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暢想緑色未来……中国企業の技術力は決して侮れないぞ!

北京モーターショー!
EVとハイブリッド車が百花繚乱

2009年の自動車年間販売台数が1300万台を突破した中国。そのお膝元の自動車展として世界から注目を浴びた北京モーターショー2010は暢想緑色未来(緑の未来を想う)、すなわちエコロジーがメインテーマ。中国メーカーの凄まじいEV、ハイブリッドカーへの入れ込みようが印象的なショーだった。

(取材・文・撮影/井元康一郎 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:10.05.13

テーマは「緑」(エコロジー)! 目玉は電気自動車

4月23日から5月2日まで開催された「北京モーターショー2010」には、世界の自動車業界が大いに注目していた。中国では09年の自動車販売が1300万台を超え、アメリカに取って代わって、単一国として世界最大の自動車市場になった。その中国市場で今後、どのようなクルマが売れ筋になり、どのような技術が求められるのか――世界から2000社以上が出展する北京モーターショーは、未来を占う重要なカギとなるからだ。
ショーのテーマは、「暢想緑色未来(緑の未来を想う)」というもの。緑とはグリーン、すなわちエコロジーのことだ。多くの自動車メーカーがそのテーマに呼応してさまざまなエコカーを展示した。

その中でも目を引いたのは地元、中国メーカーの動向だ。中国メーカーは海外から技術を導入するなどして技術力を上げてきているが、まだ先進国メーカーと直接競争できるだけの実力はない。その中国メーカーがこぞって、世界でも先端分野と目されている電気自動車(EV)や、短距離ならEVとして走れるプラグイン・ハイブリッドカー(PHEV)を出品してきたのだ。
中国政府は09年春、政治方針を発表する全国人民代表大会で、電気エネルギー利用技術を国産化し、普及させるという方針を大々的に打ち出した。中国メーカーがEVやPHEVを大量に出してきた背景には、こうした国の後押しもあるのだ。


上海汽車の「MGローバー750D混合動力」。上海万博の公認低公害車だ


中国で絶大な人気を誇る映画俳優、ジャッキー・チェン氏が高級車エリアに現れた

海外企業との「合弁系メーカー」であっても独自色をアピール


東風汽車の超小型EV「風神i-Car」。ペンギンのような顔つきが来場者に大人気


長安汽車の純EV「Green-i」。10分で80%の急速充電が可能

では、実際にどのようなモデルが出ていたかを見ていこう。まずは海外の有力メーカーと合弁生産する、海外ブランドモデルを主体とする合弁系メーカーだ。合弁系とはいえ、EVについては合弁ブランドではなく、独自ブランドからの出品が大半だった。
メルセデス・ベンツ(独)、ヒュンダイ(韓)のモデルを合弁生産している北京汽車は、60Ahという大量のバッテリーを搭載したセダンモデルの「C70EV」をはじめ、多くのEVを出品した。アメリカ、欧州に対抗して中国版スマートグリッドの確立を目指す送電会社最大手、国家電網公司と手を組んでおり、同社の急速充電器も同時に展示されていた。
フォルクスワーゲン、GMとの合弁で知られる上海汽車は、ボンネットや屋根に太陽電池を仕込んだ純電気自動車「E1」や、上海万博の公式車両として使われているハイブリッドカー「MGローバー750D混合動力(ハイブリッド)」などを出品した。
中国初の元公営自動車メーカーでトヨタ、フォルクスワーゲン車などを生産する第一汽車も、EV、PHEV、普通のハイブリッドカー、燃料電池車の4車種を展示していた。

EVは、バッテリーの性能が不十分な現時点での技術レベルでは、短距離走行をメインとする軽量なシティコミューターに向いていると言われている。そういったコンパクトEVの意欲作を出品しているメーカーも見受けられた。
日産、ホンダなどとの合弁生産を展開する東風汽車ブースの中央に置かれていたのは、2人乗りの超コンパクトEVの「風神i-Car」。ごく小さなモーターとリチウムイオン電池を使用するというパッケージ。これに対してフォード、スズキと手を組む長安汽車は、やはり2人乗りのEV「Green-i」を目玉として出品。セールスポイントは10分で満充電の80%という急速充電性能を実現していること。EVの欠点である航続距離の短さを、クイックチャージで抑制しようというわけだ。

