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iPhone などモバイル系ソーシャルアプリ注力で、エンジニア倍増
技術者を成長させる会社「KLab」が求めるエキスパートたち
システム開発やゲーム業界などに向けたインフラ提供事業のKLab(クラブ)が、エンジニアの中途採用を強めている。多様なプラットフォームにおけるソーシャルアプリの波に乗りきるための人材増強戦略。求められる技術者を探る。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:10.04.13
【Part1 仙石浩明CTOが語るKLabの技術風土】
技術者の「考える力」を引き出し、技術のわかる上司がそのパワーを全開させる
技術の力でモバイルの未来を切り拓け
KLab株式会社
取締役 CTO
仙石 浩明氏

 KLabはサイバードを設立した真田哲弥社長が、2000年にサイバードのR&D部門として設立したケイ・ラボラトリーが母体。携帯電話関連の研究開発型企業として、これまで携帯の技術仕様づくりにかかわるなど、モバイル分野での豊富な実績がある。設立10周年を迎え、その事業は、携帯メール高速配信エンジンなどのソフトウェア・プロダクツ開発やモバイル・プラットフォーム向けのデジタルコンテンツ提供、さらにシステム開発・インフラ提供事業へと広がりをみせている。

 今世界のモバイル端末が、従来の携帯電話だけでなく、iPhone や Android などのスマートフォンを含めて多様化する一方で、「mixi」や 「Facebook」などのSNSをプラットフォームとする、ソーシャルアプリケーションがブームになっている。KLabが注力するのも、こうした新たなモバイル・プラットフォーム向けのアプリケーションやソーシャルアプリケーション開発だ。

 同社の開発体制に一貫しているのは単にプラットフォームの仕様を受けて、コンテンツを開発するという受け身の姿勢ではないこと。技術者視点を重視しながら、独自のサービス企画を生み出すことで、日本のモバイル市場の成長を支えてきたという強烈な自負がある。そこにあるのは、技術の力でモバイルの未来を切り拓くという、研究開発型企業ならではのアグレッシブな姿勢だ。その技術者重視の風土を、あらためて同社の仙石浩明CTOに語ってもらおう。

技術者が開発に専念できる風土が大切

 つねづね「技術者が成長できる会社をつくるのが私のミッション」と語ってきた仙石CTO。京大大学院を経て日立製作所に入社、ネットワーク基盤技術の研究などで将来を嘱望されながらも、ケイ・ラボラトリー設立に誘われ、あっさりと転職。自身がベンチャー企業の核になるコア技術を次々に開発するとともに、技術者採用の中心メンバーとして、KLabの技術基盤づくりにかかわってきた。

 その人が発するのは、「技術者は若いときはせめて、技術オンリーで突っ走ってほしい」というメッセージだ。
「技術者が、自分の技術を深めるだけでなく、マネジメント力を身につけ、マーケットで売れるものを考えられるというのは、もちろん理想です。ですが、技術も、マーケティングも、マネジメントも、すべてに強い技術者というのは決して多くはない。全部を求めると、いずれも中途半端になりがち。それよりは、まずは技術を深めることに専念して欲しい。売れるものを考え、部下をマネジメントするのは後からでもいい」というのだ。

 今どき企業経営のトップにエンジニア像を描いてもらえば、「マーケットにおけるユーザーの嗜好やトレンドなどを感知しながら、売れるものづくりをしてほしい」というのが普通だろう。「売れることばかりを考えると、技術が中途半端になる」という仙石氏の言葉は、きわめて異色に聞こえる。

近年よく言われる「技術者に求めるのは、高いコミュニケーション能力」についても、仙石氏の考え方は異なる。 「コミュニケーションスキルも、もちろんあったほうがいいでしょう。ただ、重要なのはコミュニケーションの内容とレベル。技術者が独自の言葉で高度な技術内容を語ろうとしているのに、そのレベルを無視し、内容が理解できないからといって、『あいつはコミュニケーションが下手だ』と決めつけるのはどうか」
と、仙石氏は、日頃自分の技術を周囲に理解してもらえず、まどろっこしい思いをしている技術者の肩を持つ。

「技術者集団の世界では、誰の技術が優れていて、自分はどの位置にあるかはよくわかるもの。そうしたレベル差が現実にあるのに、外から十把一絡げで一律に評価されてしまうことは、技術者にとっては最大の侮辱。それではせっかくの伸びる才能も途中で潰されてしまいます」とも言う。
 技術者の話す内容を理解し、その可能性と成長力を引き出すために、企業はどうすればいいのか。「技術者集団を率いるのは、構成メンバーの技術力をきちんと理解できる人であるべき」という、当たり前の理想を貫きながら、試行錯誤を繰り返してきたのが、KLab10年の歴史でもある。

