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転職アドバイザー、ヘッドハンター、株式投資家、FP…に聞く 悲惨な景気…今、知っておきたい転職必勝法 準備編
2007年3月、サブプライムローンの破綻により米国金融市場は混乱、景気も低迷している。それが全世界に波及、日本の景気も減速している。景気は人の行動心理にも影響を及ぼす。購買意欲はもちろん、転職意欲もそぐ傾向がある。本当に景気が悪いと転職は不利なのか。時代に左右されない転職の考え方を探っていく。
(総研スタッフ/関洋子)作成日:08.11.12
景気後退期の転職は有利?不利?
 景気が後退すると、人材の採用に慎重になる企業も多い。その表れが、厚生労働省が発表している有効求人倍率の低下。2008年8月の有効求人倍率(季節調整値)は0.86倍と、前月を0.03ポイント下回っている。また正社員有効求人倍率も0.53と前年同月を0.08ポイント下回っている。このようにマスでとらえると、求人数は減少傾向にある。
 このような状況から、「今は時期が悪い」と、転職に消極的になってしまう人も多い。確かに全体の求人数は減っている。だからといって「自分が携わりたい仕事」が減っているということではないはず。そこで景気後退期にある「今」は転職のタイミングとして有利なのか、不利なのか、専門家に意見を聞いてみた。
 今回、本企画に協力してくれた専門家を紹介する。
西堀敬氏
IRコンサルタント
西堀敬氏
東京IPO 編集長 株式会社フィナンテック 取締役
証券会社の国際部と海外現地法人に10年勤務した後、気象情報会社ウェザーニューズの財務部長、CFO&COOを経て2000年フィナンテックに転職。日本テクニカルアナリスト協会検定会員。
平野泰嗣氏
ファイナンシャルプランナー(FP)
平野泰嗣氏
Life & Financial Clinic
1994年慶応義塾大学法学部卒業後、公的金融機関に入社。人事部門で給与、企業年金、社会保険業務を担当。2005年、Life & Financial Clinicを創立。日本FP協会資格認定会員、CFP認定者
福田裕氏
ヘッドハンター
福田裕氏
サーチファーム・ジャパン株式会社 アソシエートパートナー
大手食品メーカー系商社にて欧州輸入ルートの構築・商品企画に携わる一方で、営業開発に従事する。その後食品系ベンチャー企業を経て、人材ビジネス業に転身。
高原健人氏
キャリアアドバイザー(CA)
高原健人氏
株式会社リクルートエージェント EMC・メディカルカスタマーマーケット 1グループ グループマネジャー
1991年リクルート入社。雑誌媒体の営業を15年経験。2006年4月よりリクルートエージェントのエンジニア担当のキャリアアドバイザーに転身。2007年10月よりエンジニアの転職支援グループのグループマネジャーに就く。
豊田義博氏
組織・人材マネジメント研究
豊田義博氏
株式会社リクルート ワークス研究所 主任研究員
1983年東京大学理学部卒業後、リクルートに入社。制作ディレクターとして従事した後、『就職ジャーナル』『リクルートブック』『Works』編集長を経験し、現在に至る。
今の時期の「転職」をどう見る?
西堀敬氏 IRコンサルタント ・西堀氏:景気の悪いときの転職は採用条件が厳しいなど困難が伴うが、入社後は同時に入る人数も少ないので大事に扱ってもらえる
 企業が採用する理由は大きく2つに分かれます。ひとつが「ビジネスがうまくいっていない場合」、もうひとつが「新しいビジネスを立ち上げる」場合です。景気が後退している今、いずれの場合においても即戦力として期待されるため求められる経験やスキルはかなりハードルが上がることが考えられます。転職に苦労はしても、大事な人材として扱ってもらえるのでタイミングとしてはよいのではないでしょうか。
平野泰嗣氏 FP・平野氏:「景気は関係ない。将来ビジョンを描けない状況にあるなら、いつでも転職を」
 転職は将来、自分がどのような暮らしと職業生活を送っていたいのかという将来ビジョンを立てたうえで考えるべきことがらです。今の会社にいるとそのビジョンが描けないのであれば、転職を考えるべきでしょう。不景気になると求人市場は狭くなります。しかしそれは転職をしないという理由にはならないと考えます。
福田裕氏 ヘッドハンター・福田氏:「マネジメント職および深い専門性が求められる職種では景気の動向は関係なし」
 不景気だから転職が不利ということはありません。特に当社が得意とするミドルマネジメント以上のポジションの人材、また研究開発職など深い専門性をもつ人材は普遍的な人材難のため、求人数も安定的に推移しています。企業はこれからの戦略を考えたうえで、競合に勝てるような人員をそろえていく傾向はこれからも続きます。専門性のあるエンジニアにとっては、景気の動向は転職に影響がないといえるかもしれません。
高原健人氏 CA・高原氏:「2〜3年以内での転職を考えているなら、なるべく早く動くこと」
 現在、転職市場は確実に縮小傾向。景気の後退により、多くの企業で採用計画の見直しが入り、求人数が激減することが予想されます。そのような動きは既に現実にも表れており、最終面接までいった人が採用計画の見直しにより、採用までに至らなかったというケースもありました。エンジニア職はまだ求められていますが、スタッフ系の職種の採用は縮小傾向にあります。1〜2年後は、エンジニアの求人市場においてもさらに厳しくなることが考えられます。ここ2〜3年以内に転職をと考えている人は、なるべく早く動くことが得策です。
豊田義博氏 組織・人材マネジメント研究・豊田氏:「景気の動向に振り回されすぎない」
 エンジニアはもともと、好・不況の影響を受けにくい職種です。例えば研究開発職の研究職や製造やITなどの上流工程職種などは、企業の製品・サービスを生み出す中核であるうえに、常に人が採れないため、企業も困っている。確かにSEなどの流動性の高い職種は多少、減少傾向になるかもしれませんが、それもほかの事務系職種と比べると減り幅が小さい。転職を考える際に景気の動向に振り回されすぎないことです。不況になると消費行動同様、転職を控える傾向があります。つまり求人数は減るが、動かない人も多いので、不況期の転職は意外にチャンスとも考えられます。
不況期の転職が意外に有利な点 不利な点
転職のタイミングはどうやって測る?
