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ソーシャルアプリの未来を担うグリー採用の舞台裏
なぜ、グリーはSIer出身者を続々と採用するのか?
モバイル版「GREE」の本格化で急成長を続けるグリーが、SIer出身者を続々と採用しているという。畑違いのように思える企業向けSI経験が、ソーシャルアプリビジネスでどう活かされるのか。現場で活躍するエンジニアにその真意を聞く。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:09.11.25
グリーの成長にはSIer経験者が欠かせない

 モバイル向けソーシャルアプリのビジネスでWeb業界をリードするグリー。そのエンジニアには、ケータイ向けWebサービスを開発する特殊なスキルが必要と思われがちだ。企業向けシステム・インテグレーションや業務アプリケーション開発の経験者には一見縁遠い世界。しかし、SI系のエンジニアが前職で得た経験を活かす余地は多く、SI業界で鍛えた開発力は同社の成長に欠かせないものとして、強く求められている。
 今回はグリーで活躍するSIer出身エンジニアたちに、やりがいと今後の抱負を聞いた。

グリーで活躍するSIer出身エンジニアたち
メディア開発部 リーダー 澤 智明(さわともあき)
澤 智明

大手シンクタンク系SIerでJavaのアプリケーション・フレームワーク開発などに3年間従事。20代の成長力を高められるベンチャー企業への期待もあって、2006年6月に転職。リーダーとして、ニュース、Q&A、辞書、アバターなど複数のWebサービスの企画、開発、予算管理などサービス運営全般を担当。

エンジニア 和田 洋樹(わだひろき)
和田 洋樹

前職は独立系のSIer。主に製薬・製造業向けの物流システム開発に4年間従事。Webやコンシューマ向けの仕事を通して「引き出しの多いエンジニアになろう」と2006年6月転職。現在は、課金システムや広告販売管理システムなどの基幹システムを担当する。

メディア開発部 リーダー 山家 匠(やんべたくみ)
山家 匠

証券系SIerで証券会社向けのシステム開発に10年間従事し、基幹系システムのアーキテクトとして大規模システムの設計に従事。オープンソース系の仕事にチェンジしたくて2008年12月転職。SNSチームのリーダーとして、ブログ、フォト、ひとことなどの大規模Webアプリケーションの設計・開発を担当。

ソーシャルアプリ開発と企業向けSI ── 畑違いの経験がなぜ活きる?

 グリーのエンジニア求人ニーズを探るシリーズ、前回の記事で、荒木英士・メディア開発部プロデューサーはこんなことを語っていた。
「ゲームというとキャラクターやシナリオなどの企画面が重要だと考える人がいますが、1500万人以上が利用する大規模Webサービスとして考えれば、それ以上に課金や広告配信などの基幹システムや、パフォーマンスとスケーラビリティを兼ね備えたインフラ整備が重要です。通信、ネットワーク、組込みなど一見Webサービスと関わりの無い経験をもつエンジニアであっても活躍できる余地がものすごくあります。業種を問わず、コンシューマ向けサービスを経験した人のアイデアは貴重だし、金融分野などで大容量トラフィックをさばく法人向けサービスを構築してきた人の力も、これからは重要だと思っています。」

 ソーシャルアプリと企業向けSI──。一見、畑違いのようにみえるが、大規模システムの構築という点で考えれば、ネットワーク・インフラの設計からさまざまな業務システムの開発に至るまで、SI的な要素は大いにある。ましてや1500万人という膨大なユーザーを想定したプラットフォームを設計する上では、こうしたインフラ部分の開発力の優劣が、勝敗を決定づけるといっても言いすぎではないのだ。

 また現在は、ソーシャルアプリに主軸を置いているグリーだが、もともとはPC版SNSからスタートした会社。SNSとソーシャルアプリの可能性を考えれば、今後さまざまなサービスが生まれてくることが容易に想定できる。

 それを実現するためには、法人向け、コンシューマ向けを問わず、アーキテクチャの設計からシステム運用にいたるまでのさまざまなサービス開発のスキルをもつSI系エンジニアの必要性が高まっている。
「ソーシャルアプリやモバイルの世界を知らないことは、グリーへの転職にあたってなんらハンデにはならない」と荒木は断言している。それ以上に、求められるのはグリー流の開発手法に慣れることができるかどうかだろう。

