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受けるべき?断るべき?経験者100人の生声から分析 うちに来ない?取引先から誘われた技術者の葛藤と決断
取引先企業と仕事をする場合、いわゆる「引き抜き」と呼ばれる経験はあるだろうか。今回、引き抜きの誘いを受けた経験のある100人のエンジニアへの調査を通して、最新の引き抜き事情を探ってみた。
(総研スタッフ/山田モーキン イラスト/まきお)作成日:10.06.03
はじめに 引き抜きの誘いを受けた100人のスペック
今回調査したのは、取引先企業から引き抜きの誘いを受けたことがあるエンジニア100人。そのうち、実際に誘いを受けて転職したのが半分の50人、残りの半分は誘いを断り現在の職場に留まった人たちだ。
ちなみに誘いを受けた時点での年齢について聞いてみると、30歳が11%で最も多く、25歳〜35歳の間がボリュームゾーンとなっている。また同じく、誘いを受けた時点での年収についても聞いてみると、400〜500万円が21%で最も多く、300〜700万円の間で約72%と全体の3/4を占めた。
グラフ1 取引先からの誘いを受けた時点での年齢 グラフ2 誘いを受けた時点での年収
分析1 誘いのきっかけは“飲み会or電話”
最初に、取引先の企業からどんなきっかけで誘われるのか?代表的な声を紹介しよう。

・取引先の担当者(同じプロジェクト担当チーフ)と夜、たまたま居酒屋で会って誘われた
(32歳・システム開発Webオープン系)
・システム構築中の慰労会の席でクライアントの情報システム部長から簡単に説明を受け、プロジェクト完了後、本格的な引き抜きの話を受けた
(25歳・社内SE)
・同一プロジェクトに参加していたほかのソフトハウス社員との立ち話中に
(26歳・パッケージソフト開発)
・先方訪問時にそこの情報システム担当マネジャーから「どうですか?」と声をかけられた
(33歳・通信インフラ設計)
・使用していたパッケージ会社より雑談レベルでの会話の後、その会社の営業部長から正式に電話で連絡がきた
(32歳・パッケージソフト開発)

今回の調査結果で多かったのは、最初は仕事中や休憩中のちょっとした雑談レベルで誘われて「冗談でしょ?」といった感じで軽く聞き流した後、突然取引先の担当者から電話がかかってきて正式な引き抜きの話をされる、というパターン。
またもう一つのパターンとして、プロジェクト終了後の打ち上げの席で担当者が隣に座り、そっと耳打ちしながら囁く、というもの。
結果を見る限り、取引先からの引き抜きはかなりストレートかつ強気に誘う姿勢を取るケースが多いようだ。
分析2 誘われた理由は“マネジメント能力に対する高い評価”
続いては、そもそもなぜほかにもメンバーがいるにも関わらず、自分だけが誘われたのか?
すなわち、自分のどんな点を高く評価したからこそ、引き抜こうとしているのかという点、浮かび上がったキーワードが「マネジメント力」と「技術力」だ。

・チーフエンジニアとして取引先のネットワーク構築を担当した際の仕事ぶりを評価していただいた
(30歳・ネットワーク設計)
・スプリクトの組み方に関するIT技術を高く評価してくれた
(31歳・パッケージソフト開発)
・新規ビジネスの立ち上げと軌道に乗せるための実行力を高く評価してくれた
(34歳・システム開発Webオープン系)
・プロジェクトでのエンドユーザー折衝能力や外注管理能力
(36歳・パッケージソフト開発)
・大規模プロジェクト(100人程度の開発要員)で大きなトラブルもなく本番稼動を迎え、その後の運用もスムーズにできたこと
(32歳・システム開発汎用機系)
・開発をスケジュールに遅延なく生産導入に成功させたこと
(26歳・半導体設計)

大小関わらずあらゆるプロジェクトに関して、外注メンバーも含めて統率し、スケジュール通りにカットオーバーさせるプロジェクトマネジメント能力。その能力に対する取引先からの高い評価が、引き抜きへと発展する大きな要因。今回の結果の中でもおよそ6割近い割合で、マネジメント力の評価が挙げられた。
またもう一方の大きな要因は、エンジニアならではの技術力の高さ。製品開発力や基盤構築力、またコンサルティング能力、企画力、開発スピード、製品評価・分析力といった各専門スキルに対する評価もとりわけ、高かった。
分析3 誘いを受けるメリット&デメリットは“収入アップ&自由がなくなる”
誘いを受けた時、じっくり話を聞いたうえで取引先の企業に転職することのメリットとデメリットを考える。誘いを受けた100人のエンジニアはそれぞれ、どんなメリット&デメリットを思い浮かべたのだろうか?