話題のBYDオートは強気の出展、日本のバッテリー技術も光る

それらの合弁系に対して、純国産車の民族資本系メーカーも黙ってはいない。日本でも最も高い関心を集めたのは、リチウムイオン電池世界大手で知られる比亜迪汽車(BYDオート)だろう。
出品したのは3月に一般発売を開始したばかりのPHEV「F3DM」、ミニバン型のEV「e6」、そして大型EVバスの「K9」。「e6」のタクシーパッケージも展示されるなど、都市部でのフリートユーザー(走行ルートやエリアがある程度決まっている法人ユーザー)向けのビジネスを視野に入れていることがわかる。
BYDオートのエコカーの売りは、同社の得意技術である耐久性に優れるオリビン酸リチウムイオン電池を使用していることだろう。ちなみにこの電池は同社だけでなく、中国系メーカーのEVの大半に積まれるとみられる。

これに対して、日本のバッテリー技術を使っていたのは、自動車開発の業務請負を主事業としているIAT。ソニーでリチウムイオン電池の実用化チームを率いた小沢和典氏が設立したエナックスや、パワーエレクトロニクス実装のエキスパートであるマイウェイ技研など在日企業とのコラボレーションで、竹をモチーフにしたエコデザインと高効率の駆動系システムを持った「竹風」などを展示した。
海外勢では、オバマ大統領のイチオシであるGMの新世代PHEV「シボレー・ボルト」のワゴンモデル、中国トップシェアのフォルクスワーゲンのEV「E-LAVIDA(イーラヴィダ)」などがお目見え。日本勢ではホンダの燃料電池車「FCXクラリティ」、日産のEV「LEAF(リーフ)」トヨタのEVコミューター「FT-EV2」などが登場。これらは技術レベルが高いことから中国のメディアの注目度はきわめて高かったが、数のうえで中国勢に圧倒された感もあった。


BYDオートの「e6タクシー」。同社はバッテリー技術でも注目を集める


GMが社運をかける「シボレー・ボルト」。ミニバンモデルが初登場

急速に進むモータリゼーションの中、中国がEVに特化する理由とは?


IATの小型高性能EV「竹風」。バッテリーや電動動力系は日本企業との合作


上海汽車のコンパクトEV「E1」。ボンネットやルーフには太陽電池がある

世界最大の中国市場は今後、どういう方向に向かうのか。これは世界の自動車メーカーをはじめ、自動車部品、EV部品やバッテリー、エネルギーなど、クルマにかかわる多くの分野の企業が大いに関心を持つところだ。
中国の自動車産業メディアおよびコンサルティング大手の首脳は、中国政府がEVを強力に推進しているのは確かだが、EVが普及するのはまだ先の話だろうと推測する。
「中国企業がハイブリッドカーよりEVを優先的に手がけているのは、ハイブリッドより技術的はハードルが低いからです。しかし、バッテリーや充電技術、インフラ整備、コストなどに問題があり、数年で普及するようなことはまずない」
が、EVは中・長期的には次世代車の主流になる技術であることは疑いの余地がないのも事実。
「今、中国メーカーがEVをたくさん出しているのは、技術を見せて投資家に将来性をアピールし、投資を集めてR&Dを進めたいという意図もある」(前出のコンサルティング大手首脳)

中国にとって、EVが重要である最大の理由はエネルギー消費の抑制だ。中国が今後も経済成長を続けるためには、石油エネルギーからの脱却が必要。人口が13億人もいる国でガソリン車が一気に普及すれば、石油の消費量も激増し、原油価格が1バレル200ドル、300ドルと天井知らずで高騰する可能性もある。そうなれば、中国は経済発展どころではなくなってしまうのだ。
EVは石油火力や石炭火力だけでなく、太陽光や水力、原子力、風力など、幅広いエネルギー源から得られる電力を使えるというメリットがある。経済の持続的発展のためには、いくら難しくてもEVの実用化、低コスト化を実現させなければ話にならないのだ。
今年末には中国華南の広州でモーターショーが開かれる。JETRO(日本貿易振興機構)はそこで日系自動車部品調達販売展示会を毎回開催しているが、そこでも「EV関連の部品、技術は今後、需要が劇的に増える可能性がある」(JETRO関係者)という。
EVは日欧米などの先進国だけでなく、すでに新興市場である中国でもニーズが急速に高まってきている。そんな熱気が肌で感じられる北京モーターショーだった。

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