「グリー流」開発手法がスピードと質の両立を実現する

「サービスの企画立案から、ソーシャルアプリの開発、さらに事業の運営まですべてのフェーズにエンジニアが関われるというのが最大の面白さだと思います。少人数ということもあって、一人の担当分野や裁量範囲が非常に広い。決定権の多くの部分が現場に移譲されているので、意志決定のスピードも前職とは比較にならないほど速いのに驚きました」
 というのは、証券システム専門のSIerから、昨年グリーに転職した山家匠(34歳)だ。現在は、メディア開発部でSNSを担当するチームのリーダーを務めている。

 企画からサービス立ち上げまでわずか数週間ということも、グリーでは決して珍しいことではない。
「仕様書や設計書も、他の会社なら決まった書式があって、きっちりした書類を作成して稟議を回して決裁することになると思いますが、ここでは議論しながら簡単なメモに仕様をまとめて、その場で決めてすぐにプロジェクトが動き出す。その後、仕様や設計、役割担当や進捗状況などはすべてWikiで共有しながらプロジェクトが進んでいくので、ムダがないですね」
 と、澤智明(28歳)がフォローする。澤は大手シンクタンク系SIerでJavaのアプリケーション・フレームワーク開発などに従事してきたが、自分の力を伸ばせるのはベンチャー企業だと思い定め、3年前に転職してきた。

 大手SIerのシステム開発組織が上意下達のピラミッド型だとすれば、グリーのエンジニア集団はフラット型。ピラミッド型は定型的なシステムを一気に仕上げるには効率的だが、ユーザー・ニーズを敏感に感じながら、その都度サービス内容を拡充し、それに合わせてシステムを改変していくような柔軟性には欠ける。そのことを澤は転職してあらためて実感するようになった。

 澤と同時期に、SIerから転職してきた和田洋樹(30歳)は、現在、課金システムや広告販売管理システムといった基幹システムの開発に携わっている。
「課金システムというと、一般的には信頼性に重きをおいて、工程ごとに段階を追ってじっくり取り組む“ウォーターフォール・モデル”による開発が通常です。ところが、グリーでは課金システムでさえ、チームでその都度コミュニケーションをとりながら、時には自分の上司とその場で話しながら臨機応変に作っていく。もちろん、信頼性を落とすことは絶対に許されない。スピードと信頼性の両立を一気に求めるのがグリー流なんです」

 こうした開発手法が可能なのは、社内にそれだけスキルの高いエンジニアがいるということに加え、ほとんどのソーシャルアプリやシステムを社内で開発するという「自社開発の思想」が徹底しているからでもある。

 大手のSIerでは、協力ソフトウェア会社やオフショア開発部隊に対する外注管理スキルが中間層のエンジニアに求められてくるものだが、グリー流の開発ではそうした外注管理はほとんど必要ない。企業によっては外注比率を高めることでより効率的で低コストの開発を進めることも不可能ではないが、現在のグリーはあえてその選択をしていない。社内のハイスキルのエンジニアが集中的に開発したほうが、より速く良いものができるという信念があるのだ。

エンジニアが様々なキャリアパスで成長できる環境

 もちろん3人とも前職での経験がムダだったとは考えていない。
「SIer時代の開発で面倒な手順を踏んできたことにはそれぞれ意味があったと思います。ただ、単に手順がそうなのだからそれに従うというのではなく、これがなぜ必要なのかをずっと考えてきていて、本当に最適な方法なのかと思うこともありました。その疑問が、グリーに来て腑に落ちたというか。手順そのものも疑うという姿勢、より効率的に、良いものを開発しようという考え方は、グリーに入っても活きていますね」と、和田は言う。

 山家は専門に担当する技術については前職からの継続性があるという。
「アプリケーションの基盤開発、フレームワークの設計という点では、前職も今も同じですから、継続性はありますね。信頼性をどう担保するかという考え方は、前職での経験がそのまま活かせると思いました」

