ウフフ、素敵なガジェット見～つけた★内緒の開発物語

テレビや雑誌でバンバン広告が打たれるわけじゃない、でも、知っている人は知っている。そんな魅力的なガジェットってありますよね。どんな人がつくっているんだろうと、想像したことはありませんか？　わずか3人ですが、この記事でご紹介しましょう。

（取材・文／総研スタッフ　高橋マサシ　撮影／関本陽介、平山　諭）作成日:09.07.22




	テレビ、見てます？　始まる時間に帰れない、予約が面倒くさい、面白い番組がない……なんて理由で見なくなっている？　実は、私がそうなんです。この「SPIDER」はあなたを「時間」と「手間」から解放します。8チャンネル1週間分のすべての番組を、自由自在に制御できるのです。

「SPIDER PRO」の本体とリモコン
シャープなアルミ筐体はデザイン雑誌で紹介されたこともある

SPIDER PROの情報はこちら！http://www.ptp.co.jp/spiderpro/index.html

「イチロー」で1週間分の番組を検索
「245個の映像が見つかりました」とニュース番組などが一覧に

上の結果からある映像をピックアップ
放送された番組開始後の時間、簡単な内容、コメントなどが表示

　今も「SPIDER」は番組を録画している。HDD3台のうち1TBの2台が録画用、500GBの1台がシステムと保存用。標準画質で最大8チャンネル分の番組を7.3日間録画できるので、常に1週間分の2000番組以上を、上書きしながら録画し続けられる。
　それだけなら大容量録画機にすぎないが、最大の特徴は番組の中身にテキストのメタデータが付与されていること。このことで、1週間分の番組に出演したすべてのタレント名を五十音順に表示したり、「イチロー」で検索して試合内容やニュースの「本人部分だけ」を一覧表示できる。あるスポーツニュースでイチローについて31秒語られたら、その31秒だけが抽出されるのだ。検索結果をクリックすると録画が再生される。

　仕組みを支えるのは手作業とネットだ。外部スタッフがリアルタイムでテレビを見ながら、番組の出演者名や語られたキーワードなどを入力し、そのデータを「SPIDER」の開発メーカーであるPTPに送る。PTPのサーバは各ユーザーにデータを配信し、録画された番組に重ねられていく。このタイムラグから、検索できるのは2～3時間前の内容となる。
「番組内の別の出演者に飛ぶなど『サーフィン』もできますし、ユーザー間で感想やコメントを付けられます。『コンシェルジュ』という機能ですが、多くの個人ユーザーさんはほかの方の感想やオススメ情報から見る番組を探しています。能動的な目的がないと、膨大な番組の中から番組を見つけるのは大変ですからね。4歳から89歳の方まで、普通に使ってもらっています」

株式会社PTP　取締役
籠屋　健さん
東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程退学後、2004年にPTPに入社。同社の開発チームを率いて、企画、開発、運用を自社で行う。大学在学中から各種ロボットコンテストに参加し、学生ベンチャー起業の経験もある。

リモコンにあるのは十字キーを中心とした4種類のボタンだけ

　先に番組と書いたがCMも同様だ。そのため、企業の広報部が同業他社製品の話題性を調べるなどに使われている。というより本来の用途は業務用で、「SPIDER　PRO」は現在約300社が利用している。個人向けは「SPIDER zero」。両者の大きな差は、PROにコメント機能、zeroにキーワード検索機能がないことだ。
　課題は、「SPIDER」はアナログ放送にのみ対応していること。つまり2011年7月までしか機能しないのだが、当然のようにデジタル放送対応機を準備中である。

「われわれのメインターゲットはコンシューマーです。地デジ放送に完全移行するまでにはデジタル対応のSPIDERを発売する予定です。ただ、データ量が増えるので再圧縮とそのためのチップが必要ですし、現状では少々重いので小型軽量化にも取り組みます。価格も一般的なHDDレコーダーのものまで下げるつもりです（zeroは本体価格29万8000円＋サービス料1年分1万2600円）」
　制度的な問題もある。ダビング10に代表されるコンテンツ保護系の新しい制度が未定なので、その決定を待っている状態なのだ。いずれにせよ2年の猶予期間があるので、技術面も制度面も解決できるはずと籠屋さんは語る。狙いは「普及」だ。

　開発のきっかけは、代表取締役社長の有吉昌康氏が、アメリカで世界初のHDDレコーダー「TiVo」を見て衝撃を受けたこと。その後2000年にPTPを起業するが、そのころの籠屋さんは大学院でロボットの研究をしていた。
　あるとき、テレビ番組を録画する際に「市販のHDDレコーダーを買うのが悔しくて」個人で開発。手作りで販売を始めたところ雑誌に紹介され、記事を読んだ有吉氏がさっそく勧誘にくる。入社した2004年から「SPIDER」の開発が本格スタートし、2005年には完成した試作機をモニター世帯に配布、テストとバージョンアップを重ねていく。当初は家電メーカーに商品開発を提案していたが、最終的に自社開発を決断し、2007年に「SPIDER PRO」、2008年に「SPIDER zero」をリリースした。大手企業から著名人までユーザーの評価は高い。

