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エンジニア給与知ッ得WAVE Vol.
99
異業界・競合転職も不可避か?
エンジニアの業種別年収
日本経済は景気回復に向かっているが、その足取りは業種や企業によって濃淡がある。昨年は世界不況の影響で手取り年収が減った人も多いが、さて今年度はどうなるだろうか。エンジニア3000名の業種別平均年収を調査したその“驚くべき”結果は──
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:10.05.17
やはり年収が高いのは金融・保険、サービス業系

 今回の調査対象は、前回(学歴と給与)と同じエンジニア3000名。システム開発、システム運用・監視、コンサルタントなどのIT系職種(以下、IT系)と、機械設計、生産技術、品質管理、素材関連などの機械・電気・化学系職種(以下、機械・電気・化学系)に大きくわかれる。勤務先企業の規模は100人未満(26%)、100〜500人未満(24.3%)、1000〜5000人未満(20.6%)が多い。年齢は22歳から35歳、平均年齢は30.75歳となっている。

 勤務先企業の業種で最も多いのが「ソフトウェア・情報処理系」で41.4%を占める。通信、インターネット関連などを含めるとIT関連業種は51%と過半数を超える。つづいて多いのが製造業系で39.1%。商社、流通、専門コンサルタント、マスコミ、金融・保険などのサービス業は合計しても7.8%と少数だ。ところが、業種別の平均年収をランキングしてみると、上位に並ぶのは、1位金融・保険系598万円を筆頭に、2位専門コンサル系559万円、4位商社系(総合商社・素材・医薬品など)551万円、7位電力・ガス・水道513万円、8位団体・連合会・官公庁505万円など、ほとんどがサービス業系業種なのである。(DATA1)

 製造業では、総合電気メーカー556万円が3位につけているが、あとは5位に化学・石油・ガラスが、9位にコンピュータ・通信機器、10位に医療機器メーカーが顔を出すにすぎない。対象者の最も多い、ソフトウェア・情報処理系ははるかベスト10の下、25位と下位に沈み、その平均年収額443万円は、トップの金融・保険とは155万円もの開きがある

 これはかなり「痛い」結果ではあるまいか。もちろんこの調査は年収が数千万円に達する金融ディーラーと、ソフトハウスに勤める一介のプログラマの比較ではない。金融・保険に勤めている人も、社内情報システムなどを担当するエンジニアなのだ。同じエンジニア同士でも、勤めている会社の業種によってこれほど年収の開きがある。当たり前といえば当たり前とはいうものの、こうした現実をつきつけられて、「技術者としては同じようなレベルの仕事をしているのに」と悔しくなる人も多いのではないかと思われる。

DATA1 会社業種別の平均年収
順位 業種 平均年収
1位 金融・保険系 598 万円
2位 専門コンサル系 559 万円
3位 総合電機メーカー 556 万円
4位 商社系総合商社・素材・医薬品他 551 万円
5位 化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 521 万円
6位 通信系 518 万円
7位 電力・ガス・水道 513 万円
8位 団体・連合会・官公庁 505 万円
9位 コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 492 万円
10位 医療機器メーカー 491 万円
11位 鉄鋼・金属メーカー 489 万円
12位 家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 487 万円
13位 繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー 486 万円
14位 不動産・建設系 485 万円
15位 医薬品・化粧品メーカー 483 万円
16位 半導体・電子・電気部品メーカー 475 万円
17位 商社系電気・電子・機械系 470 万円
18位 プラント・設備メーカー 465 万円
19位 食料品メーカー 460 万円
20位 自動車・輸送機器メーカー 459 万円
21位 その他IT・通信系 456 万円
22位 精密機器・計測機器メーカー 450 万円
23位 その他メーカー 445 万円
24位 インターネット関連系 444 万円
25位 ソフトウェア・情報処理系 443 万円
26位 機械関連メーカー 428 万円
27位 教育 428 万円
28位 住宅・建材・エクステリアメーカー 425 万円
29位 その他メーカー電気・電子・機械系 425 万円
30位 マスコミ系 424 万円
31位 重電・産業用電気機器メーカー 421 万円
32位 流通・小売系 417 万円
33位 サービス系 407 万円
“金高造低”“造高情低”の構造は変わらないのか