 澤もまた、「技術的には開発言語やRDBMSが異なったりしますが、前職で技術的な基礎を身に付けたことが大きく役立っている。技術以外のことでも、グリーはまだ若い会社なので業務フローなど改善できる余地はたくさんある。その際、前職での経験を思い出して、プロジェクトの進め方を変えることもあります。」と語る。

 ただ、澤は「もっと早くグリーへ転職してもよかった」と思うこともある。エンジニアの成長にとって「グリーでの1年は前職の数倍も濃密な時間だった」ことを実感するからだ。
 エンジニアのキャリアパスについても、グリーは普通の会社とは違うものを提供している。プログラマからSEになって、プロジェクトリーダーになって、マネージャーに至るというのが通常のキャリアパスだが、そのコースをすべての人が理想としているわけではない。
「管理職へという直線的なコースだけでなく、エンジニアとしてスキルをもっと横展開したいという人もいるでしょう。その選択が自由というか、ほとんどエンジニア自身が自己選択できる。エンジニアとしての可能性の幅や深さにこだわる人なら、グリーに向いていると思う」というのは山家だ。

高いモチベーションを持ち、変化を恐れない人求む

 六本木にあるグリーのオフィスの受付にはディスプレイがあり、日本地図上にGREEの登録ユーザー数が県別で刻々と表示されている。会社の成長スピードを実感する瞬間だ。急成長のSNS・ソーシャルアプリ業界。自分たちがそれを作っていくというモチベーションと実感の深さが、グリーのエンジニアは、もしかすると他社のエンジニアとは違うのかもしれない。グリーにはどういうタイプのエンジニアがいて、これからはどういう人を求めているのか。

「たしかに、グリーのエンジニアは仕事への熱意というのが全然違いますね。『GREE』をより良くしたいと思い、次々にアイデアを出して、それを自分の力で実現していくという人がここには多い。だからこそ、成長意欲のある人はものすごく刺激されると思うんですよ」
 というのは澤だ。逆にいえば「上からの指示を待つだけ」の人には、かなり辛い環境といえるかもしれない。

「平均年齢29歳と若く、年齢層が近い人が多いことは私にとってはいい環境ですけれど、そもそもグリーでは年齢の上下というのはあまり意識したことがない。重要なのは、今目の前にある課題にどう取り組むか、その解決方法を周囲に対してきちんと説明できるかどうかだけです。変化の大きいWeb業界では前にこうやったからという経験主義に依存しちゃうとダメなんですよね」と、和田も言う。

 山家が求めるエンジニア像も、他の二人と共通するものがある。
「前職では経験していない分野を担当することも多いと思います。でも、完成したスペシャリストを求めているわけではありません。まだ粗削りでも、グリーに移って自分で精進して、どんな分野でもいいからスペシャリストへ成長してゆくような人。そういうポテンシャルを持つ人が実際多いし、これからもそういう人に飛び込んできてもらいたいですね」。

 「GREE」を支える、SIer出身の3人のエンジニア。最後にこれからの抱負を聞いた。
「課金システムや社内基幹システムの信頼性を高めるために、まだやるべきことは技術・業務両面でたくさんあります。こうした改善を通じて、自分がエンジニアとして関われる範囲をどんどん広げていく。そのことがエンジニアとしての成長につながりますし、自分の将来を広げる事でもあると思います。」(和田)

「転職前は、一人で新しいサービスを立ち上げる力をつけたいと思っていましたが、グリーに転職してそれが実現できました。ただ、同時に一人で出来る事の限界も感じました。リーダーとしての私のこれからの目標は、“さらに多くのユーザーに使ってもらえる素晴らしいサービスを作るために、より良いチームを作っていくこと”です」(澤)

「技術であれマネジメント能力であれ、自分にできることを少しずつ増やしていく。将来は、3000万人会員を支えているかもしれないし、自分で会社を立ち上げているかもしれない。どんな立場になっているかわからないけれど、エンジニアとしての幅が広がれば、どんな将来像も実現できると思っています」(山家)
 意外と、彼らの夢は堅実で、決して浮ついたところがない。そこに頼もしさを感じるのだ。

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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る

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