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SNS特集【前編】巨大インフラを開放して有望市場を育てる mixi&モバゲー!SNSプラットフォームの開拓者 SNS特集【前編】巨大インフラを開放して有望市場を育てる mixi&モバゲー!SNSプラットフォームの開拓者
Facebookが始めて、GoogleのOpenSocialで世界的な大流行となったSNSのオープン化。日本では昨年8月にmixi、11月にモバゲータウンがAPIを公開し、ソーシャルアプリ市場を急拡大させた。SNS特集の前編として、SNSプラットフォーマーのキーパーソンに取材した。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/平山 諭) 作成日:10.03.05
mixi APIを提供することで多様なアプリを生み出したい
 API開放によるSNSのオープン化を日本に広めたのはmixiだ。APIを2008年12月より順次提供し、それらを利用したmixiアプリPC版を昨年8月、mixiアプリモバイル版を10月に公開したことで、日本市場拡大の「火つけ役」ともなった。PCとモバイルを合わせたmixiアプリのタイトル数は、現在1000以上。公開から約半年が過ぎた先駆者の仕事と今後を紹介する。
田中洋一郎氏

株式会社ミクシィ
mixi事業本部
パートナーサービス部
開発グループ
プラットフォーム開発チーム
田中洋一郎氏

OpenSocialの専門家がプラットフォームを開発

 SNSのオープン化はFacebookが先駆けとなり、GoogleがOpenSocial(ソーシャルアプリケーションの標準API)を公開したことで後押しされ、2008年から世界的に拡大した。mixiではこのころ、日記やフォトなどに続く新しいコミュニケーションサービスを追加していくためには、ソーシャルアプリや外部サイトとの連携がカギになると判断していた。世界的なムーブメントもあり、まずはオープン化の準備を開始し、そして加速させた。
  そのころ、同社のプラットフォーム開発チームのチームリーダーである田中洋一郎氏は、前職のSI企業でITアーキテクトをしていた。ただ、初期の段階からOpenSocialに関わり、「Google API Expert」となってOpenSocial-Japanコミュニティの運営も任されていた。mixiのオープン化が発表されたときは、OpenSocialの対応を知って喜んだというひとりだ。その田中氏に同社から声がかかった。仕事はオープン化に向けたプラットフォームの開発で、田中氏は2009年4月に入社する。


「APIの開放では、ユーザー情報などの自社データをどこまで他社に提供するか、開発ベンダーとどう線引きをするかが重要です。国や企業により大きく異なるのですが、FacebookやほかのSNSなどの例を参考にしながら、社内の法務部などと話し合って決めていきました」
  技術的な課題も山積みだった。オープン化ではユーザー同士の相関図を表す「ソーシャルグラフ」などのAPIを提供してアプリを開発してもらうのだが、それだけでは情報が足りずに、アプリによっては社外のサーバーから情報を取得するという。つまり、ほとんどのアプリ上で、細かなマッシュアップが行われることになる。
  ただ、mixi内のアプリなのでAPIのすべてを扱うため、一度は自社サーバーを通さなくてはならない。そして、利用しているオープンソースなソフトウェアのバグや性能に関する問題、さらにアプリ内でどのような技術を使ってマッシュアップをしてもらうか、などを解決しなくてはならないのだ。
  実は田中氏は「Mashup Award 3rd」(サン・マイクロシステムズとリクルートが主催)で、作品が3部門で同時受賞したほどの実力の持ち主。OpenSocialとともにマッシュアップの技術力も役に立ったという。

