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エンジニア給与“知っ得”WAVE! Vol.93
なぜ?不況期の転職者91%が「転職成功」と答えた理由
昨年のリーマンショック以来の不況で、エンジニアの転職市場も厳しい状況だ。今回の調査では、昨年末から現在にかけて、実際に転職したエンジニア100人に、転職給与の増減や満足度を聞いた。不況の影響はどんなところに表れているのか。そこで転職を成功させる秘訣は何だったのか。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:09.07.01

転職先の企業規模は小さくなる傾向

 調査対象は2008年10月から2009年6月にかけて転職したエンジニア100名(22歳〜40歳)だ。実際の転職時期は「2009年1月」が22%、ついで「2008年10月」14%、「2009年4月」14%。転職理由で最も多いのが「会社からの評価や給与が上がらない、下がった」の30%。ついで「会社や業界の将来に不安を感じた」24%、「仕事量や雑務が多くなっていた」23%、「休日数、残業、勤務時間に不満があった」(22%)(複数回答)などとなっている。

DATA1 転職を決意した理由は何ですか?
DATA1 転職を決意した理由は何ですか?

 Tech総研では毎年、エンジニアの転職理由について同様の調査を行っているが、例えば2004年から2006年にかけて転職したエンジニア300名を対象にした調査(2006年1月)でも「会社からの評価や給与が上がらない、下がった」(53%)「会社や業界の将来に不安を感じた」(40%)となっており、「給与」と「会社の将来性」が転職の2大要因であることには変わりがない。不況期だから、特段にそれが多くなっているという事実はみられなかった。

 ただ、2006年の調査では「リストラがあった」「会社が倒産した」といった理由が合計9%程度だったのに対して、今回は13%と高くなっている。このあたりからは、不況の影響を想像することはできる。

 今回に限らず、不況下での転職活動でよく指摘されるのは、転職前と転職後の企業規模の変化。今回の不況でも、大手が採用を絞る中で、これまで大手企業との競争でよい人材を採りにくかった中小企業が活発な求人を行っているという報告もある。一般的には「ダウングレード転職」と呼ばれる現象だ。

 転職前後の企業規模の変化をみると、増加しているのが「10人未満」「50〜100人未満」の企業。逆に減少しているのが「10〜50人未満」「100〜500人未満」「500〜1000人未満」「5000人以上」の企業だ。たとえば転職前は「5000人以上」の大企業に勤めていた人が10%いたが、転職後はそれが7%に減っている。転職によって企業規模が小さくなる現象が起きているのではないかという推測ができる。

DATA2 転職前後の従業員規模
DATA2 転職前後の従業員規模

 不況下では転職活動を始めてから、実際に転職先に入社するまでの期間(転職活動期間)が長期化する傾向も指摘されている。今回の調査では「3カ月以内」が最も多く37%、「1カ月以内」も28%ある。これらについては2006年調査と比べてもとくに長期化している傾向は見られなかった。

DATA3 転職活動を始めてから、実際に転職先に入社するまでの期間
DATA3 転職活動を始めてから、実際に転職先に入社するまでの期間

 また、最近の転職活動は仮に最終面接に残ったとしても、経営判断という理由で、採用が不可になる率が高いともいわれる。そのため転職希望者は通常期よりも数多くの企業にエントリーし、面接をこなさなければならない。今回は「転職活動で、実際に応募した企業数」を聞いている。最も多いのが「1社のみ」39%というのは、転職者にとっては一つの安心材料とも言えるが、「5社」11%、10社以上9%という数字も決して見逃すことはできない。

DATA4 実際に応募した企業数
DATA4 実際に応募した企業数

転職時期によって、年収増減に変化あり

 転職前と後で給与はどう変わるのか──これが転職希望者にとっては最も関心の高い事柄だろう。今回の調査では、年収ベースで「増えた」人が52%とかろうじて過半数を占めた。それ以外は「減った」人が30%、「変わらない」人が18%という内訳だ。