 技術系であれ事務系であれ、一般的に金融・保険業界は製造業よりも給与が高いことは、新卒で就職活動を経験してきた人であれば、わかりすぎる常識だ。同じ製造業でも総合電機と銘打つ大企業と、その子会社や、下請け・サプライヤーに甘んじる中小企業では、年収レベルで歴然とした差があることも常識の内。

 またITやインターネット関連産業は時代の寵児とはいうものの、業界の歴史が浅く、明治時代から地道に資本を蓄積してきた金融業界とは、産業基盤が大きく異なる。金融ビックバン以降の業界再編はドラスティックだが、金融業界の高給与体質はそれほど簡単には崩れないのだ。かたやIT業界は、資本主義の歴史でみれば勃興期の産業。株式を上場する社員数1000人以上の企業はまれで、社員10数人規模の零細ベンチャーが多数を占める。さらに社員の平均年齢が若いということもあって、平均年収をとってみると金融や製造業の大手にははるかに歯が立たないのが現実だ。

 もちろん、こうした平均年収からみた日本の産業構造が、これからも同じままであるとは言えない。いずれは、“金高造低”(金融が製造業より平均年収が高い)、“造高情低”(製造業が情報産業より高い)の順位が逆転する日が来るかもしれないけれども、はたしてそれはいつのことだろうか。

低い製造業、ソフトウェア産業の給与満足度。ほとんどが10年以内に転職を検討

 それぞれの業界にいるエンジニアたちの給与満足度や転職意向度はどんなものだろうか。給与満足度が高いのは、専門コンサル、医薬品・化粧品メーカー、総合商社、金融・保険系、化学・石油系、団体・連合会・官公庁系など、平均年収で高位を占める業界がやはり多い。ちなみに専門コンサルタント業の満足度がダントツで高いのは、もともと高給与であることに加え、個人の業績次第で年収が大きくジャンプする成果主義が徹底しているためと考えられる。(DATA2)

DATA2 会社業種別の給与満足度
順位 業種 給与満足度
1位 専門コンサル系 67%
2位 医薬品・化粧品メーカー 47%
3位 商社系総合商社・素材・医薬品他 44%
3位 金融・保険系 44%
5位 化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 41%
6位 団体・連合会・官公庁 40%
7位 コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 39%
8位 教育 38%
9位 食料品メーカー 35%
10位 通信系 34%
11位 半導体・電子・電気部品メーカー 32%
11位 鉄鋼・金属メーカー 32%
13位 ソフトウェア・情報処理系 32%
14位 家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 31%
15位 自動車・輸送機器メーカー 30%
16位 インターネット関連系 29%
17位 精密機器・計測機器メーカー 28%
17位 総合電機メーカー 28%
17位 流通・小売系 28%
20位 医療機器メーカー 27%
21位 不動産・建設系 27%
22位 プラント・設備メーカー 26%
22位 その他メーカー 26%
24位 住宅・建材・エクステリアメーカー 25%
25位 その他IT・通信系 24%
26位 重電・産業用電気機器メーカー 23%
27位 機械関連メーカー 22%
27位 マスコミ系 22%
29位 電力・ガス・水道 20%
30位 サービス系 19%
31位 その他メーカー電気・電子・機械系 16%
32位 商社系電気・電子・機械系 13%
33位 繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー 0%

 医薬品、化学など構造的に高給与の業種を除く製造業全体の満足度は、30%前後であり、金融にくらべて低いことがわかる。ソフトウェア業種も同様だ。電力・ガス・水道などは実際の平均年収は高いものの、満足度は低い。これは推測だが、これら公共サービスの企業は、いまだ年功序列型の賃金形態が一般的で、そのため今回のような比較的若年層を対象にしている調査では、不満度が高まるのではないかと思われる。流通・小売、サービス業では、平均年収も低く、同時に満足度も低いという結果になった。