インフラを支えるのは細かなチューニング

 また、それまでのmixiは、Webページが切り替わっていく方式だったので、リクエストがきたらページをつくって返すという、多少時間がかかる処理をしていた。しかし、APIを公開して他社から細かなリクエストが無数にくる状態になると、それらをできる限り短時間で返すことが至上命令となる。田中氏とチームメンバーは課題を探った。
「方法を突き詰めていくと、手間を掛けてチューニングを行うことが必要だとわかりました。まずは読みやすいプログラムを書き、想定した性能が出ない場合には、1行単位で手を入れていくんです。そしてそれは現在でも変わりません。弊社のインフラチームがサーバーのメンテナンスを担当していて、例えば人気タイトルが出るとサーバーの追加などもしてくれますが、無限には並べられません。これからもチューニングを重ねていきますし、きっと終わりはないでしょうね(笑)」

  SI企業に長年勤めてきた田中氏はミクシィに入社して、「インフラのスケールに驚愕した」と言う。今もインフラチームと密に連絡を取り合いながら、「毎日がグラフとのにらめっこ」だ。負荷が跳ね上がれば、調査して改善することの繰り返しが続く。
  もうひとつ驚いたことは、「サンシャイン牧場」などのビッグタイトルが続々と登場したこと。

田中洋一郎氏
OpenSocialコミュニティに恩返しをしたい

「標準規格であるOpenSocialを使っていますから、PC版には海外の開発ベンダーさんが参入するとは想像していました。しかし、こんな短期間で大ヒットが出るとは思わなかったです。それと最近では、アプリは生き物だと感じるようになりました。生まれて、人気が出て、ピークを過ぎて、アクセスは落ち着いていきます。また、特定の季節やイベントごとに特化したアプリであれば、利用期間が終了して役目を終えるものも出てきました。PC版公開から約半年が過ぎて、こうしたアプリを見かけるようになり、使っていた大量の情報の整理と後始末をどうしていくか、といった課題も出てきました」


 mixiでは自社アプリを開発する予定は当面なく、日記やソーシャルグラフ支援などネイティブの機能強化を図っていくという。田中氏は現在のプラットフォームを増強していくとともに、今後はより深い使われ方をするAPIを提供して、多様なアプリを生み出していきたいと語る。そこにはOpenSocialへの「恩返し」も含まれる。

感情のバリエーション

「日本の携帯電話は独自性が強いので、OpenSocialに書かれていないこともmixiでは実装しています。OpenSocialには、仕様策定などを行っている世界的なコミュニティがあり、主要なSNSは加入しています。ここに新しいAPIの提案や事例の提供などをしていくことで、OpenSocial自体を広げていきたいんです。OpenSocialには、個人としても会社としても、今までお世話になりましたから」

モバゲータウン この数年間がWebにとって面白い時代になる
 モバゲータウンのAPI開放は昨年11月。携帯電話でのアバターやゲームはオープン化との親和性が高く、その波を大きく加速させるとともに、自社開発のソーシャルアプリも大ヒットとなった。世界展開を打ち出したDeNAはSNSプラットフォーマーとしても動く。
山口 徹氏

株式会社ディー・エヌ・エー
ポータル事業本部
システム部
山口 徹氏

PerlハッカーがプラットフォームAPIをひとりで実装

 DeNAは昨年5月ごろにソーシャルアプリの開発を決定。海外ではPCが中心だが、機能がシンプルかつ短時間で楽しめるソーシャルゲームは、日本では携帯電話向きという読みからだ。この判断が後に「怪盗ロワイヤル」などのヒットにつながるのだが、自社タイトルだけではリリース数に限界があるとオープン化も決定する。自社プラットフォームにライバル企業が参入するデメリットより、長期的な視野で市場活性化を求めたからだ。実際にソーシャルアプリ市場が成長する起爆剤となった。


 ポータル事業本部システム部の山口徹氏は、zigorouの名で知られるPerlハッカーであり、前職はサイボウズ・ラボの研究職。今まで培ってきた技術や知識を、多くの人に影響を与えるサービスに役立てたい。しかも、個人ではなくチームの一員としての評価を受けたいと考え、2009年1月にDeNAに入社した。オープン化の方針が決まるとすぐにメンバーにアサインされ、APIの実装をひとりで担当する。

