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環境技術と振興国向けを加速させよ 2010年予測! 日本の自動車・家電は再生するのか?
戦後から一貫して日本経済をリードしてきた家電と自動車が、昨年からの大不況にあえいでいる。エコカー減税やエコポイントに支えられて各社の業績は上向いてきたものの、今度は激しいデフレがやってきた。2010年以降の業界動向はどうなるのか。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ イラスト/関根庸子)作成日:09.12.22
自動車 2010年は無理だが日本企業に復活のチャンスはある
 GMをはじめ海外の自動車メーカーが破たんと再編を繰り返す中、四半期決算では多くの大手メーカーが黒字化を達成した日本の自動車業界。しかし、先行きが不透明さは相変わらずだ。自動車株担当のアナリストとして評価の高い、シティグループ証券の松島憲之氏に今後の業界動向をうかがった。
メーカー各社は黒字化しても本格的な回復はまだ先
 先日発表された自動車メーカー各社の四半期決算では、黒字化や営業利益が戻ってきた企業が多く、業界全体の回復がうかがえます。その理由は、各社が緊急避難的に行った人件費、設備投資、販売促進費などの削減が予想以上のスピードで進んだことと、エコカー減税や新車購入補助金で新車販売台数が伸びたこと。結果として、年初の予定だった黒字化が前倒しになったのだと思います。
企業間に差は出てくるとしても、この傾向は2010年も堅調に続くでしょう。ただ、リーマンショック前に7%以上あった営業利益率の水準までは戻らず、今後も3〜4%で、しばらくは無理だと思います。つまり、業績悪化の底は打ったものの、以前のレベルまでの回復は見込めないということです。世界的な新車需要は最悪期は脱したものの、期待のできる状態ではないからです。

米国ではGMやクライスラーが多少回復しているように見えても、新モデルを出していませんし、政府の新車買い替え補助制度も終わって、顧客のニーズは低いでしょう。深刻な経済悪化が懸念される欧州は、今年以上に購買意欲は落ちると思います。逆に中国やインドで需要は拡大するでしょうが、新興国以外では失業率も高く、やはり景気がよくならないと自動車は売れないものです。
成長のカギは環境技術と新興国型収益モデル
 2010年や11年ではなくもう少し長い期間で考えれば、日本の自動車メーカーが復活するチャンスは十分にあります。ポイントのひとつは環境技術力で、今後は技術力の大転換が起こるでしょう。100年続いたガソリン車に代わり、良質なバッテリーが低コストでできれば、20年後にはEV(電気自動車)の時代がくるかもしれない。ただ、現在のEVの一度の走行距離は160kmくらいで、冬にライトとヒーターを付けて走ったら100km程度でしょうか。しかも、市場の立ち上がり期なのでコストが高く、価格は1台約500万円、半額が補助金で実質250万円くらい。企業や官公庁用はともかく個人は手を出しません。

走行距離の決め手はバッテリーであるリチウムイオン電池ですが、性能に限界があるため、次世代のリチウム空気電池などを使って500kmくらい走れないと購入されないでしょう。それまでの過渡期としてハイブリッド車の時代が当面続く。その点で現状ではトヨタとホンダが優位でしょうし、EVと共通した電気部品の量産化技術をもっていることも強みです。今後こうした、モーター、インバーター、バッテリーなど電気部品の技術力が重要となるので、他の産業からの参入も始まり、大きな業界再編へとつながっていくと思われます。

もうひとつのポイントは、新車購買の需要が先進国中心から新興国に移るので、中国やインドなどでもうける収益構造に変えていくこと。これまで日本のメーカーは主に先進国で利益を出していましたから、コストを削減して新興国で新しい売り上げを立てられるようにする。クルマのモデルチェンジが5年に一度くらいあるので、そのタイミングに合わせると思いますが、最初の5年では難しいでしょう。この10年の間と見ています。
既にスズキがインドでビジネスを成功させていますし、ほかのメーカーも新興国に進出していますが、よりいっそうブラッシュアップしていくという意味です。例えば、1ドル80円のレートでも耐えられるようにして、体制を海外の現地工場に横展開していくなどです。
各社の独自技術と生産技術も日本企業の強み
 ほかにも、三菱自動車と日産自動車はEV開発を進めていますし、今後の5年を考えるとマツダも有望です。東京モーターショーで発表したガソリンエンジンとディーゼルエンジンは、燃費がハイブリッド車と同等かそれ以上。今後はこのエンジンをハイブリッド車メーカーに提供して、自社にないハイブリッド技術を入手することも可能でしょう。
このようにすべての技術が1社に集中してはいませんが、日本の各メーカーには特化した独自技術がある。しかも、これらの技術をほぼ実用化しているので、世界中の国で燃費制限などが始まると対応が早い。中国のメーカーなどと異なり、生産技術のノウハウがあることも強みです。
ただ、技術を新興国に真似されると人件費の安さで対抗されてしまうので、生産拠点をアジアに移すなどを積極的に行い、そこから欧州に輸出するなどの方法も必要となるでしょう。

