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企画力・技術力を培うエンジニアワークショップに潜入取材!
DeNAが「世界に挑みたい」未経験者エンジニア採用開始
モバゲータウンでソーシャルゲームの王国を築き上げたDeNA。今後は、海外スマートフォン向けアプリ提供など、グローバル展開に踏み出す。その新しい地平を切り拓くのは、怖れを知らぬ若手エンジニアたちだ。DeNAでは文系・理系出身を問わず、エンジニアを養成するプロジェクトが始まっている。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:10.06.16
エンジニアが自分の頭でサービスやアプリを考える特訓
システム統括本部 技術戦略部 部長 能登 信晴氏
1996年、慶応義塾大学環境情報学部 (SFC)卒業後、日本電信電話(NTT)入社。情報通信研究所、サイバースペース研究所にて検索エンジンの研究開発に従事。2004年、ディー・エヌ・エーに入社し、以来「ポケットビッダーズ」「ポケットアフィリエイト」「ペイジェント」「モバオク」「モバコレ」などのサービス開発・運用に関わる。

 渋谷区にあるDeNA本社の会議室。この4月から始まった新卒社員向けエンジニア研修が佳境を迎えている。Linux、Perl、データベース、Webテクノロジーなどの基礎を学ぶ1カ月の集中講義を経て、実際にソーシャルアプリなどを開発するワークショップ研修に突入している。

 ワークショップのテーマは、実際にユーザーを呼び込めるような、便利で楽しく、マネタイズの手段も考慮されたケータイサイトを企画・開発すること。OSやネームサーバ、メールサーバのセットアップも含めて、各自最大2カ月間かけて行う。

 チューターと呼ばれる技術戦略部の先輩エンジニアが、研修生たちに厳しい質問や要求を投げかけていく。実際に、これまでモバゲータウンのゲームなどをいくつも開発してきた人たちだ。まだ企画書段階、ドキュメントフェイズのレビューであるのに、指摘は実に具体的。自身に開発経験があるからこそ、ゲームが実際に動いているようなシーンを想定して、研修生たちの気づかなかった点をどんどん突いてくる。この場は、実戦さながらのブートキャンプ(新兵養成所)のようだ。

 研修で重視されるのは、コーディングの品質と同様に、サイトやアプリケーションの企画力だ。
「当社の場合、エンジニアも企画を出し、実装はもちろんのこと、その運営も含めて全体にかかわっていくことが求められています。実際、モバゲータウンの内製ゲームの多くがそういうスタイルでつくられてきました」
 と、エンジニアの企画力が重視される背景を述べるのは、同社システム統括本部・技術戦略部の能登信晴部長だ。
「企画と開発が完全に分業していると、エンジニアは仕様書通りにモノをつくればよくて、ある意味、楽かもしれない。しかし、それではビジネス感覚が身につきません。サービスはリリースしたら終わりではなく、むしろそこからが本番。ユーザーの反応やデータを分析しながら、ゲームであればバランスを調整したり、イベントを企画・実現して盛り上げたりすることが欠かせない。エンジニアが企画段階からそのタイトルにかかわっていれば、こうした変化を自らスピーディーに作り出せます」(能登氏)

アジャイル実装──卒業検定にパスしないと、現場に配属されない

 エンジニアの企画力を高めるためにはまずは個の力を伸ばす必要がある。一人ひとりが企画を立て、自力で実装するようにさせたのはそのためだ。研修の終わりには卒業検定という厳しい関門が待ち受けている。 「卒業検定では当然成果物をレビューしますが、その場で新しいアイディアを与えて機能を変更してもらったり、気になるデータを抽出してもらったりということを、あえて行います。現場で常に必要とされる作業を、臨機応変にできないようであれば、卒検はパスできない。パスしない限り、現場には配属しないというのが私たちの方針です」 と、能登氏の口調は厳しくなる。

