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「医薬・医療」に注力する旭化成グループの注目事業

旭化成ファーマ

旭化成ファーマが
技術職のキャリア採用を強化する

 医薬品を開発する旭化成ファーマ。旭化成グループの次代を担う中核事業のひとつとして期待される同社の成長には、新薬の上市に加えて、思い切った事業領域の集中と、キャリア採用者の力があった。2015年度の売上高1000億円を目標に、技術職の募集を大幅に強化している。

(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ) 作成日:10.07.09

成長の理由は、着実な新薬上市と特定疾患領域への集中

堀 一良氏

旭化成ファーマ株式会社
取締役
常務執行役員
堀 一良氏



旭化成グループの中で急激に存在感を増しているのが、旭化成ファーマだ。同グループでは「医薬・医療」分野を次代の中核事業のひとつとする戦略を掲げ、2015年には営業利益の4分の1以上を、この分野で稼ぎ出すことを目指している。その医薬品を開発しているのが旭化成ファーマなのだ。同社では2015年度の売上高を、現在の2倍弱の1000億円にすることを目標としている。そして現在、そのための技術職募集を強化しているのだ。
同社の積極的な姿勢には理由がある。契機となったのは2008年に製造販売の承認を取得した2つの新薬。ひとつは白血病や感染症などの終末期に発症する、汎発性血管内血液凝固症に使われる「リコモジュリン」。もうひとつは帯状疱疹治療薬の「ファムビル」だ。また、同年既に同社で販売していた排尿障害改善薬「フリバス」について、独ロシュ社より全権利を取得することに成功している。つまり、これからの「主力商品」が揃い、医薬事業の具体的な成長路線が描けるようになってきたのだ。
さらに開発中の品目についても、現在、申請準備中の骨粗鬆症に対する新薬候補品をはじめ、臨床開発の最終段階であるPhase3の品目から開発早期の品目まで、開発パイプラインも充実してきている。

数ある製薬メーカーを売上高などで比較すると、旭化成ファーマの順位は決して高くない。その同社がこのような新薬開発で着実な成果を上げてきているのは、あきらめず粘り強く開発を進めてきた結果である。さらに近年同社が積極的に推し進めているのが、事業領域の集中である。
「創薬には膨大な研究開発費と10年、20年という長い期間が必要です。大手製薬メーカーは巨額の資金を投入し、生活習慣病などの薬剤開発を大規模に展開して、最終的に利益を回収してきた。以前の弊社も生活習慣病をはじめ多領域の疾患を狙った創薬活動を行っていたのですが、やはりそれでは経営資源が分散・薄まきとなって、スピード面でも不利になる。そこで、2010年度を最終年度とする前回の5年中期計画で、対象領域を整形や泌尿器などに特化し、その分野で世界に通用する研究開発型のスペシャリティーファーマになると定めたのです。大方向転換でした」
こう語るのは先ごろまで臨床開発センター長を務めていた、取締役兼常務執行役員の堀一良氏だ。
「弊社の医薬事業は堅調・堅実に成果を積み重ねてきていると自負していますし、将来像も描けるようになってきました。それを支えているのはやはり人財だと、改めて感じます」

「信頼性保証業務」、「臨床開発業務」……幅広い技術系職種を募集



 以前の旭化成ファーマは、ある意味で「純血主義」、すなわちほとんど生え抜き社員だけで構成される会社だった。キャリア採用を本格化させたのは3年ほど前から。きっかけは2005年の薬事法改正施行で、医薬品の製造販売後のより充実した安全対策が製薬メーカーに義務付けられたこと。そして、先の新薬承認と開発パイプライン充実を受けての人財増強だ。
まず即戦力として必要となったのが、現在も募集しているいくつかの職種。製造販売後の医薬品の安全性情報の収集や評価を行う「安全管理業務」、市販後の調査や試験を実施する「市販後調査業務」、国内外の製造所や原料・資材メーカーに出向いて監査などを行う「品質保証業務」などだ。
これだけではない。これからの新薬開発をよりスピーディーに展開してゆくため、臨床試験の計画立案を担当する「治験計画業務」、その計画をはじめ法や各種基準に基づいて医療機関での臨床試験が実施されていることを確認・保証する「モニタリング業務」、臨床開発データの「統計解析業務」、さらに前臨床や臨床試験のプロセスなどを監査する「研究監査業務」と幅広く技術者を募集している。技術職以外では企画営業職やMR(医薬情報担当者)もある。上記の技術職種では、程度の差こそあれ、基本的には3年以上の実務経験が求められている。

「成長の道筋は立てられるようになっても、弊社はまだまだ発展途上。企業規模が小さいこともあり、大手企業と違って縦割り組織による完全な分業体制が確立されていません。ですが、それが旭化成ファーマの強みだと思っています。部門間の壁が低いので、皆がお互いの仕事の内容を理解し、助け合い、刺激をし合っています。合言葉は『ワン・ファーマを目指そう』です」
今日明日は営業部門が牽引し、中期的には臨床開発部門、長期的には研究部門が担う。それを下支えするのが生産部門をはじめ、安全管理や市販後調査、品質保証などその他の技術部門であり、事務系などのスタッフ部門だ。互いの業務を知悉、尊重しているから、仕事の枠を超えて「今、何やっているの?」「こうしたほうがいいと思うよ」などのアドバイスが自然に行きかうのだ。

旭化成ファーマを育てたのはキャリア採用者の刺激




 キャリア採用に注力して3年ほどの旭化成ファーマ。いわば必要に迫られてスタートさせたわけだが、キャリア採用者を新戦力とする考え方はその数年前からあった。そして、「キャリア採用者の力で会社が変わってきた」と堀氏は振り返る。
「他の会社を経験している方たちと話すと、違った視点や異なる進め方のあることを教えられ、ハッとさせられることが多々あります。知らないうちにわれわれの考え方が固まってきていると気付かされました。ですので、キャリア採用の方には『新しい目で見た感想や提案などを素直に、何でも語ってほしい』とお願いしています」
同社に「成長のために変わらなければいけない」という切迫感が生まれたのは、先の「選択と集中」で対象領域・分野を絞った2005年ごろから。中期計画で目標は立てたが、その目標達成のため、変革の明らかな動きは最初に研究部門から、次に臨床部門、そして信頼性保証部門や営業部門に出てきているという。変革を実現する手段のひとつとして考えられたのがキャリア採用者の「新しい血」だった。

製薬業界に限らず、こうした理由でキャリア採用を始める企業は少なくない。しかし、特に新卒社員中心の企業ではキャリア採用者を「刺激」ととらえず、どうしても「異物」と感じてしまう傾向もある。前者の場合は双方がハッピーになれるが、後者の場合はその逆だ。旭化成ファーマが着実に成長してきた理由はどこにあるのか。
「先ず謙虚に聞く耳を持ち、新しい方たちの意見も受け入れて、それを形にしてゆくことが大切だと思います。最近、創薬の進め方から規制当局の対応まで、ものすごいスピードで大きく変わってきています。それに応じて、私たちも自身を意識的・計画的に変えてゆかなければ生き残ることはできません。成長のための変革はこれからもエンドレスに続くでしょう。キャリア採用の方にとっては、本人にやる気があれば自分の仕事の幅をどんどん広げ、挑戦してゆくことができる会社。ですから、『お節介な人』は大歓迎なのです。そんな方にぜひ来ていただきたい」

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