「コンシェルジュ」の「みんなの感想」に付けられるフレーズ

「デジタル機が普及すればネットを介したコミュニティが広がると思いますし、例えば雑誌などとの連携も始まるかもしれません。ただ、デジタル機の発表までは地下に潜ると思いますから、お楽しみに（笑）」




	IT生活って、実はそれほど快適じゃない。寝転んでノートPC使っていると肩や腰が痛くなるし、本当に便利なガジェットは売っていなかったりする。そんなときは、秋葉原にある「サンコーレアモノショップ」へどうぞ。特にあなたが30～40代ならなおさらです。なぜって、ここのスタッフが同年代ですから。

「ゴロ寝deスクアルミ」
ワンタッチで角度変更！アルミ素材でPCの熱も吸収！

「Miseal mini PROJECTOR」
ラク！ラク！寝ころびながらでも見られマス！

「VIDEO PEN 4G」
わずか15cmのボディにマイク・カメラを内蔵。シンプルでスタイリッシュ

サンコーレアモノショップの情報はこちら！ http://www.thanko.jp/

　PC周辺機器の輸入をしていた山光さんが、「もっと面白いものを仕入れたい」とサンコーレアモノショップを開業したのが2003年。現在では輸入だけに収まらず、二百数十種類ある商品の3割ほどは自社開発製品だ。その代表作が2007年発売のヒット商品「ゴロ寝deスクアルミ」。
「家でノートPCを使うときって、床に座ったりソファで寝転んだり、だらっとした状態だと思うんですが、疲れちゃいますよね。そこで、天板の角度や高さが自由に調整できるデスクをつくりました」

　企画から生産までは以下のようなもの。コンセプトを考えたら機能面を絞り込み、中国の子会社に内容を送る。現地のエンジニアがCGでデザインを起こして同社に送り、何度かやり取りをして試作品を開発。それに修正を加えて金型などを作り、中国で量産化する。ものにもよるが全工程で3～4カ月、そのうち金型製作が1カ月半～2カ月というから、かなりのスピード感。「早く作って早く売り切る小ロット生産」だからできることだ。
「Miseal mini PROJECTOR」も最近の人気商品で、「寝っ転がって天井で映画を見たい」というスタッフの声から生まれた。約70mm四方の立方体、25ルーメンの明るさは山光さんいわく、「小さなプロジェクターだと天井までの距離が足りずにぼやけるが、精度を求めると十数万円もするため、その中間を考えた」。

サンコー株式会社　代表取締役
山光博康さん
大学文学部を卒業後、アルバイトしていたパソコンショップに入社。PC周辺機器の輸入販売に携わり、2003年にECサイトでサンコーレアモノショップを開業。現在では秋葉原に2店舗、大阪市と豊田市に直営店がある。

「ゴロ寝deマウス」と「USB あったか弁当箱ポーチEX」

　どうも「だらだら楽したい」製品が多そう。寝転んで使える「ゴロ寝deマウス」、うつ伏せでPC操作できる「スーパーゴロ寝クッション」……12人いるスタッフはAV機器大好きの30代～40代が多く、お客もほとんどこの年代の男性だそう。
「USB あったか弁当箱ポーチEX」も、「お昼に温かい愛妻弁当を食べたい」というスタッフの希望から生まれた弁当温め器。アダプタを使えばシガーソケットからUSB接続できるので、タクシー運転手のユーザーも多いという。冷え性の山光さんは「USBあったかスリッパ」を考えた。創業時の安アパートがとても寒かったことが原体験で、実際に自宅用として好評だという。

　月に数千本単位で売れているのが、ボールペン型ビデオカメラ「VIDEO PEN 4G」。携帯電話で動画を撮る時代に「どうだろう？」と発売したが大ヒット。ペンの上部にあるボタンを押すだけで、クリップの上にあるピンホールカメラが撮影を開始。その簡便さがユーザーに喜ばれているそうだ。
　当然ながら見込み違いの商品もある。例えば、マスクの内部の蒸れをなくすための「USBスッキリマスク」。マスクの上にファンを内蔵したカバーを取り付けるもので、「新鮮なエアの中でPCに向かえるなんてスゴイ」ともくろんだが、さにあらず。理由を尋ねると、「カッコ悪いからでしょ」。店頭で特価セールで売られていました……。

　商品開発を「宝探し」と山光さんは語る。ネタを探して自分たちで作るし、輸入商品なら、中国の調達スタッフが現地の工場を回って目を光らせる。同氏も月に一度は中国に行くそうだ。しかし、中国での悩みはコピー商品が後を絶たないこと。工場同士で情報を横流ししたり、金型が勝手に売られてしまったり。現地で裁判を起こして勝訴しても、別の企業がコピーするので、裁判費用と時間が無駄になるだけだという。