技術者のレベルは、質問の仕方一つですぐわかる

 ところで「技術者の成長とは何か」という問題も、よくよく考えれば答えは一様ではない。ソフトウェア技術者が新しい言語を習得するのが成長だろうか。ベンダー資格をたくさん取得するのが成長だろうか。
「言語などは1カ月も集中すれば誰だって習得できるもの。その他のスキルも、これだけ技術革新の早い時代には、一つひとつ積み上げていくというより、必要なときに習い覚えてサクっと活用するもの。単なる知識の量が増えることを、私は成長とは呼ばない」 と、仙石氏は断言する。

 仙石氏が考える成長は、「自分がこれまでできなかったことができるようになること。他の人ができないことが、できるようになること」。「今できるようになった自分」と「かつてできなかった自分」の間が、もはや後戻りできないほどに開くとき、人は成長したといえる。しかし、そうした成長のプロセスに終着点はない。成長すればするだけ、さらに「できないこと」が増える。課題の答えがわかればわかるほど、さらに疑問が出てくる。そのスパイラルが技術者を成長させるのだ。

「当社の場合も、日頃の勉強会では、理解力のある人ほどよく質問をするものです。わかっていない人は結局人の話を聞くだけしかできない。質問の頻度や仕方を見るだけでも、その人の技術レベルは理解できます」  これは技術者採用面接でも同じことが言えるという。 「応募者からの質問に応えて、私たちが回答したとき、『はいわかりました』でブツっと終わってしまう人が多い。回答から新たな質問のタネを拾い出し、再び質問を繰り出してくる。それが際限なく続くのが本当の面接だと思うんです」

 すぐれた質問は、人の脳が考えていることの証明でもある。仙石氏が最重視するのは、この技術者の「考える力」だ。 「今,当社はモバイル領域に注力をしていますが、必ずしもそれが最終の目的ではない。事業領域は時代に応じてどんどん拡大発展していきます。モバイルが好きだという志向性や市場ニーズに敏感であることは大切にしたいけれど、みんなが行くから自分も行くというのでは、考える力はないに等しい。流行やムードに流されずに、技術の本質を考え抜く力さえあれば、どんなに時代が変わっても必ずそれをキャッチアップできるはずです」

10%ルールで育つ自主性、勉強会で問われる技術の本質

 KLabには、こうした技術の本質を考え抜く力を引き出す風土や仕組みがある。一つは、技術職は顧客折衝やプロジェクトマネージメントは一切行わないという慣行だ。技術屋が企画を考えると、自分の技術力が制約になって、陳腐なものに陥りがちという理由からだ。もちろん、企画やPMは専門の部署があって、技術者はそことコラボレーションもするが、職務領域はまったく別。つまり「餅は餅屋」。技術者は、新しい技術開発に専念できる風土がある。

 また社内勉強会や他企業との共同勉強会が頻繁に開かれるのも、技術開発型企業ならでは。「質問によって質問者のレベルがわかる」という仙石氏の言葉通り、これらの勉強会では発表者だけでなく、質問者もその力を試される。人前で発表し、質問し、ときには周囲の批判にさらされることで、技術者は「どこまでわかっていて、どこからがわからないのか」がよく見えるようになるという。これもまた成長のプロセスにおいては欠くことのできない仕掛けなのだ。

 Googleの「20%ルール」は有名だが、KLabにも同種のルールがある。標準労働時間の10%以内であれば、上司の承認なしで自由研究ができるという仕組みだ。これを社内では「どぶろく制度」と呼んでいる。この制度から生まれ、製品化された技術は少なくない。 評価制度は完全な実力主義だが、技術者についての評価のポイントは、「より早く成長した人、より深く技術の本質をつかんだ人」というところに置かれている。本質を見極める力が、成長の最大のバネになるのだ。
「KLabは、本質のわかる人たちがスパークする会社。年齢や経験を問わず、そんな人たちをどんどん採用し、抜擢していきます」 と、仙石氏は語っている。

【Part2 天羽公平・研究開発部長が求めるエキスパート、ハイブリッドのエンジニア像】
ツールを使うのではなく作れる人、企画サイドの思いを技術力で表現できる人
将来は、メガプラットフォームの提供も視野
KLab株式会社
執行役員 研究開発部 部長
天羽 公平氏

 昨年12月に KLab が「mixi」アプリとして初めてリリースしたソーシャルゲーム「恋してキャバ嬢」は、現時点(2010/04/01)で120万人超の利用者数を数え、「mixi」アプリランキングでも4位につける。「社内の事業予測をはるかに上回るスピード」というのは、天羽(あもう)公平・研究開発部長兼執行役員だ。

