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エンジニア給与“知っ得”WAVE! Vol.86
年収ダウンでもOK? お金とやりがい、どっちが大切か
転職時の給与アップは誰もが願うこと。ただ、実際は仕事の内容との見合いということになる。給与大幅アップというわけではないが、それでも仕事と生活の充実を求めて転職を決断した2人のエンジニア。その転職プロセスを追うことで、給与と仕事の関係を考えてみた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:08.12.08
最新転職事情──転職で2人の給与と、生活はどう変わったか
CASE1 通信大手子会社から大手企業グループ設計会社へ
転職前後での給与変化 転職前 480万円→転職後 450万円 Y.Aさん(仮名・30歳)
派遣→正社員→転職で、キャリアを積み上げる
 Y.Aさんは新卒で派遣会社に登録。サーバーやネットワークの管理、ヘルプデスクなどの業務を皮切りにITのキャリアをスタートさせた。メーカーの社内SEとして派遣されることが長く、そこで上記の業務に加え、セキュリティ対策、Webページ構築などの経験を積んだ。4年間の派遣経験を経て、2年前に通信大手系子会社に正社員として就職した。 「やはり、派遣社員という雇用形態の不安定さが気になっていましたし、いずれは正社員でやってみたいという気持ちがありましたので」

 ただ、通信系子会社の職場環境は決して期待していたほどのものではなかった。
「仕事は主に、グループ内企業のシステム構築やネットワーク監視。データセンター勤務だったときはまだよかったのですが、今年になって本社に異動になると、めっきり仕事が減ってきました。景気の影響もあるのかもしれません。これまで月に50〜60時間あった残業が、今月などはゼロ。手取り給与も30万円から20万円と激減です」
 大手系子会社で、それなりに歴史のある会社とはいうものの、それゆえの悲哀もあった。幹部社員のほとんどが親会社からの出向、取引先はグループ内が中心で、外販で事業を拡大していくという覇気がうかがわれない。グループ内には似たような事業を行う企業がほかにもあり、親会社が本気で整理するなら、真っ先にその対象になってしまうかもしれない不安もあった。

「それなのに、私の上司が、何が気に入らなかったか、親会社の仕事を一度断っちゃったことがあったんですよ。それっきりその部署からは電話もこなくなっちゃった。これ、やばいです」
 将来の給与上昇見通しを、一度上司に尋ねたことがあった。 「伸びたとしても1年で1万円程度。しかも昇給する人間は限られている。たとえ役職についても、手当が3000円とか4000円、課長になってようやく1万円。悲観しましたね」
転職初任給はダウンだが、将来への見通しが明るい
 そこで、見切りをつけることにした。今年の夏から転職エージェントを介して転職活動を始めた。狙いはもちろん給与アップ。それと、事業会社の社内SEを職種の第一候補にした。親会社の機嫌をうかがいながらする仕事よりも、小さくてもいいから自分でシステムを計画できる立場に立ちたかったのだ。

 この秋に転職を決めた先は、大手製造業グループ傘下の建築設計会社。情報システム担当が、Y.Aさんを含め3人しかおらず、しかも上司は40代後半の課長代理と、50代半ばの部長だけという小所帯。それゆえ面接のとき「次世代のシステムはあなたに任せたい」と言われたことが、Y.Aさんの琴線を震わせた。建築設計技術者が主体の会社ではあるが、社内システムの強化は不可欠で、ITエンジニアはそのためのスペシャリストとして見られているのだ。
 ただ、最初の1年は年収が下がることになった。
「前職の最後の1年間は残業代を含む年収が額面で480万円。それに対して転職時の提示額が450万円でした」
 それでも納得したのは、職位が上がるたびの昇給幅が、前職よりも大きいこと。残業はほとんどないが、みなし残業代として10〜20時間分をカウントしてくれることだった。前職と同じグループ内子会社だが、業績ははるかに安定している。
なにより自分の仕事の裁量範囲が広がった。

