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上司のIDで成りすまし作業、売り上げ重視で不要なシステム導入
顧客には見せられない黒い仕様書…エンジニアの懺悔室
ここはエンジニアの懺悔室。犯してしまった仕事のあやまちを、心ゆくまで吐きだして、明日への一歩を踏み出す場。エンジニアたちの懺悔に、共感し安心するか、それとも己を振り返り戒めとするか、とらえ方はあなた次第。さあ、誰にも言えない秘密の告白を聞いていこう。
(総研スタッフ/タニー只野 イラスト/RYU-ra)作成日:09.02.09

はじめに:懺悔したい過去、ありますか……?

 エンジニア懺悔室では、心に引っかかっている仕事のあやまちを吐き出して、すがすがしいエンジニアライフ送ってもらいたいという願いから、「実は仕事で悪事を働いたことがある」という告白を大募集した。ひょっとして掲載ができないような恐ろしい悪事ばかりが寄せられたらと、ドキドキハラハラしながら待っていた懺悔室だったが、「繁忙期の残業時に、外部からの電話を取らなかった(37歳 男性 業務アプリケーション作成)」といったささやかな悪事から、「コーディングのバグを隠すために、ユーザの操作がおかしかったことにした(39歳 男性 Web系SE)」という限りなくブラックな告白まで、幅広く懺悔の声が集まったのであった。

 結果、懺悔にどのような傾向があったかというと、やはり正々堂々と(?)悪意をもって行った行為より、「仕方なしにやってしまった」「結果的に悪事だった」という嘆きの告白が大半だった。内容をグラフで表してみると、いちばん多かったのは「報告義務を怠った(21%)」というもの。続いて「書類改ざん・虚偽の報告(20%)」と、こちらも報告義務に関連したあやまちである。この二つを足すと全体の約4割にもなる報告義務違反。これにはなにやら深くて暗い事情がありそうだ。
 次いで多かったのは、「未完成品を納品(17%)」!な、なんと……。まだ完成していない製品をリリースとは、大問題に発展しそうな話だが、懺悔しているということは公にならなかったということなのか。それでは、悪事に至った詳しいいきさつを紹介していこう。

【グラフ1】エンジニアの懺悔内容

懺悔その1 報告義務を怠った
本番間近にこっそり新規開発

引き継いだプログラムが、メンテナンス性・パフォーマンス両面から見ても良くなかったので、本番間近にもかかわらず新たに作り直した。重大な問題に発展しないよう、デグレの面ですごく緊張しました。作っている間は、作業がバレないよう必死でした。


言い訳

もともとあったプログラムのメンテナンス性が悪いので、修正作業を行うにあたって責任がもてず、作り直すしかないと思った。しかも作り直したらそのプログラムの信頼性がアップして、顧客に思いのほか感謝されました。
(26歳 女性 アプリケーション開発)


緊急連絡は、内容がわかる人だけに

顧客のサーバに問題が発生した場合は、連絡先の順番が決まっているが、毎回絶対に出ない担当はこっそり飛ばして次の人に連絡している。また、問題の内容を伝えてもわからない人にも電話していません。わからない担当者に電話に出られても意味がないし、長くなるから仕方ないかと……。
(30歳 男性 サーバ運用、保守)


説明よりも被害拡大の防止を優先

本稼働開始後に発覚した仕様ミスを、ユーザが気付いていない段階で勝手に改修し、データ復旧も行った。本来は説明してから行うべきだが、説明をしている時間がなかったのと、時間がたてばたつほど被害が広がるので、なるべく早期に対応すべきと思った。悪意はないので、とりあえず失敗のないことだけを祈った。
(39歳 男性 自社パッケージ製品の開発、導入)


懺悔その2 書類改ざん・虚偽報告
実現可能な機能でもNGに

実装するのは可能な機能だが、プロジェクトの工程上、期日までの完了が不可能な案件を、「実装不可能」として稟議した。プロジェクトの本筋の機能は充足していたため、特に問題にはならなかったし、プロジェクト自体は好評だった。


言い訳

ITに対して理解は少ないのに要求ばかり大きい経営陣に、実装するためのコストとリスクを説明すること自体がリスクだと思った。工数は多いのに実益の少ない要求を飲んでいたら、プロジェクト本体の進捗に影響を及ぼしかねない。結果としては良かったと思う。仕方ない。
(35歳 男性 社内PCの総合管理)


バグを水増し報告

バグがないにもかかわらず、当初から決められたバグ数があるため、バグがあることにしてユーザ向け結果報告書を書いた。融通の利かない品質管理体制が問題である。書いていてバカみたいだと思った。
(38歳 女性 プログラマ)


分析装置の設定を甘くし、規格に合格

規格に入らないと製品がお蔵入りになってしまうため、分析装置の設定をぎりぎりまで下げて合格とした。かなり厳しい規格設定なので、幸いトラブルには至っていない。分析値は操作していません。設定を甘くしているだけです……。規格設定自体が厳しいんだから、顧客と規格変更の話をすればいいのに。
(36歳 女性 工程製品の分析業務)


懺悔その3 未完成品を納品
信頼性は推測し、スピード納品

顧客から新製品の短期入庫要望に対して、長期間の信頼性において100%の結果が出る前に、その過程などから推測して「OK」と上司が判断し、入庫。しかし心配していた長期間信頼性に問題点が見つかり、更なる短期間での改良を余儀なくされた。徹夜を含むサービス残業の結果、問題点は改良したが、競合他社に勝つためいまだに100%の結果が出る前に入庫している。


