル系は統合業務パッケージソフトやデータベースソフトなど、有力ベンダーの資格をもっていることが強みになるため、その取得に費用がかかるのでは、という想像も可能だ。

DATA2 勤務先業種・職種別/自己啓発の月平均額
業種 平均額
外資系SIer/NIer、コンサルファーム 62,417 円
大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダー 23,218 円
インターネット関連系 15,722 円
総合電機メーカー 14,608 円
独立系SIer/NIer、ソフトハウス、コンサルファーム 14,588 円
大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダーの子会社、関連会社 13,843 円
通信系 13,594 円
上記以外のソフトウェア・情報処理系 13,164 円
コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 7,426 円
職種 平均額
コンサルタント、アナリスト、プリセールス 37,420 円
ネットワーク設計・構築(LAN・Web系) 21,418 円
パッケージソフト・ミドルウェア開発 17,534 円
システム開発(Web・オープン系) 16,599 円
システム開発(汎用機系) 13,056 円
研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか 12,691 円
運用、監視、テクニカルサポート、保守 10,344 円
社内SE 10,069 円
システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系) 9,512 円
通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系) 7,429 円
「会社の支援なし」──36%の悲しい現実

 ITエンジニアの勉強意欲は旺盛だ。「今年取得したいと思っている技術スキル、資格は?」という設問には、「情報処理技術者」「ネットワークスペシャリスト」「システムアーキテクト」などの国家資格のほか、Oracle、SQL、Java、CCNA、VMWare、Windows Server などのベンダー資格がずらりと並ぶ。英語に対する関心も強く、TOEICの得点目標を具体的に挙げる人が多かった。

 簿記、銀行業務検定、中小企業診断士、社労士などのビジネス系の専門資格を挙げる人もいた。より上流のSE、コンサルタントになるためには、技術資格だけでなく、広く企業経営や財務・経理・労務などがわかる必要があり、そのための資格なのだろう。変わったところでは、宅建、小型船舶、ワインソムリエ資格などがある。ビジネスパーソンとしての技量と人脈を広げるための資格と考えれば、これも立派な自己啓発だ。

 趣味的な資格は別として、仕事につながる資格取得については、そのためにいくばくかの補助を会社にしてもらいたいと考えるのは当然だろう。「あなたの会社では、技術やキャリアアップのためにどんな支援制度がありますか?(例/技術セミナー参加費補助、iPadなどの購入補助、資格取得支援、好きなPC購入など)」という設問には、さまざまな回答が寄せられた。やはり多いのは「セミナー参加費補助」、資格試験料補助や問題集購入、合格時の祝い金、資格手当などを含む「資格取得支援」の制度だ。PCやスマートフォンなどの現物支給は少なかった。

 ただ、憂うべきは、会社からの支援は「特にない」という回答が全体の36%を占めること。会社も自己啓発支援のための余裕が以前に比べなくなっているという事情はわかるが、これは悲しい現実だ。(DATA3)

DATA3 会社から技術やキャリアアップのための支援制度があるか
DATA3 会社から技術やキャリアアップのための支援制度があるか
Twitter、イベントWebを使って無料セミナーを探し出せ

 国家資格やベンダー資格の受験にはお金はかかるが、もちろんお金をかけない自己啓発の方法もある。最近はIT系企業や技術者団体が無料で開催するセミナーも増えてきた。時間の都合をつけることさえできれば(これが一番難しいのだが)、積極的に参加したいものだ。そうした無料セミナーの開催告知は、今ではTwitterやブログを通して頻繁に行われるようになった。リクルートがWeb上の実験サービスとして無料で公開している「ATND(アテンド)」も、ITエンジニア向けのイベントに関しては貴重な情報源になっている。

 それ以外でも、お金をかけない情報収集、人脈づくりの方法はいくらでもある。「終業後、社内で開かれる自主的な勉強会に参加する」「転職前の会社の同期と定期的に連絡を取る」「Twitter などを使って、多くの業界人とコミュニケーションをとる」「技術系のメルマガ購読、Web記事チェック、メーリングリストへの参加」などが、生声として挙げられている。

 一人コツコツと勉強するのもいいが、やはり同じ目標に向かって進んでいる仲間がそばにいると、励まされるし、やる気もでようというもの。自己啓発と仲間づくりは、表裏一体のものとして、エンジニアの新たな課題になっている。

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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
月平均の自己啓発費が1万5000円というのは、実は2005年の調査と同じ額。ただし、その中身が今回がらりと変わっています。当時は、書籍や技術誌にかける費用が月平均で、1万3000円。また自分の給与をキャリアアップにかけていないと答えた人は63%。今回の5%と比べると、自己啓発に対する意欲が上昇しています。皆さんはどうですか?

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