 これを2006年調査と比べてみると、「増えた」人の割合は67%から52%にダウン、逆に「減った」人の割合が17%から30%と増加傾向にあり、転職による年収増がなかなか難しくなっていることがわかる。

 さらに今回の調査を転職時期との関係で詳しくみてみると、一つ気になるデータが発見できた。2008年10月の転職者では年収が「増えた」人が64%、「減った」人が14%だったのに対して、2009年5月の転職者ではその数値が逆転し、「増えた」人が25%、「減った」人が75%になっているのだ。

DATA5 転職時期別の年収増減変化
DATA5 転職時期別の年収増減変化
DATA6 転職時期別の年収額増減変化
2008年10月 74万円
2008年11月 63万円
2008年12月 23万円
2009年1月 60万円
2009年2月 -40万円
2009年3月 19万円
2009年4月 68万円
2009年5月 -175万円
2009年6月 -6万円

 転職時期によって年収の増減が変わっているということだ。不況が顕然化する前の昨年秋には転職による年収増加が例年なみに可能だった。ところが不況の深刻度が増した今年5月には、転職によって年収が減ることを多くの人が覚悟しなければならないようになってきた、ということが言えそうだ。

 ちなみに、こうした推移を金額ベースでたどってみると、表のようになる。回答者の増減額を平均化し、それを並べたものだ。2008年1月までの転職では平均してプラスを示しているが、2月になるとそれがマイナスに転じ、さらに5月には175万円もの大幅な落ち込みを記録している。

 問題は、こうしたマイナス傾向が今後も続くかどうかということだ。新聞報道などによれば、今年5〜6月には景気の底入れがあり、今後は緩やかな上昇に向かうのではないかというのが大方のエコノミストの推測だ。

 ただ、こうした動きが中途採用市場に波及するまでには時間がかかる。一般的に、企業の人材採用は景気悪化の気配を真っ先に感じる一方で、景気回復については、かなり遅れて反映するものだ。企業の生産が回復したとしても、それが中途採用の増加、さらには転職給与の増加につながるのは、まだしばらく時間がかかりそうだ。


91%が「成功」。80%が「普通」以上の満足度

 調査分析を続けよう。今回の調査では、転職の満足度についても聞いている。ここでいう満足度は必ずしも年収の増減だけでなく、前職で抱えていた問題、例えば「仕事量や雑務が多くなっていた」「会社の人間関係に不満を感じた」などの問題が、転職によって解消されたかどうかという判断も含まれている。

「今回の転職は成功したと思うか」という設問には、91%もの人が「成功」と答えている。また、「転職前に感じていた不満は転職後に解消されたか」という設問にも、64%が「解消した」と答えている。転職後の年収が減った人も少なくない中で、年収の満足度についても、「満足している」43%、、「普通」37%という回答が得られた。おしなべて転職の満足度は高いとみるべきだろう。ただし、年収の増減でその満足度も変わってくる。

DATA7 今回の転職は成功したと思う?
DATA7 今回の転職は成功したと思う?
DATA8 転職前に感じていた不満は転職後に解消された?
DATA8 転職前に感じていた不満は転職後に解消された?
DATA9 転職先の年収の満足度は?
DATA9 転職先の年収の満足度は?

 先にも述べたように満足度の度合いは、個々の人による総合的な判断だ。なぜこのような満足感をもったのかは、個別のケースを紹介しよう。中には、派遣社員から正社員への転職を成功させた人もいる。


ナマゴエ!!

