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エンジニア給与“知っ得”WAVE! Vol.90
今買うなら大手株?環境株?エンジニア500人の投資術
株価の総崩れ、円高の加速などで、円や外貨は金利が一変。これをチャンスとして、貯蓄・運用を見直すエンジニアも増えているようだ。エンジニアが注目する株や運用法調査を基に、ファイナンシャルプランナーたちに、上手なお金の増やし方を伝授してもらった。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:09.04.03

金利差が減少し、外貨預金の魅力は薄れた

 前回までは厳しい経済環境のなかでも、たくましく生活防衛に励んでいるエンジニアたちのデータを紹介した。前回調査によれば、エンジニア500名の平均貯蓄高は473万円。毎月、約7万円を貯金している。現金資産の運用方法としては、普通預金(90%)、定期預金(62.6%)の比率が高いが、株式(56.2%)、投資信託(39.2%)、FX(26.8%)、外貨預金(24.2%)など、リスク商品の割合も増えている。これから興味のある貯蓄・運用方法として一番に挙がったのは株式(40.6%)、ついでFX(36.6%)だった。以下、定期預金(28.4%)、外貨預金(22.8%)、投資信託(22.6%)などとなっている。

 株式に注目が集まるのは、株価が現在かなり下がっており、買いやすくなっていることと、いずれ景気回復とともに相場が反騰することが期待できるからだろう。同様に、昨年来の円高傾向を、FXを始めるきっかけにしようという人も多い。

 そこで100ten.school代表の関根光さんに伺った。まずは、外貨預金、FXなど海外金利や為替を利用するタイプの金融商品の今後だ。 「外貨預金がこれまで魅力的だったのは、円に預金してもほとんど金利がつかない一方で、外貨は高金利だったからです。この金利差が投資の動機であり、かつては正しい投資判断でした。しかし今は未曾有の世界的な不景気で各国とも金利引き下げ合戦。ドルと円では金利差がほとんどない。その状態で為替リスクを覚悟して、外貨に投資するのはどうか」と懐疑的だ。

 これまでは日本と海外の金利差が、為替リスクを十分カバーしてくれていたが、今はその見通しが立たない。
「もし為替変動の見通しが明らかに立つ人ならば、外貨投資もいいが、そんな人は世の中にいないでしょう」
 外貨預金やFXについては、投資環境としては「今が一番厳しい」という判断だ。

関根光さん
ファイナンシャルプランナー(CFP)、一級FP技能士、社会保険労務士 1988年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。日興證券(現日興コーディアル証券)、アリコジャパンを経て、資産運用・年金・保険を専門とする金融アドバイス会社のフェイシス株式会社を2000年に設立。2003年より100ten school(http://www.100ten.co.jp/)を主宰し、現在は100ten(有)代表取締役。

配当重視の株式投資。ディフェンシブ銘柄を狙え

 それでは、株式はどうだろうか。
「今お薦めするとすれば、やはり株式。ただ投資の原点に立ち戻り、長期保有を前提に考えた方がいい」と関根さんはアドバイスする。ここでいう株式投資の“原点”とは、値上がり値下がりの潮目を虎視眈々と狙うのではなく、株価が上がろうが下がろうが関係ない、配当を重視した投資をするということ。

株式投資の儲けには2つあります。ひとつは配当、もうひとつは値上がり益。配当と値上がり益、どちらの確実性が高いかといえば、それは配当です。配当が下がる(減配)、なくなる(無配)ということもよくありますが、株価の動きよりは、配当のほうが基本的に予想しやすい。サラリーマンの生活を株式投資に例えれば、配当は“給料”のようなもので、これは定期的に分配されます。株を売るのはいわば“ボーナス”で、適宜機動的にやるもの。さらに株主優待は、会社でいえば“福利厚生”だと考えればよい。給料、ボーナス、福利厚生の3つのうち、会社を選ぶとき何を重視するかといったら、給料でしょう。株式投資では、それが配当に当たるんです」(関根さん)

 例えば800円で株を買い、20円の配当をもらえれば、利回りは 2.5% になる。これは、定期預金金利や国債の利回りをはるかに上回る。つまり、配当利回りの高い株式を長期保有すれば、利回りの高い金融商品で資産を増やすのと同じ効果が期待できるのだ。

