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化学、プロセス、エレ、機械、生産技術、品質管理…技術者求む!

2015年までに

太陽電池産業はこう変わる!

新聞、雑誌、ネットニュースなどで、連日話題になっている太陽電池。特に報じられているのが業界参入や技術革新など企業の動向であり、市場の拡大は加速するばかりだ。では、エンジニアにはどう影響するのだろうか。5年後の2015年に向けた、太陽電池市場とエンジニアニーズを予測する。

(取材・文・撮影/総研スタッフ 高橋マサシ)作成日:10.06.09

太陽電池市場は今後、中長期的に急拡大を続ける

石油重視政策で太陽電池産業をつぶした米国

太陽電池産業の勢いが加速している。2009年度の国内市場規模は前年度の2.6倍に拡がり、今年1〜3月期の国内出荷(発電能力)は前年同期比の約3倍と急拡大。太陽電池が将来性の高い有望産業であることは、誰の目にも明らかだ。
ただ、この成長を支えているのは、政府の補助金と余剰電力買取り制度。他国も同様だが、こうした助成なしに既存電力と争えるだけのコストパフォーマンスには、残念ながらまだ到達していない。世界不況が回復せず、ギリシャの財政危機から「二番底」が懸念される今、5年先までの太陽電池産業を考えた。
野村證券株式会社金融経済研究所のシニアアナリスト、和田木哲哉氏は「5年〜10年の中長期的に大きく伸びる産業であることは間違いない。ただ、世界的に見て、ここ数年は一時ほどの過熱感はなくなっている」と語る。

代表例が米国だ。クリーンエネルギーの導入に積極的なオバマ大統領だが、それまでの米国は石油産業重視で、「再生可能エネルギー産業は徹底的にいじめられてきた」(和田木氏)。確かに米国のファーストソーラー社は太陽電池のトップメーカーになったが、テルル化カドミウムを使った薄膜系太陽電池であり、いまだ本流とされる結晶系ではない。政策により結晶系の太陽電池関連企業が壊滅的な打撃を受けた結果、米国内には太陽電池産業が育たず、欧州系企業にイニシアチブを握られてしまったのだ。

再生可能エネルギーの最有力候補は太陽光発電

欧州でも特に強いのは、フィードインタリフ制度を始めたドイツやドイツ語圏のメーカーと和田木氏。ドイツのQセルズ社はトップメーカーの座を明け渡したものの、その影響力は衰えず、欧州勢が強いことは変わりない。一方、セル生産のシェアでは中国がトップに立った。
「世界不況が続く中で各国政府は保護主義的な傾向を強め、雇用拡大に結び付かない政策は取りにくくなっています。オバマ大統領が太陽電池にアクセルを踏まないのは、太陽電池を導入しても海外メーカーをもうけさせるばかりで、自国の雇用に直結しないからです。ただ、先も話しましたが、中長期的には非常に成長が見込まれます」

地球温暖化対策のためのCO2削減を考えても、原子力発電だけでは限界があり、再生可能エネルギーに頼らざるを得ない。その中で、一般家庭への設置が容易で、日中に発電でき、汎用性が高く、環境負荷が少ない太陽光発電は、最有力候補となっている。太陽電池市場の拡大は、各調査会社やシンクタンクの発表からも明らか。シード・プランニングによれば、2014年の世界の太陽光発電の導入量は、2008年の約4倍に急伸するという。


大競争期になる2015年、勝敗を決するカギは「人材」


市場の活性化からコストダウンが一気に始まり、大競争期へ

太陽電池の導入を促進しているのは、補助金をはじめとする各国政府の助成制度だ。既存の発電システムに比べて高額な太陽光発電は、既存電力と等価になるグリッドパリティにはまだ達していない。
「助成なしだと償却期間が25年といわれていますから、企業ならまだしも、減価償却に25年かかる製品など一般家庭では買いません。12〜13年で元が取れる半値にしなくてはいけないでしょうから、助成はまだ必要です。その中で補助制度を復活させた、日本政府の俊敏さは評価してよいと思います」
現在なら初期投資費用が7〜8年、うまくすればもっと早くで回収できると和田木氏は語る。その後は「もうけ」が出ることになるので、投資効果としては上々だろう。ただ、日本を含めて、いつまでこうした政策が続くかはわからない。そこで和田木氏に、今後の太陽電池市場の大まかなロードマップを示してもらった(上図参照)。