----「転職は成功」と回答----

CASE1 400万円→440万円
■残業減少、無理な計画なし、サービス残業なし、役職・給与上昇、意欲ある仲間が得られたこと(Web系アプリ開発/37歳)

CASE2 600万円→1000万円
■これまでは、仕事内容が自分のスキルに比べ、もの足りなさがあり給与も低かったが、転職後は自分のスキルを十分に発揮でき、満足のいく給与がもらえるようになった(オープン系アプリ開発/37歳)

CASE3 420万円→420万円
■正社員とは考えていなかったし、このご時世、派遣ですら厳しいだろうと思っていたが、前職の派遣元で以前の担当営業が声をかけてくれ、たった2〜3日で話がまとまった。自分でも気持ち悪いぐらい高い評価を受けているらしい。結局ほとんど転職活動せずに落ち着いたのでよかった(運用・監視/33歳)

CASE4 560万円→500万円
■給与の低下については不満ありだが、企業としての安定性、また余暇の時間が増えたので、この点に関しては成功だったと思う(テクニカルサポート/35歳)



ナマゴエ!!

----「転職は失敗」と回答----

CASE5 450万円→330万円
■仕事の難易度があがり、残業が増えたのに、給与はガタ落ちし、また職場の人間関係もしっくりきていない(運用・監視/39歳)

CASE6 350万円→280万円
■転職先は人間関係のよさで選んだが、中小企業なためか、売り上げに対して非常に敏感であり、仕事量もかなり多く苦労は変わらない。人間関係が良いだけまだマシだが……(汎用機系アプリ開発/24歳)



64%が「年収交渉した」。その結果は──

 今回は年収決定前に、人事担当者などとの折衝・交渉をしたかどうかについても聞いている。「面接時に年収に関する会話や交渉があった」とする人が64%を占めた。もちろん交渉すれば上がるという保証はどこにもないが、年収について話題を出すことは決して不遜でも、ワガママでもない。ただ話題のもっていき方には注意が必要だ。今回の調査でも、「年収に関する交渉あり」と回答した人たちのほうが、年収を増加させている。

DATA10 面接時に年収に関する交渉があった?
DATA10 面接時に年収に関する交渉があった?
ナマゴエ!!

CASE7 560万円→500万円
■今までのキャリアをアピール、給与交渉に臨んだが学齢テーブルで一律に決まっている、と言われ前のキャリアの加点がなかった(汎用機系アプリ開発/24歳)

CASE8 550万円→650万円
■転職すれば自分の評価は0からのスタートなので現在の年収より下がるのも当然と伝えたところ、逆にアップ提示された(汎用機系アプリ開発/38歳)

CASE9 380万円→320万円
■前職の金額を提示したところ、それは難しいと難色を示され、途中会話が続かなくなってしまったのは失敗(生産管理/34歳)

CASE10 500万円→600万円
■今までの年収を正直に言ってしまうより、多少色をつけて交渉に臨んだほうが、希望額に近づけることができると思った(生産技術/37歳)

CASE11 450万円→480万円
■一番残業が多い時期の年収を基本に交渉した(Webアプリ開発/27歳)



 不況下の転職は、採用選考が厳しくなり、かつ一定の年収ダウンも覚悟しなければならないなど、決して楽ではない。しかし、実際に転職にチャレンジする人は多いし、そこで高い満足度の転職を実現する人も少なくないことが、今回の調査からわかる。

 もし、本気で転職する気がある人ならば、不況だからと一様に尻込みするのではなく、たえず転職市場の動きに目を光らせ、果敢にエントリーしてみるべきだ。これまで大企業の陰に埋もれて、存在価値を発揮できなかった中小企業やベンチャー企業が、対象として浮上してくる時期でもある。企業の知名度や給与の多寡だけにこだわらなければ、真の適職と出合うチャンスはまだまだ多いのだ。


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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
今回、転職前後で一番年収が上がったケースは、5000人以上の大手ネット会社から、10人未満のベンチャーに転職した700万円から1400万円という、なんと700万円アップ。逆に、最も年収減だったケースは、Uターン転職で520万円から360万円の160万円減のケースでした。でも平均すると、全体で30万円の年収増加です。不況だからといって、年収アップをあきらめることなく、給与交渉はチャレンジしてみることも大切なようです。

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