 もちろん会社の給料が下がることもあるように、株式配当も減配、無配のリスクはある。そこで、そう簡単には減配・無配に転落しない会社の株を探したくなる。エンジニア500人に、「これから株を買うとしたら、どんな会社の株か?」と聞いたアンケートでは、以下のような声が挙げられた。
DATA1 今株を買うとしたら、どんな基準で選ぶ? (※複数回答)
DATA1 今株を買うとしたら、どんな基準で選ぶ? (※複数回答)
DATA2 今が買いどきだと思う株は? (※複数回答)
DATA2 今が買いどきだと思う株は? (※複数回答)
ナマゴエ!!
大きく値を下げている大手製造業。いずれ値を戻すと思うので(制御系SE/39歳)
電子部品メーカー。商品の小型化、省エネ化にはかかせない内部部品の技術が高いため(オープン系SE/32歳)
自分の好きなメーカーの株を買う。株で利益を得ることに期待せず、株主優待などでよいことがある(機械設計/32歳)
省エネなどを推進してほしいので、環境対策の下支えをする技術や商品を開発している会社(パッケージソフト開発/31歳)
原子力発電、蓄電池、水処理などに技術を持つ会社の株に興味がある(回路設計/38歳)
エコ技術、バッテリー技術関連。環境への関心と世界動向から、電気自動車のバッテリーは伸びるかも(運用/37歳)

 では、プロの目からすると、ズバリどんな銘柄が買いなのか。
「景気変動の影響を受けやすい高額商品を扱っている会社の株は、今は避けたほうがいい。自動車も現在は、不要不急の高額商品になっています。反対に、食料、エネルギー、薬品、鉄道、通信といった日常生活に不可欠なモノやサービスを提供している会社の株──いわゆる“ディフェンシブ銘柄”は不況のときに強いと言われます」(関根さん)

 先のエンジニア・アンケートでも、このディフェンシブ株が「買い目」と言う声があった。その一方で、やはり技術者ということもあってか、それでもやっぱり自動車、家電、さらに今後を見越して環境技術関連株を狙うという人もいた。
自動車はハイブリッドカー、電気自動車などへの期待感があるのでしょうが、それらが世界で本格的に売れ出すのはまだ先のこと。環境株も、10年、20年を考えるのならよいが、1年、2年での値上がりや配当を期待するのは難しい」と関根さん。

 ところで、優良株を見分けるためには、企業活動の状況と、それに対して株価がどの程度の価値なのかといったファンダメンタルを知らなければならない。ファンダメンタル分析のための指標はいくつかあるが、関根氏によれば「今使えるのは、配当利回り、PBR(株価純資産倍率)、さらに自己資本比率の3つ。平時なら重視される、PER(株価収益率)やROE(自己資本利益率)は、今企業の収益が上がっていない現状では指標としては使えない」という。
 こうして見るべき投資指標が決まったら、後はそこにポイントを置いて、会社四季報などを丹念にチェックすることを関根さんは薦める。

目先の投資商品選びより、自分の資金計画が先
 関根さんは「株がいい、いやFXだと、目先の投資商品に惑わされるのではなく、まずは何のための資金運用なのかという、計画を立てることが先決」と、強調する。
 そもそも何のためにお金を貯め、増やすのかといったら、それはまず将来の目的があるから。それは結婚資金かもしれないし、老後の生活資金かもしれない。

 例えば老後のために、年金以外に3000万円必要だとする。60歳までにあと30年だとすれば、どの程度の原資と利回りがあれば、30年で3000万円に達するかが計算できる。
「こうした目標設定、必要利回り計算をしてから運用について考えることが一番重要なのです」(関根さん)

 将来の資金計画のためには、預金のほか国内外の債券、国内外の株式、などを組み合わせたアセットアロケーション(最適資産配分)の考え方を活用することが大切だ。その上で、投資信託、ETF、変額年金保険、確定拠出年金などの商品で運用する。賢いアロケーションを組むためには、自分自身が経済・金融の勉強をすると同時に、ファイナンシャルプランナーなどのアドバイスを得ることも大切だろう。
「まずはこうして“将来のゴールのための資金ポケット”を確保すること。もしそのうえで、資金が余っているようだったら、よりハイリターンの株式やFXに投資するのは構わない。しかし3年後の結婚資金をFXで稼ごうというのは一か八かのギャンブルです」と関根さんは言う。

