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ビジュアルTech絶景技術アルバムをめくれVol.1 【QUIZ】ゲーム機と電子レンジの共通部品。これは何?
細いリード線がつながれた小さな金属ブロック。ブロックの表面、リード線の先には、小さな基板のようなもの……。電気部品であることはわかるものの、正体不明のこのパーツ。しかし実は、今、最新ゲーム機ほかで大活躍をしている存在なのだ。
(文/川畑英毅 総研スタッフ/根村かやの)作成日:09.01.15
人気のゲーム機を、文字どおり「支える」パーツ
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 身体全体を動かすことで、画面内のキャラクターを操作する、最新のヒットゲーム機。その体重計型の操作用デバイスに使われているのが、この謎のパーツ。
 正体を明かすと、これは「ひずみゲージ式フォースセンサ(荷重センサ)」と呼ばれるもの。「黙って座ればピタリと当たる」……などというとアヤシイ占いのようだが、荷重がかかる部分の“つなぎ”にこの金属ブロックを装着すると、荷重を電気的に測定できるセンサである。

 ベースとなっている金属ブロックを「エレメント(起歪材)」と呼ぶ。表面中央に貼り付いている四角い素子が「ひずみゲージ」、素子の中身は抵抗である。
 エレメントに荷重がかかって変形すると、素子もそれに合わせて伸び縮みし、その結果、抵抗素子の線の断面積が変化する。断面積が小さくなれば抵抗値は上がり、断面積が大きくなれば抵抗値は下がる。
 この変化を効率よく測るため、抵抗素子を4つつなげて、ホイートストンブリッジと呼ばれる回路を形成する。歪みが生じると、それぞれの抵抗値が変化しアンバランスが生じるため、回路の中間点の電圧を測ることで、歪みの度合いを知ることができる、という仕組みである。

 ここにあげたセンサの場合、仮に100kgの荷重がかかった場合でも、エレメントに発生する変形は約0.1mm程度。しかし、そんなわずかな変形からでも500gの荷重を検知することができるのだという。
 今回は、この分野のトップメーカーであるミネベア株式会社に取材。「荷重の検知」という簡潔な機能からは意外なほど幅広く利用されているフォースセンサの技術、その魅力について、教えてもらった。
産業用「ロードセル」からフォースセンサへ
 このフォースセンサ開発のもとになっているのが、ロードセルと呼ばれるもの。例えば、荷物を積載した大型トラックをそのまま測るような大型のはかりから工業用の各種はかり、身近なところでは、肉屋などの商店で使われている精密はかりなどにも使われている。

「ロードセルも、フォースセンサも、センシングを行う原理自体は同じもの。エレメントの上にひずみゲージを貼って測定する構造も同じです。
 ただし、例えば工業用であれば、高い防水性や耐食性が要求されますし、屋内用のはかりも、商業用は高い精度が必要。この、お肉屋さんなどで使われているはかり用のロードセル〔写真2〕の場合は、1/3000〜1/6000の精度をもっています。1/3000の場合で、3kgあたり1gの誤差ということになります。
 加えて、これに接続されている上皿のどの部分に対象物が載せられても正確に測れる機能、ある一定の温度範囲内で正確に作動する機能を実現するために、形状にも工夫を凝らしたり、調整用の素子を加えたりしてあります」(ミネベア株式会社 計測機器事業部技術部次長兼センサ技術課課長 佐藤聡氏)

 こうした産業用・商業用の「はかり」に使われてきたロードセルだが、純粋に「はかり」に使う以外にも、さまざまな用途への応用が可能。そこで、特にこの10年ほどの間に、われわれの身近な製品の中にも利用が広がってきたのが、それぞれの用途に合わせてカスタマイズされたフォースセンサである。

 もともとの「はかり」に近いところで言えば、例えば体重計、体脂肪計用〔写真3、4〕ポストスケール用〔写真5〕。また、重量をもとに石油ファンヒータのタンクの残量を検知するために使われていた時期もあった。さらに身近な例では、電子レンジのターンテーブルの下に組み込まれ、載せたものの重みから適正な解凍・調理時間を判断するためのセンサとしても活用されていた。
「それぞれの用途により、検知したい重さも、装着されるスペースもさまざま。そのため、用途に合わせて、エレメントもゲージも個別に設計します。ゲーム機用に使われたセンサをはじめ、エレメントにはジュラルミンを使う場合が多いのですが、薄くしたい場合、強度を高めたい場合など、ステンレスなどを使うこともあります」(佐藤氏)
写真2
ひずみゲージは、写真で見えている表面と裏面に2個ずつ計4個装着。そのほか、零点調整用、温度補正用などの素子が見えている。側面に空けたダンベル形の穴の内側を削って微調整を行う。
写真3
体重・体脂肪計にフォースセンサが導入された初期のもの。エレメントは厚さ約2mmのステンレス材。
写真4
〔写真3〕と同じく体重・体脂肪計用だが、エレメントはジュラルミン製。
写真5
「1t以上の耐荷重」から、「指先の動きを細かく拾う」ものまで
写真6
点滴・輸液や栄養ラインに用いられる輸液ポンプ・シリンジポンプに組み込まれるもの。
写真7
ABS樹脂製のエレメントに、ひずみゲージや配線が実装されている。基板に載せ、指が直接触れる部分には赤いカバーをつけて(上左)、キーボードに組み込まれる。
写真8
ひずみゲージの単素子。量産段階では複数の素子をワンチップ化して扱いやすいサイズにする。
「“かかる力”がわかることで、何かを判断できるものは、実にいろいろあるんですよね。それだけ、このセンサの用途もいろいろあるわけです。
 とはいえ、『できそうだ』ということはわかっても、実際の組み込み方は、千差万別。それにどう応えるかが、われわれの仕事の腕の見せどころ、というわけです」(佐藤氏)

