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発見!日本を刺激する成長業界11 仮想化技術が旬すぎる!クラウドのキーワードだ
1台の物理サーバーを複数の仮想サーバーとして稼働させたり、クライアントPCのアプリケーション、データを「お任せ」にするといった、クラウドを支えるコアテクノロジーである仮想化技術が今、非常な話題を集めている。エンジニアなら知らないとは言わせない。
(取材・文/井元康一郎 撮影/関本陽介 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:10.08.17
年3割の高成長! 2014年には5000億市場になるテクノロジー
 クラウドコンピューティングが次世代ITプラットホームとして期待を集める中、それを実現するための重要なコアテクノロジーである仮想化技術も急激に市場が立ち上がりつつある。IT関連分野のシンクタンク、IDCJapanの調査によれば、PC、シンクライアント、携帯情報機器などのクライアントデバイス、クライアント仮想化ソフトウェア、サーバーおよびシステム構築からなるクライアント仮想化ソリューションのマーケットは、2009年には既に1243億円を超えた。
 加えて、今後も年平均31.8%の成長を続け、2014年には4938億円に達する見通しだという。法人分野では既に先行普及しつつあり、2009年に12%だった導入率は2014年には35.1%に達する公算が大きい。仮想化は将来性抜群の市場と言えよう。
国内法人向けPCおよびシンクライアント稼働台数に対するクライアント仮想化導入率予測(2010年以降は予測)
VMware/ハード・ソフト環境の壁を取り払う仮想化製品のトップベンダー
 ハードウェア1台ごとにOS、アプリを要するというコンピュータのあり方を根本から覆そうというクラウドコンピューティング。その中核である仮想化分野で注目を浴びているのが、VMwareが提唱する仮想化テクノロジーだ。
リソースを最大活用しながらレガシーアプリも走る仮想化
サーバー仮想化の仕組み
サーバー仮想化の仕組み
 クラウドコンピューティングが注目される中、その実現に必要なテクノロジーの最右翼としてピックアップされているのが、仮想化技術だ。仮想化をごく簡単に表現すると、PCやサーバーの物理的な構成ではなく、CPUの処理能力やメモリ、ストレージの容量そのものをカウントし、それらのリソースを再配分して仮想マシンとして見せかける技術のことである。
 なぜその仮想化がクラウドに必須の技術として重要視されているのか。それは仮想化がクラウドの大目標のひとつであるオープン化に向かう技術だからだ。例えばサーバー仮想化ソフトによって物理リソースから作られた仮想マシンは、クライアント側から見ればハードウェアそのもの。その仮想化環境においては理論上、x86などのプラットホームに準拠したOS、アプリケーションは何でも動くのだ。

 今日ではまだ進化の途中段階だが、異なる種類、スペックのハードを多数つなぎ、バーチャルマシン上で異なる種類のOSや対応アプリが走る仮想化は、突き詰めればそのままクラウドのプラットホームの中心となる潜在能力を持つ技術なのである。
「今日、米国では仮想化におけるサーバー監視のやり方など、クラウドの業界標準が作られようとしています。その策定作業の中で、VMwareのポリシーは高い評価をいただいており、多く採用されています。オープンとはよいルールを作り、そのルールを守ることで実現する。それに貢献していくためにも、当社はこれからも先頭を走っていかなければという思いを強くしているところです」
 仮想化用ソフトウェア世界最大手ベンダー、VMware日本法人のヴイエムウェア株式会社テクニカルアライアンスマネージャの名倉丈雄氏は語る。

