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SNS特集【後編】広がるオープン化!ヒットタイトルを創り出せ ミクカレ、ハピアク…ソーシャルアプリの挑戦者 SNS特集【後編】広がるオープン化!ヒットタイトルを創り出せ ミクカレ、ハピアク…ソーシャルアプリの挑戦者
前編の「mixi&モバゲー!SNSプラットフォームの開拓者」に続いて、後編はソーシャルアプリに携わるエンジニアを紹介する。オープン化から半年余りでヒットタイトルが続々登場しているが、その陰には挑戦者たちの試行錯誤と苦労があった。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/平山 諭) 作成日:10.03.12
ミクカレ。 開発期間は3週間!自社インフラを春までに完成!
 米国で大人気の「Chuzzle」、懐かしの「テトリス」、恋愛ゲーム「ミクカレ。」……株式会社ジー・モードが提供するmixiアプリモバイル「Gモード みんなのミクゲー」は現在28タイトル、累計登録数は約750万人にも上る。この成功の裏には、エンジニアたちのドタバタがあった。
小沢徹也氏

株式会社ジー・モード
新規事業開発室 
インフラ構築プロジェクト リーダー
小沢徹也氏


「ミクカレ。」 (c)G-mode
アクセス急増への対応から、3週間で「ミクカレ。」完成

 GモードがOpenSocial事業を始めたのは2年ほど前。実質的にOpenSocialでゲーム開発を始めたのは、昨年10月のmixiアプリモバイル版公開に合わせた、8月からだ。同社に数多くあるゲームの資産を生かして、新サービス「Gモード みんなのミクゲー」を10月27日に発表、テトリスをはじめとした12タイトルのミニゲームがリリースされた。これらのゲームに共通するシステムの基幹設計と開発を担当したのが、新規事業開発室の小沢徹也氏だ。
 小沢氏は主に開発をひとりで担当し、低いレイヤーの業務はアウトソースしていたのだが、それが悲劇を生む。リリース後の4日間で「Gモード みんなのミクゲー」は、登録数が100万人となってしまった(?)のだ。
「アクセスが集中するピークタイムがあるとは知っていましたが、ユーザーさんが急増して予想以上に跳ね上がりました。驚きました。そこで急きょ、11月中はインフラの負荷軽減に集中したのです。しかし、同時に『ミクカレ。』の開発も進めていて……」


 最初に発表したミニゲームは、そのほとんどがユーザー同士でスコアを競うようなタイプ。よりコミュニケーション型のゲームを投入したいと、10月から社内で企画を進めていたのが「ミクカレ。」だ。小沢氏が設計、プログラマが開発の2人体制だったが、激増するアクセス数への対応で社内は「お祭り状態」。しかし、全員が「ほかは遅らせても『ミクカレ。』は納期を死守!」という意気込みだった。なぜなら、同社ではミニゲームの登録ユーザーを、「ミクカレ。」などのアイテム課金型コンテンツに誘導するというのがビジネスモデルだったからだ。

 結局「ミクカレ。」の開発は12月に入ってスタートし、リリースは何と12月22日。3週間で完成させたこの恋愛ゲームは、リリース後1週間で登録数が約10万人、2週間で約15万人と増加し、現在は約20万人超というヒットタイトルになった。


「ミクカレ。」 (c)G-mode

「マイミクと擬似恋愛して、最終的にお目当ての彼氏を振り向かせるゲームです。だから『マイミク以上恋人未満』がキャッチで、プレゼントを渡したり、ハートを集めてつっついたり、見つめたりができます。『ミクカレ。』をしていない人にもトライしてほしくて、『うわさを流す』機能も入れました。『ミクカレ。』でつながった人たちが実際に会って、『最近はどう?』などの話が弾んだらうれしいですね。まだまだ開発は継続中ですが」