美人FPが教える賢いネットバンク、クレジットカード活用術

 将来のゴールのためのお金は前述のようにして増やすとして、当座のお金は銀行に預けておくのがふつうだ。しかし、この銀行にも今はさまざまなタイプがある。どこに預けるのがいいのか。また、日常的にクレジットカードをよく利用するのなら、どの会社のカードがいいのか。そうした、ふだんの生活でのマネー術についてアドバイスするのは、100ten.schoolの溝渕麻理さんだ。

「お薦めの銀行は、住信SBIネット銀行。クレジットカードはクレディセゾンのセゾンカード」と言い切る溝渕さん。その理由は?
「セゾンカードは、永久不滅ポイントが特徴ですが、アマゾンや楽天などインターネットで買い物をするとき、クレディセゾンが運営する『永久不滅.com』を経由すると、ポイントの付き方が最高19倍にもなるんですよ」
「永久不滅.com」には、無印良品、HMV、ユニクロ、AppleStore、じゃらんなど有名ショップサイトが300以上も参加している。

 クレジットカードで払うと、ポイントがたまるという理由で、生命保険や公共料金もクレジットカード払いする人が増えているが、これからはこうしたカード会社のポイントサイトの活用も重要になる。
「株式投資をしている人にぜひお薦めしたいのは、SBI証券と住信SBIネット銀行の両方に口座を開設すれば利用できる“SBI ハイブリッド預金”。株の買付代金や信用取引の保証金が決済できるだけでなく、普通預金としても利用できます。驚くのは1年もの円定期預金の利回り。0.9%はどこの銀行に比べても最高です」

 SBI ハイブリッド預金の0.9%は現在のキャンペーン金利だが、たしかに三菱東京UFJ、三井住友の0.25%はもちろん、イーバンク銀行(0.42%)、ジャパンネット銀行(0.52%)、スルガ銀行ネットバンク支店(0.69%)など他のネットバンクよりも高金利だ。(2009.3月現在)

溝渕麻理さん
溝渕麻理さん
ファイナンシャルプランナー(AFP)、キャリアカウンセラー(GCDF - Japan) 1991年成蹊大学経済学部卒業。三菱信託銀行、人材派遣会社等を経て、2003年より100ten schoolに参画。
 溝渕さんは、もちろんクレディセゾンやSBI証券の回し者ではない。 「私自身、ネットで化粧品を買うので、いつもよりお得な銀行やクレジットカードはどこかを調べています。もちろん金融機関の競争は激しく、よりよいサービスや金利はこれからも出てくる。絶えずそれらをチェックすることが、これからの生活防衛時代には大切になります」

 ちなみに先のアンケートでは、エンジニアたちに普段貯蓄・運用のために利用している銀行を挙げてもらっている。利用率が高いのは「三菱東京UFJ」(36.8%)、「イーバンク銀行」(32.8%)「ゆうちょ銀行」(26.8%)、「新生銀行」(24.6%)の順(複数回答)。「住信SBIネット銀行」は15.8%でそれに次いでいる。
DATA3 普段貯蓄・運用のために利用している銀行は?
DATA3 普段貯蓄・運用のために利用している銀行は?
 都市銀行は給与振り込みに指定されているので使っているが、ネット売買の決済には振込手数料が無料または安くなるネットバンクを積極的に利用するという人も多かった。

 そのアンケート結果を見ながら、
「意外と言っては失礼ですが、みなさん結構よく金融商品や銀行金利を調べていますね。ポートフォリオもバランスよく考えている方が多い。エンジニアこそ、これからの優秀な投資家になりうるかもしれないと思いました」
 と、関根さんは語っている。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
今回の特集のために、マネー関連の雑誌やネットを勉強しまくりでしたが、プロにアドバイスしてもらった1時間のほうが納得感あったような気がします。自分で調べるのが面倒だと思っているからかもしれませんね。記事で紹介した運用術はさっそく試してみたいと思います。

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