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受け身、消極的、ナイーブ…ネガティブなイメージはある、ない? 意外!?草食系エンジニアが転職市場で求められる理由
若者世代に増殖しているという「草食系?」。エンジニアの世界にも、草食系は増殖中。草食系男子はガツガツしないため、上の世代からの評判はあまり良くないなんて思っていませんか。でも今の時代に企業に求められるのは「草食系」なんです!
(総研スタッフ/関洋子 イラスト/武曽宏幸)作成日:09.05.25
若手エンジニアに増える「草食系」
 今、話題のキーワード「草食系」。おいしそうな肉を目前にぶら下げられても、それに目を向けることもなく、ひたすら周辺にある自分が好む草を食べ続ける草食動物が頭に浮かぶ。このように草食系というと、ガツガツすることなく、受け身で、ナイーブ、消極的であるなど、現在のように厳しいビジネス環境の中で生き残っていくためには、心もとないような気もする。しかしこのような特徴をもつ草食系人間が、特に男子の間で急増しているのだ。

 実は人の志向(仕事観や消費傾向)は、その時代背景や社会情勢の影響を受ける。高度経済成長期やバブル期は、経済自体が上昇しているため、人の志向も「昨日よりも明日をよくする」ことを考える傾向が強かった。また「同期はみんなライバル」と考える人が多く、いちばん出世をすることをモチベーションにする人が多かったという。つまり当時は「肉食系」志向の人々が多かった。
イラスト

 そういうバブル世代が今、40歳前後に差し掛かり、若手エンジニアの上司になっている。バブル世代の上司からすると、自分たちとまったく価値観の異なる「草食系」は「受け身」「消極的」ということになってしまう。しかし社会が求めているから創出され、増殖している「草食系」エンジニア。彼らはどんな志向をしているのか、「草食男子」の言葉を生み出したタクト・プランニング代表取締役の深澤真紀さん、およびリクルートエージェントのキャリアアドバイザー・落合美紀さんの話を基に、草食系エンジニアの特徴と、草食系エンジニアが今、求められる理由について明らかにしていこう。
解剖 草食系エンジニアがなぜ、求められるのか
「草食男子」という言葉が登場したのは、今より2年以上も前の2006年10月。深澤さんが日経ビジネスオンラインのWebコラム「U35男子マーケティング図鑑」で使ったのが始まりである。ここでいう「草食男子」とは、「恋愛やセックスに縁がないわけではないのに、積極的ではない、肉欲に淡々とした男子」と定義している。淡々としているため男性、女性という性差に関係なく、一人の人間として対応できるという特徴がある。「人間関係をほどよくできる人で、私はとてもよい存在だと思っています」と深澤さんは説明する。

 例えば今のアラフォー世代(40歳前後の人たち)は、1980年後半から90年代初頭にかけてのバブル期を経験している。バブル期では経済全体が拡大期にあったため、人の志向もギラギラしていたという。
「私たちバブル世代は、会社の中での勝ち負けにこだわっていた人が多かった。例えば同期の間でいちばん出世するのがモチベーションだったりしたんです」と深澤さん。

 一方、今の草食系の人たちは、バブル世代とは異なり、「社内でいちばん出世したいという欲はない。むしろ同僚同士、うまくやっていこうという傾向が強い」と深澤さんは指摘する。「会社の中で勝ち負けにこだわっても、本当は仕方がないですよね。草食系の人たちはそれを知っているんです。だから同僚をライバルと目すのではなくて、一緒にほどよく付き合っていこうと考えるわけです」(深澤さん)

 エンジニアの仕事は個人でできることは少なく、チーム制を採用していることがほとんどだ。リクルートエージェントの落合さんによると、「企業は長期的視点で人を採用しています。たとえ今、リーダー経験がなくても、近い将来はリーダーとなってくれる人を求めているのです」と語る。そんな企業のニーズが増える中、「人間関係をほどよくできる“草食系”が求められる」と深澤さんは言うのだ。特にチームに女性エンジニアがいる場合、草食系の男子エンジニアは求められやすい。先にも書いたように草食系男子は、性差を意識することがあまりないからだ。例えば女性エンジニアがいるチームでは「草食系男子エンジニアがリーダーになると、人の調整がうまいので仕事がスムーズに進むようになるのでは」と指摘する。草食系エンジニア自身は、「リーダー志向ではない」と思っているかもしれないが、「人間関係に冷静」(深澤さん)な草食系エンジニアは、実はリーダー向きである。