1月からインフラのリーダー、ユーザーのコメントに感動

 一方、「Gモード みんなのミクゲー」の人気ぶりに、とうとうインフラが追い付かなくなる。一時的に「追加停止状態」になるタイトルも現れ、同社ではソーシャルアプリ開発に本腰を入れると同時に、自社での新規インフラ構築に動き出す。インフラのすべてを自社でコントロールしたいと考えたのだ。
 小沢氏は入社6年目。これまで主にゲームアプリの開発を経験していた。また、今回の開発においてOpenSocialの技術仕様も学んでいる。しかし、インフラの構築や保守運用は未経験。そんな中、今年1月の組織改編に伴い、何と新部門においてインフラ構築プロジェクトのリーダーとなる。これまでインフラ構築や保守運用の経験がなかったので、現在ではDBへの負荷のかかり方や大量アクセスへの対処法などを、ほぼ独学で学んでいる。
「オープン化されたSNSプラットフォームに乗ることで、びっくりするほど多くのユーザーさんがいることに気付かされました。完成は春くらいになると思いますが、自分たちでインフラを扱うのが今から楽しみです」


 ユーザーの声を反映させたリリース後の機能チューニングも、ソーシャルアプリに携わるエンジニアの重要な仕事だ。「ミクカレ。」でもシナリオモードの「おでかけ」機能や、バレンタインなどの「イベント」といった、細かい改修がいくつも追加されている。その変化は「初期の状態が思い出せないくらい」(小沢氏)。
 タイトルを出し続けてきたことで、「ユーザーが反応するタイミング」が徐々につかめてきたと小沢氏は語る。その感覚とユーザーのコメント、サーバーの動きなどから機能チューニングを行い、リアルタイムにコンテンツに反映している。
 また、「(キャラクターの)菅野くんはかわいいからイベントに出して!」などの声が届けば、社内で「こんなこともやってみようか」などの相談が自然と始まり、アプリの方向性もどんどんひとり歩きしていくそうだ。こうして事業拡大を続ける同社では、さまざまな職種のエンジニアを募集中とか。

「たまに『こんなにユーザーの声を聞いてくれるサイトはほかにないよね』なんて感想をいただくのですが、うれしくなって皆で盛り上がります。まだまだ勉強中ですが、これから出していくアプリを見てください。他社を抜くような秘策もありますから(笑)」
小沢徹也氏

小沢氏が開発に携わった「くるりん☆カフェ」 (c)G-mode
ゲースタ・ハピアク ソーシャル化とローカライズ…次は世界!
 ひと口にソーシャルゲームといっても「出自」が分かれる。オリジナル開発、既存のゲームのソーシャル化、海外ゲームのパブリッシュ(ローカライズ)などだ。Facebookのアプリとして世界に大人気の「Happy Aquarium」の日本語版を手掛けたのが株式会社ドリコム。昨年12月にリリースされて日本での人気も上昇している。
黒田英二氏

株式会社ドリコム
マーケティングソリューション事業本部
エグゼクティブマネージャー
黒田英二氏


「ゲームスタジオ物語」
原作のソーシャル化を左右するのはゲームバランス

 昨年8月、mixiアプリPC版のオープンと同時に、ドリコムは5つのソーシャルアプリをリリースした。そのひとつが現在では登録数約250万人と根強い人気を誇る、「通信制脳力大学−漢字テスト」だ。
「Facebookのオープン化をきっかけに、『ソーシャルゲームとは何か』を社内の皆で学び始めました。その後、mixiアプリ向けに企画を出し合い、その中から生まれたひとつが『通信制脳力大学−漢字テスト』です。初めはどんなアプリがユーザーに受けるかわかりませんでしたので、タイプの異なるゲームを5つ出してゲームバランスを調整していきました」
 同社には上記の漢字テストや「うまレーシング」などの自社オリジナルゲームもあるが、既存ゲームにソーシャル要素を加えたコンテンツも揃えている。1月末にリリースした「ゲームスタジオ物語」(ゲースタ)がそれだ。自らがゲーム開発会社の社長となり、友人をプログラマやデザイナーなどのスタッフとして雇い入れ、ヒットゲームの完成を目指すというゲーム。原作は株式会社カイロソフトの「ゲーム発展国++」で、ドリコムがソーシャル化を行った。