「モバゲータウンはプラットフォームですから安定稼働が第一。大量のトラフィックをできるだけ少ないサーバーでさばく効率化も重要です。大切なのは使う側の視点を持つこと。ユーザーは開発ベンダーさんなので直接の対話も、こうすれば使い勝手がいいなという想像もできます。アプリの内容で違ってきますが、APIを出していくうちに先方のほしいものも飲み込めてきます。後はさっとプログラムを書いて、しっかりとテストして、ドキュメントを提供します」

開発ベンダーの要望には素早く対応してリリース

 例えば、ユーザー同士のコミュニケーションで使う自由文入力では、「TextData API」を提供している。ユーザーが入力したテキストはDeNAのサーバーに保存され、チェックを受ける仕組みだ。開発ベンダーで管理してもアプリの動作に支障は出ないが、健全化のために同社が責任を持って審査しているのだ。

 このデータは以前は時系列でしか取得できなかったが、ID単位で指定してまとめて取得したいという要望が出てきた。山口氏にもそうした思いがあったことから、すぐに仕様を決めて実装し、リリースしたという。また、アバターの画像を取得する際には1回ずつリクエストを送るのだが、アバター表示の頻度はさほど多くないという判断に基づいていた。しかし、友達一覧など複数のアバターを表示させる場合は、IDを指定して画像をまとめて取得したいという声が出てきた。

  技術的には難しくないと山口氏は語るが、こうした開発をひとりで行っているのだ。

「あまり必要のないAPIをコールするベンダーさんもいますし、APIを効率的に使ってくれるところもあります。こちらがケチケチ資源を使わないようにしているのに、ごっそり持って行かれたり(笑)。ただ、プラットフォーム側で吸収できたほうがよいことは間違いありません。会員数1600万人以上のモンスターサイトですからデータ量が膨大で、パフォーマンスのチューニングは確かに大変です。しかし、こんな経験はほかではできません」

山口 徹氏
コードを書かないと旬のネタに気がつかない

 モバゲータウンのソーシャルアプリは約100タイトルで、現在も増加している。「多くの人に影響を与えるサービスを担う」という山口氏の入社動機は、かなったと言ってよいだろう。そんな彼は今後の展開の私案として、OpenID(IDの一括認証システム)の活用を挙げる。OpenIDは前職からの研究テーマであり、彼は日本における推進者のひとりでもある。


「機械的にデータを取得するセマンティック・ウェブはWebの可能性を広げると思いますが、それだけではサーバーの資源を消費してしまう。APIの提供側としては、開発ベンダーさんを含めた関係者が、相互にメリットを持つ仕組みにしたいですね」

モバゲータウン

 例えば、モバゲータウンのゲーム専用仮想通貨「モバコイン」をサイト外でも使えるようにする。あるいは、多くのWebサービスを持つ同社のサイト間の情報を一元化して、ユーザーに密着したサービスを提供するなどだ。そのためのサービス連携にOpenIDやOAuthといった技術を利用していくという発想である。

「この数年感がとても面白い時代になると思います。技術の進歩によりモバイルがPCに近づき、PCがモバイルに近づいていく中で、既存の広告モデル以上に産業として安定したビジネスが展開できるようになっていくと思う。その解のひとつがOpenSocialのようなSNSをプラットフォーム化する枠組みでしょうけど、自由なWebの基盤を使ってもっと仕掛けることができると思っています。そして僕は45歳で引退したい(笑)」

 こう語る山口氏だが、「エンジニアとしてリサーチは必要だが、コードを書いて確認することが何より重要」と語るバリバリの開発者だ。

「特にコンシューマービジネスはダイナミックでスピードが速いため、コードを書いていないと旬のネタに気付かず、対応が難しくなります。エンジニアならコードを書かなきゃ」

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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
ソーシャルアプリの記事をつくっている私ですが、ほとんど経験がありません。周りではいやされている友人が多いのでやろうと思うのですが……友人が少ないんですよね。あ、だからSNSを使えばいいのか。

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