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グーグルエンジニア4人が語る「世界を変える私のイノベーション」 Vol.4
20代で一生現役エンジニア宣言。ギークな中嶋海介のイノベーション
「Google音声検索」開発において、最大のチャレンジだった膨大な訓練データの収集。だが、わずか1週間ほどで自前の収集ツールを開発してしまい、周囲を驚かせたという中嶋海介氏。Googleはエンジニアにとって天国みたいな場所と語る中嶋氏の「20代で一生現役エンジニア宣言」とは。
(取材・文/中川隆太郎 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:10.03.24
イノベーションを起こすアイデアを形に。
Googleならではの環境や文化がイノベーションの素。

2009年12月のサービス開始以来、従来の音声認識にはない認識精度やスピード等により、日本のユーザーから多くの反響があったGoogle音声検索。コアメンバーであるソフトウェアエンジニアの中嶋氏は難問も難なくクリアしていった。

ソフトウェアエンジニア 中嶋海介氏
大学院でUIやコンピューターグラフィックスの研究を行い、2007年にGoogleに新卒入社。主に携帯電話における検索技術のさらなる向上に取り組む。学生時代からモバイル関連企業でプログラミングのアルバイトをしていたり、プログラミングコンテストに参加したりと、根っからのギーク(技術好き)である。

仕事を楽しめるからこそ、一生懸命になれる。

「昔は趣味でよくプログラムを書いてたけど、今は仕事が楽しいので前ほどは書かなくなりました。家に帰ってももうちょっと≠ニ、つい仕事をしてしまうんです」

「20%ルール」(勤務時間の20%は自分の好きなことに使える)はもちろん、本業においても基本的に自分のやりたいことに挑戦できる。Google音声検索の日本語版プロジェクトにしても、新しいことをやりたいと思っていた中嶋氏が「面白そう」だからと、自らの意思で参加を決めている。

「それまでもユニバーサル検索を携帯電話でも使えるようにしたりと、携帯電話上での検索技術向上に取り組んでいましたが、音声認識は自分にとって未知なる世界。勉強したことさえなかったので、新しい発見もありそうだと思いました。実際、Google音声検索の日本語版を作っていく過程全てが面白かったんです」

 2008年秋にリリースされた英語版の音声検索を支えるコア技術はすでにあったものの、日本語はその特殊さゆえに課題も多かった(詳細は3月10日に公開した井上氏の記事参照)。しかし、中嶋氏はどれも大変だと思わなかったそうだ。それは中嶋氏自身の技術力によるところも大きいが、Googleならではの環境も起因している。

Googleはソフトウェアエンジニアにとって天国みたいな場所。

「一番ありがたいと思うのは開発に専念できること。とにかくコミュニケーションが簡潔で、よほど大規模なプロジェクトでもない限り格式ばった仕様書は必要ありませんし、ミーティング等に時間を取られることもありません」

それもそのはず。プロジェクトのコアメンバーは製品開発全体をリードするプロダクトマネージャーの井上氏に、米国にいるリサーチサイエンティストのマイクシュスター、中嶋氏の3人だけ。仕様書は簡単なラフで済むし、メール一つとっても文章が1行や、時には単語一つで意志疎通ができてしまう。開発のパートナー的存在であるマイクとはキャリアも年齢も大きく違うが、それも全く気にならなかったと言う。

「マイクはよく日本にも来ている米国の研究者で、音声認識にとても詳しく、色々と教えてもらいましたが、仕事以外では友達のように付き合っています。だから、場所が離れていてもコミュニケーションロスを起こすこともないし、2人でカジュアルに相談して決めたことが驚くほどの速さで進んでいきます」

 プロジェクトマネージャーの井上氏が最大のチャレンジだったと言う膨大な訓練データの収集においても、スピード感は明らか。わずか1週間ほどで自前の収集ツールを開発してしまい、井上氏を驚かせた。

「Googleには独自の優れた計算機インフラがあります。分散ファイルシステムのGoogle File System(GFS)、並列プログラミングモデルの「MapReduce」、大型データベースのBigTable等を自由に使えるのも嬉しい。膨大なデータによる実験も簡単に行えるし、キャパシティやフェイルオーバーを気にすることなく、ソフトウェア開発に専念できるからです。Google音声検索の日本語版プロジェクトでもアルゴリズムを考えることに注力して、アイデアをプロトタイプにしては、マイクと納得のいくまで議論を重ねました」

チームは一つではない。それぞれの進化が大きなイノベーションを生む。

 とはいえ、Google音声検索は従来の音声認識にはない認識精度、スピード、そして検索の利便性を実現している。イノベーティブな製品を開発していく上で壁にぶつかったことはないのだろうか。

「あえて言うなら、やはりゼロからデータを収集しなければいけなかったこと。自分達のチームだけではさすがに厳しかったかもしれない。でも、他の様々なチームから力を借りることができたんです。Google日本語入力のチーム、Googleマップのチーム等、エンジニアだけでも5チームくらいに相談。アドバイスはもちろん、ツールやライブラリ、データの提供もしてもらいました。短期間で質量ともに満足のいく単語発音リストを作り上げることができたのは仲間のおかげです」

 これは転職者も驚くことだが、Googleでは周りの人が自分の仕事の範囲を超えて快く協力してくれる。だからこそ、たとえ一つ一つのチームが小規模でも高いレベルでシナジー効果を発揮し、進化を遂げ、大きな力となるのだ。

自分発の製品開発で世の中を驚かせたい。

 GoogleにはC言語やPython、それにUNIXの生みの親とも言えるような歴史的な功績のあるエンジニアがいたり、オープンソースの世界で有名なエンジニアも多数活躍している。Googleならではの環境や文化が、優秀なエンジニアを惹きつけているのは言うまでもない。そして、彼らのようなギークと一緒に仕事ができることもまた大きな魅力だ。

「東京オフィスにも、自分が学生時代から知っていたエンジニアがいたりします。会えるとは思っていなかったエンジニアが普通に隣にいたりするような環境です。また、50代になっても、第一線で研究をしていたり、プログラムを書いているのも、Googleでは珍しくありません。私も自分の技術力を活かして一生エンジニアでいくつもりです」

 しかし、まずは「こういうものがあったら世の中の人の役に立つだろう」という自分のアイデアを製品にして、世に送り出したいと言う中嶋氏。話を持ちかけられたプロジェクトに参加するだけでなく、20%プロジェクトで取り組んでいる研究テーマを製品開発プロジェクトにすることが目標だ。自分達が「これはいける」と信じて突き進めば、ユーザーにも喜んでもらえることはGoogle音声検索の日本語版プロジェクトで経験済み。イノベーションの本当の面白さを知った中嶋氏の挑戦はまだまだこれからである。

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