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『釣り★スタ』『踊り子 クリノッペ』開発リーダーを直撃取材!
グリーエンジニアが明かす ソーシャルアプリ開発舞台裏
2006年にモバイル版「GREE」展開を本格化し、急成長を遂げたグリー。その原動力となったモバイル向けソーシャルアプリ『踊り子 クリノッペ』『釣り★スタ』などを手掛けた開発リーダーに、ソーシャルアプリを作るやりがい、生み出す技術を聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:09.11.11
[Part1]なぜ「GREE」のソーシャルアプリはシンプルなのか

 2006年11月にモバイル版「GREE」を展開以来、急成長を続けるグリー。その原動力となったのは、自社開発によるモバイル向けソーシャルアプリのサービスだ。代表的なサービスが、不思議なペットを育てながらユーザ同士で交流を楽しむ『踊り子 クリノッペ』、SNSと連動した釣りゲー ム『釣り★スタ』などだ。
 今回は、この2つのメガヒットアプリの開発に関わった、2人のリーダーエンジニアに話を聞いた。グリーのビジネス展開で、エンジニアが果たす役割がきわめて大きいこと、そして、他社にはないグリー流のエンジニアの育て方についても、興味深い話を紹介する。

メディア開発部 プロデューサー 荒木英士氏 『踊り子 クリノッペ』

前職の大手SIerではシステム開発やネットサービスの提案を行う。「提案だけじゃなく、自分で作りたい」と社員5〜6名のころのグリーに2005年8月転職。PC版グリーのPMを経て、06年以降「踊り子クリノッペ」の企画・開発を率いる。「クリノッペ」はグリーの認知度を飛躍的に高め、収益にも貢献。「モバイルプロジェクト・アワード2008」で優秀賞を受賞した。

メディア開発部 プロデューサー 吉田大成氏 『釣り★スタ』

前職の大手ポータルではCGMサービスの企画を担当。あるときグリーの藤本真樹CTOと知り合い、「ここならエンジニア主導で面白い仕事ができそう」と、2006年10月転職。携帯サービスにおけるエンターテインメント系コンテンツの立ち上げにかかわり、2007年1月からは「釣り★スタ」の企画・開発へ。同時に20万人以上がハマるヒットゲームに育て上げた。

「なんで今さらゲーム?」と言われた

「SNSというサービスは、2006年当時はまだよく知られていなかったんです。友だちとコミュニケーションできるんだよと言っても、それだけでは抽象的で、入りづらいと考えた人も多かったと思います。SNSへユーザを導くためには、わかりやすく、敷居の低い入口がなんとしても必要でした」
 と語るのは、『踊り子 クリノッペ』の生みの親、荒木英士氏メディア開発部プロデューサーだ。

 当時の「GREE」をめぐる事業環境は、今ほどよくはなかった。モバイル広告市場の伸びは期待していたほどではなかったことから、荒木氏らは、他の収益モデルを考える必要に迫られていた。そこで考えたのが、魅力的なソーシャルアプリを提供し、ユーザ課金を増やしていくビジネスモデルを立ち上げることだったのだ。
「2006年は携帯からネットにアクセスするユーザが、PCからのそれを初めて上回った年。これからは携帯がプラットフォームの中心になる。そこで、コミュニケーションという普遍的なニーズを満たすSNS、ゲームというキャッチーな仕掛け、ユーザ課金というビジネスモデルを組み合わせれば、成功するはずだ」という確信はあった。

 とはいえ、当時のWeb業界の中心的な話題は検索エンジンであり、クチコミサイトの構築であり、ソーシャルブックマークであり、Webの仕組みを拡充して、ユーザを囲い込むという流れだった。だから「なんで今さらゲーム?」という声が社外になかったわけではない。しかも、「GREE」のゲームは、見た目は驚くほどシンプル。「こんなのゲームじゃない」と陰口を叩かれたこともあった。
「ただ、僕らは10万、100万ではなく、最初から1000万人という規模感でユーザを想定していましたから。誰もが使えることや、使っていて飽きないということが大前提でした」

 ゲームの見かけ上のシンプルさは戦略的な方針だったのだ。市場の突破口は、若い女性たち。荒木氏らは、既存の携帯コンテンツ市場はもとより、女性に好まれる雑誌やファッション動向を徹底的にリサーチし、女性に受けるゲームの開発に専念した。クリノッペのキャラクターデザインを数案に絞ってからは、それを渋谷の街頭に持ち出し、女の子たちをつかまえてアンケート調査も行った。
「僕自身、女性向けマーケットに詳しかったわけではないんです。ただ、ビジネスを始めるからには相手を知らなければならない。何が求められているかを考えながら、必死に調べました」