 給与の多寡は転職動機を形成する主要な要因である。「現在、転職活動を行っているかは別として、2〜3年後ぐらいには転職する意思があるかどうか」を指標にした転職意向度でみると、DATA3のような結果になった。安定業種と思われる、電力・ガス・水道で80%と高いのは意外だが、人材の流動化がそれほど活発ではないといわれてきた鉄鋼・金属、化学・石油なども50%台と、ソフトウェア・情報処理系の業種とほぼ同様に高い。医療機器メーカーやインターネット関連は一見、転職意向が低いように見えるが、実は「2〜3年後には」ではなく「現在、転職活動を行っていて、今すぐに転職する意思があるか」どうかという設問では、医療機器メーカーが23%、インターネット関連15%と高い数字になっている。

 それにしても、業界の如何を問わず、回答者の転職意向は高い。「10年先には」という人は態度未定といえるにしても、「今すぐ」や「2〜3年後」というのは確実な未来。その割合が全体で78%に達するというのは、かなりの高率と見てよい。「エンジニアの転職は当たり前」という時代になっていることをあらためて痛感させられる。

DATA3 会社業種別の転職意向度
業種 現在、転職活動を行っていて、
2〜3年後ぐらいに転職する意思がある
現在、転職活動を行っていないが、
2〜3年後ぐらいに転職する意思がある
電力・ガス・水道 0% 80%
マスコミ系 11% 56%
教育 0% 63%
食料品メーカー 13% 48%
商社系総合商社・素材・医薬品他 11% 44%
繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー 11% 44%
鉄鋼・金属メーカー 6% 48%
化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 7% 48%
商社系電気・電子・機械系 8% 46%
コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 10% 44%
ソフトウェア・情報処理系 8% 45%
金融・保険系 20% 32%
総合電機メーカー 14% 37%
精密機器・計測機器メーカー 5% 45%
住宅・建材・エクステリアメーカー 25% 25%
専門コンサル系 6% 44%
その他メーカー 16% 32%
自動車・輸送機器メーカー 10% 38%
半導体・電子・電気部品メーカー 7% 41%
サービス系 6% 42%
不動産・建設系 13% 33%
家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 14% 31%
その他IT・通信系 9% 34%
通信系 14% 28%
機械関連メーカー 9% 33%
流通・小売系 7% 34%
重電・産業用電気機器メーカー 8% 33%
医療機器メーカー 0% 41%
その他メーカー電気・電子・機械系 6% 35%
団体・連合会・官公庁 20% 20%
インターネット関連系 4% 36%
医薬品・化粧品メーカー 3% 29%
プラント・設備メーカー 0% 32%
総計 9% 41%
より高い年収をめざして、異業種転職も視野に入れる

 将来かなりの率の人が転職を希望しているわけだが、転職先に同業種を選ぶか、異業種を選ぶかは大きな違いだ。「同業種のほうが職務内容や経験が活かせて安心だ」とはいうものの、業界全体が不況に陥っている業種では、そもそも同じ業界の転職は募集案件が少なく、チャンスが少なくなる。もし、エンジニアの専門性をいかして、他の業界に転職することを受け入れれば、それだけチャンスは広がることになる。

 同一業界の競合会社への転職について興味があるかどうかを聞いてみた結果が、DATA4だ。「興味がある」という回答率が高い(50%以上)のは、インターネット関連、医薬品・化粧品メーカー、家電・AV機器・ゲーム機器メーカー、金融・保険系、食料品メーカー、繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカーの6種。 反対に「興味がない」という回答率が高い(50%以上)のは、団体・連合会・官公庁、教育、総合商社系、不動産・建設系、専門コンサル系など7種だった。

