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今回の調査は、貯蓄と投資に重点を置いてアンケートを行った。エンジニア500名の平均貯蓄高は473万円。ただし、ローンなど出費も多い。調査では、低金利の普通・定期預金だけではなく、株式やFXへの関心が高まるのも、不況期だからこそか。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:09.02.27
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まず今回の調査対象者は、現在貯蓄をしているという20代・30代のエンジニア500人。年収層は、「300万〜500万円未満」が44.8%、「500万〜700万円未満」が29.2%で、この2つの層で全体の約4分の3を占めている。ちなみに年収の最小値は300万円、最大値が1500万円、平均値は551万円だ。 こうした属性をもつ500人にずばり聞く「現在の預貯金はいくら?」。最小値は2万円、最大値はなんと4600万円と、最小と最大の幅は天と地ほどの開きがある。平均すると473万円。標準偏差は574万円もあり、きわめてバラツキが大きいデータであることがわかる。 これを年代別にみると、25〜29歳の貯蓄平均が328万円、30〜34歳が536万円、35〜39歳が553万円となっている。年代を追うごとに貯蓄額は伸びているが、住宅購入や子供の養育資金がかさむ40代以降になると、おそらくこの伸びは鈍化することが考えられる。毎月の貯蓄額もまた、ゼロから120万円と差があるが、平均すると7万円という数字が出ている。 一方で、住宅・自動車ローンなど現在の借入金額は、最大6800万円という人もいた。平均額は457万円であり、みんなけっして少なくないローンを背負っていることがわかる。借入金額も年代に応じて伸びる傾向がある。25〜29歳では平均108万円だが、30〜34歳になるとこれが437万円に跳ね上がり、35〜39歳では824万円となっている。おそらくマンションなど住宅ローンが大部分を占めていると思われる。 今回の調査からは、こうした借入金の返済と老後に備えた資産形成のために、みな貯蓄や投資・運用に一生懸命であることがひしひしと伝わってくる。 |
DATA1 エンジニア500人に聞いた「貯蓄・ローン金額」 |
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日本は貯蓄大国と長く言われ、家計が保有する金融資産のうち、預貯金などの安全資産の割合はおおむね6割前後で推移してきた。株式、投信などのリスク資産の割合は、バブル期後半には一時的に2割を超えるまでに上昇したが、バブル崩壊後の90年代半ば以降は1割を大きく下回っている。 ただ、低金利の時代が長く続いたため、お金が、よりハイリスク・ハイリターンの投資先を求めているのは事実。先進諸外国に比べればまだリスク資産の割合は小さいとはいうものの、90年代以降の金融自由化の下で、それまで一般的だった銀行への普通・定期貯金から、よりリターンが大きい金融商品へお金がシフトしていく傾向ははっきりしてきた。 なかでも、小泉・竹中内閣のもとでは「貯蓄から投資へ」という言葉がスローガンになり、株式はもとより外貨預金、FX、外債など、よりハイリスクの金融商品への投資が、比較的年齢の若い層にも身近になった。オンライン証券の登場や、書籍・雑誌・ネットにおける金融情報の爆発的な普及がそれを後押ししている。 とはいえ昨年来の国際的な金融危機で、株式市場が暴落し、為替相場の激変で外為取引もタイミングを間違えば、大損を被らざるをえないというリスクも出現してはいる。安全資産からリスク資産へという流れが、これから先、後戻りすることはあるのだろうか。今回の金融危機を乗り越えるために、エンジニアはどのような形で資金運用、資産形成を考えているのだろうか。 そうした興味から、まず現在の貯蓄・運用方法を聞いてみた(複数回答)。それをみると、依然、「普通預金」(90%)、「定期預金」(62.6%)の比率は高い。とはいうものの、「個別株式」(56.2%)、「投資信託」(39.2%)、「外貨預金」(24.2%)などを利用する人の割合も多い。実態としては、これらをうまく組み合わせながら、金融資産のリスクと安全のバランスを図っているものと考えられる。 |
DATA2 現在活用中の貯蓄・運用方法と、興味・関心がある貯蓄・運用法 |
ここで注目したいのが、「FX(外国為替証拠金取引)」だ。証拠金(保証金)を業者に預託し、主に差金決済による通貨の売買を行う取引をいう。レバレッジを利用することによって証拠金の何倍もの外貨を取引することができる一方で、証拠金以上の損失を受けるリスクもある、きわめて投機的な金融商品だ。 FXは11年前の外為法の改正以降、取引高を急速に伸ばしている。08年1〜3月期の取引高は230兆円と2年前の4倍強。08年10月の東京金融取引所での売買高は過去最高となったが、10月下旬の急速な円高で11月の売買高は前月比の半分、しかし、09年1月には前月比30%の増となるなど、為替相場や金利動向を敏感に反映して激しい出入りを繰り広げている。 個人にとっては、少額でも大きな取引ができるだけでなく、外国為替の変動を通して、国際経済の動きをピリピリと感じることができるという緊張感も魅力の一つだ。今回の調査でも、回答者の26.8%がFXを行っており、その割合は外貨預金を上回っている。 |
ともあれ、その資産形成のパターンは人によってさまざまだ。普通・定期預金のみで、運用性・リスク性の高い資産はもっていないという人もいないではないが、ここでは少数派だ。割合は預貯金の5割程度から1〜2割程度と幅があるものの、なんらかの形で資産を運用している人が多い。 |
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だが、運用投資の成績は昨今、けっして芳しくない。しかし、こうしたリスクは投資にはつきもの。リスクがあればあるほど、その仕組みや、変動に与える経済要因の勉強をなおさら深めて、リスクに耐えうる自分なりの投資・運用法を確立したいと思うのが、人の常というものだろう。 |
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今、実際に活用しているかどうかはともかく、これから興味のある貯蓄・運用方法としては、一番に挙げられたのが「個別株式」(40.6%)、ついで「FX」(36.6%)だった。以下、「定期預金」(28.4%)、「外貨預金」(22.8%)、「投資信託」(22.6%)などとなっている。一方で、「普通預金」や「個人向け国債」「新窓販国債」「社債」「外債」などへの興味・関心は限られている。普通預金は今後も金利に期待できないから当然として、そのほかの商品は、リスクとリターンが中途半端なため、魅力に乏しいということがあるのかもしれない。 株式に注目が集まるのは、株価が下がっているからという人が多い。同様に、昨今の円高傾向を、外資や外貨預金のきっかけにしようという人もいる。FXについては取引の利便性や取引コストの安さに関心が集まる。一方で、リスクを感じて手を出さないと断言する人もいる。こういう時期だからこそ、心のうちではハイリスク・ハイリターン商品に期待するところはあるけれども、現状は「バランス重視・リスク分散が大切」という声が、全体的には多かった。 |
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