・給料が上がるが、やりたいことができなさそうな感じ
(33歳・システム開発Webオープン系)
・給料アップするがシステムの運用保守がメインとなるため、SE等の業務が行えなくなる
(35歳・社内SE)
・給与が2割程度よかったが遠距離通勤を強いられること
(30歳・ネットワーク設計)
・新規ビジネスを立ち上げることができればメリットだが、できなければデメリット
(34歳・システム開発Webオープン系)
・年収3割はアップするが今の勤務よりきつくなり、携わるプロジェクトが証券会社向けの案件に限られる
(33歳・運用保守)

回答のおよそ8割近いエンジニアが挙げたメリットは、ずばり収入アップ。平均して2〜3割上がることに対する期待感は大きいようだ。その一方、自分が携わりたい案件にかかわるチャンスが限られる、といった自由度の制限をデメリットに挙げる割合も、全体の半分以上に及んだ。
収入アップを取るか、それとも仕事内容を取るか。エンジニアにとって大きな選択だ。
分析4 誘いを断るメリット&デメリットは“キャリアの保証&収入頭打ち”
逆に、誘いを断って今の職場に居続けることを選択した場合、考えられるメリット&デメリットとは何だろうか?

・メリットはない。昇給・ボーナスはない
(35歳・社内SE)
・上司や同僚との良好な人間関係がある一方、大きな昇給は期待できない
(30歳・ネットワーク設計)
・メリットなし。年収増は見込めず、新規開発案件に携わるチャンスはない
(36歳・パッケージソフト開発)
・さまざまな案件には携われるが二次受け、三次受けが主となり、PMの立場には携われない
(33歳・運用保守)
・ボーナスがなく、倒産の可能性がある
(30歳・システム開発ファームウェア系)

驚くことに誘いを受ける場合に比べ、多くのエンジニアから今の職場に留まることのメリットについての意見が出なかった。逆にデメリットとして多くが「収入が上がる見込みがない」、さらには「倒産する可能性も……」といった将来に対する大きな不安や絶望感が、回答内容からにじみ出る結果となった。
分析5 誘いを受けたor断った決め手は……
これまで紹介してきた流れを受けて、誘いを受けて転職した50人と、誘いを断り留まったエンジニア50人、双方の決断の主な理由を紹介したい。
誘いを受けた理由 誘いを断った理由

全体の傾向を分析してみると、誘いを受けたポイントは「自分が新しい所に移りたい!」という気持ちを第一に、そして誘いを断ったポイントは「現在勤める会社や家族など、相手に配慮する」という気持ちを第一に、それぞれ大事にして決断しているようだ。
自分or相手、どちらに基準を置いて判断するかによってその結論は大きく変わってくる。
分析6 判断は正しかった!その理由は……
決断を下した後、それぞれの判断について振り返ってもらったところ、9割近いエンジニアが「決断は正しかった」と回答した。その理由を探ってみると……
誘いを受けて転職したエンジニア
誘いを断り留まったエンジニア

転職したエンジニアからは「収入や待遇が大幅に上がった」など、誘いを受けた場合に想定されるメリットがそのまま反映される結果に。
またとどまったエンジニアからはその後、新しい仕事を任せてもらえたり、また昇進して部下ができたりするなど、誘いを受けた時点では想定できなかったことが実現したことに満足しているケースが目立った。
最後に もし引き抜きの誘いを受けた場合、話だけは聞くべし!
最後にもし、取引先からの引き抜きの誘いを受けた場合のアドバイスとして、多くのエンジニアが口をそろえて話すのは、「とりあえず、話だけは必ず聞いてから決めること」「誘いを受けて転職する場合、決して周りに転職先のことは言わない」ということ。
取引先から誘いを受けるということはある意味、今後のキャリアを考える上で絶好の機会。担当者から「自分のどんな点を評価しているのか」「もし転職したらどんなメリットやデメリットが想定されるのか」といった点についてじっくり聞いて考える一方、「もしこのまま今の企業にいることで、どんなキャリアを積んでいくのか」を再検討することで、転職するにしてもしないにしろ、きっとその後の人生にとって良い影響をもたらすことは、今回の調査結果からも明らかだと言える。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ 山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
私の場合、引き抜きの経験はありませんが前の仕事の成果を評価していただいた結果、新しい仕事を依頼されることがあり、それは非常にうれしい体験です。引き抜きの誘いを受けるということはそれだけ、期待されているということ。例え転職する意思がなかったとしても経験者のアドバイスにもある通り、まずは話を聞いてみるだけでも今後のキャリアを考える上で、大きな価値があると思います。

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