 仮想化の導入事例は近年、急速に増えてきている。その動機としていちばん多いのは、サーバーの台数を減らせることによるコストダウンだ。が、仮想化の本当の価値は、単純な資金節約とは別のところにある。
「仮想化にはサーバーの弾力的な運用以外にも、前向きなメリットがたくさんあるんですよ。例えばサーバーの導入。仮想化環境では新旧のマシンやOSを混在させることができるので、予算の制約を受けることなく最新の機材を必要に応じて導入できます。また、物理サーバーがメンテナンスで停止するときも、他のサーバーリソースを使って仮想サーバーを無停止で稼動させられます。この特性とサーバーの故障予兆監視技術を併用すれば、システムの堅牢性も上がる。その他、メリットは枚挙にいとまがありません」
 名倉氏は2003年、アジア大洋州地域で初めてVMwareの社員となり、日本法人の設立にも携わった人物。
「入社時はこれほど急激に仮想化が拡大するとは思っていませんでした。日本法人設立当時はグローバルで300人ほどの従業員でしたが、今は7000人以上。今後もVMwareの技術は進化します。それに合わせてSIerさんやエンドユーザーさん向けのコンサル、トレーニングも含め、仮想化を広めていくために必要なことをどんどんやっていきますよ」
名倉丈雄氏
ストラテジックアライアンス
テクニカルアライアンスマネージャ

名倉丈雄氏
仮想化はソフト開発からコンサルまで、膨大な新ビジネスを生む
VMwareによる仮想化のアイコン
VMwareによる仮想化のアイコン
ネットワークのイメージ
ネットワークのイメージ
 急速な進化を続けるクラウドの中核技術、仮想化。導入事例の増加に伴い、SEやPMなどIT技術者の活躍の場も広がると期待されている。VMware日本法人は発足後7年で、中途採用の人材も多い。現場ではどのような人材が働いているのだろうか。
「当社の場合、仕事は大きく分けて4つ。SE、コンサルタント、トレーニング、エデュケーションです」
 パートナーシステムズエンジニアリング部長の野崎恵太氏は語る。日本法人は直接開発を行わず、アメリカにある本社が開発業務を行っている。また、ビジネススタイルもソフトウェアをエンドユーザーに直販せず、SIerなどに供給するという形を取るが、専業のSEが在籍している。その数35人というかなりの大所帯だ。
「SEは大別して2種類。エンドユーザーのところに直接出向き、顧客のニーズを汲み取ったり啓蒙活動を行うSEと、SIerやサーバーベンダーなどパートナー企業とコミュニケーションを取るSEです。しかし、彼らはセールスエンジニアではありません。顧客やパートナーとアメリカをつなぐ仕事をやっています」

 VMwareがSEに要求するスキルはかなり高い。仮想化ソフトはクライアントに対してはハードウェアとして機能するため、アーキテクチャやOSなどコンピューティングの基幹部分についての知識を持っていないと通用しないのだという。
「もちろん知識を持っているだけでは務まりません。顧客のニーズは何なのかということをつかむコミュニケーション能力、それをどのようにプログラムに組み入れていけばいいのかを考えるアイデア力が必要なんです。問題解決をプログラムで行うのか、顧客のビジネスモデルをリファインしたほうがいいのか、あるいは顧客への説明で事足りるのかといったこことを判断するセンスも必要です」