言い訳

このようなことは日常茶飯事なので、問題点が出たことに対してはなんの反応もなかった。ただ、開発者個人として、新製品を売るために競合他社よりも短期での提出が求められることに大きな疑問を感じている。100%完成してから新製品を提出したい。
(34歳 男性 商品開発、製品改良)


変なメッセージが出たままに……

提出したシステムの現地調整期間に不具合が発覚したが、実害がない不具合なので修正せずそのままに。一年に一度出るか出ないかの頻度で変なメッセージを出力してしまいますが、実害はないのでご勘弁を……。ただ、不具合は不具合なので心が痛んでいます。
(34歳 男性 制御系システム開発)


足りない分はパッチで補完

作業の納期が足りず、完全に検証できていないプログラムをパッケージとしてクライアントに納入してしまった。月例パッチのときに、少しずつ検証してない部分や足りない部分などを補完したためバレなかった。全部検証したいが、人も時間も足りないんです。
(30歳 男性 プロダクトマネジャー)


懺悔その4 情報漏えい・セキュリティ違反
上司のIDでこっそりログイン

進捗が大幅に遅れていたシステム改修の、運用テストでの成りすまし行為。ある権限を持ったユーザで実行しなければならないテストケースがあったが、みんなことごとく海外出張その他で長期不在。自分のIDの権限を変えることもできず、その権限をもつ上司のID(なぜかパスワードも私が知っている)でこっそりログインし、テストを実行した。その後上司が不正ログインに気づいたようだが、無事テストは終了した。


言い訳

テストケースをチーム内でレビューしたとき、自分の権限をちゃんと確認していなかったのが間違いだった。が、身内の中での成りすましであり、お客様のIDを不正に使っているわけでもない。「緊急避難的措置である」というような理由で、許される範疇だと自分を納得させている。
(30歳 女性 オープン系システム開発)


競合他社の資料を拝借、流用……

懇意にしているお客様から、コンペ会社の提案書のコピーを受け取ってしまった。上司に指摘されて初めて悪いことだと気付いたが、上司は実質的に黙認。その情報はこちらの提案に大いに役立てた。「最終的にお客様にメリットがあるのだから……」と、悪いことだという意識がなかったうえに、「お客様との関係づくりがきちんとできている」という自負すらあった。
(37歳 男性 プリセールス技術支援)


機密ファイルをお持ち帰り

会社の残業時間の締め付けが厳しいため帰宅せざるを得ないが、どうしても業務に差し支えるため、企業機密ファイルを無断で持ち帰り、自宅のPCで作業を行っていた。作業後、自宅のPCからは完全にファイルを削除し、今現在でも事なきを得ている。持ち帰って作業している最中は、仕事に集中していて何も考えていないが、その前後はやはりやましい気持ちがあった。
(35歳 男性 組み込み機器のソフトウェア開発)


懺悔その5 見積もり額上乗せ
無駄だとわかっていても導入

自分の担当しているお客様には導入しても意味のないネットワークの侵入検知システムを、お客様とは別の部署のセキュリティ担当者からの要望で、無駄だと理解しつつ導入しました。お客様にとって不要な出費ですが、自社では当然、売り上げが上がるので喜んでいました。


言い訳

結局、3年後にシステムの撤去を提案したのですが、後味が悪かったです。お客様要望なのでどうしようもありませんが、エンジニアの良心が痛みました。粛々と作業をしましたが、無駄なことをやらされているという思いは残りました。
(36歳 男性 ネットワークシステムの設計、構築)


正価に上乗せ……そして接待へ

顧客に「予算を使い切らないといけない」という事情があったため、本来のシステム価格より上乗せした見積もりを提出し、受注した。最終的に顧客への接待が増えたような気がするため、個人へのキャッシュバックになってしまった。システムを導入しコスト削減をしようとしているのに、とんでもない話だと思った。
(29歳 男性 物流向けシステム開発)


追加費用は予想で計上

業者に依頼する仕事に作業変更が発生し、追加費用を請求されることがわかっていた。上司は追加費用の発生には厳しいので、あらかじめ追加費用分を余計に計上させた見積もりを提出してもらい、上司の承認を得て作業を進めていた。結果的に余計に計上した費用以内に収まったので、その分を割引して最終見積もりを提示してもらい、上司からは「安く仕上げてよくやった」という評価を得た。
(34歳 男性 回路設計)


最後に

 これまでのエンジニアたちの懺悔には、上司も黙認していたり、行為自体が組織的に習慣化している背景も散見される。では、エンジニアが告白した悪事は、実際に会社の慣例や習慣が影響しているのだろうか。
 なんと結果は、半数を超えるエンジニアから「影響している」という回答が。具体的には、「ノルマおよび納期を守るためには、ねつ造もやむを得ないとする企業体質(37歳 男性 溶剤の研究開発)」「コンプライアンスという名のもとにガチガチなプロセスがあり、誰もクライアントのほうを見ず、社内ばかりを見ている(36歳 男性 ネットワーク設計、構築)」など、やむにやまれぬ状況に追い込まれているエンジニアも少なくないようだ。

 個人として、組織風土や企業体質を変えるまでの行動に至ることはとても難しい。理想と現実、役割と責任に揺れるときもあるだろう。だが、どんなときも、良心に従い、前向きに問題に向き合っていくエンジニアを、懺悔室は応援したい。

【グラフ2】会社の悪しき慣例も影響していますか?
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タニー只野(総研スタッフ)からのメッセージ タニー只野(総研スタッフ)からのメッセージ
先日、デスクから「当初の企画と構成が変わっても報告ないよねー」と何げなく言われました。そういえば、忙しくなるとつい報告を後回しにしてそのままにしていたかも……。このレポートを作っている自分もまた、懺悔しなければならない立場でございました。懺悔室に行ってきます。

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