 今のDeNAのサービスの多くは、ウォーターフォール型ではなく、アジャイル型で開発される。プロジェクト全体をいくつかの工程に分割して各工程での成果物を明確に定義し、その成果物に基づいて後工程の作業を順次行っていくというよりも、仕様・設計の変更は当たり前で、まずは作ってみて、仕様や設計の妥当性を検証していく。新人研修は、アジャイル(俊敏さ)を獲得するための場でもあるのだ。

 とはいえ、アプリ開発は共同作業でもある。独りよがりは危険だ。メンバーは実際の部署や部門を想定した3名前後の小さなチームを構成する。チーム内では、他のメンバーが作成した企画、設計、実装等に関するレビューを行い、改善点を提案する。 「最低でも1日1時間程度はレビュー時間を確保するよう指示しています。サービスやソフトウェアの品質を高めるためには、他のエンジニアの意見を聞き、評価に耐えうるようなものを作り出すことが必要です。逆に、他のメンバーに対して有益なコメントを提供してチームに貢献する必要もあり、そういったクロスレビュー能力を身につけることも研修の重要なテーマです」(能登氏)

「怪盗ロワイヤル」を作ったエンジニアは、営業企画出身者だった

 新人をある一定の期間、缶詰にして行うDeNAの新人研修は、新卒採用を本格化させた2004年からスタートした。ただ、最初は社会人マナーやコミュニケーションスキルを含むふつうの新人研修で、期間も1カ月程度と短く、技術スキルは配属後のOJTで磨くという形だった。

 その後、新卒メンバーを迎える回数を重ね、途中から外部の講師を招いて 1カ月間基礎的な技術要素を学ぶ研修が用意された。先ほどのワークショップ研修を追加したのは今年度からだという。エンジニアが大量に欲しいのであれば、理系出身者を大量採用し、ソフトウェア開発研修をみっちりやって、あとは現場で鍛えるというのがふつうの方法だろう。しかし、DeNAでは必ずしも理系採用にこだわっていない。ITスキルがあることはもちろん望ましいが、それ以上に重視するのは、先ほどから述べているように、サービスを自らの頭で考える力なのだ。

「今回の新人研修でも、全員が理系学部出身というわけではありません。また、新人といってもエンジニアになるのが初めてという意味で、実は社内で営業や企画をやっていた人がエンジニアに転身するためにも参加しています。だいたい3分の1くらいがそういう、エンジニア転向組の人たちです」
 と、能登氏は驚くべきことを言い出す。
「営業がエンジニアに転進して、サービスを開発する」など、普通のIT企業では考えられないことだ。エンジニアになるには技術という高い壁があり、それは容易に乗り越えがたいというのが一般の認識。しかし、DeNAではそうした乗り越えの事例は少なくないというのだ。

「怪盗ロワイヤル」がまさにその例だ。モバゲータウンを代表するDeNA開発の人気ソーシャルゲームで、いまはmixiアプリや海外 iPhone、Facebook向けにもリリースされている。その企画・開発担当者の大塚剛司氏は、最初は営業企画の部署にいた。ショッピングサイトの「ビッダーズ」の広告などを担当し、社内の調整役としてエンジニアと接するうちに、「DeNAのエンジニアは自ら考えて正しいと思ったものを形にするという仕事の仕方をする。そういう風に自分もなりたい」と思ったのが、エンジニア転身のきっかけだったという。

 システムの素養はゼロ、2005年当時は今ほどエンジニア研修体制も整備されておらず、自分で本を買って、毎晩、明け方まで勉強したという逸話の持ち主である。希望が叶って、モバオク PC サイトの立ち上げに参画した後、モバコレの技術リーダーに就任。そして「怪盗ロワイヤル」を開発。いまでは、モバゲーオープンプラットフォームの事業責任者として活躍している。