太陽電池は量産フェーズに入っており、各国政府の助成制度もあって、市場形成は既に始まっている。次に望まれるのが、技術や製品の多様化による市場の活性化だ。そうして市場が活気を得ていくと、技術的な革新が起こるものだ。和田木氏はこれにより、「コストダウンが一気に始まる」と期待する。するとグリッドパリティに近づき、世界中とは言えないまでも、先頭を切って先進国での本来的な成長期がスタートする。そして、大競争期を迎えるという。

世界市場で戦うために必要なのは「人材」「決断」「資産」

こうした市場拡大を強力に後押ししているのが異業種からの参入だ。日本企業だけでも、ウシオ電機、大日本スクリーン製造、東京エレクトロン、アルバック、日立国際電気、日本マイクロニクスなど数えきれないほどがあり、その企業数は増加の一途。特に先行きが不透明な半導体業界からの参入が目立ち、半導体、半導体素材、半導体製造装置などで培った技術の転用が特徴となっている。

ただ、太陽電池の生産量で50%のシェアを誇っていた日本は現在、そのシェアを20%以下に落としている。和田木氏は、「技術的優位はまだあるので、これからどう巻き返すかがポイント」と語る。あくまでシェアにこだわった戦略を取るのか、ハイエンドの部分に技術を特化させてそこをブラックボックス化するのか、他社との差別化をどうするかなどで、技術力と同時にビジネスモデルの確立も不可欠となる。
「勝敗を決するのは『人材』で、これに尽きます。優秀な人間が思う存分腕を振るえる業界であり、本当に優秀なエンジニアが求められています。企業側の課題になりますが、私はエンジニアの処遇をもっと上げていいと思う。次に求められるのは企業トップの『決断力』。そして、投資がシェアを決める世界なので『資本力』。この3つで戦うしかないでしょう」

太陽電池はもちろん、蓄電池など周辺産業にもエンジニアニーズ


野村證券株式会社
金融経済研究所
企業調査部
エレクトロニクス産業調査室
シニアアナリスト
和田木哲哉氏

化学、プロセス、品質管理……全方位的な技術職が必要に

では、どのようなエンジニアが求められるのか。そもそも太陽電池開発の経験者は少ないので、現在でも異業種からの転職エンジニアが多い。中でも上記のように半導体関連、あるいは液晶関連のエンジニアは引く手あまただと和田木氏は語る。職種では化学・材料の基礎開発から、量産を支える生産技術や品質管理まで、川上から川下のあらゆる分野でニーズが生まれそうだ。
「電気系、機械系、化学系に関連するほぼすべての職種が対象となるでしょうが、特にプロセスエンジニア。直近の課題である変換効率の向上や歩留まりについてのノウハウがあるからです。その意味では歩留まりと直結する品質管理エンジニアも、活躍の機会が大きいと思います。化学・材料分野では物質組成のわかる人が強そうですね」

さまざまな業界への波及効果もエンジニアにとって朗報だ。例えば蓄電池。太陽電池の弱点は陽の差さない夜間の発電なので、安定した発電には蓄電池が必要になる。有望株はリチウムイオン電池だが、現段階での蓄電能力ではまだ不十分。車載用など多様な用途が考えられる二次電池は、太陽電池を超える市場拡大も予想され、ここでも電気系、機械系、化学系エンジニアの巨大市場が期待されている。
「スマートグリッドもあります。太陽電池の導入が数倍になっても、その電力は日本の全発電量の約0.1%。この割合が2%、5%と増えれば『ゆらぎ』の部分が大きくなるので、電力会社でのコントロールが重要となります。スマートグリッド化が進めば太陽電池の使い勝手もよくなるので、相乗効果も生まれます」

エンジニアの規模は5年後に3倍、そうでなければ成功ではない

これまで見てきたように太陽電池産業は雇用の創出効果が高い。半導体や液晶関連のエンジニアの受け皿になるだけでなく、新しい素材や材料では化学メーカー、装置の設置では住宅メーカーや建設会社など、新規の案件が多くの業界で発生するからだ。だからこそ乗り遅れてはいけない。
「太陽電池産業を成長させるには、自律的成長期に入るまで政府が助成を続けること、助成なしで既存電力と戦える経済合理性を早く確立すること、ほかの市場への波及効果を発展させること。3番目は住宅向けに限らず、携帯電話や家電製品に太陽電池を応用させるなどです。加えて、蓄電池やスマートグリッドなどの周辺技術を進化させること」
太陽電池産業に携わる日本のエンジニアの規模は、5年後の2015年にはどれくらい増えているのか。日本企業がある程度のシェアを取り、周辺産業への波及効果を含めれば、「約3倍になる」と和田木氏は言う。
「5年後に3倍になるというより、3倍程度の規模になっていなければいけない。そうでないと成功したとは言えません」

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