Tech総研発“今日はここへ行ってきました” |
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ひろゆき・夏野氏が語る「ネットの未来」はどうなる? |
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6月10日(水)〜12日(金)に開催された「Interop Tokyo 2009」。最終日の基調講演では2ちゃんねるのひろゆき(西村博之氏)と、iモードの開発者として知られる夏野剛氏の対談が行われた。その内容をエンジニアに向けて、Tech総研的に検証してみたい。 (取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ) 作成日:09.06.25 |
ネット選挙活動が解禁すると、エンジニアはどうなる?
2ちゃんねるをつくってやめたひろゆき
(講演で同人談)
基調講演のテーマは「インターネットの未来像:ポストインターネット」。詳細は既に多くのネットメディアで紹介済み(例えばここ)なので、ここでは、その内容をTech総研的な視点で見てみたい。
最初のテーマになったのは、オバマ米大統領が選挙活動にTwitterを使った話。単なるネットではなくそのリアルタイム性に、ひろゆきは「今までと違う親近感」、夏野氏は「ライブ感」と語った。また、日本では多くの政治家がニコニコ動画の生放送を使い、そこから日本共産党の志位和夫委員長が「Cさん」としてブレイクし、共産党に入党する若者が増えたなどの話に。
ただ、衆議院の総選挙が近いとされる昨今、日本でネット選挙活動が白熱するかというと、それはない。ご存知のように公職選挙法によって、選挙期間中にはHPやブログの更新などが禁じられているからだ。民主党が改正法案を提出、改正に賛成する議員も多いが、実現化への道は遠そうだ。あえてここでは、韓国や米国のようにネットで選挙活動ができるとなった場合の、技術職種への影響を考えてみたい。
既に多くの議員が自分のHPを持っている。ただし、選挙公示後に活用できるとなれば党のマニフェストをPDFで載せるくらいではなく、より魅力的な細工を施し、インタラクティブ性を高めるのは必定。二人の対談でも、「日本の政治家はITに疎いが意識は高い」「ニコ動の生放送など著名な政治家はノリがいい」などの話題が出ていた。
政治家がHPを有効な選挙ツールと考えれば、ユーザー受けするコンテンツ制作のためにWeb系やアプリ系、トラフィック増加によるインフラ系、アクセスユーザーに対応する保守・運用系にニーズの発生が見込まれる。そしてセキュリティ系。公職選挙法改正反対の大きな理由に「攻撃」や「炎上」があるので、解禁後のセキュアな体制作りは不可欠なのだ。加えて、アイデアを出す企画系エンジニア、全体をまとめるコンサルタントなど、ほぼすべての技術職が必要になるのではないか。
HPを活用する選挙の立候補者は、前回の第44回衆議院議員総選挙(2005年)で1131人、第21回参議院議員通常選挙(2007年)で377人。暫定的に衆・参を合計すると1508人になる。しかしこの数は国会議員のみで、全国の市議会議員や県議会議員を加えると何万、何十万というHPがその対象になる。しかも、選挙期間中のネット活動が盛り上がれば、平時(選挙後)の更新頻度やアクセス数が高まり、「特需」以降もエンジニアが求められるかもしれない。有権者の政治への関心がアップすれば、日本の未来に役立つ。
選挙期間中のインターネット活用解禁は、Tech総研なので希望的観測も含まれるが、かなりのエンジニアニーズを発生させると見る。
午後9時まで会社にいない人は、優秀じゃない?
iモードをつくってやめた夏野剛氏(同上)
中盤では、テレビ局の広告収入減から視聴者のテレビ離れへと話題が移り、「リアルタイムの生放送が少ない」「オンデマンド放送への壁が高い」などの不満が語られた。ひろゆきは「ユーザーがお茶の間まで来ないと見せないモデルが問題」と語り、夏野氏も大きく賛同。その後が面白い。
ひろゆきは、「21時からのドラマを見るには会社を19時、20時台に出なくちゃいけないけど、今の時代にそんな時間に会社を出られる人って、基本的に優秀じゃない社員。仕事をきちんとする人は21時ぐらいまで会社にいる」と語った。
真偽のほどは明らかではないが、ここでは彼の言葉にノって、「21時以降に退社する(優秀な)エンジニアの割合」を調べてみたい。
Tech総研が昨年行った調査では、21時以降に退社するエンジニアはソフト系で22%、ハード系で24%。別の記事でも同様の調査をしていて、技術者全体の割合で2年前は28%、6年ほど前は31%が、21時以降に退社していた。
数字を見ると退社時間は年々早くなっており、不況で仕事量の減少や残業規制が続く状況を考えれば、現在21時以降に退社するエンジニアは「20%弱」というところか。すると、優秀なエンジニアは2割もいないことになるので、Tech総研としてひろゆきの仮説は認められない。ごめんなさい。
ガラパゴス・ニッポンに、今後の希望はあるのか?
総入場者約13万人のInterop Tokyo 2009
最後の大きなテーマは「日本のガラパゴス化」。夏野氏は「ガラパゴスで独自進化したWiiやプリウスが世界で大ヒット」、ひろゆきも「2ちゃんねるを元にした『4ちゃんねる』がアメリカで生まれたし、語るべきことを持たない人に情報を出させる『プロフ』も日本独特」と語り、「ガラパゴスもいいじゃん」的な発言が相次いだ。
そこで、ガラパゴス・ニッポンから世界へ飛び出しそうな、製品やサービスを考えてみたい。ガラパゴスの代表例には携帯電話、非接触ICカード、デジタル放送などが挙げられるので、世界に類例がないか世界標準が定まっておらず、現状でその芽が見える分野となる。
そんなものはいくらでもある! 先のハイブリッド車や電気自動車に加えて、その心臓部であるリチウムなどの二次電池でも日本企業の積極性が目立ち、この不況下でも各社が人材探しに躍起になっている。同じ環境系では太陽光発電の技術力、海水や汚水の浄化技術も世界トップクラスだし、業種を問わず省エネ技術はお家芸だ。
ほかにも、介護やサービスなど多くの分野で応用が期待されるロボット技術、Interopの会場でもコーナーが設けられていたデジタルサイネージ、自動車メーカーが力を入れるパーソナルモビリティも将来的な有望株だ。
IT・通信の分野では、ガラパゴスの象徴だった携帯キャリアが世界標準化を仕掛けている。普及まで道のりは長いだろうが、来年後半にも導入されるLTE(3.9G規格)に向け、世界市場を狙っていることは確実。海外のユーザーが日本の携帯電話に慣れれば、同様に独自進化したモバイルコンテンツも一気に広がるはずだ。センサー、画像処理、精密加工、再生医療……ガラパゴスもいいじゃん。
ただ、「日本人は自己満足好きだから」とひろゆき。これからは本気で世界を取りに行きましょう!
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