たとえ、同じ業界のライバル企業への転職に興味があっても、その可能性が低い場合はどうするだろうか。転職をあきらめてしまうのだろうか。そこで浮上するのが異業種転職の可能性だ。異業種転職とは具体的にどんなことかといえば、例えば、食料品メーカーの生産技術系のエンジニアが、工場での生産ライン設計の経験を活かして、別の製造業種やプラント設備会社に転職するような場合だ。全く同じとはいえないものの、ベルトコンベアラインの配置やそれに伴う電源設備の知識などは異業界でも十分活かせる。

 あるいは金融・保険系で大規模なトランザクションを処理するインターネット・バンキングシステムを構築してきたようなエンジニアであれば、そのネットワークやデータベースの知識をSI業界やオンライン・ゲーム業界のインフラ整備に活かせる。このように、自分の専門と経験が他の業界でどのように活かせるかを調べることで、転職チャンスを広げるエンジニアが最近増えている。

 もちろん、特殊な領域では異業種からのエントリーに難色を示す企業がないわけではないが、エンジニアも一つの専門性を極めると、例えば財務や経理の専門家と似て、そのスキルはかなりの部分で汎用性をもつものだ。いわばどこに転職しても“つぶしがきく”、汎用的な専門性を身につけることがこれからは重要になる。

 このように異業種転職の壁が低くなれば、同じ仕事でも、いつまでも同じ業界、同じ会社ではなく、より給与の高い業界に移動して継続するという選択の可能性が高まる。業界構造や企業規模の違いで、給与格差がなかなか縮まらないのだとすれば、なおさらその壁を越える異業種転職に向けた戦略が、年収アップを考える上では重要なステップになっていくだろう。その材料の一つとして、今回の業種別平均年収の調査を活かしていただければうれしい限りである。

DATA4 「競合会社への転職について興味関心がある」会社業種ランキング
順位 業種  ある あるが
無理だと思う
ない
1位 繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー 67% 0% 33%
2位 食料品メーカー 57% 26% 17%
3位 金融・保険系 56% 16% 28%
4位 医薬品・化粧品メーカー 56% 26% 18%
5位 インターネット関連系 52% 11% 38%
6位 家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 52% 19% 30%
7位 総合電機メーカー 47% 19% 33%
8位 自動車・輸送機器メーカー 47% 22% 32%
9位 その他IT・通信系 46% 21% 33%
10位 ソフトウェア・情報処理系 46% 19% 35%
11位 専門コンサル系 44% 6% 50%
12位 マスコミ系 44% 11% 44%
13位 通信系 43% 23% 34%
14位 鉄鋼・金属メーカー 42% 23% 35%
15位 医療機器メーカー 41% 23% 36%
16位 コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 41% 27% 32%
17位 不動産・建設系 40% 7% 53%
18位 電力・ガス・水道 40% 20% 40%
19位 半導体・電子・電気部品メーカー 38% 23% 38%
20位 その他メーカー電気・電子・機械系 38% 17% 45%
21位 化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 36% 20% 44%
22位 流通・小売系 34% 17% 48%
23位 その他メーカー 32% 23% 45%
24位 プラント・設備メーカー 32% 42% 26%
25位 重電・産業用電気機器メーカー 31% 28% 41%
26位 機械関連メーカー 31% 21% 49%
27位 サービス系 30% 23% 47%
28位 精密機器・計測機器メーカー 26% 29% 44%
29位 教育 25% 0% 75%
30位 住宅・建材・エクステリアメーカー 25% 25% 50%
31位 商社系電気・電子・機械系 25% 25% 50%
32位 商社系総合商社・素材・医薬品他 22% 22% 56%
33位 団体・連合会・官公庁 0% 0% 100%
総計 43% 20% 37%
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
数年前と比べると、異業界への転職や、同業界での競合企業への転職の垣根は大分なくなってきたように思います。自分のやりたいことができる会社選びはもちろんのこと、給与面をはじめとした評価・待遇面も大事な選択肢の一つです。少しでも参考になればうれしい限りです。

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