西堀敬氏 西堀氏:「株価をチェックして、景気の回復時期を予測」
 株価の動きをチェックしていれば、景気がいつごろ回復してくるか予想できます。日本経済は今年の夏から、景気が下がっていると実感できるようになりました。しかし株価はその1年も前から、下がり始めていたのです。株価と景気との間には約1年のタイムラグがあるのです(下図参照)。つまり株価が上昇する傾向が見えれば、その1年後には景気も回復してくる可能性があるわけです。不景気はまだ2年ぐらい続くと予想していますが、株価は来年の夏ぐらいから回復すると予想しています。先見性のある一部の企業ではそのタイミングで積極策に転じることも考えられます。モノづくり系企業への転職を考えるのなら、そのタイミングがいいかもしれません。
2003年以降の東証株価指数の推移グラフ 景気動向
平野泰嗣氏 平野氏:「退職後までを視野に入れた生活とキャリアの絵を描いて判断」
 将来にわたってどんな生活をしていきたいのか、またどんなキャリアを築いていきたいのか(仕事に携わっていきたいのか)、それぞれの絵を描くことです。生活ぶりの絵では、5年先までは1年刻み、それ以降は5〜10年刻みで大まかな未来を描きます。キャリアも生活ぶり同様、5年先までは詳細な目標を立て、それ以降は大まかな目標を立てます。今の職場でその双方の将来が手に入るかどうか考える。そうすると転職のタイミングが見えてくるはずです。注意したいのはマンションなどをこれから購入する予定のある人。ローンの審査は勤続年数(3年以上)で判断されるからです。その辺も考慮に入れて、タイミングを計りましょう。
高原健人氏
高原氏:「安心して会社に残れるかどうか考える」
 この会社に残っても安心か──。まずはそれを考えます。安心ならそのままそこに残るといいでしょう。しかし多少でも不安を感じたら、即、キャリアの選択肢を増やす行動をすること。今の職場に不安を感じたときが、転職活動タイミングです。
豊田義博氏 豊田氏:「タコツボにはまっている、はまりかけているのなら、職場の変えどき」
 技術の細分化が進んでおり、同じ会社、同じ仕事に携わり続けると、専門性は深まるものの横に広がりがないという、キャリアのタコツボ状態に陥ってしまうこともあります。タコツボに陥ってしまうと、いざ動きたいと思っても動けなくなる。同じ職場に居続けることには、そういうリスクがあることを念頭においておくことです。もし今、タコツボにはまりかけている、既にはまっているのであれば、転職に限らず、職場や仕事を変えることを考えるべきでしょう。
景気後退期でも元気な業界とは?
西堀敬氏
西堀氏:「合理化・省力化につながる製品やサービスを提供する企業」
 例えばインターネットビジネスや携帯向けコンテンツサービスプロバイダなどは不況抵抗力が強い。一方モノづくり系企業は消費が落ち込むので、全体的に転職先としては厳しいと思います。
福田裕氏
福田氏:「代替エネルギー分野はこの先5年ぐらいは成長路線」
 最も成長が期待されるのは、燃料電池や太陽電池など代替エネルギー分野です。材料系の人材だけではなく製造装置の開発者など、さまざまな人材が求められる可能性があります。一方、IT業界はより専門性の高いマネジメント職と即戦力が増加傾向にあります。
「求人件数の多さ=選択肢が増える」わけではない
 CAの高原氏は、「求人件数が多い=選択肢が増える」と勘違いしている人が意外に多いと指摘する。「内定をとるまでは、幻の選択肢。内定をとってはじめて真の選択肢になる」(高原氏)からだ。従って自分にとって今が転職のタイミングだと思うのであれば、経済状況がどうであっても転職行動を始めることを躊躇する必要はない。
 転職活動は「人生の選択肢を増やす行動」であって、こればかりは誰も増やしてくれないので、自分自身で増やす努力をしなければならない。専門家の意見からもわかるように、不況だからといって動かない理由はどこにも見つからないのだから。
 次回はどのような行動をすれば、不況期での転職を成功に導くか、レポートする。

これでバッチリ!転職活動やることリスト
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ 関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
私も求人数の減る不況期は転職しないほうが無難かもと思っていました。しかしどんなものでも売りどきはあるはず。生鮮食品の場合は、今年の景気が悪いからといって収穫したものを来年に回すなんてことはできません。それと同様で、転職にも売りどきがある。それが今と思うなら、最適な転職タイミングだと気づかされました。

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