国内市場の活性化のためには、延長されるエコカー減税とともに、新車購入補助金もぜひ続けるべきです。商用車メーカーの業績が悪いので、輸送業などへの低利の融資も効果があると思います。
また、政府が「鳩山イニシアチブ」に本気なら、環境対応車を減税して燃費効率の悪い車両に増税するくらいでないと、実現できないと思います。これを産業界にうまく波及させられれば、「電気の時代」への改革が早く興せます。
松島憲之氏
シティグループ証券株式会社
調査本部 株式会社
自動車・機械・資本財グループ
マネジングディレクター
松島憲之氏
日本の自動車産業 2010年の予想 ここに注目するかどうかが今後の分かれ道
家電 2010年は種まきの年、日本企業には早急な意識変化が望まれる
 四半期決算では大手メーカー各社が黒字となった家電業界だが、人件費削減の効果が大きく、売れ筋商品は薄型ディスプレイなど数種類に限られる。しかも、海外メーカーの回復力はそれ以上だ。三菱総合研究所の主任研究員である北田貴義氏は、家電メーカーには思い切った打ち手が必要だと説く。
2010年も厳しい家電メーカーの復活にはアイデアが必要
 日本経済は景気の底は打ったものの、2010年一杯は現在の厳しい状態が続くと見ています。米国は景気が上向いてきたようですがまた戻る可能性もあり、世界経済を牽引するのは中国やインドなどの新興国。こうした国では所得や生活レベルが上がる端境期にきており、2010年ごろからその需要が急速に立ち上がり、その伸びが世界経済を引っ張る。これを取り込んで日本の景気がよくなるのは、早くて2011年の半ばからではないでしょうか。

ただ、韓国や台湾など海外メーカーが急伸する家電業界には不安材料が多い。製品の心臓部である半導体業界の不振もあります。また、デフレが続く中での起爆剤はエコポイントや地上波デジタルですが、これらの次のヒントがありません。家電メーカーには今、アップルのiPodやiPhoneのようにシステムとコンテンツをセットで売るとか、インテルのチップのようにPCの必需品となるとか、魅力的な製品の展開ができるかどうかが問われています。

家電業界を回復させる一案として、大手メーカー同士のグループ編成があります。A社が液晶を開発し、B社が組み立てに専念し、C社が販売を担当するといった思い切った役割分担をして、同時に各社が大型投資を行うのです。実際に動きはありますが、日本ではメーカー間の垣根が高いようです。欧州の企業には専門分野ごとの連携があるのですが、日本では総合家電メーカーが多いので、ただ単に統合しても規模の論理があまり働きません。他の産業では既に始まっていますから、大胆なグループ化を早く進めたほうがよいと思います。
販売した製品で地域のスマートグリッド化を担う戦略も
 家電業界が復興するためのキーワードはやはり「環境」です。鳩山首相の「2020年までにCO2を25%削減」が省エネ化を促進する可能性もあります。この「環境」と「省エネ」を合わせた製品、例えば寿命が長くて消費電力が圧倒的に小さいLED照明は、ようやく市場が立ち上がってきました。また、「環境」と「安全・安心」を合わせた空気清浄機も、販売台数が伸びているようです。環境と掛け合わせる対象にはほかにも「高齢化」や「自動化」などがあり、「今すぐ欲しい家電」を思いつかないような国内市場では、新しい価値の提供が必須だと思います。

あるいは、電池などのエネルギー機器の開発メーカーが、エネルギー供給企業になる。方法のひとつは電力会社へのタービンなどの納入ですが、もうひとつは各家庭に太陽光パネルや燃料電池を売るだけでなく、家庭からの発電量をメーカーが制御してスマートグリッドを行うことです。蓄電池、インバーター、コントロールユニットなどを使って集めた電力を再分配し、地域単位での最適化を行うのです。
この方法なら海外製品に価格で追いつかれても、仮にハードがなくても、内需とノウハウで強みを出せます。ただ、日本のメーカーは技術力は高くてもこうしたシステム化は慣れていませんし、規制の問題もあります。それでも、必要な機器はそろっていますから、2〜3年後からしだいに動き始めるのではないでしょうか。先ほどの大手メーカー同士のグループ編成と大型投資は、こうした場合にも必要となるのです。
新興国の中間層に向けた付加価値の高い製品開発
北田貴義氏
株式会社三菱総合研究所
経営コンサルティング本部
産業戦略グループリーダー
主任研究員
北田貴義氏
 海外向けには中国、東南アジア、インドなどの新興国、中でもボリューム増が見込まれる中間層やアッパーミドル層を狙いたいです。所得が増えると家電の購入や買い替えが起こりますが、そのための製品です。注意すべきは、国や生活水準が異なると好まれる製品が細かく分かれること。ディスプレイなどのAV機器も、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電も同様で、販売する国や顧客のニーズに合わせて、どれだけきめの細かい製品を投入できるかがポイントです。
こうした戦略は欧州のメーカーが得意なのですが、日本も本腰を入れるべきだと思います。後は価格との勝負ですが、日本ブランドへの信頼感はまだありますし、アッパーミドル層向けには多少値段を上げても、特別な機能など付けるなどの戦略もあります。

こうした新興国向けの転換は早めるべきで、それは国内市場だけでは企業経営が厳しいですからです。エネルギー分野は確かに有望ですが、今は省エネが中心で、リチウムイオン電池などの市場が形成されるには、あと5年はかかると思われます。
電気自動車が一般化するのはまだまだ先でしょうし、それならもっと小型の電動式モビリティーを、完成車メーカーでなく部品メーカーとつくったほうがよい。高齢者用や、公共交通機関が減っている地方都市向け、海外にないスタイリッシュなものも考えられます。
デフレはしばらく続くでしょうし、ないとは思いますが「二番底」の可能性も否定できません。2010年は「我慢の年」、そして「種まきの年」になると思います。
日本の家電産業 2010年の予想 ここに注力するかどうかが今後の分かれ道
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
厳しいです。こうした「2010年は」「この先は」を聞く機会が最近多いのですが、皆さん、同じことをおっしゃる。「2010年はだめ、早くて2011年」。2010年て、丸々1年あるんですよ。取材対象者には悪いですが、予想が外れることを心より願っています。

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