 ほかにも、ビッダーズのネット店舗開拓のための営業をしていた人が、モバゲーの企画・開発に転じたケースなど、エンジニアへの転向例は枚挙にいとまがない。
「機械学習や分散処理など高度な専門性を持った理系出身のエンジニアも必要で、そういった技術を使って今までにないサービスや機能の実現、スケーラビリティの高いシステム構築やシステムコストの大幅に引き下げなどの面で活躍しています。一方で、営業やビジネス企画の経験を通して、マーケティングやマネタイズに興味を持った人がサービスをつくると、お客様に広く受け入れられるようないいものが生み出される、という経験則も私たちにはあります」
と、能登氏は、今後も“エンジニア転向”を積極的に支援していく考えだ。

サービス開発は、粘土をこねるような作業の連続

 むろん、LinuxやWebテクノロジーのテクニカルな知識がなければ、DeNA のエンジニアにはなれない。ただ、習得スピードの速い、遅いはあるものの、基礎からみっちり勉強をしていけば、それこそ文系学部出身の人であってもプログラムは書けるようになるのだ。

「もちろん、研修が5時に終わっても放課後の時間に自習する、ウェブやケータイの世界に興味を持って、世の中にどんなサービスがあるか、すすんで調べるなど、その人なりの努力は不可欠です。ただ、私たちが行っているサービス開発には、業務システム開発のような定まった手法があるわけではありません。いつも新しいもの、誰もまだ経験したことがないようなものを作ろうとしているので、自分たちで想像力を働かせてものを作ります」 と、能登氏は言う。

「それを見て動かしながら、場合によってはデータを分析しながら、改善点を見つけてよくしていくという作業の繰り返しです。テクニカルスキルに加えて、自らの頭で考え生み出すという創造力や、仮説を立て検証していくという分析力がどうしても必要で、その点では文系も理系も関係ありません。自らの頭で考える力があるかどうか、だけです」
 能登氏が、「私たちが行っているサービス開発では」と、あえて限定した点は重要だ。例えば、人々が面白がる、アプリを介して人と話をする、寝食を忘れて熱狂するというプロセスは、成功するソーシャルアプリの重要な要素だ。単純な演算能力だけでは、そうしたユーザーの集団心理を引き出すことはできない。ゲームという一つのバーチャルな世界に人は何を求めるのか。ときには心理学者や哲学者のように、その真理の奥に分け入って考えることも重要だ。

 アップルのスティーブ・ジョブズは今年1月のiPad発表会のプレゼンテーションで「アップルという会社は、常にテクノロジーとリベラルアーツの交差するところに立とうとしている会社。われわれはベストなテクノロジーを作りたいが、それをまた直感的に実現したいとも思っている。この2つのコンビネーションがわれわれにiPadを作らせた」と語った。

 リベラルアーツとは「人を自由にする学問」。狭くは人文科学や芸術のことを指すが、ここでは高い知的教養や知的関心という意味にとってよいだろう。その“知”こそが、ゲームやアプリケーションの企画力の本質でもある。分野を問わない幅広い教養と、人間や社会についての深い洞察が、ソーシャルアプリで遊ぶユーザーの経験をより奥深いものにしていく。まさに、テクノロジーとリベラルアーツを高いレベルで合体させることが、DeNAのエンジニアには求められているのである。

グローバル展開に向けて、若手のポテンシャルに期待

 理系・文系にこだわらずエンジニアの採用・育成を進めるDeNAは、今社外からもそういった「サービスを自ら生み出せる」エンジニア候補を求めようとしている。
「対象となりそうな人は大きく分けて2種類かなと推測しています。ひとつはIT系の企業に就職してエンジニアになってみたものの、自分が思っていたような仕事ができていないという人です。顧客企業に開発・構築したシステムを納めて終わりで、その後本当に役に立ったかわからない、あるいは二次請け、三次請けの立場なのでシステムの全体像が見えず、依頼された一部分を作るだけ、といったように。本当は特定企業の社員にだけ使われるものではなくて、ウェブやケータイの世界で公開されていて、誰にでも触れてもらえるサービスに携わりたかったのに、という人も多いと思います」