　しかし、サンコーはいつでも前向きだ。現在（6月末）開発中なのが超小型の片耳式MP3プレーヤー。イヤホン自体に2GのUSBが入っていて爪の先で操作する。電源は充電で、当然ながらコードレス。もうひとつのイヤホンをつなげるとモノラルからステレオに変わる。
「耳に入れても落ちない形なので、ジョギングにも快適。両耳がふさがると危ないですからね。ただ、そもそもは、退屈な講習会なんかで隠れて音楽が聴ければと思ったんですけど（笑）」

バッテリー内蔵型もある「USBあったかスリッパ」




	楽器がブーム。演奏するのも楽しいけれど、ミニチュア楽器たちにセッションしてもらうのはいかが？　ロックでもジャズでもOK。ギター、ベース、ピアノ、ドラム……10cmほどの楽器たちがそれぞれの音を奏で、楽曲に合わせてスポットライトも点滅します。そうそう、部屋の明かりは落としたほうがいいですよ。

LIVEDREAMの楽器群
下記のものに「ジャズバンドセット」のサックス、ウッドベース、ピアノを追加

LIVEDREAMの「ロックバンドセット」
エレキギター、エレキベース、キーボード、ドラムスがそろう

LIVEDREAMの情報はこちら！http://www.livedream.jp/

　約30㎝×20㎝の小さなステージ。ミニチュアのエレキギターを載せるとギターのパートが鳴りはじめ、キーボードを載せるとその音が加わる。エレキベース、ドラムスと続けるといつしかセッションが演奏されており、音楽に合わせて上下のライトが点滅していることに気付く。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「哀愁のヨーロッパ」「宇宙のファンタジー」……流れるのは60～80年代のヒット曲だ。

　最初は驚き、しばらくして「いいじゃん」。そんなミニバンドの仕組みはRFIDと特殊なMIDIだ。ステージ下の土台に基盤があり、楽器を置くと下部の非接触ICを基盤内のアンテナが感知、その楽器の音をMIDIで流す。ステージのアクリル板と土台の間に隙間をつくったのも、「空間があるのになぜ？」と思わせるいたずら心からだ。
「ステージは大きく前後左右に分かれ、楽器を前部中央に置くと主旋律を演奏し、後部はドラムス専用、左右に置くとそれぞれの側のスピーカーから音が出ます。ただ、普通のMIDIですと音符どおりの電子音ですから、臨場感が出ません。そこで外部スタッフの方と相談して、微妙なノイズを入れるなどしました」

株式会社セガトイズ
ホームエンタテインメントマーケティング部
神村優介さん
工業高等専門学校電子工学科を卒業後、2007年にセガトイズに入社。新規事業推進部を経て2007年10月に現在の部署に配属。高専時代は「高専ロボコン」に出場するロボット開発を続けていた。

接写で撮影した上部照明の赤と青のパターン

　この商品を開発した神村優介さんは、2007年に入社したばかりの22歳。入社半年後の10月に今の部署に配属され、最初に出した企画がこの「LIVEDREAM」だ。面白そうだとなり、2008年1月の商談会に試作品を出品。商談相手の問屋や小売店などから「こんなの見たことない！」と評判になって、開発のGOサインが出た。神村さんの仕事は企画開発で、主に企画立て、仕様決め、チェックなどを担当し、昨年12月に発売された。

「有名な楽器店にミニチュア楽器が並ぶようになり、それらが演奏する商品にもニーズがあるかと思いました。しかし、ただ演奏するのではつまらないので、ユーザーに参加性をもたせたかったんです。そこで楽器ごとに演奏ができ、そのスイッチにRFIDが使えないかと考えました」
　こう聞くと学生時代は楽器に親しんでいたのかと思うが、そんな経験は全くなし。聴くほうもJ-POPが好きで、この仕事をとおしてロックやジャズを聴くようになったという。

　しかし、音にはこだわりがある。例えば、原曲には使われているが、LIVEDREAMにはない楽器もある。その場合はない楽器の音をLIVEDREAMの楽器、例えばシンセサイザーに担当させるなどの編曲を施したという。こうした専門領域はプロに頼んだが、神村さんは当然のようにチェックを担当した。選曲においても、30曲中20曲は著名なスタンダード曲だが、10曲はあえてマニア受けするものを選んだという。
　照明の点滅もプロに依頼している。照明は上部の3つが赤、青、緑に変わり、下部は白、青、白と並んでいる。これらを楽曲に連動させて点滅させるため、音源のトラックのひとつを照明用に使い、照明作家と一緒に1曲ごとに「照明用の楽譜」をつくったのだ。
　また、実は「LIVEDREAM」は全部で44種類の楽器が演奏できる。フルート、バイオリン、マリンバ、琴など幅広いのだが、ミニチュア楽器を追加販売する予定はないという。ただ、LIVEDREAMのWebサイトからは月に2曲の新曲を無料配信している。神村さんは今後、より幅広い層に向けた玩具をつくりたいと語る。
「今は（家庭用プラネタリウム）『ホームスター』のバージョンアップが主な仕事ですが、今後はファミリー向けの商品にも挑戦したいと思っています。モノづくりがしたくて、この会社に入ったわけですから」