世界の技術者が注目する「日本のあの町がスゴい！」

技術立国日本！　その技術は大都市に集中しているわけではない。津々浦々、その地が誇る特有の技術があり、その集積が、“日本の技術”の名を世界に鳴り響かせている！　そんな日本のいくつもの「技術のメッカ」を集めてみた。

（取材・文／川畑英毅　総研スタッフ／根村かやの）作成日:09.06.15

「○○といえば、○○」「○○のまち、○○」――日本全国・各地域には、それぞれ特色あふれる地場産業がある。それは、地域の自然や伝統に基づく“特産品”の産業、というだけではない。
　地域の特色も生かしながら先端の技術へと昇華、「この分野なら、ココに行かなきゃ話が始まらない」という場所、世界から注文や問い合わせ、視察が来る技術の“メッカ”が、あちこちに存在するのだ。
　もちろん、ここに挙げたのはほんの一例。景気低迷にあえぐ今の日本だけれど、その再生の芽も、いくつもの“メッカ”で着々と育ちつつあるかもしれない。

「南部鉄」の伝統をもつ岩手県。盛岡市に本部キャンパスをもつ岩手大学には、そんな伝統に立脚した「金型・鋳造工学専攻」もある。地域と大学の共同で「鋳造技術センター」も設立、自動車ほか機械部品として欠かせないだけでなく、より高機能なハイテク材料としても注目される鋳鉄技術を世界に発信している。

←岩手大学大学院工学研究科には、日本初の「金型・鋳造工学専攻」がある（画像提供：岩手大学大学院）

1993年、山形大学工学部の城戸淳二教授が世界初の白色有機EL素子の開発に成功。ディスプレーとしてだけでなく、次世代の照明としても注目度さらにアップ。山形県では産学官共同で「山形有機エレクトロニクスバレー構想」を推進。（財）山形県産業技術振興機構により、その研究開発の中心的機関として、「有機エレクトロニクス研究所」も設立されている。

←ポリュテック国際環境展に展示された有機EL照明（写真提供：有機エレクトロニクス研究所）

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産業技術総合研究所や宇宙航空研究開発機構などのほか、数多くの公的研究機関や大手企業の研究所が拠点を構える「筑波研究学園都市」。この地域だけで研究者の数は1万3000人にも及び、しかもその半数近くが博士号取得者という、まさに日本の頭脳が集まる場所。国内だけでなく、海外からの研究者・留学生も数多い。

←宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センター（写真提供：宇宙航空研究開発機構）

秋葉原駅周辺には、「アキハバラ」といえばそのまま世界に通じてしまう、日本が誇る一大電気街が広がる。東京出張の際は必ず立ち寄るエンジニアも多いはず。ここに卸したこだわりのパーツが海外からのバイヤーの目に留まり、「大量発注＝急成長」の神話を築いたメーカーも多い。現在は「おたく文化」の発信地としても世界の注目を集めている。

←秋葉原の町並み

首都圏きっての「下町の町工場」の集積地で、バネ、ネジ、チップなど工業の基盤となる製品群を特徴とする。円高不況以来の「産業の空洞化」の影響で、昭和58年には9000を超えていた工場数は、現在ではほぼ半減してしまったものの、大メーカーでも無視できない「ここでなければ作れない」モノづくり技術を誇る工場も数多い。

←「大田区工業ガイド」（画像提供：（財）大田区産業振興協会）

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時計、カメラ、レンズなどを中心に、日本が誇る精密機械産業のメッカ。その産業と風光明媚な山や湖など豊かな自然環境をもつことから、「東洋のスイス」と呼ばれることもある。現在では、その技術をベースとしてコンピュータ関連、OA機器などを生産するハイテク産業都市へと成長している。

←諏訪圏工業メッセ2008の模様（写真提供：NPO諏訪圏ものづくり推進機構）

日本最大の洋食器産地として有名な燕市。江戸初期までは和釘の生産地で、その後、銅の日用品も生産。近代になって洋食器製造で復活したという歴史をもつ。そんな技術をベースに、食器以外でもステンレスやチタン合金などの金属加工で高度な技術の集積を誇っている。

←市内40社以上が加入する組合のロゴマーク（画像提供：日本金属洋食器工業組合）

福井県は眼鏡枠の製造で日本一、特にその中心になっているのが鯖江市で、眼鏡メーカーや職人が集中。その国内シェアは約96％、世界シェアでも20％にのぼるという。世界で初めてチタン合金を用いたメガネフレームを開発したのもここ。そんな加工技術を生かし、精密機器や医療分野などへの参入も。

←世界最高峰の品質を自負する鯖江の眼鏡（写真提供：鯖江メガネファクトリー）

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日本製のプラモデルは質の高さで世界のマニアをうならせているが、日本を代表するプラモデルメーカーのほとんどが静岡に集中しているのは“知る人ぞ知る”話。年に一度の静岡ホビーショーは、ドイツ・ニュルンベルクのトイフェアとならび、世界の模型ファンが熱い視線を送る。

←静岡ホビーショーの会場風景（写真提供：静岡模型教材協同組合）

東海地方はそもそも日本の製造業の一大集積地。なかでも浜松は、楽器、バイクの生産で名高い。それだけでなく、進取の気性を示す「やらまいか（やってやろうじゃないか）精神」が地域の合言葉で、さまざまなハイテク機器やソフトウェアなどのベンチャー企業も数多くこの地で誕生している。

←浜松バイク産業の初期にその実力を世界に示したヤマハ発動機「YA-1」

「関の刃物」で有名な岐阜県関市。その歴史は鎌倉時代、九州の刀匠がこの地に移り、日本刀を作り始めたのが発祥で、800年近い伝統を誇る。単に伝統工芸ではなく、現在でもカミソリ、ナイフ、はさみなどの生産では、ドイツのゾーリンゲンと並び称される世界的な「刃物のまち」となっている。

←関市では、刃物に関するイベントも数多く開催されている（画像提供：岐阜県関刃物産業連合会）

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大阪市浪速区の日本橋付近には、「東のアキバ、西のポンバシ」といわれ、秋葉原と並び称される電気街「でんでんタウン」がある。戦前までは古書店街として有名だったが、戦後に電気街として成長。店舗の栄枯盛衰は激しいが小規模なパーツショップなども健在。最近はゲーム、フィギュアなどマニア向けショップが多くなったのは秋葉原と同じ傾向。

←日本橋の町並み（写真提供：でんでんタウン協栄会）