「もうひとつは、IT、ウェブやケータイの世界に興味や可能性は感じていたけど、自分は理系じゃないからと考えてエンジニア以外の職種を選んだ人です。他の歴史の長い業界に入ってみたら、思ったより自分で裁量を持って創造性を活かして仕事をする機会が少ないし、そういったことができるようになるまでまだ何年もかかりそうだ、というような人も中にはいると思います。
どちらの場合でも、創造性があまり要求されない業務を長く続けていると、何をつくるか自ら考える力が弱くなってきますし、新しい環境で新しいビジネスに取り組む柔軟性も損なわれてきます。ITの力で世界を変えたい、ビジネスを自ら打ち立てて大きく成功させてみたいという志があるなら、なるべく早い段階で転身した方が成功の確率も高くなると思います」
「そんな人に『こういうエンジニアの生き方があるんだよ』とメッセージを届けたいんです」と能登氏は言う。自身が大手通信会社に勤務したことのある、転職組だ。

 そのメッセージとは──。 「モバゲータウンを始めとして、DeNAのサービスの多くは直接コンシューマに届くビジネス。自分の作ったものが多くの人に届き、ユーザーの声がダイレクトに跳ね返ってくる楽しさと厳しさがあります。これまでは日本国内が主戦場でしたが、これからの相手は世界。すでに英語圏のiPhoneユーザー向けに「MiniNation」というサービスをリリースしていますし、Android端末に向けた同様の展開も視野に入ってきています。Facebookのように数億人のコミュニティに自社開発のソーシャルアプリを提供するビジネスもスタートしています。ガラパゴスと揶揄されたりもしますが、携帯電話向けサービスが世界で最も進化した日本だからこそ、世界に発信して通用させる。DeNAでは端末種や国境を超えるチャレンジをX-device、X-boarderと呼んでいますが、そういったダイナミックな展開がいま始まろうとしています」

 ネットの世界はますます進化し、世界のネット人口は増える一方。そこでユーザーが待ち望むサービスやエンタテインメントを、一歩先取りし、たしかな技術と共に提供するのが、これからのエンジニアの役目だ。
「電車の中でほとんどの人が携帯をいじっているような世界、小さい画面からコミュニティやソーシャルアプリを通して人とコミュニケーションをはかる世界を10年前誰が想像したでしょうか。そういった新しい生活スタイルを実現したのは、実は日本のエンジニアだと思います。自分たちで考えて、作って、ネット上に新しいサービスを提供することで、今後も世界を変えていくようなことを僕らはしていきたい。DeNAではそういうチャレンジに取り組みたい仲間を広く求めています」

 そこでは経験や知識は問わない。業務システムをウォーターフォール型で開発していたエンジニアも、はたまた学校を卒業してから営業や事業企画、コンサルティングに取り組んできた人も、この「世界を変える」という意志と創造力さえあれば、DeNAのエンジニアになれる可能性がある。DeNAが用意している厳しいエンジニア研修もある。あとはネットの世界で新しいチャレンジに取り組みたいという熱い想いを持てるかどうかだ。

 最後もやはりスティーブ・ジョブズの有名な言葉で締めくくろう。  アップルコンピュータの社長を探していた創業者のジョブズは、1983年当時、清涼飲料水メーカーの事業担当社長をしていたジョン・スカリーに白羽の矢を立て、18ヶ月に渡って引き抜き工作を行った。この時、ジョブズはスカリーを口説くためにこう述べたという。
「このまま一生、砂糖水を売りつづけるのか、それとも世界を変えるチャンスをつかみたいか」(Do you want to sell sugar water for the rest of your life, or do you want to change the world? )
 あなたは、自分が手がけたサービスで世界を変えるチャンスを掴みたくはないですか?

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