過剰に機能を盛るのではなく、いかにそぎ落とすか

 「GREE」のもう一つのキラーアプリが『釣り★スタ』だ。「無料であそべる新感覚ケータイ釣りゲーム」が売り文句。こちらの開発担当は、同じメデイア開発部の吉田大成プロデューサー。
「シンプルで誰もが使える、持続性がある、コミュニケーションが楽しめるというソーシャルアプリの基本特性は、『釣り★スタ』も同じ。開発にあたっては、過剰に機能を盛るのではなく、万人向けにいかに不要な要素をそぎ落とすかに苦心しました」

 たしかに最初から“万人向け”を想定しなければ、1500万人(2009年9月現在)という現在のユーザ数はありえなかっただろう。実際、『踊り子 クリノッペ』にしても『釣り★スタ』にしても、ユーザの中心は30代。10代の子どもと親が同時に楽しむ例も多いという。
「親子でペットを育てているとか、入院中の寂しさを紛らわせてくれたとか、職場のみんなで釣り大会をやっているとか、生活に密着した使われ方をよく聞きます。携帯ゲームを通したコミュニケーションって、あらためて普遍的なニーズなんだなと思いますね」(吉田氏)

[Part2]エンジニア間の活発なコミュニケーションが生み出す開発力
「生き物らしさ」を表現するための技術開発

 バーチャルペットのキャラクターではいかに可愛らしさを感じさせるかが鍵になる。ただモバイルというプラットフォーム上の制約は大きい。同じFlashを使うにしても、PCで動かすのと同じようには動かない。

『踊り子 クリノッペ』にも同様の問題があった。モバイルの中のペットを「いかに生き物らしく見せるか」は、エンジニアが直面した最初の大きな課題だった。モバイル「GREE」のアバターやクリノッペは、Flash Liteを活用しているが、携帯電話という処理能力や通信スピードが劣る環境で高い表現力と軽快な操作性を両立させる必要があり、グリーならではの技術的ノウハウがあるという。ふつうに考えても、1500万人以上の利用者が、それぞれ自分に見立てた個性的なアバターやペットをもっているのだ。その画像処理だけでも、膨大な負荷がかかることは容易に想像がつく。

「不可能じゃないかと思ったことが何度もありますが、最終的には、オープンソースのツールをいくつか組み合わせることで、生き物感を出したアニメーションや着せ替えが可能なことがわかってきました。
 グリーは社員間のコミュニケーションを大切にする会社ですから、社内はワンフロアで、エンジニア同士のフェイス・トウ・フェイスのコミュニケーションも活発。隣にいるエンジニアのアイデアを、PCの画面を見ながらすぐに検証して、みんなでブラッシュアップできる雰囲気があるんです。人と人の距離感が近いというのは、開発にあたっては重要なポイントですね」
 と荒木氏はいう。
 エレクトロニクスや自動車の大メーカーのように、研究開発のラボが別棟にあって、そこで何が行われているかはリアルタイムにはわからないというのとは、ちょっと雰囲気が違うのである。

 誰かがうまくいったら、その成果をすぐにみんなで共有する。同じゲームを開発する部署間での競合は当然あるが、ノウハウを出し惜しみするような排他的な関係はそこにはない。
「GREE全体の成長のために何ができるかをみんながいつも考えています。だからこそコミュニケーションをする。このコミュニケーションの質と量とスピードでは、僕らはどこにも負けていないと思います。それこそが、「GREE」が急成長してきた最大の秘密と言ってもいいかもしれません」(荒木氏)

 もちろん、SNSやソーシャルアプリの機能をいくらブラッシュアップさせても、ユーザ数がなかなか伸びない時期も「GREE」にはあった。
「まだ社員が20人ぐらいのときで、辛い時期でしたけれど、僕個人としては楽しかった。だって、周りをみたらみんなすごいエンジニアばかり。これだけ成長意欲があるメンバーが揃っていたら、絶対に負けるはずがないと思っていましたからね」

22万人が同時接続しても落ちない『釣り★スタ』の負荷分散

 一方、『釣り★スタ』の吉田氏にとって、モバイルに移行してからの最大の技術的課題は、ユーザの同時接続時の負荷分散対策だった。
「今、22万人が同時にアクセスしても大丈夫になっていますが、22万人って渋谷区の人口とほぼ同じぐらいなんですよね。しかもその中で対戦したり、対戦者同士が記念撮影したりするわけです。こういった処理のために、データベースの配置を工夫したり、独自の非同期処理の仕組みを用いて同期処理と非同期処理をうまく組み合わせたりと、オモテからは見えないところに、けっこう高度な技術を注ぎ込んでいます。」

 グリーのエンジニアは、最初からみなエキスパート揃いというわけではなかった。日々のチャレンジを通して、その技術を磨いてきたのだ。ユーザが増えれば増えるほど、日々新しい技術的難題が発生する。それを一つひとつ越えていくことで、エンジニアの成長が促される。
 今では、グリーが開発した技術の一部は、オープンソースのライブラリとして公開されている。モバイル向けプラットフォームにおけるこうした技術的貢献は、世界的に見ても貴重なものである。