 またそのほかの草食系エンジニアのよい点として落合さんは以下のように語る。「まじめで、仕事に対していい加減な姿勢では取り組まないので、評価は高い。一方で今企業はマネジメント適性のある人材を求めています。リーダーとなりうる資質を見せられるかどうかがポイントになると思います」

 ではどんな会社を選べば、草食系エンジニアがのびのびと仕事できるのか。また草食系エンジニアにお勧めの転職方法はあるのだろうか。次コーナーで検証していこう。
深澤真紀さん
深澤真紀さん
タクト・プランニング
代表取締役
コラムニスト。1967年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部社会専修卒業。卒業後、いくつかの出版社で編集者を務め、98年、企画会社タクト・プランニングを設立。
近刊に『自分をすり減らさない人間関係メンテナンス術』
http://www.amazon.co.jp/
dp/4334975674/
落合美紀さん
落合美紀さん
リクルートエージェント
キャリアアドバイザー 首都圏第一ユニット
ITマーケット CAIグループ
リクルートで人材採用関連等の法人営業を経験後、2000年10月より現職。キャリアアドバイザーとして、主にIT分野(SE/プログラマ)で仕事をする転職希望者の転職活動をサポートする。
草食系エンジニアの特徴
草食系エンジニアにオススメの転職先、転職法とは
 草食系エンジニアが転職市場でも評価されることはすでに上記で指摘した。しかし恋愛でも自らガツガツとアプローチするタイプではない草食系。結婚と転職はプロセスが似ている。そんな草食系エンジニアが転職市場をうまく立ち回るための術を紹介しよう。
草食系エンジニアがいきいきできる会社とは
1.自由でフラットな雰囲気、柔軟な組織
「自分の意見が言える自由でフラットな雰囲気、柔軟な組織の会社が合うでしょう。またシステムエンジニアの場合は、顧客先に常駐するというスタイルで働くことも多い。その場合でも月1回は上司の巡回があったり、自社で会合があったりなど常に自分が見てもらえているという安心感のある会社も合うと思います」(落合さん)
2.がまんできないことのない会社
「人にはそれぞれ本当にがまんできないことがあるはず。それをまず挙げて、その要素の懸念のない会社が、草食系エンジニアはもちろんすべてのエンジニアがいきいきできる会社です。そのためには求人情報の中で、例えば“当社は自由な雰囲気の会社です”というような感覚的な情報に惑わされることなく、固有名詞の情報をしっかりチェックすること。また書いていない情報にも気を配ることも大切です。そうすることで自分に合う会社を絞っていけるのではないでしょうか」(深澤さん)
転職活動における注意するポイント
1.転職理由は中長期の視点で語る
「背中を押されてようやく重い腰を上げるという人が多いのも、草食系エンジニアの特徴かもしれません。たとえ希望退職や倒産を理由とする退職でも、ポジティブにとらえる前向きさをもつことが重要でしょう。次に自己分析をすること。転職先となる企業がどんな人物を求めているのかを理解したうえで、自分はそこにどんな貢献をしていけるかを分析をすることです。そして後付けでもいいので、中長期の視点での転職する目的を見つけることでしょう」(落合さん)
2.自分の持ち味をわかってもらえるような説明をすること
「つくりこまないことですね。嫌いなこと、苦手なことを克服しようとするよりも、得意なこと、好きなことを伸ばしていくこと、つまり自分の持ち味をわかってもらえるように会話することです。例えば“●●という仕事を頼まれたら、△△まで調べないと気がすまないタイプです”というように、具体例を入れて話すといいと思います」(深澤さん)
 冒頭で就職(転職)と結婚は似ていると書いたが、決定的に違うところがある。結婚の場合は双方が相手のことを真剣に考えているのに対し、就職(転職)の場合は、求職者は相手のこと(企業)真剣に考えるが、一方の企業側は結婚ほど真剣に相手(転職者)のことを考えているわけではない。だから自分の持ち味をしっかりわかってもらえるようにすることが大事になるのだ。
