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実録 求人魂! 知られざるエンジニア採用の舞台裏 Vol.7 “エンジニア経営者”を輩出する独自システムを用意!! 実録 求人魂!
今回の求人魂は、手厚い各種制度や恵まれた開発環境などの話ではない。それどころか、人によっては少々辛口の内容だ。しかし、ここに紹介する経営者の求職者に対する想いに、心が熱くなるエンジニアは少なくないはずである。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:09.03.06
今回の求人魂 株式会社ヘッドウォータース IT業界の構造に一石を投じるSI企業
株式会社ヘッドウォータース ●2年連続ベストベンチャ―100を獲得
ヘッドウォータースは2005年に設立されたシステム開発企業。わずか3年足らずで社員数が100人を超え、主要取引先には航空会社やメーカー系SI企業といった著名企業の名前が並ぶ。こうした実績を聞いて、プライムのSI企業と太いパイプをもち、詳細設計以降のフェーズに強い企業だと考えるのは早計。事実は180度異なる。同社は自らビジネスを創出する力をもち、クライアントに最上流工程から接する元請けとして、もしくは同社しか展開できないソリューション力で、大手SI企業やコンサルティングファームと同じ土俵で勝負している企業なのだ。

つまり、ヘッドウォータースは“代わりの利く下請企業”ではない。ベンチャー通信編集部が選ぶ「ベストベンチャー100」を2006年から2年連続で受賞していることが、それを端的に表している。同社は、次代を牽引するIT企業と認識されているのである。
では、プライムを目指しながらも業界構造の底辺近くを担っている数多のシステム開発企業と、ヘッドウォータースは何が違うのか。その一つとして挙げられるのが、起業目的である。他社の創業者たちが、独立心を満たすことや、営利における成功を目指して会社をスタートさせたのとは異なり、同社は「日本の未来を憂い、危機感に迫られて」設立したのだと、代表取締役の篠田氏は言う。

●エンジニアは作業者になっている
「日本という国は、これまで技術立国として、製品の開発と製造で繁栄してきました。それを支えたのは、技術に対する愛情と、それを極める執着心です。そうした気質が日本人のDNAにはあり、それがテコとなって優れた製品を生み出すことで、世界中の市場で最も高い競争力を保ってきたのは間違いありません。創業者自身が技術に対する愛情と執着心をもったエンジニアであったホンダ、ソニー、パナソニックなどは、戦後に躍進した日本の象徴といえるでしょう。ところが、近年は、こうした強みが崩れかかっています。そう遠くない将来に日本の技術優位性はなくなり、経済大国の地位から引きずり下ろされることもあり得ます」

篠田氏はそうした国家的な危機の背景として、次の三点を挙げた。一つは、インドや中国などの工業新興国が、下請け生産主体から自力開発へ産業構造を変化させつつあることである。インド企業と多彩なビジネス交流の経験をもつ篠田氏は、インドがいずれ技術的な脅威となると予測している。
「インドはもともと人口が多いうえに、経済成長で高等教育も充実し始め、さらにその教育を受けた最も優秀な層の人材がエンジニアを志望する風潮となっています。なぜならば、エンジニアの社会的ステイタスが極めて高く、それに応じて収入も多いからです。特にITの分野では彼らの実力と評価は急速に世界の先端技術シーンに浸透しつつあります」

このように篠田氏が語るインドと同様のことが、中国にもある程度は当てはまるだろう。また、二つ目の理由は、これと表裏一体。そう、日本のエンジニアの社会的ステイタスとそれに相応する待遇・収入が文系総合職に比べて低い、という事実を篠田氏は指摘する。そのため、優秀な人材が理系学部を選ばない傾向があるどころか、理系の学部で学んだ優秀な学生が、あろうことか就職先として技術職以外を選ぶケースも少なくない。これでは技術立国の根幹は危ういと言わざるを得ないだろう。そして三つ目の理由として篠田氏が最も語気を強く語るのが、“エンジニアがビジネスに背を向けている”こと。これは特にIT業界にいえることである。
「世界では、先端ソフトウェア技術や業界標準のソフトウェアプロダクトを開発したエンジニアが経営者として表舞台に出て活躍しています。創業者やCEOではなくとも、経営の最前線で多くのエンジニアや元エンジニアが活躍しています。翻って、日本のITエンジニアの中で、世界をリードしていくようなビジネスパーソンは見当たるでしょうか。答えはNOと言わざるを得ません」

確かにマイクロソフトやオラクル、グーグルなど、グローバルIT企業の多くは創業者がエンジニアである。篠田氏は続けて、
「理由は明らか。日本のソフトウェアエンジニアが単なるソフト製造作業者になっていて、ビジネスの最前線にタッチしていないし、しようと思う人も少ない。代わりに営業や財務出身の経営陣が経営の要職に就いていますが、これでは、かつて自動車や家電で、エンジニア創業者が率いる日本企業が世界を席巻したようなことは、起こるはずがありません」