データマイニングでユーザの嗜好を反映

 ソーシャルアプリとして登場したからには、世の中のニーズをその都度、反映させて、ソーシャルアプリ自身が成長していくものでなければならないだろう。そうしたフィードバックの仕掛けを整備していることが、グリーのもう一つの強みだ。

「まずはビジネスモデルの立案や、コンテンツの企画から開発に至るまで、エンジニアがすべてのプロセスに関わっていることが大きいですね。エンジニアも開発して終わりじゃなくて、事業収益のことまで考えなくちゃいけない。それはかなりのプレッシャーだけど、逆に自分が開発したサービスがどんなふうにユーザに受け止められているか、それをビシビシ感じることは、エンジニアのやりがいにつながると思うんです。開発しながら、ユーザの反応を見て、それをすぐにサービスに反映することができるし、そのサイクルが当社はものすごく早いんです」と、荒木氏。

 ユーザの動向を反映するためのシステムづくりにも、グリーは多大な投資を重ねてきた。社内には、高度な数理モデルやデータマイニングツールを開発する専門部隊を抱えている。東大の理数系の博士課程出身者などが揃う、社内随一というより業界でも有数の“インテリ集団”だ。

「彼らは毎日、何百ギガのログを分析して、データ分析のためのツールを作ってくれています。それ自体もすごいけれど、そのツールを使って、社内の誰もがWeb上でデータ分析できるというのは、もっとすごいこと。エンジニアだけじゃなくて、営業の人でさえ、分析ツールにアクセスして自分の欲しいデータを即座に取りだせる。それこそ、何県に住んでいる何歳の女性で、会員になって何ヶ月目のユーザが、いつ何時、クリノッペで何をした、というようなデータがたちどころにわかる。いろんな仮説を立てて、それを実証するツールが手元にあるっていうことは、ビジネスモデルを精緻化するうえで欠かせない要件なんです。それを使って、サービスの新機能を考えたり、次の事業企画に活かそうとしています」(荒木氏)
 こうしたシステム・インフラの足腰の強さが、グリーのソーシャルアプリを支えているのだ。

SIer出身者・技術のスペシャリストが欲しい

 グリーを「携帯ゲームの会社」と狭くとらえるのは誤解だ。ゲームはあくまでも今の切り口の一つであって、事業の本質はインターネット上でのコミュニケーションの活性化にある。しかも目指すはユーザ数3000万人。日本の人口の4分の1を相手にサービスを提供しようというのだ。それを現実のものとするためには、エンジニアの拡充が目下の最大の課題になる。

「ゲームというとキャラクターやシナリオなどの企画面が重要だと考える人がいますが、1500万人以上が利用する大規模Webサービスとして考えれば、それ以上に課金や広告配信などの基幹システムや、パフォーマンスとスケーラビリティを兼ね備えたインフラ整備が重要です」と荒木氏。
「だから、通信、ネットワーク、組込みなど一見Webサービスと関わりの無い経験をもつエンジニアであっても活躍できる余地がものすごくあります。業種を問わず、コンシューマ向けサービスを経験した人のアイデアは貴重だし、金融分野などで大容量トラフィックをさばく法人向けサービスを構築してきた人の力も、これからは重要だと思っています。Webやモバイル、ゲームのことは知らなくても、業務の中で自然に覚えられます。むしろ、それ以外の知識と経験を僕らは欲しい。他の業界や業態でやってきたことを、モバイル業界に広めてやろうじゃないかという気概がある人、ぜひ一緒に働いてみたいですね」

 吉田氏がそこに、グリーのエンジニアに求められるマインドを補足する。
「僕は面接のときに必ず、“あなたの野望は?”って聞くことにしています。今ネット業界の中でいちばん成長スピードが速い分野はソーシャルアプリだと思います。これまでソーシャルアプリになっていなかったサービスもどんどんソーシャル化していく事は間違いないと思います。なぜならどんな事だって友だちと一緒にやった方が楽しいですから。だからこそ、それを実現しようと考えているグリーは、成長意欲のあるエンジニアにとっては最適の場なんじゃないか。さらに、自分の技術をもっと広げたい、開発だけじゃなく、企画や事業運営にも参加したいという人なら、必ずすぐに僕らの仲間になれると思いますよ」

 ソーシャルアプリの未来を担うグリーのエンジニアたち。彼らには「ソーシャルアプリはいずれ電話、メールに次ぐ第三のコミュニケーションツールになる」という確信があり、その状態を一刻も早く実現しようという“野望”がある。その野望のもとに馳せ参じる、今がチャンスなのだ。

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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る

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