3.面接時は「松井プレイ」で乗り切る
「どうしてもやりたいことがある場合は、同じことをいってもよく見えるよう“松井プレイ”で乗り切ることをお勧めします。松井プレイとはプロ野球選手である松井秀喜さんのように振る舞うことです。例えば敬語など正しい日本語をきちんと使うため、彼のインタビューは優等生的で、目上の人からも受けがいい。これをまねすることです」(深澤さん)
【コラム】自分の知らない自分が「持ち味」で「売り」になる
 本来はリーダー的な資質を持ち合わせているはずの草食系エンジニア。しかし多くの草食系エンジニアは「そんなリーダー的資質なんてもち合わせていない」と思い込んでおり、意外にその能力に気づいていないことも多い。そこでぜひ、お勧めしたいのが親や兄弟、友人など自分に近しい関係ではなく、少し距離感のある「斜めの関係の人に相談すること」(深澤さん)だ。
「斜めの関係の人に相談すると、自分でも気づかなかった持ち味に気づいたりするものです。どんな人が斜めの関係の人かというと、例えば学生時代でイメージすると、同じクラスメートだけど、たまに話すぐらい、という関係の人です。そういう人から“こんなことが向いているんじゃないか”といわれたことは、メモしておいた方がいいでしょう」(深澤さん)
 深澤さん自身、文芸本の編集に携わっていたとき、担当の作家から「料理本の編集が向いているんじゃないか」と言われた経験があるそうだ。深澤さんは料理好きで自宅の本棚にはかなりの料理本があったという。しかしその方にアドバイスされるまで、自分が「料理本の編集に向いている」なんて思ってもいなかったそうだ。そしてその言葉を信じ料理本の編集に携わってみたところ、非常に自分に向いていると感じたという。
 斜めの関係の人ならもちろん誰でもよい、というわけではない。「過去にいいことを言ってくれた、面白い指摘をしてくれた」などちゃんと人を見る実績のある人に相談することだ。
草食系エンジニアにお勧めの転職ツール
「背中を押されて動くタイプ」が多い草食系エンジニアにいちばんのお勧めの方法は、スカウトサービス。これはレジュメを登録すると、その登録内容に興味をもった企業の側からアプローチしてくる、というサービスである。ぜひ活用してみてはいかがだろう。
 また「転職ということだけではなく、今後のキャリアについて相談したい」という場合は、人材紹介会社を利用するのもよい。自分が抱えているキャリアの不安や悩みを第三者的な視点からアドバイスしてくれるからだ。
転職を考えている草食系エンジニアへのエール
「今は転職希望者にとって厳しい時代です。選ばれるためには、第一に事前準備をしっかりすること。自分のことをよく把握しておくことが必要です。第二に面接時のここぞというとき、草食っぽくない一面を出すことです。第三に自分の中で完結するのではなく、大きな視野をもつこと。少しでもいいので、積極的に自分をアピールすることも大事なのではないでしょうか」(落合さん)
「転職先は半年〜1年ぐらいかけていろんな情報を仕入れて探すのがいいでしょう。これからの時代は誰もが一生転職者。転職したからといって“あがり”だと思わないほうがよい。時代はどう変わっていくかわかりません。従って常に転職モードでいることが大事になります。転職の際はそこそこの落としどころを探っていくこと。それが肉食動物に食べられない戦略になると思うんです」(深澤さん)
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ 関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
今流行のキーワード「草食系」。今回、草食男子という言葉を生み出した深澤真紀さんに取材するまでは、「男らしさが失われてきたのか」と誤解をしていましたが、そうではなかったんですね。女性、男性という性別を気にすることなく友達として付き合える男性ということです。「男女でも友情は成り立つ」時代になってきたということでしょうか。みなさんの感想はいかがですか?

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