 これまで国内主要3キャリア向けのWebアプリ開発がメインだったKLabにとって、ソーシャルアプリの勢いをあらためて認識するこれは“事件”でもあった。
「国内のモバゲー、『GREE』、『mixi』 はもちろんのこと、海外では『Facebook』の隆盛など、ソーシャル系プラットフォームの拡大は目をみはるばかり。さらに、モバイルデバイスも、PC以外に、iPhone、Andoroid など多様化している。こうしたモバイル・プラットフォーム拡大の波に乗り切るために、当面は、グローバルな視野で各種プラットフォーム、各種デバイス向けのソーシャルアプリを開発することが事業のキーワードになる」 と、天羽氏は語る。

「mixi」に続いて、iPhone 向けアプリもリリース時期は未定としながらも、現在開発中。4月3日に米国で先行発売されたアップルの iPad 向けアプリの開発準備にも着手した。 だが、KLabの事業プランはそこには止まらない。「今はメガプラットフォームに載る形ですが、中長期的には自社がメガプラットフォームを提供する側になりたい」と天羽氏は言う。

 その新たなプラットフォームがどのような形になるかは不明だが、その形を具現化するためにも、現在のプラットフォーム上での開発力を高めるのが研究開発部のミッションだ。同社の研究開発部は、各事業部の研究開発を一手に引き受ける。総勢30人規模だが、これを今期中に倍増させる予定だ。

 必要な人材のベースは「夢を共有できること」。その上でまず、PHPやLL(ライトウェイトランゲージ)、LAMPでのWebアプリ開発の経験など、特定の技術に特化したエキスパートを求める。 「世の中に便利なツールはたくさんありますが、それを知っていて使っているというだけでは、技術的競争力があるとはいえない。ツールそのものを作り出すことができるなど、技術そのもので価値を創造できる人」と、エキスパートに求める能力はきわめて高度だ。

大ヒットmixiアプリ「恋してキャバ嬢」
大ヒットmixiアプリ「恋してキャバ嬢」

 今期の採用活動で天羽氏らが出会いたいエキスパートは、例えば「オープンソースなどの分野で、独自の技術ブログで情報を発信し、それが多数のエンジニアから参照されているような人」だ。これら技術エキスパートとはやや特徴を異にする「ハイブリッド型人材」も、採用のターゲット。KLabのアプリ開発では、企画担当と技術担当が役割を明確に分担しながらコラボレーションするのが一般的だが、企画の本質を理解しそれを技術力で表現するためには、その両方にまたがるハイブリッドなセンスが必要になる。

「たとえ仕様書どおりに作ったとしても、それが企画者の考えたイメージ通りにならないというのはよくあること。技術者が、企画者の考える本質のところを理解していないと、結局はユーザーにも受け入れられない」  まさに技術者の「考える力」が、ここでも求められているのである。

「技術開発投資なしに飛躍なし」──意外と渋いKLabの技術力

 こうしたハイスペックのエンジニアを迎え入れる環境について、天羽氏は「投資なしに飛躍なし」という同社のモットーで答える。 「収益の増減とは関係なく、一定の研究予算を確保しているし、“どぶろく制度”など自分が得意とする分野を追求する自由もあります。社内の勉強会は常に真剣勝負で、自分が発表者になることで、より深く自分の専門を理解することができるようになる。技術ブログの公開や技術書の出版を通して、オープンソースのコミュニティに貢献するエンジニアが多数社内に存在する環境も、向上心の高いエンジニアには大きな刺激になると思います」

 携帯電話の着せ替えキャラシステムや、ソーシャルゲームなど、KLabの事業は外からみると一見、“ポップ”で“軟派系”に見えるのだが、実際にはそうしたモバイルサイトを支える超高速・高信頼性のサーバーインフラ「DSAS」の開発など“渋い”実績を見逃すことはできない。「DSAS」はトラフィックに応じて、即時サーバ割り当て台数を調整可能な構成となっており、初期段階でのインフラへの過剰投資を抑えつつ、急激なアクセス増加にも素早く対応しなければならないモバイルサイト運営者の間では高い評価を得ている技術だ。

 KLabの蓄積された技術の厚みに、モバイル領域でインフラからコンテンツまでを一貫して手がけてきた実績が加わる。その強みは、今後ますます活発化し、世界大に拡大するモバイル・コミュニケーションのビジネスで、大きなアドバンテージになるはずだ。 「私たちはチャレンジを止めない会社。だからこそ技術者にも、つねに能動的でポジティブな姿勢を求めたい。その姿勢があれば、必ず活躍できるチャンスが当社にはあります」
 フリーター生活から25歳のとき、一転してIT業界に入り、KLab入社後3年で研究開発部部長にまで登りつめた天羽氏自身のプロフィールが、技術者を極限まで成長させるKLabという会社の風土を物語っている。

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