「まだ仕事を始めたばかりですが、自分から提案すれば、通りやすい環境だと思います。これまでの経験から見ても、社内システムにムダが多いことがわかります。そのあたりの改善に取り組めば、自分への評価も上がっていくと思います」
 Y.Aさんの表情に自信が戻ってきた。前職では将来の不安から躊躇していた、恋人との結婚にも前向きになってきた。
CASE2 大手企業間転職で、SE・営業職からITコンサルへのステップを駆け上がる
転職前後での給与変化
転職前 650万円 → 転職直後 650万円 → 転職2年目 780万円(予定)
S.Oさん(仮名・35歳)
ITコンサルタントへの早道が転職だった
 大手SIerでの10年は、一貫して金融システム。SEとして、勘定系システムの要件定義から運用までのフェーズにおける開発業務が半分。残りの5年は、企画営業職として、金融機関向けに業務システムの販売や経営計画の策定にもかかわった。システムと営業の両方を知る彼にとって、次なる目標は、それぞれの経験を活かしたITコンサルタントになることだった。

「もちろんそのまま社内に残って、ITコンサルをめざす道もありました。しかし、一度は自分の転職市場における市場価値を知りたいという思いもありました。金融畑に詳しいというのは自分の財産でもありますが、それ以外の業務にも知見を広げる必要性も感じていました」

 前職での最後の数年間の年収は、額面で650万円。残業が多い年は700万円に達することもあった。なかなかの高給だ。本人も「世間相場からすると、ややもらいすぎかも」と振り返る。しかし、成果主義が強い職場で、同期入社の社員では年収800万円に達する人もいた。
 転職活動に、最初はそれほど本気ではなかった。「ちょっと試してみようというぐらいのノリ」。しかし、すぐに「転職したほうがITコンサルタントへの道は早く開けるかもしれない」と思うようになった。社内で順番待ちをするよりも、そのスキルをいますぐに求める企業に転職したほうが、階段を上がるスピードは速いかもしれないという判断だ。

 転職にあたって、給与はほぼ現状維持であればよいと思ったが、それ以上にS.Oさんが気にしたのは「会社の格」のようなもの。
「大手企業の人材のすべてが優れているわけではありませんが、やはり選抜された優秀な人間が集まっていて、技術レベルは高く、仕事も面白いという印象があります。そういう意味での“社格”は下げたくないと思いましたね」
650万円現状維持だが、次年度には年収1が1.2倍に増える予定
 転職エージェントが最初にオファーしてきたのが、大手コンピュータ会社のシステムコンサルタント部門。顧客企業の情報システム部門や戦略部門に、コンサルタンティング段階からかかわり、社内業務のアウトソーシング計画などを立案し、実際にそれを実行する部署だ。
「まさに願ってもないITコンサルタントの仕事。もちろん前職ではその肩書で仕事をしたことはないのですが、私の経験を十分に評価してくれたようです」  初年度年収提示額が、みなし残業代込みで額面650万円と、前職と同じか、やや下がるのも気にはならなかった。「順調に力を発揮してくれれば、2年目には1.2倍の780万円までアップ可能」という話を聞いたからだ。

「実際のところ、2年目のアップというのは転職後に聞いた話なのですが、その話がなくても転職を決めたのは、ITコンサルというキャリアアップが現実のものになったからですね。社格も十分。このチャンスを逃す手はないと即断しました」
 ケース1のY.Aさんの場合にも言えることだが、転職を2008年夏には決めたことが、幸いした。その後明るみになった国際金融危機は日本経済にも波及し、秋以降の転職マーケットは急速に収縮し始めているからだ。
 現在は、金融と製造業の2つのクライアント企業を担当している。「製造業の客と話をするのは、これまでの経験ではなかったこと。金融業とは考え方が違い、それがとても新鮮です」と、S.Oさんは言う。社会人10年目で再び新人のようなフレッシュな気分を取り戻し、同時に与えられた責任の重さに気持ちが引き締まる日々だ。

 現在は都心のど真ん中のマンションにひとり住まい。郊外に出ればもっと安くて広い部屋に住めるが、夜や休日のシティライフの楽しみも、人生の重要な要素だと彼は考えている。「生活レベルを落とすような転職はしたくなかった」という彼の思いは実現した。これからの30代後半のキャリアに向けて、意気揚々と一歩踏み出す。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
転職を決意する理由やきっかけって、実はいくつもあって、必ずしも仕事内容や給与だけじゃなかったりしますよね。また、転職活動している本人の事情だけでなく、市況や希望先の採用ニーズに大きく左右されるもの。今回ご紹介したお二人はそれらの見極め、うまく判断できたのが、転職成功の要因だったのではないでしょうか。

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