篠田氏が、こうした状況=技術立国日本の危機を何とかしたいと考え、その手段としてヘッドウォータースを設立したのである。
求人背景:作業者に甘んじるエンジニアはいらない
では、ヘッドウォータースは未来のホンダやソニーになれるだろうか。これは残念ながらストレートにYESとは言えない。なぜなら創業者の篠田氏自身はエンジニアではない。そこで、彼は目標を現実に引き寄せる第一段階として、ビジネスのできるエンジニアを数多く輩出するインキュベーターとなることに主眼を置いている。
“ビジネスができるエンジニア”という意味は、開発作業者の枠を乗り越え、事業計画を想起し、それを現実に実行していく人材を指す。つまり確かな構想と行動力で顧客の確保や収益についてコミットしなければならないし、人員計画のためには部門間の調整能力が問われ、部下の生産性を上げるためには日々のマネジメントにおいてリーダーシップを発揮しなければならない。そうした経営者同然のポジションを指向するエンジニアを、同社は一人でも多く求めている。
吉田 将人氏
株式会社ヘッドウォータース 代表取締役
篠田 庸介氏
ヘッドウォータースの求人魂! その1 中途入社でも事業部長に立候補することが可能
同社が、ビジネスのできるエンジニアを数多く輩出する仕組みとして導入したのが、事業部長の立候補制度である。社員は、毎月末の経営会議で自ら構想した事業計画や収益予想のプレゼンテーションを行うことができるというものだ。既存の事業部長の3分の1以上から賛成票が投じられたら、提案者は新事業の事業部長となり、構想を実行に移せるのである。ただ、いくらプレゼンが魅力的であっても、それだけで3分の1以上の賛成票を取り付けるのは至難の業だ。併せてこれまでの実績、言動、スキル、人望なども勘案されるからである。
それほど高いハードルながら、この制度は形骸化しているどころか、立候補者が後を絶たないと篠田氏は言う。
「昨年末も新たに6人のエンジニアが立候補して中身の濃いプレゼンが繰り広げられました。また、現在10以上ある事業部の多くが、この制度からスタートしています。設立3年の企業ですから、過去の実績といっても何年分も問われるわけではありません。当社に転職して集中して実力を示せば、1〜2年で事業部長になることも夢ではないのです。何と言っても、当社の設立理由は世界で通用するエンジニア経営者を輩出すること。可能性のある者に門戸は常に開かれています」
若いメンバーたちが積極的に事業提案していくことが、同社の原動力になっている
ヘッドウォータースの求人魂! その2 応募者におもねるようなことは一切しない
実は、“転職を希望するエンジニアにとって、ヘッドウォータースはどんな期待に応えられる企業なのか”と篠田氏に聞いたところ、同氏が真っ先に発してくれたのが、「いくら優秀なエンジニアであったとしても、私は応募者におもねるようなことや、媚びるようなことは一切言いません」という言葉だった。そして「オフィスに遊び道具があるシリコンバレーのIT企業のような開放的な雰囲気ではありませんし、給料が格別に高いわけでもありません」。さらに、「社員はスーツ着用が基本。ビジネスをするのに私服は認められない」と続けた。雰囲気や特別待遇で惹きつけるつもりは、はなからないのだ。単に実績や技術スキルのあるエンジニアではなく、本当にビジネス志向をもって努力できるエンジニアしか採用しないのである。毎月100人以上の応募者がありながら、採用者は数人足らず。また、設立以来、退職者がほとんどいない。応募者を厳選する一方、応募者も同社を厳選して入社しているのだろう。
篠田 庸介氏
篠田氏は会社説明会で1日7回もの講演をこなしつつ、同社の事業戦略について語っている
今後の展望:理念に加え実行力があるからブレない構想
どれだけ崇高な理念をもっていても、それだけでは企業は発展しない。篠田氏率いるヘッドウォータースには、理念に向かって現実のビジネスを成功させていく推進力がある。篠田氏自身の事業開拓力や、篠田氏に共鳴した実績のあるエンジニアたちが設立に駆けつけたこともあって、わずか3年で同社は大手クライアントをもつ存在となった。同時に“ビジネスができるエンジニア”を輩出する体制も整った。昨年末も新たに6人のエンジニア社員が事業部長に立候補したことが、篠田氏の構想の着実な前進を何よりも証明しているといえるだろう。
篠田 庸介氏
「本当にビジネス志向をもって努力できるエンジニアしか採用しない」と語る篠田氏
今回の求人魂! エンジニアを鼓舞する風土がいちばんの求人力
立ち上がったばかりの会社。シンプルに成長意欲の高い会社。新事業に必要な人材をそろえたい会社。あるいは恒常的に採用をかけないと規模を維持できない、定着率の悪い会社など、エンジニアの採用に熱心な企業は少なくない。そんな企業の多くが、人員の確保のために、魅力的な待遇や環境を用意している。その一方で、ヘッドウォータースのように甘言ではなく直球勝負でエンジニアの胸に突き刺さる問いを投げる企業は異彩を放つ。しかし、自らの仕事と使命に関する本質的な答えを求めているエンジニアならば、同社の訴求は何よりの求心(人)力になるに違いない。
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