 コンサルティングに要求されるのは運用スキルがメインだが、こちらも事前の提案だけでなく、開発したシステムについてユーザーやパートナーと共に考えるケースも多く、コミュニケーション能力が問われる。またトレーナーは一般顧客ではなく、ハードウェアベンダーやセキュリティベンダーなどのプロフェッショナル相手が中心、エデュケーションは仮想化技術に関する講師育成と、直接部門以外についても要求されるスキルレベルは高そうである。
 だが、高い技術を持つ人材にとっては非常に楽しめる世界であると、名倉丈雄マネージャは語る。
「特に今までにないものを作りたいという人にとっては、やりがいのある世界だと思いますよ。われわれもこれまで、何もないところから仮想化のありようを考えて、システムを作ってきた。これからもチャレンジは続くのです。
 仮想化と聞いて一体何ができそうか、何をやればいいのかということを自分でイメージして勉強できるセルフスターター人材は、特にこの世界に向いていると思います。その力があったら最初は齟齬があっても自然と修正されますし、その齟齬がかえって新しいアイデアを生み出すこともあります。ぜひ仮想化の門を叩いてみてほしい」
野崎恵太氏
パートナーシステムズエンジニアリング部長
野崎恵太氏
サーバーからミドルウェア、アプリまで幅広い階層でPG、SEの需要増
仮想化はコンピューティング市場をまるごと成長させる
 サーバーやデスクトップの仮想化といえば、主役はVMwareに代表される、仮想化ソフトの開発を手掛ける企業や、Windows、LinuxなどOSに仮想化機能を実装するという大手ベンダーというイメージが強い。仮想化ソフトそのものは海外で開発されているケースがほとんどで、日本でコア開発を手掛けるのは難しい。
 だが、市場拡大が期待されているのはコアテクノロジー分野ばかりではない。ミドルウェアやアプリ開発、ハードウェアからコンサルティングまで、コンピューティングに関するあらゆる分野について成長期待が持たれている。

 例えばアプリ。仮想化環境ではレガシーソフト含め、アプリは通常のコンピュータのOS上と同じように走るとされているが、実際には仮想化に特有のメモリ管理、ストレージアクセスなどを考慮した設計を行ったほうがパフォーマンスは高まる。仮想化の普及に伴い、業務系アプリを中心に新規開発や、改設計の案件が大幅に増える可能性が高いと見られているのだ。仮想化に伴って存在感を増すと見られる自動化ツールなど、ミドルウェア系の重要性が高まることも容易に想像可能だ。
 SIerやコンサルティングファームにとっても、仮想化は大いなるビジネスチャンスとなる。仮想化はあくまでツールであり、その恩恵を被ることができるかどうかは、仮想マシン上でパフォーマンス向上を狙えるシステムの構築、ビジネスへのフィッティングなど、使う側次第というファクターが大きいからだ。
ハードウェアをイメージできるIT人材全般にチャンス到来か
 仮想化市場の拡大で人材ニーズも大幅に増えていく可能性が高い。基本的にスキル適合度が高いのはSE、PG、PMなどのIT系職種。またFPGA、組み込みOS開発など、ソフトウェアとハードウェアの境界領域で経験を積んだエンジニアも歓迎されるだろう。
 仮想化ソフトの開発は最も高いスキルが要求される分野。OSのハードウェアへの命令やハードウェア内部での処理の仕組みなどを理解していることが望ましい。半導体設計、OSのカーネル開発のいずれかに精通し、もう一方についても標準以上の知識を有していることが活躍のボーダーライン。デジタル家電や携帯電話など、高度な組み込みソフトを使った機器の開発を手掛けた経験があると、取っ付きやすいだろう。

 ミドルウェアやアプリ開発についても、プログラミングの経験しかないという人材よりは、OSやハードウェアについてある程度知識を持っている人材のほうが、PMなど高いポジションで仕事ができるチャンスを得られやすいだろう。ただし、必ずしもコンサル的能力がなければ無理というわけではない。新しい業界だけに、.NETのPower ShellやLinuxのPerlなどを使って自在にスクリプトが書けるくらいのスキルがあれば、業界で経験を積んでキャリアアップすることは十分に可能だ。
 コンサルタントでは、相手のビジネスプランに適合したシステムを考えるアイデア力が問われる。ITの世界しか知らない人材では通用しない可能性が高い。クライアントの業界内でのサービス、製造などを積極的に知り、アイデアを共に練るといったコミュニケーション能力は必須だ。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
この連載のライターである井元康一郎。彼はとても優秀なジャーナリストであり、何とピアニストであり、作曲家でもある。そんな彼が1日で原稿を仕上げてくれました。サンキュー! しかし、VMwareさんの話はもっともっとあった。もっと書いてほしかった。それを止めたのが僕であることが、情けない。

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