 新たな用途として挙げられるのが、例えば医療機器。点滴や輸液などの際には、患者の身体に余計な負担をかけないことが重要。常に適正な圧力を維持するためにごく小型のセンサが利用されている〔写真6〕

 変わり種では、自動車の助手席の留め具を兼ねて使われているものもある。
「これは特に北米市場で売られる車に装着されているものです。北米仕様ではエアバッグが大型で、助手席に子供が乗っていた場合、むしろエアバッグで負傷してしまうことがあるので、それを防ぐことが法令で自動車メーカーに求められています。そこで、助手席の下のセンサで座っている人の体重を検知、一定以下の体重の場合、エアバッグが作動しないようにするのです。
 このセンサではエレメントにステンレスの一種を使っていますが、その素材選びや形状などもお客さんと共同研究。助手席を支える構造材の一部として、事故の衝撃に対して折れたりちぎれたりしない強さが求められました。
 したがって、測る重さは30kg前後ですが、耐荷重は数トン。ある意味“究極”の品物です」

 最近では、トルクレンチの内部構造物にゲージを貼ってセンサとして使い、適正な力が掛かっているかどうかを測る、といったものもあるという。
 もうひとつ変わり種として、ノートパソコンのポインティング・スティックに使われている例もある〔写真7〕。デスクトップPCのマウスに代わり、カーソル操作用にキーボードの中に装着された「でべそ」だが、その土台部分がフォースセンサになっており、スティックの上下左右の動きを検知するのである。その小ささもさることながら、エレメントが樹脂製であるという点でも変わり種といえる。
「次は何を測らされるんだ!?」
 フォースセンサに対し、顧客から出てくるニーズはさまざま。当初は、「こんなことがやりたい」という概念だけのことが、むしろ普通であるという。そうしたニーズをもとに、「たぶん、ここに力が発生するだろう、ここをこんなふうに測ればイケそうだ」と、アタリを付けていくところから、その設計の作業は始まる。

「ある程度の形を作り、単素子のゲージ〔写真8〕を各所に貼り付けてみる。形になると、また要求がはっきりと見えてくるので、そこから、さらにお客さんとの共同作業で仕様を詰めていくんです」(佐藤氏)

 そんな「常に新しい」設計を物語るもののひとつが、社内で開かれる「案出し会」と呼ばれる会議だという。

佐藤聡氏
佐藤聡氏
ミネベア株式会社
計測機器事業部 技術部次長
「案出し会には、われわれセンサ担当の部署だけでなく、全然関係のない部署からも出席してもらいます。出席者の前には、A4の白紙がそれぞれ2枚。まずは担当者が前に出て、どのような注文なのか、解決するにはどんな課題があるのかをホワイトボードで説明する。出席者は、それを解決できる『かもしれない』アイデアを、配られた紙にてんでに書き付けていくんです。なにしろ苦労して作るのはわれわれですから、他部署の人は気楽に何でも書いてくれます(笑)。
 でも、紙にはきちんと署名してもらって回収します。書いてもらったアイデアに画期的なものがあって特許が取得できたら、その人に権利が!――オイシイでしょう?」(佐藤氏)

 実際には、“力”を検知するセンサには、ひずみゲージを利用したもののほかにも、厚膜式、半導体式、静電容量式など、さまざまな方式がある。そうしたなか、ひずみゲージ式のメリットは、「エレメントにゲージを貼る」という形式ゆえに、形状の自由度が高いこと。また、直線性、温度特性に優れ、伸縮性も高いため、断線が起きにくく、信頼性は高い。

「一方で、他方式に比べて出力が小さいというデメリットもあります。その部分はある程度設計で補えますが、アンプ部との連携も重要です。
 ひとつのセンサを設計するにも、エレメントの素材に形状に加工法、ゲージも出力に精度に大きさにと、アプローチはさまざま。したがって、われわれ自身も物理、電気、メカと幅広い知識が必要になります。
 さまざまな形のセンサのどれもが、一つひとつストーリーがあって、この形になっている。『次は何を測らされるんだ』と戦々恐々の一方で、それが面白さでもありますね」(佐藤氏)
取材協力 ミネベア株式会社
次回予告 次回の掲載は2月17日です。
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ 根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ
もっと近寄って、表も裏も、もっといろいろな角度から……。技術製品を多数の写真で紹介し、その担い手のエンジニアに、写真を見ながら(見せながら)詳しく説明していただくのが新連載の趣旨。多数の写真が貼ってあるアルバムをぜひめくって(クリックして)ください。第1回は小さな部品でしたが、第2回以降、ダイナミックサイズの製品、身近なもの、珍しいものなど、さまざまな技術をとり上げていく予定です。

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機能美あふれる技術製品を、表から裏から、遠くから近くから、多数の写真で徹底的にご紹介。百聞は一見にしかずです。

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