「ソーシャル化で最も気を使うのはゲームバランスです。ひとりで進めるゲームに、ユーザー間で行き来させることでゲームが進む要素を追加しますが、短期間でクリアできてしまっても楽しんでもらえませんし、冗長になって飽きさせてもいけません。自分たちで動かさないとわからない部分も多く、『3歩進んで2歩下がる』という試行錯誤の連続です。また、ソーシャルアプリはSNSに来た『ついで』に遊ぶもので、ユーザーにとって本来の目的ではないと思います。その中で遊んでもらうため、1回の滞在時間は5分程度とみて開発します」


「ゲームスタジオ物語」

 ドリコムには企画側のディレクターが約5人、開発側のエンジニアが約10人いるが、黒田氏は全体をまとめる統括部長的な立場にあり、「開発のスタイルやリズムをつくるのが仕事」と語る。SI企業のSE、大手ポータルサイトのインフラ部部長、オンラインゲーム会社の社長などを経て、昨年9月に入社した。ソーシャルゲームの流れはインターネットの世界における、数年に一度の大きな波であると考えている。

「集まるトラフィックが非常に大きいので、そこでのマネタイズはもちろん、ほかの自社コンテンツにつなげること、またトラフィックを生かした広告商材をつくっていくことがポイントです。仮に登録数300万人のタイトルが4本出せれば合計で1200万人。これはmixiの月間ログインユーザーとほぼ同数ですから、大きな可能性があると思います」
Facebookの大ヒットタイトルを日本版の「ハピアク」に

 ドリコムが昨年12月22日にリリースした「ハッピーアクアリウム」(ハピアク)は、水槽で魚を育てる箱庭的なゲーム。熱帯魚の世話をするとポイントやコインが貯まり、新しい魚や水槽に置くアイテムが増やせる。友人間で世話をし合うことが大きなポイントだ。
 実はこのゲーム、Facebookアプリ「Happy Aquarium」を国内向けにパブリッシュしたものだ。このゲームはFacebook上で月間アクティブユーザー数が約2700万人という大ヒットタイトル。ドリコムが開発元のCrowdStar社との協業で国内版を完成させた。
「まずCrowdStar社のホームページにアクセスしたのですが、ロゴくらいしかなくて何もわからない(笑)。メールで連絡をして返事をもらい、提携を進めていきました。海外のヒット作に似たアプリもありますが、弊社では『オリジナル』という志向がありますので、パブリッシュという選択肢を取りました」
 同社の強みはこの取り組みを通じてFacebookでのノウハウを学んでいること。Facebookの全世界でのアクティブユーザー数は4億人以上と言われるが、黒田氏は「サーバーの構成もDBの使い方もずいぶん違い、非常に勉強になる」と語る。


 そして、これまで積み重ねてきた資産を生かして、今度はFacebookに自社ゲームを「上陸」させる計画もあるという。
「ソーシャルアプリで米国に拠点を設ける日本企業が現れても不思議はありません。また、現在のSNSは世界的にはPCが中心ですが、今後はiPhoneなどスマートフォンへの展開が予想されます。すると、一回の滞在時間が短くなる代わりにログイン回数が増え、ゲームの『やり込み要素』が強くなるかもしれない。ゲームの要素が変わっていく可能性があることは、まだまだ大きなチャンスであると考えています。一方で、開発ベンダー間では生き残りをかけた競争が始まるでしょう」
 成長中の日本市場に加えて、世界市場への参入が視野に入れば、エンジニアが活躍できる場も格段に広がるはず。では、どのようなエンジニアが求められるのだろうか。
「ソーシャルアプリにはかっちりとした仕様書はありませんし、遊ばれ方を見て企画や改善案を常に考えて反映していく必要があります。こうした環境に対応できる柔軟性は必要ですね。ただ、苦労は多くても何十万人、何百万人に使ってもらえるゲームを開発できるのは、たまらない魅力だと思います」

黒田英二氏

「ハッピーアクアリウム」
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
前・後編で紹介した記事はいかがでしたか? 私の周りでも「ソーシャルアプリは来てるよね」の声が以前からとても多く、有望市場であることは間違いないでしょう。ユーザーであればより理解してくれると思いますが、エンジニアの力が求められていますよ。

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