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独創的発想で活躍しているエンジニアを探し出して紹介するこのシリーズ!今回登場するのは、「プリウス」をはじめとしたハイブリッドカーの電池制御、モータ制御などを担当、キャリアを築き上げてきた技術者だ。
(取材・文/上阪徹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:09.08.04
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1997年にデンソー入社。「プリウス」用電池ECU、電気自動車・FC車のエアコンプレッサー用ECUの開発などを経て、2002年から3年間、トヨタ自動車に出向。モータ制御開発に加わる。その後、インバータに内蔵されるモータ制御ECUの生産担当を経て、「レクサスRX」用のモータ制御ECUの開発に従事。
世界最先端のハイブリッド技術を支える
連結売上高3兆1427億円(09年3月期)。連結従業員数11万9919名(09年3月期)。世界各国に展開し、カーエアコンなどの冷暖房機器、ワイパーやパワーウインドウ・モータなどの各種電装品、電子制御式燃料噴射装置などの制御製品などで、数多くの世界トップシェア製品を持つ、世界有数の自動車部品メーカー・デンソー。その技術力は、自動車環境技術で世界の先端を走るトヨタハイブリッドをも支える。ハイブリッド技術を支える各種ユニットなど、さまざまな商品群を有しているのだ。
強い興味をもって入ったハイブリッドの世界。いずれはこの技術が大きく注目される日が来るかもしれないと思っていましたが、ここ数年の動きを見ていると、それは思った以上に早くやってきたといえるのかもしれません。ただ、ハイブリッド技術はその性能が上がれば上がるほど、乗り手がハイブリッドを意識することはなくなる技術でもあると思っています。 実際、私たちが目指しているのは、普通のガソリン車と変わらないで走るのに、燃費のいい車、環境にやさしい車です。乗り手の方々が、「これがハイブリッド車だ」と意識するかどうかが重要なのではありません。その意味では、これからはハイブリッド、ハイブリッド、と大きく騒がれることなく、当たり前のようにハイブリッドに誰もが乗っていく世の中になると思います。そして、地球が抱えている環境という問題に貢献することができるのは、とてもやりがいを感じます。 もうひとつ、私が今の仕事で実感しているのは、たくさんの人と一体感をもって、大きな目標に取り組んでいく醍醐味です。同僚や上司はもちろん、大手自動車メーカーと一緒になって新しいハイブリッド技術を作っていける。一体感があるからこそ、自分も頑張らねば、と思える。もともとやりたかった仕事でもありますが、この一体感も今は大きなモチベーションになっています。 だからこそ、というわけではありませんが、やはり目指していかなければいけないと思っているのは、デンソーでしかできない技術にこだわること。デンソーならではの何かに挑まなければいけない、ということです。 一方で、変化が激しく、圧倒的なスピードが求められる世界であり、まだまだたくさんの開発テーマを抱えた世界でもあります。例えば、さらなる普及のためには、コストはもっともっと下げていかなければいけない。それこそかかわる技術者が、まさに一体化して取り組まなければならない難しい課題がたくさんあります。 まずは、ハイブリッドが全車種展開になってほしい。そうなると、これまで以上に忙しくなりそうではありますが(笑)。ただ、時代は追い風。世界も注目している。楽しみながら、挑んでいきたいと思います。 |
どうして今のようなキャリアを築けたのか、という質問の答えが印象的だった。ひとつは、やりたいことにこだわってやってきたこと。そしてもうひとつが、そういうふうに上司が導いてくれたから、と山下さんは語った。いい会社、いい上司にめぐり合うことができたからだ、と。若いころから熱意をもって仕事をしてくることができた理由には、社風も大きい。技術者一人ひとりがプロ意識をもち、熱いスピリットをもっている。そして、技術の話や技術論を好んで行う。それが、若手であっても、協力会社であっても同じだという。 何かをやろうとするときには、人が集まってくる。ディスカッションは頻繁に行われる。そこで交わされる技術論には、年次は関係がない。若い社員も積極的に意見を出し、それを聞いてもらえる心地よさがあった。技術論に足かせがない。山下さんはそう表現した。だからこそ、若いころは仕事が終わってからも、家で仕事に関連する雑誌や本を読むような熱意が生まれたのかもしれない。 そして仕事スタイルは、自分で考えて動く、というのがデンソー流だ。逆にいえば、そこに自分の考えを反映させられるということ。だから、やらされ感をもたずに仕事ができる。自分で納得し、目標をもって仕事をやってくることができた、と山下さんはいう。ガムシャラに何でもやろうとするから力がつく。そういう姿勢が、まわりから仕事を集めてくる。そして、そうありたいと思うことが大事だ、と。 もうひとつ印象深かったのは、視点の高さ、である。デンソーで仕事をしていると、ただデンソーの製品を作るのではなく、それがどのように車にかかわっているのか、強く意識させられるという。その結果、仕様書や設計図を見て、なぜこの部品がここにあるのか、考えるようになり、理解できるようになる、と。 そしてデンソーの魅力を尋ねたときも、やはり視点は高かった。いろんな技術をもつプロのエンジニア集団であり、その分野のプロがいることが楽しい、と。ハイブリッド技術でも、視線は世界にも向いている。期待の技術の期待の若手リーダーである。なるほどこの視点の高さが、技術者としての力を付けてきたのか、と感じた。 |
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